ガンビエロール構造単純化類縁体の設計及び合成と生物活性評価

第 24 回仙台シンポジウム Poster 発表要旨
ガンビエロール構造単純化類縁体の設計及び合成と生物活性評価
Design, Synthesis, and Biological Evaluation of Structurally
Simplified Analogues of Gambierol
菅 悠人、廣田一晃、不破春彦、佐々木 誠(東北大院生命科学)
HO
Me
Me
H
H
ガンビエロール(1)は、シガテラ中毒の原因とな
O
O
H
O H
A
B
C
D
E
る有毒渦鞭毛藻 Gambierdiscus toxicus から単離・構 H O
H
F
H
O
O
O
O
H
H
H
H
H
G
1)
Me
造決定された海洋ポリ環状エーテル天然物である 。
H
Me O
1
H
OH
Me
マウスに対して顕著な致死毒性を示すほか、電位依
Me
H
H
存性カリウムイオンチャネル(VGPC)をサブタイ
O
O
H
O H
B
C
D
E
プ選択的かつ強力に阻害すること 2)や、マウス小脳
H
F
H
O
O
O
H
H
H
G
Me
顆粒細胞において細胞内カルシウム振動を引き起こ
H
Me O
H
2
OH
Me
すこと 3)が知られている。当研究室では 1 の最初の
全合成を達成したほか 4)、種々の人工類縁体の合成
H
O H
E
H
と、マウス致死毒性を指標とした分子骨格周辺の官
F
H
O
O
G
Me
5)
H
Me O
能基に関する系統的な構造活性相関研究を行った 。
H
OH
Me
すなわち、1 の強力な毒性発現には、分子右側の側
3
鎖や H 環内部の二重結合が必須であるのに対して、
O H
H
F
H
分子左側の 2 つのヒドロキシ基はその活性発現に重
O
G
H
O
M
e
要ではないことがわかった。しかし、1 の巨大なポ
H
OH
Me
リ環状エーテル骨格全体が活性発現に重要であるか
4
どうかは長らく不明のままであった。今回我々は、ポリ環状エーテル分子骨格の大きさと生物活性
との相関を解明するとともに、高活性人工類縁体を獲得することを目的として、1 の強力な活性発
現に必要な部位を保持し、分子左側の構造を単純化した 3 種の類縁体 2–4 を設計・合成した。
合成した 1 及び構造単純化類縁体 2–4 について、電気生理実験(ホールセル記録)により、Kv1.2
チャネルを過剰発現させたヒト胎児腎細胞における VGPC 阻害活性について評価した。その結果、
天然物である 1 に加え、2 種の単純化類縁体 2 及び 3 が、強い電位依存性カリウムイオン電流阻害
活性を示すことを明らかにした。すなわち、我々は天然物よりもはるかに容易に合成可能で、かつ
高活性な構造単純化類縁体の獲得に成功した。一方、単純化類縁体 4 は電位依存性カリウムイオン
電流阻害活性を示さなかった。以上の結果から、ガンビエロールの Kv1.2 阻害活性における最小活
性構造単位は、4 環性ポリ環状エーテル骨格を含む 3 であることが示唆された。
<参考文献>
1) M. Satake et al., J. Am. Chem. Soc., 115, 361 (1993).
2) a) V. Ghiaroni et al., Toxicol. Sci., 85, 657 (2005); b) E. Cuypers et al., Toxicon, 51, 974 (2008); c) I.
Kopljar et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 106, 9896 (2009).
3) E. Alonso et al., J. Cell. Biochem. 110, 7467 (2010).
4) H. Fuwa et al., J. Am. Chem. Soc., 124, 14983 (2002).
5) H. Fuwa et al., Chem. Eur. J., 10, 4894 (2004).
発表者紹介
氏名
菅
悠人(すが
所属
東北大学大学院
ゆうと)
生命科学研究科
分子生命科学専攻
学年
D3
研究室
生命構造化学分野
研究室紹介写真