1) 第一検索として、医学書院、標準小児外科学に記載されている 79

2009~2011 年に Publish された論文を、以下の条件で前回同様に検索した。
1) 第一検索として、医学書院、標準小児外科学に記載されている 79 疾患名
に関して、Scopus で文献検索を行う。
2) エビデンスレベル 1 以上の RCT 論文
3) Impact Factor が 1.0 以上の国際雑誌に掲載
4) 小児外科領域で興味深いもの
まず、
「Randomised controlled trial」
、
「pediatric surgery」、
「2009-2011」で 340 件ヒッ
トし、標準小児外科に記載されている疾患で検索すると 20 件にしぼられ、うち HP 掲載済
みが1件あり、最終的に 19 件がピックアップされた。
次に、
Subject area を Medicine とし、使用言語を English と絞ると 251 件ヒットし、
Impact
Factor>1.0 で 158 件、さらに、小児外科・小児科関連(麻酔科、整形、眼科、耳鼻科、脳
外科等除く)として 50 件が検索された。その中で、標準小児外科で検索した文献との重複
が 10 件を除くと、最終的に計 40 件がピックアップされた。
最後に、この 59 論文が、正しく上記条件を満たしていることを確認し、21 の RCT 論文
が選ばれた。さらに、この期間に国際医学雑誌に掲載された小児外科関係の論文の傾向な
どについて貴重な重要な情報を提供している 3 論文も加え、要約を行なった。
25.
Surgical research publication in a selection of research and surgical speciality
journals.
Donovan AJ, Tompkins RK.
Surgery 147: 5-12, 2010
【目的】1988年までの5大一般外科雑誌(Annals of Surgery, American Journal of Surgery,
Archives of Surgery, Journal of the American College of Surgeons [formerly SG&O],
and Surgery)において、外科的研究はあまり認められなかった。この研究は外科的研究の
多くが他の雑誌で発表されているのではないかという仮説に基づいて検討することが目的
である。
【対象と方法】1998 年と 2005 年で、15 研究系雑誌と 9 外科系スペシャリティ雑誌におい
て、基礎研究、基金臨床研究、RCT、薬剤治験に関して発表された論文の検討を行った。研
究基金と外科医の役割は明確に記載されていた。そして前の 5 大一般外科雑誌で発行され
た論文と比較した。
【結果】6016 論文のうち 19%は研究論文で、そのうち 76%は基礎研究であった。1101 研
究基金が 825(70%)研究に使用されていた。基金研究の 76%は基礎研究であった。政府資
金が 46%、私的資金が 41%、民間企業資金が 13%であった。外科医は単独または指導的著
者として 72%の研究に携わっていた。1172 の研究論文が 1998 年に研究または外科系スペ
シャリティ雑誌で発行されていた。それに比して、369 研究論文が 1998 年の一般外科雑誌
で発行されていた。また、2005 年には 306 論文が発行されていた。研究タイプで見ると、
1998 年には 896 の基礎論文が研究または外科系スペシャリティ雑誌で、一般外科雑誌では
1998 年には 200 論文が、2005 年には 164 論文が発表された。1998 年には 87 の RCT 論文が
研究または外科系スペシャリティ雑誌で発行され、一般外科雑誌では 1998 年には 46 論文
が、2005 年には 29 論文が発表された。
【結論】1998 年での比較では、外科系研究では 3 倍、基礎研究では 4 倍の論文が一般外科
系雑誌より研究または外科系スペシャリティ雑誌で多く発行されている。この差は 2005 年
ではさらに顕著となっている。検討すべき問題は一般外科系雑誌が外科系研究を過小評価
しすぎている事である。
26.
The current state of evidence-based pediatric surgery.
Ostlie DJ, St Peter SD.
J Pediatr Surg 45:1940-6, 2010
【目的】米国における医療ケアの効率性は、患者や家族、保護者、法律家、そして現在で
は大統領からの期待を伴って熱心に検討されるようになってきた。より効率的な医療ケア
をもたらす最も有効な手法は、いつでも可能な限り EBM に基づく事である。EBM は最上のエ
ビデンスに依存し、最上のエビデンスは前向き試験によって得られる。小児外科における
EBM に基づいた実践の状態を評価するため、過去 10 年間に行われた臨床研究の文献を総括
することが本研究の目的である。
【対象と方法】
1999 年 1 月から 2009 年 12 月までに行われた英文 RCT を PubMed で検索した。
移植や癌、他の非一般的サブスペシャリティの分野は省き、小児一般外科分野のみとした。
【結果】56 論文が抽出され、うち 51 論文が適正な振り分け基準を満たしていた。サンプル
サイズの算出を行っていた的確な論文は 19 論文(34%)のみであった。統計学的に有意な
差違がみられた論文は 56 論文中 29 論文(52%)であった。それらの論文は 26 種類の雑誌に
投稿され、Journal of Pediatric Surgery が最も多く(20)、次が Pediatric Surgery
International であった(7)。26 雑誌の 1999 年 1 月から 2009 年 12 月までの論文のうち、
これらの RCT は 0.04%に相当した。疾患別では虫垂炎が最も多く(10)、ついで肥厚性幽門
狭窄症であった(4)。施行した施設は 19 カ国で、米国(28%)、英国(14%)、トルコ(12%)
の順に多かった。1999 年から 2009 年にかけて発表される臨床研究の数は増加しているが、
前向き試験の割合は変化が無かった。
【結論】21 世紀の最初の 10 年間の小児外科分野における EBM の創出状況は 10 年前と不変
であった。全分野における小児外科分野の RCT は 0.05%であった。エビデンスに基づいた
小児外科治療を目指すには何らかのハードルがあるものと思われた。
27.
