いいえ天使はありません

2013 年 2 月 14 日
於
桐
生
教
会
19:30 より 1 時間半
「霊について」
について」
問い手:本日は霊についてお話をお伺いさせてください。
神父:はい。
聖霊についてですか、それとも、霊魂についてですか?
問い手:聖霊と霊魂は違うのですか?
神父:もちろん。聖霊は神様のもので、霊魂は人間のものです。
問い手:イエス様の場合はどうなるのですか?イエス様は三位一体の観点からは神様
ですが、人間として肉体を持っていました。イエス様に霊魂はあったのでしょ
うか?
神父:イエス様も人間としての霊魂があったと思います。私は神学に詳しくないので
断言はできませんが、十字架に付けられて一度亡くなったのはそういうことだ
と思います。
問い手:聖霊と霊魂はどこが違うのでしょうか。概念の違いが分かりません。
神父:お祈りをするときには聖霊に頼みます。霊魂には頼みません。
問い手:神父様はお祈りをしている時に霊魂を感じることはありますか?
神父:ありません。霊魂の存在は人間には分かることはできないと思います。人間は
体や精神、そして魂(soul)がひとつのものとなっています。今、私と話をし
ているあなたはあなた。心も頭もあなたです。
問い手:以前、お話をお伺いした際に、神父様のご両親が天国にいらっしゃるのを感
じるということでしたが、ご両親の霊魂を感じることはないのですか?
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神父:ありません。全然。
問い手:幽霊やお化けといった類のものを感じることはあるのですか?
神父:幽霊はありません。でも、スピリット(spirit)はあります。あると信じてい
ます。
問い手:スピリット(spirit)?魂(soul)とスピリット(spirit)はどのように違う
のですか?
神父:スピリット(spirit)の世界はあると思っていますが、魂(soul)には世界が
ありません。魂は人間のものです。
問い手:スピリット(spirit)の世界というのは何ですか?魂(soul)とスピリット
(spirit)の違いをもう少し具体的に教えてください。
神父:悪魔のスピリット(spirit)もあります。天の世界です。魂(soul)は個人の
存在と分けることはできませんが、スピリット(spirit)は個人ではありませ
ん。
問い手:スピリット(spirit)の世界というのは今まで考えたことがなかったので、
なかなかイメージがつきません。
神父:私は仏教のことを詳しくは知りませんが、仏教では人が亡くなって 33 回忌を
経ると極楽浄土にいけると考えていて、それまではスピリットの世界があるの
だと思います。そして、その間にお経を唱えて祈りを届け、お彼岸には現世に
戻ってきたりするのではないでしょうか。
問い手:もう少し違う言葉で言い換えて貰うことはできますか?
神父:スピリットの世界には良い天使もいるけれど、悪魔もいます。ウィーンの神父
様は悪魔のせいでベッドから引き摺り下ろされたりといった物理的な悪影響
もあったそうです。神様に近い人ほど悪と対峙することが多いようです。
問い手:悪魔ですか。存在として悪があるというのは納得しかねます。
神父:来週の主日のミサは、洗礼を受けた後のイエスが 40 日間荒野でさまよい、悪
魔からの誘惑を受ける場面です。悪魔の誘惑に対して、天使は守ってくれます。
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問い手:う~ん。悪魔や天使はどのようにして生まれたのですか?