The effect of preoperative nutritional face-to-face counseling about child's fasting
on parental knowledge, preoperative need-for-information, and anxiety, in pediatric
ambulatory tonsillectomy.
Klemetti S, Kinnunen I, Suominen T, Antila H, Vahlberg T, Grenman R, Leino-Kilpi H.
Patient Educ Couns 80:64-70, 2010
【目的】本研究の目的は、小児の緊急扁桃腺摘出術において小児の術前絶食に関する栄養
の対面カウンセリングが、両親の認識度や術前情報必要度、心配にどう影響するかを明ら
かにすることである。
【対象と方法】前向き無作為振り分け試験に、緊急扁桃腺摘出術のために入院した 4-10
歳の患者の両親 62 名とコントロール 62 名が参加した。この研究のためにデザインされた
知識テストとアムステルダム術前心配・情報スケールに関してデータが集積された。手術
群は、書式・口頭対面カウンセリングを受けるため術前指導部屋に案内され、患児の術前
絶食に関して説明された。コントロール群は対面カウンセリングなしで文書で同じ情報を
得た。
【結果】術前対面カウンセリング群の両親は、子どもの絶食に関する認識度は有意に増加
し、情報必要度や心配は減少した。
【結論】書式情報提供だけでなく、術前対面カウンセリングは両親の子どもの術前絶食や
有効な栄養に関する知識が増加し、情報必要度や心配は軽減する。
28.
A single-blinded, randomized comparison of laparoscopic versus open hernia repair
in children.
Koivusalo AI, Korpela R, Wirtavuori K, Piiparinen S, Rintala RJ, Pakarinen MP.
Pediatrics 123:332-7, 2009
【目的】小児の鼡径ヘルニアにおける腹腔鏡手術の役割は不明である。本研究は日帰り腹
腔鏡ヘルニア修復術を定型手術と比較することが目的である。
【対象と方法】前向き単盲検無作為試験が 4 カ月から 16 歳の片側鼡径ヘルニア患児に対し
て施行された。プライマリーアウトカムは術後通常活動復帰時間である。セカンダリ―ア
ウトカムは術後痛、手術室滞在時間、外科的・美容的結果、そして合併症を含んだ。
【結果】89 患児(腹腔鏡症例 47、定型手術 42)が本研究に参加した。術後通常活動復帰時間
は、腹腔鏡群が 2.4 日、定型手術群では 2.5 日であった。腹腔鏡群の 37 例(79%)、定型手
術群の 20 例(42%)で術後の鎮痛処置が必要であった。合併症に差はなかった。術後 2 日目
の痛みスコアの中央値は腹腔鏡群で有意に高かった。手術室滞在時間の中央値は、腹腔鏡
群で 63 分、定型手術群で 38 分であった。外科的・美容的結果は術後2年のフォローアッ
プでは両者とも同等であった。
【結論】鼡径ヘルニアに対する腹腔鏡手術と定型手術において回復状況と結果は同等であ
った。腹腔鏡手術では手術室滞在時間を増加させ術後の痛みも定型手術に比して強かった。
29.
Bipolar scissors circumcision is a safe, fast, and bloodless procedure in
children.
Méndez-Gallart R, Estévez E, Bautista A, Rodríguez P, Taboada P, Armas AL, Pradillos
JM, Varela R.
J Pediatr Surg 44:2048-53, 2009
【目的】本研究の目的は、双極性透熱性手術用鋏使用による環状切除(A 群)を標準的メス
(B 群)による方法と比較することである。
【対象と方法】前向き無作為試験により両者を比較した。16 歳以下の 230 人の患児(それ
ぞれ 115 人)が参加された。手術時間、出血量、合併症、手術合併症が分析され両群間で
比較された。
【結果】出血量中央値は A 群で 0.2ml、B 群では 2.1ml で有意差を認めた。手術時間も A 群
では B 群に比して有意に短かった。術後早期・晩期合併症も A 群で有意に少なかった。
【結論】双極性透熱性手術用鋏を使用した環状切除は、標準的なメスを使用した手術に比
して有効で安全で目立った合併症も認めなかった。
30.
Classification and appraisal of the level of clinical evidence of publications from
the Canadian Association of Pediatric Surgeons for the past 10 years
Al-Harbi K, Farrokhyar F, Mulla S, Fitzgerald P.
J Pediatr Surg 44: 1013-7, 2009
【目的】エビデンス向上は公表論文のエビデンスの質に基づいたところが大きい。1998 年
から 2007 年の間に the Canadian Association of Pediatric Surgeons(CAPS)から出版され
た最も高い証拠レベルの公表論文の発表形式とその質を評価した。
【対象と方法】1998 年から 2007 年の the Journal of Pediatric Surgery の CAPS issues
からのすべての公表論文を研究形式と、エビデンスレベル(Oxford Center for
Evidence-based Medicine Levels of Evidence)で分類した。無作為化比較検査(RCTs)、
系統的レビュー、RCTsのメタ分析が level 1、コホート研究が level 2、症例対象分析が
level 3、症例シリーズが level 4、症例報告、論説、専門家の見解が level 5 とした。コ
ホート研究(level 2)は the Newcastle-Ottawa Quality Assessment Scale (NOQAS)を使用
して独立した 2 人の査定者によって評価され、信頼性解析とχ2 分析が行なわれた。
【結果】302 の出版物が次のようにエビデンスレベルによって分類された。level 2 が 46、
level 3 が 13、level 4 が 109、level 5 が 134 となった。46 件のレベル 2 コホート研究の
中央 NOQAS 得点は 8(範囲、5-9)で、評価者間の信頼性は 0.94(95%の信頼区間、0.89-0.96)
であった。レベル2の論文の数の有意な増加(P = .001)が研究期間中にあった。
【結論】レベル2のコホート研究は NOQAS によって高水準と評価され研究期間にその論文
数は有意に増えた。しかし、レベル 1 のエビデンス(無作為対照化試験)論文はなく、ほ
とんどは下部のエビデンスレベル 3 から 5 であった。
31.
Effects of fasting and preoperative feeding in children
Yurtcu M, Gunel E, Sahin TK, Sivrikaya A.
World J Gastroenterol 15: 4919-22, 2009
【目的】こどもたちに摂食後長時間の絶食期間なしで手術をするべきかどうかの研究。
【対象と方法】鼠径陰嚢疾患(鼠径ヘルニアと停留精巣)の 80 人の小児(1-10 歳)に前向き
研究を行った。80 人を 10 人ずつ以下の 8 群に分けた。摂取する食餌の種類で通常液体食群
(normal liquid food: NLF)と高カロリー食群(high-calorie diet: HCD)の 2 群に分けた。
それぞれの食事群を初回摂食から 6 時間後に 2 回目の摂食を行い採血、その後に 2、3、4
および 5 時間後に採血と手術を行なう 4 群に分けた(NLF2 から NLF5 群と HCD2 から HCD5 群
の計 8 群)
。すべての群で血中のグルコース、プレアルブミン、コルチゾール値を摂食直後
と術前の 2 回測定した。適切な麻酔ののち、胃内残留物量をシリンジで測定した。
【結果】
HCD-4 群を除き NFL と HCD 群ともに 2 回目の血糖値は 1 回目の採血(6 時間絶食後)
結果より高かった。すべての群で血中プレアルブミン値に有意差はなかった。NLF-2 群
(14.4 ± 5.7),HCD-2 群(13.2 ± 6.0), NLF-3 群 (10.9 ± 6.4)と HCD-5 群(6.8± 5.7)
で血中コルチゾール値の有意な増加を認めた(P < 0.05)。すべての患児で胃内遺残量は
1-2ml で問題なかった。
【結論】鼠径陰嚢疾患の待機手術では 2 時間以上の術前絶食は不要であった。待機手術の
小児では 2 時間前までの摂食は手術のストレスを軽減する可能性がある。
32.
Erythropoietin increases reticulocyte counts and maintains hematocrit in neonates
requiring surgery
Bierer R, Roohi M, Peceny C, Ohls RK.
J Pediat Surg 44: 1540-5, 2009
【目的】新生児においてエリスロポエチン(Epo)の産生がおさえられているため、瀉血して
も造血能力の増加は期待できない。手術を必要とする新生児では輸血の機会を増やす危険
がある。われわれは手術を必要とする新生児への組換え Epo の投与が赤血球生成を刺激す
るかを調べた。
【対象と方法】新生児は 14 日間 Epo (200 units kg−1d−1)を投与あるいはプラセボ投与かの
二重盲検法で無作為化された。全血球数、絶対的な網状赤血球数(ARC)、瀉血損失、および
輸血を研究期間中に測定した。幼児は厳密な輸血プロトコールを使用して輸血された。
【結果】Epo 投与グループ(N=10、2034±308g、8±2 日齢、平均±SEM)では ARC は大幅に増
加し、一方プラセボ群(N=10、2400±184g、7±2 日齢)の ARC は低いままであった。Epo 投
与グループのヘマトクリットは瀉血で 53±12mL/kg の損失にも関わらず、34.4±1.7%から
37.3±1.9%と(統計的に有為ではないが)増加傾向にあった。プラセボ群のヘマトクリット
は 27±5 mL/kg の瀉血で 1 日と 15 日にそれぞれ 35.9±1.8%と 33.2±1.6%であった。研究
終了時にグループ間に絶対好中球数や血小板数の違いはなかった。有害作用は認められな
かった。
【結論】新生児に対する Epo の無作為投与は有害作用なく網状赤血球数及びヘマトクリッ
ト値が増加した。エリスロポエチン投与は新生児手術での赤血球輸血を減らす手助けとな
る可能性がある。
33.