神父:悪魔はルシファのように天使が堕ちて悪魔になりました。天使はどうなのでし
ょうか。
問い手:以前も悪魔の話が出てきたときに理解に苦しんだのですが、悪という概念は
理解ができても悪魔という存在は受け入れがたいものがあります。
神父:フィリピンの方はスピリットの世界に敏感な方が多いような気がします。以前
に会ったベトナム人の若い方もそうでした。仏教の有名な霊の場所で、神秘的
な場所に行ったのですが、その人は恐怖を感じて近づきませんでした。畏れを
感じたのだと思います。
問い手:いわゆるパワースポットですね。
神父:私はこれまでの人生で良い天使に助けられた体験が何度もあります。危険な場
面で助けてもらいました。自動車を運転するときはお祈りをします。「保護の
天使、お守りください」と。パリミッション1の神父様が高速道路を運転中に
心臓発作で亡くなりましたが、その神父様は道路脇の路側帯に車を停めて、他
の人を巻き込むことはありませんでした。天使の働きだと思います。
問い手:お言葉ですが、もし天使が一人ひとりに働きかけていらっしゃるのであれば、
大地震で亡くなった人はどうだったのでしょうか?私がもし天使なのであれ
ば、震災の前日にテレビの電波を操作して「皆さん、明日地震が起こるので逃
げてください」と訴えます。テレビ局をはじめ多くの人は驚くと思いますが、
これで大勢の人を助けることができるかもしれません。
神父:(笑)そういうことはしませんね。確かに矛盾です。難しい。ただ、地震はこ
の世の中の動きです。
問い手:確かに地震はこの世の動きかもしれませんが、自動車もこの世の中の動きで
す。運転手の方がハンドルを右に切れば車は右に動きます。ハンドルを右に切
ったのに左に車が動けば、それは天使の働きではなく、普通であれば車の故障
だと考えます。神父様は、天使がいると思い込んでおられるだけ、ということ
はないのですか?
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フランスのパリに本部を置くカトリック教会の男子(司祭)の宣教会。
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神父:それはありません。ふしぎなことです。昔、6 年間バイクに乗っていました。
そして、何度も危ない目にあいました。ブレーキとアクセルの操作を誤って対
向車線にはみ出てしまったことがありましたが、向こうから車は来ませんでし
た。また、冬に路面が凍った道で転倒した際も崖の手前ギリギリで止まりまし
た。
問い手:背後霊や守護霊といった感じなのでしょうか?
神父:ドイツにあるステンドグラスで、オルガンを弾いている少年の後ろに天使が羽
を広げて守っている絵がありますが、そのようなイメージです。一人ひとりに
天使がついていて、そのそれぞれに名前があるという話を聞いたことがありま
すが、私もそう思います。でも、この話は三位一体とは関係ありません。信じ
るか信じないかは自由ですので(笑)。
※教義や教理ではなく神父様が個人的に信じておられることという雰囲気で
のお話でした。
問い手:霊に話を戻したいと思います。輪廻転生についてはどのように思いますか?
神父:人生は一回きりだと思います。
問い手:人が亡くなると日本では火葬に付す、体は灰になります。魂はどうなるので
しょうか?
神父:教会ではどのように教えていますか?
問い手:帰天というので天に帰るのだと思います。
神父:それだけですか?
問い手:と言いますと?
神父:れん獄に行きます。れん獄には霊魂がいます。
問い手:亡くなったら、すぐにれん獄に行くのでしょうか?
神父:そうです。ですから、お化けはいません。怪談話をすると皆怖がりますが、私
は全く平気です。
問い手:霊が見えるという人がテレビなどに出ていますがどう思いますか?
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神父:信じていません。占いも信じていません。以前、有名な占い師の人が服役をし
ていて、刑務所で面会しましたが、「全部うそ」とおっしゃっていました。私
の母も町にいた占い師の所に行ったことがありましたが、占い師の話を信じず
笑いが止まらなかったので追い返されてしまいました。
問い手:ところで、前回、神父様がパウロの書簡を読むと良いと仰っていたので少し
ずつ読んでいるのですが、その中に教会での役割を持つ人として病を癒す人と
いうのがあります。神様の力で病を癒すというのはどういうことなのでしょう
か?
神父:癒してくれます。手を触れるといったことをします。現代でもそういう人がい
ます。
問い手:何がおきているのでしょうか?
神父:聖霊の助けがあるのだと思います。
問い手:バルト神父様は病をいやすことができるのでしょうか?