Need for thiamine in peripheral parenteral nutrition after abdominal surgery in
children
Masumoto K, Esumi G, Teshiba R, Nagata K, Nakatsuji T, Nishimoto Y, Ieiri S, Kinukawa
N, Taguchi T.
J Parenter Enter Nutr 33: 417-22, 2009
【目的】チアミンはヒトのエネルギー代謝に重要な必須水溶性ビタミンである。末梢静脈
栄養を受けている小児患者のチアミン血中濃度は術後変化するが、術後チアミンを投与す
る必要性については末梢静脈栄養を受けている小児例では完全にはわかっていない。この
前向き研究の目的は腹部手術後の末梢静脈栄養を受けている期間に小児患者はチアミンの
投与を必要とするかどうかを明らかにすることである。
【対象と方法】15 人の患者を 2 グループに分けた。1 グループは術後チアミンなしに末梢
静脈栄養を受け(n=7)、もう一方のグループは術後チアミン併用で末梢静脈栄養を受けた
(n=8)。両方のグループでチアミン血中濃度は術前に測定し、術後 1 日から 5 日目までの絶
食期間中に測定した経時的チアミン濃度の変化を調べた。
【結果】術前のチアミン血中濃度は両グループとも正常範囲内であった。チアミンの併用
で末梢静脈栄養を受けたグループのチアミン濃度は正常範囲内であったのに対し、チアミ
ンなしに末梢静脈栄養を受けたグループではチアミン濃度は徐々に術後時間経過とともに
減少した。チアミンなしで末梢静脈栄養を受けた 7 人の患者のうち、3 人の患者のチアミン
濃度は第 5 病日で正常範囲以下であった。
【結論】腹部術後の絶食期間中にチアミン血中濃度はチアミンなしに末梢静脈栄養を受け
ている小児患者で減少した。従って、小児患者を治療する臨床医は腹部術後の短い絶食期
間中でも末梢静脈栄養液にチアミンを追加すべきである。
34.
Three concentrations of levobupivacaine for ilioinguinal/iliohypogastric nerve block
in ambulatory pediatric surgery
Disma N, Tuo P, Pellegrino S, Astuto M.
J Clin Anesthe 21: 389-93, 2009
【目的】小児鼠径ヘルニア修復術で、3 つの異なる濃度のレボブピバカイン腸骨鼠径/腸骨
下腹(II/IH)神経ブロック術後鎮痛を無作為前向き二重盲検比較試験で行い比較する。
【対象と方法】73 名の ASA-PS(American Society of Anesthesiologists Performance
status)がⅠとⅡの 1 から 6 歳の小児で、鼠径ヘルニアの外来手術を予定した患者である。
患児は 3 つのレボブピバカイン濃度 0.125%(L0.125)、0.25%(L0.25)、0.375%(L0.375)のう
ちひとつを受けるように無作為化された。全ての患者はセボフルランを用いた標準麻酔と
II/IH 神経ブロックを受けた。そして、心拍数(HR)、非観血血圧(NIBP)、呼吸数、終末期呼
気炭酸ガス濃度(ETCO2)、血中酸素飽和度(SpO2)を術中監視した。CHEOPS(Children's
Hospital Eastern Ontario Pain Scale)を用いた術後疼痛スケールと術後鎮痛の必要性が
測定、記録された。
【結果】術後観察期間中 60 名の患者が参加した。鎮痛薬が投与された患者の数は 3 グルー
プで同等であった。
L0.125 のグループで他の 2 グループより CHEOPS の平均値は有意に高く、
最初に鎮痛薬を投与するまでの時間が他の2グループより短かった(P<0.05)。疼痛スコア
と最初に鎮痛薬投与までの時間は L0.25 と L0.375 グループで同等であった。
【結論】0.25%レボブピバカインを 0.4mL kg-1 を用いた II/IH 神経ブロックは鼠径ヘルニア
術後の十分な術後疼痛緩和を供した。
35.
Laparoscopic Nissen fundoplication versus Thal fundoplication in children:
Comparison of short-term outcomes
Kubiak R, Andrews J, Grant HW.
J Lapa Adv Surg Tecn 20: 665-70, 2010
【目的】腹腔鏡下噴門形成術は開腹術式と比較した場合その優位性は周知の事実である。
しかし、いかなる術式(wrapping 法)が最も有効であるかについての結論は得られていな
い。腹腔鏡下 Nissen 噴門形成術は最も多く行われている術式であるが、術後嚥下障害や障
害児での再発例などの問題点が指摘されている。今回、腹腔鏡下 Nissen 法と腹腔鏡下 Thal
法の両者間で RCT を行い、術中・術後合併症などの短期成績を比較検討した。
【対象と方法】対象は John Radcliffe Hospital Oxford 小児外科における 1998 年 6 月か
ら 2007 年の 4 月までの 175 症例である。これを randomized に Nissen 法と Thal 法とに振
り分け術後6週間まで観察した。開腹移行の有無や術中合併症、手術時間などを比較検討
した。術後は HCU/PICU での管理時間、麻薬使用、full feeding までの時間、在院日数、嚥
下障害や早期死亡の有無などについて比較検討した。
【結果】Nissen 法は 89 例、Thal 法は 86 例に施行された。手術時の平均年齢は 5.2 歳であ
った。両群の患者背景に大きな違いはなかったが、手術時体重は Nissen 法で少なかった(P
=0.036)
。Nissen 法での術中合併症は肝臓裂傷による出血が2例(1例は開腹移行)
、ポー
ト挿入時の小腸穿孔が1例であった。Thal 法での開腹移行は2例であり、その理由は腸間
膜出血、機材トラブルによるものであった。他の1例で PEG 挿入中に大腸穿孔をきたし腹
腔鏡下の整復を要した。術後嚥下障害の発生数は同様(Nissen 法 12 例:Thal 法 10 例)で
あったが、内視鏡処置を必要とする高度嚥下障害は Nissen 術後のほうが多かった(Nissen9
例:Tha1 例
P=0.018)
。また、175 例中 2 例(Nissen 法 1 例:Thal 法 1 例)に早期死亡
が認められた。Nissen 法の1例では胃瘻チューブ脱落による腹膜炎が死亡原因であり、Thal
法の1例では呼吸不全が死亡原因であった。
【結論】腹腔鏡下 Nissen 噴門形成術と腹腔鏡下 Thal 噴門形成術における短期成績を比較
し Nissen 法で術後嚥下障害が高率に認められた。それ以外の検討項目では両者間で統計学
的な有意差は認められなかった。また、Nissen 法での術後合併症は胃瘻に関連するものが
多かった。
36.
Red blood cell transfusion threshold in postsurgical pediatric intensive care
patients. A randomized clinical trial
Rouette J, Trottier H, Ducruet T, Beaunoyer M, Lacroix J, Tucci M; Canadian
Critical Care Trials Group; PALISI Network.
Ann Surg 251: 421-7, 2010
【目的】小児における術後の至適輸血量についてはいまだ未知のことが多い。我々は PICU
で加療を行った外科症例を RCT で輸血制限群と輸血非制限群にわけ、
多臓器機能障害(MODS)
の発症状況や増悪の度合いを比較検討した。
【対象と方法】17 施設が参加した RCT を行った。PICU 入室後7日以内の Hb 値が 9.5g/dl
以下の症例は 648 例であった。この中の外科術後症例 124 例を輸血制限群(PICU 入室後 Hb
値が 7.0g/dl 以下となった時点で Hb 値が 8.5-9.5g/dl になるまで輸血を行った群)60 例
と、輸血非制限群(Hb 値が 9.5g/dl 以下に低下した時点で Hb 値が 11-12g/dl になるまで
輸血を行った群)64 例に分けた。この研究は http://www.controlled-trials.com,
ID:ISRCTN37246456 に登録されている。
【結果】両群間で年齢(輸血制限群 vs 輸血非制限群:53.5±51.8 ヶ月 vs 73.7±61.8 ヶ月、
以下同様)
、Pediatric risk of mortality score(3.5±4.0 vs 4.4±4.0)
、MODS(35% vs
29%)
、人工呼吸器管理を要した率(77% vs 74%)
、Hb 値(7.7±1.1 vs 7.9±1.0 g/dL)に
おいて有意差は認められなかった。輸血後の Hb 値は輸血制限群では輸血非制限群に比し平
均 2.3g/dl 少なかった。MODS の発生や増悪率は同様に 8% vs 9% (P=0.83)で術後 28 日の時
点での死亡率はそれぞれ 2%と 2%(P=0.96)で両群間に有意差を認めなかった。しかし、PICU
入院期間は輸血制限群で 7.7±6.6 日、輸血非制限群で 11.6±10.2 日と輸血制限群で有意
に短かった(P=0.03)。
【結論】外科症例で MODS の発生率や増悪率を比較した場合、輸血制限群と輸血非制限群の
両者間に有意差は認められなかった。
37.
Laparoscopic hernia repair in infancy and childhood: evaluation of 2 different
techniques.
Shalaby R, Ismail M, Dorgham A, Hefny K, Alsaied G, Gabr K, Abdelaziz M.