神父:私はそういうことはできません。でも、話を聞いたり、手を握ったりすること
で、困っている人の心を落ち着けることはできます。
問い手:今までは霊に否定的な観点から話していましたが、立場を 180 度変えて、私
のイメージする聖霊について話したいと思います。
右の図のようにエネルギーの源のようなものがあって、そのエネルギーの源
から生命の元となるエネルギーが与えられることで、人間だけでなく全ての生
き物が生きているイメージです。
神父様は、宮崎駿監督という有名なアニメ製作者の
エネルギー
方をご存知ですか?
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聖霊
神父:いいえ、存じ上げません。
問い手:そうですか。その方が作ったアニメに「もののけ姫」
という作品があります。私がイメージするイエス様の
復活はそのワンシーンと重なります。物語には、シシ
神という鹿の形を借りた神様が登場します。そして、
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そのシシ神の首は不老不死の力が宿っていると信じられていたため、人間たち
がシシ神の首を刈ります。すると、シシ神のから黒い液体のようなものが溢れ
出てきます。そして、主人公によって首が戻されるとまた元の鹿の姿に戻ると
いった場面があります。その黒い液体はエネルギーの塊のようなもので、聖霊
のイメージに似ていると感じました。そして、シシ神の死と復活がイエス様の
復活に重なるような気がしています。
神父:そのイメージは似ていると思います。
問い手:私は、病を癒すというのは、その命の源となっているエネルギーを操作する
ことに長けた人なのではないかと考えています。
神父:そういうこともあると思います。
問い手:ただ、私のイメージの中には悪魔は登場しません。エネルギーが光だとする
とその光によって生じる影のようなもので、積極的にエネルギーを消滅させよ
うとする主体が存在するというものではありません。
神父:神父様の中には、悪魔が憑いた人を助ける方もいらっしゃいます。悪魔が存在
しないと感じるのであれば、それに越したことはないのだと思います。私は悪
魔について考えるだけで恐ろしい、嫌な気持ちになります。
ヒトラーにも悪魔の力が働いていると思います。ヒトラーは優秀なのはドイツ
人だけだとしてユダヤ人をはじめとして多くの人を殺害しました。
問い手:霊について話を戻します。例えばの話ですが、IPS 細胞の臨床技術が発達し
て、腕の再生、内臓の再生、脳の再生など人体の全ての部位の再生が可能にな
ったとします。そして、その全ての部位を上手く繋ぎ合わせることができる技
術もあるとします。その時、その体は人として動き出すと思いますか?もし、
それが人になるのであれば霊魂や聖霊は存在しないように思います。もっとも、
全てを繋ぎ合わせた時に神様が聖霊を吹き込むと言えるのかもしれませんが。
神父:どうでしょう。大きな問題です。学者の間でも見方が分かれているようです。
再生医療が発達すれば、本当にそうした人間を作ることができる日が来る可能
性があります。
問い手:時間も無くなってきたので、幾つかの問いをさせてください。
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神父:はい。
問い手:愛と聖霊はどういう関係にあるのですか?
神父:愛は聖霊から頂く賜物であり、恵みです。ガラテヤの信徒への手紙 5 章の 22-23
節に「霊の結ぶ実は愛であり、喜び、平和、寛容、親切、善意、誠実、柔和、
節制です」とあります。この箇所は堅信の時に読まれます。愛があれば、知恵
と判断によってたくましく生きることができます。命まで捨てることができま
す。
問い手:臨死体験というのはどういうことなのでしょうか?臨死体験をした方は三途
の河原やお花畑をみるといいますが、れん獄というのがそれなのでしょうか。
神父:れん獄ではないと思いますが、そういう話は私も聞いたことがあります。とて
も気持ちが良いそうですね。
問い手:催眠術と霊は何か関係があるのでしょうか?
神父:催眠術は技術のようです。勉強をしてテクニックを学ぶことで催眠術をかけら
れるそうです。霊魂とも関係がありません。
問い手:最後に、霊とは関係がない質問ですが、神父様はお祈りの途中に蚊が止まっ
たらどうしますか?