J Pediatr Surg 45: 2210-6, 2010
【目的】小児腹腔鏡下鼠径ヘルニア根治術は未だ議論の余地がある術式であり、その術式
も様々である。本研究の目的は、小児鼠径ヘルニア手術において体内結紮法と体外結紮法
で、手術時間、再発率、水腫形成や術後の整容性について比較することである。Al-Azhar
University Hospital(Cairo, Egypt)小児外科において3年以上にわたり RCT を行った。
【対象と方法】小児外鼠径ヘルニア 150 例を同数の 2 つのグループに無作為に振り分けた
(N=75)
。グループ A では 2 本の持針器を用いて内鼠径輪の高さで巾着縫合し体内結紮を行
った。グループ B では Reverdin needle(RN, Martin Medizin-Technik,D-78501 Tuttlingen,
Germany )を用いて内鼠径輪の高さで巾着縫合し体外結紮を行った。両側発症例、再発例、
肥満症例、嵌頓例、対側ヘルニア疑診例を対象とし、片側症例や停留精巣合併症例は除外
した。両群間で手術時間、術後在院時間、術後の水腫形成の有無、再発率、整容性の点に
ついて比較検討した。
【結果】A,B 両群間で性別・年齢・発症時期に有意差はなかった。全例で開腹移行なく腹腔
鏡手術が完遂された。手術時間は片側再発症例、肥満症例、嵌頓症例、両側発症例におい
て A 群と比し B 群で有意に短かった。また、術後在院時間、術後再発率、術後の水腫形成
について両群間に有意差は認められなかった。
【結論】RN を用いた腹腔鏡下鼠径ヘルニア根治術は小児鼠径ヘルニア修復術として有用な
術式である。再発率が低い上に RN は手術時間を短縮させ、整容性において優れた術式であ
ると結論づけられた。
38.
Laparoscopic versus open pyeloplasty in children: Preliminary report of a prospective
randomized trial
Penn HA, Gatti JM, Hoestje SM, DeMarco RT, Snyder CL, Murphy JP.
J Urol 184: 690-5, 2010
【目的】小児の腎盂尿管移行部狭窄症に対する腎盂形成術は伝統的にオープン(後腹膜ア
プローチ)術式で施行されてきた。成人領域では腹腔鏡下腎盂形成術がオープン術式と同
等もしくはそれ以上の成績をあげているが、小児領域では十分な研究はなされていない。
そこでわれわれは小児症例における腹腔鏡下腎盂形成術とオープン術式の比較を行った。
【対象と方法】2005-2008 年に手術を施行した 1-18 歳の腎盂尿管移行部狭窄症の全患児を
対象とした。RCT により、腹腔鏡下腎盂形成術もしくは側腹部切開によるオープン腎盂形成
術のいずれかに振り分けられた。
【結果】
腹腔鏡手術
オープン手術
患者数
20
19
平均年齢(歳)
7.8(1-15)
7.2(1-17)
0.48
8.1(1-18)
11.1(4.4-32)
0.38
手術時間(分)
151(94-213)
130(83-225)
0.09
入院期間(時間)
29.3(20.5-49)
36.2(24-73)
0.06
鎮痛薬使用(回)
4.45(1-14)
4.9(0-9)
0.59
合併症
0
0※
フォロー終了までの期
間(月)
P値
※ステント抜去後の再手術 1 例
手術、入院、麻酔のそれぞれの費用及び全費用で有意差なし
【結論】腹腔鏡下腎盂形成術はオープンに代わる安全かつ効果的な術式である。費用面で
も同等であるが、手術時間は長いが入院期間は短い傾向があった。今後、大規模研究が施
行されればこれらの傾向は有意なものになるかもしれない。
39.
Intralesional steroid injection after endoscopic balloon dilation in pediatric Crohn’
s disease with stricture: a prospective, randomized, double-blind, control trial
Di Nardo G, Oliva S, Passariello M, Pallotta N, Civitelli F, Frediani S, Gualdi G,
Gandullia P, Mallardo S, Cucchiara S.
Gastrointest Endosc 72: 1201-8, 2010
【目的】内視鏡的バルーン拡張術(EBD)は、狭窄病変を伴ったクローン病(CD)に対する保存
的療法として効果的な治療法である。しかし多くの症例で再拡張を要し、後日に外科手術
が必要となることからその長期成績は疑問の余地が残される。これまでの研究の多くは後
向き研究であり、また小児例での研究はなされていない。小児 CD 症例において、再狭窄予
防の目的から EBD 後にステロイド局所注入療法を行いその有効性を評価する。
【対象と方法】狭窄病変を合併した CD 小児患者 29 名(男女比 16:13、中央値 14.5 歳(9-17.5
歳))を対象として RCT(二重盲検試験)を行った。消化管通過障害を示す患者では小腸造
影超音波検査(SICUS)や MRI で狭窄部位を診断した。また、消化管通過障害の症状を呈し
ないが SICUS や MRI で狭窄部位の口側の拡張像を指摘された患者では大腸内視鏡検査やバ
ルーン内視鏡で狭窄部位を確認した。5cm 以上にわたる狭窄を呈した症例や内瘻形成症例は
検討から除外した。29 名の患者のうち 15 名は EBD 後にコルチコステロイド(Triamcinolone
40mg/5mL)
、残り 14 名は EBD 後にプラセボ(生食のみ 5mL)を局所注入した。注入後それぞれ
1,3,6,12 ヵ月後に SICUS と MRI、さらに 12 ヶ月後には大腸内視鏡検査を行いフォローアッ
プとした。両群間で再拡張術を要するまでの期間、ならびに手術を要するまでの期間を比
較検討した。
【結果】ステロイド注入を受けた 15 名中 1 名、プラセボ注入を受けた 14 名中 5 名が再拡
張術を必要とした。手術を必要とした患者は、ステロイド注入群で 0 名、プラセボ注入群
で 4 名であった。カプランマイヤー法による Log rank test で有意差検定したところ、EBD
後に再拡張術を必要とするまでの期間は、ステロイド群で平均 11.7 ヶ月 、プラセボ群で 平
均 9.4 ヵ月(p=0.04)であり、手術を必要とするまでの期間はステロイド群で平均 12 ヵ
月、プラセボ群で平均 10.1 ヵ月(p=0.02)と、両者とも統計学的有意差を認め、ステロイ
ド注入群で良好な成績であった。なお、両群間で介入前の人口統計学的特性に有意差はな
かった。
【結論】母集団の大きさ、参加バイアス、短期間のフォローアップにとどまるなどの制限
はあるものの、狭窄を伴う小児 CD 患者への EBD 後の病変部ステロイド注入療法は再拡張や
手術の必要性を減らすことのできる有効な治療戦略である。
40.
Preventive antireflux surgery in neonates with congenital diaphragmatic hernia: A
single-blinded prospective study
Maier S, Zahn K, Wessel LM, Schaible T, Brade J, Reinshagen K.
J Pediatr Surg 46: 1510-5, 2011
【目的】先天性横隔膜ヘルニア(以下, CDH)は、呼吸器障害や栄養障害を来す胃食道逆流の
原因疾患の一つであるといわれている。CDH に伴う胃食道逆流(以下、GER)の合併率は 28~
69%で、全 CDH 患者の 8%〜21%に逆流防止手術が行われている。GER の合併が児の成長を妨
げる増悪因子になっている可能性があり、CDH の手術の際に同時に噴門形成術を追加するこ
との有用性が複数の group から推奨されてきた。しかし、これらは retrospective な検討
であり今まで prospective に検討されたものはない。また、これらの検討では噴門形成術
の術式や適応は標準化されておらず術者の判断であった。CDH の手術の際、同時に GER の手
術を予防的に施行し、その有用性を prospective に検討することを目的とした。
【対象と方法】2003 年~2009 年までに 79 人の左側 CDH 患者に対して、43 人をヘルニア修
復のみ(Group N)群に、36 人をヘルニア修復と噴門形成(Group wARS)群に無作為に割り付け
た。保護者には術後 2 年してからどちらの group であったかを告知した。除外症例は、右
側 CDH、胸腔鏡下閉鎖、両側 CDH、両親の同意が得られなかった症例であった。生後 6 ヵ月、
12 ヵ月、24 か月に、標準的な問診と 24 時間 pH モニタリングで追跡評価を行った。GER の
術式は全例で腹部食道前壁に 180°巻く Thal 法を施行した。
【結果】263 人中 79 人が参加した。全体の生存率は 88.61%。28 人に ECMO が施行されてお
り、9 人死亡 (ECMO 使用するも、心肺不全 4 人 乳び胸 1 人 SIDS 1 人 多臓器不全 2 人)。
入院期間や合併症・生存率はグループ間で統計学的な有意差なし。6 ヵ月時の GER 症状は
Group wARS が 35.71%、 Group N が 60.00%(p=0.055)と、ヘルニア修復のみ群で GER の発生
頻度が高い傾向がみられたが、24 ヵ月時は Group wARS が 20.83%、
Group N が 20.69%(p=0.99)
と有意差はなかった。24 ヵ月時の体重は Group wARS が 10.33kg 、Group N が 10.509kg と
有意差はなかった。逆流防止手術後に嚥下困難やダンピングなどの合併症はみられなかっ
た。79 人中 8 人で再発しそのうち 2 人は 2 回再発した。
【結論】CDH 修復時に噴門形成術を行う事により患児が得る利益はわずか 1 年足らずであっ
た。今回の研究で、CDH 修復術と同時に噴門形成術を行う事は左側 CDH の患者に対する標準
術式として必ずしも推奨されるものではない。
41.
Quality of life assessment between laparoscopic appendectomy at presentation and
interval appendectomy for perforated appendicitis with abscess:analysis of a
prospective randomized trial
Schurman JV, Cushing CC, Garey CL, Laituri CA, St Peter SD.