神父:殺します(笑)。私はお坊さんではないので殺生は禁じられていません(笑)。
問い手:すみません。殺生をするかしないかという問題ではなく、お祈りの時の集中
度合いや体を動かすことを我慢するかどうかということを伺いたいと思って
います。
神父:蚊が飛んでいたら気がつきます。そして、私に止まったらパチンとやります(笑)。
私はまだまだ未熟ですから。
問い手:私はお祈りで集中すると言っても知れているので、神父様はどのような感じ
なのかなと思いました。長時間に亘ってありがとうございます。
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感想:今回伺ったお話の中で、私が「もののけ姫」から抱いた聖霊や復活のイメージ
に賛同?して頂けたのは安心材料になりました。神父様のお持ちになっている世界観
がよく分っていない状況が続いていたので、手がかりの一つになったと感じました。
意外だったのは、「霊」の話が聖霊、霊魂、スピリットと 3 つの別の話に広がった
ことです。特にスピリットの世界については、今まで私自身が意識をしたことがなか
った世界でした。「悪魔や天使が存在する」と言われてもピンとこないのは文化的な
背景かもしれません。日本の風土に照らし合わせると、妖怪がそれに当たるのでしょ
うか?この辺りはよく分りません。
正直なところそうした所にあまり興味はありませんが、例えば、暗闇を怖いと感じ
る心理に関係があるのかもしれません。暗闇=分らないことには危険があるかもしれ
ないから、身体の安全を守るために、人間の脳には怖いことだと思うように設定され
ているのかもしれません。
ところで、霊魂を認識することについて私は否定的でしたが、神父様も同様でした。
もし、霊魂を認識することができるのであれば、テレビの番組で行っている行方不明
になっている(いわゆる神隠しにあったと報じられている、あるいは震災で未だ行方
不明のままの、誘拐や殺害などによって隠されている)方々の霊魂から居場所を聞き
出してあげれば、どれだけ家族の方の不安や苦しみが払拭されるかと思います。それ
が真にできるような人が存在しない現実をみると、霊魂を認識することはできないの
だろうと思います。
私は功利的な人間なので、信仰についても実生活や人生へのプラスの影響がなけれ
ば積極的に関わることができません。その点で、聖霊と愛については、深く話をお伺
いできませんでしたが、納得がいきました。「霊の結ぶ実は愛であり、喜び、平和、
寛容、親切、善意、誠実、柔和、節制です」という一節です。私は霊の何たるかはよ
く分っていません。しかし、目の前の神父様の存在は疑っていません。私が神父様か
ら感じているのは、まさに「喜び、平和、寛容、親切、善意、誠実、柔和、節制」の
実現した姿です。その人が「霊の結ぶ実は愛」だと言い、「聖霊をあなたの存在より
感じる」とおっしゃっています。私にとっては信じるに値する言葉です。
バルト神父様とお話をさせて頂く機会を得て、難しいことは抜きにして、「バルト
神父様のように喜び、平和、寛容、親切、善意、誠実、柔和、節制の実現した人にな
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りたい」と思うようになりました。神父様を見ていると幸せそうに見えます。私も神
父様のように幸せに生きたいと思います。目の前に憧れることのできる存在、目指す
べき存在がいるというのはとても希望になります。内容の波はありますが、何とか
15 分のお祈りが続いているのも希望を持つことができているからだと思います。
神父様がお話頂く内容については、100%納得している訳ではありません。天使や
悪魔の存在については、疑問を持っています。聖霊も無いかもしれないと思っていま
す。ただ、そこは突き詰めていなくても、現時点で取り組んでいる 15 分のお祈りを
起点とした信仰生活(あるいは瞑想生活)はそんなに変化はありません。もう少し神
父様の世界観についてお話をお伺いし続けてみたいと思います。
神父様、いつもありがとうございます。
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