J Pediatr Surg 46: 1121-5, 2011
【目的】膿瘍形成穿孔性虫垂炎に対して、腹腔鏡下虫垂切除術を緊急で行う場合と待機的
の場合で、在院日数、膿瘍再発率、医療費に差がないという報告があるが、待機的虫垂切
除術は治療期間が長く、患児と家族に心理・社会的な負担をより与えている可能性がある。
緊急手術群と待機的手術群の、患者と家族に与える心理・社会的な充足度を比較検討する。
【対象と方法】本研究は院内倫理審査委員会の承認を得て行われた。膿瘍形成のある穿孔
性虫垂炎を発症した7歳〜18歳の40人を対象。親の承諾を得て、それぞれの術式へ、無作為
に割り付けた。待機的手術群の症例では、経皮的ドレナージを行い、その後2週間抗生物質
を静注し、約10週間後に虫垂切除術を施行した。親に対し「子どものQOL」と「親のストレ
ス」を、来院時、2週間後、約12週後に記載してもらった。
・「子どものQOL」:The Pediatric Quality of Life Scale-Version 4.0(PedsQL)
QOLを4つのカテゴリー、23項目の質問から評価する。0-4のスコアを、0-100の項目得点に
返還し、平均を出す。肉体面(重いものが持てない等)、精神面(恐怖、怒り等)、社会面(か
らかわれる、仲間外れにされる等)、学校の問題(授業に集中できない、欠席する等)を評価
する項目からなる。高いスコアほど良好なQOLを表す。
・「親のストレス」:The Pediatric Illness Inventory(PIP)
看病に関するストレスをⅠ〜Ⅳのカテゴリー、42項目で評価する。frequencyのスコアと
difficultyのスコアが算出される。コミュニケーションの問題(家族と口論する、医師と話
す等)、感情の問題(無感情になる、心配な情報を学ぶ等)、治療に関する問題(治療を手伝
う等)、役割を演じるうえでの問題(仕事に行けなくなる、子どもの教育に不安を感じる等)
を評価する項目からなる。高いスコアほどストレスが強いことを表す。
【結果】QOLに関しては、待機的手術群で、2週間後および12週間後において低い傾向にな
った(有意差はなし)。親のストレスに関しては、2週間後に両群間で差は認めなかったが、
12週間後に待機的手術群でfrequencyとdifficultyの両方で有意にストレスが高い結果と
なった。
【結論】待機的手術群の2週間後のQOLは慢性疾患におけるカットオフ値を下回っている。
ストレスの原因としては、外来受診や看病に時間が取られる事、治療期間中心配が継続す
る事が考えられる。小児外科領域では心理・社会的な要素も治療効果を考える上で重要で
ある。事前に適切なカウンセリングを行えば、問題に上手に対処出来る可能性がある。家
族は病悩期間が延びることで患児の発育やQOLの損失に関連した大きな悩みを経験する。加
えて親自身も患児の虫垂切除術が終わるまでストレスに悩まされる。
42.
A randomized double-blind, placebo controlled trial of steroid withdrawal after
pediatric renal transplantation
Benfield MR, Bartosh S, Ikle D, Warshaw B, Bridges N, Morrison Y, Harmon W.
Am J Transplant 10: 81-8, 2010
【目的】腎移植後の拒絶反応を減らし同種移植から長期生着を得て、かつ合併症を最小限
にするという目的で、我々は移植後半年間の強力な免疫抑制が以降の安全なステロイド漸
減を可能とする仮説を立てた。
【対象と方法】合計 274 例の小児症例が登録され、抗 CD25 抗体、シロリムス、カルシニュ
ーリン抑制剤、ステロイドが投薬された。移植6ヶ月後の症例のうち、73 例がステロイド
漸減群、59 例がステロイド少量維持投与群にランダム化された。本研究は 10 症例の移植後
リンパ増殖性疾患(PTLD)の発生により、トライアルの途中で中止された。それまでにプ
ロトコールを完遂し得た 132 症例について調査分析した。
【結果】移植 18 ヶ月後における身長の標準偏差、Z 値(標準化係数)の評価では有意差がな
かったものの、成長速度の評価ついては漸減群がコントロール(少量維持投与)群と比べ
て良好な結果が得られた(p=0.033)。急性拒絶反応に関しては有意差が得られなかった。移
植後 3 年における同種移植片生着率は、少量維持群(84.5%)より漸減群(98.6%)で有意差を
持って良好なデータが得られた(p=0.002)。
【結論】本研究における免疫抑制プロトコールは、拒絶反応や同種移植片喪失のリスクを
増加させることなくステロイドの漸減を可能とした。しかし合併症のリスクが高いため小
児移植症例において標準治療にはならない。
43.
Comparison of the effect of LMA and ETT on ventilation and intragastric pressure in
pediatric laparoscopic procedure
Ozdamar D, Güvenç BH, Toker K, Solak M, Ekingen G.
Minerva Anestesiologica 76: 592-9, 2010
【目的】本研究の目的は、小児腹腔鏡手術における胃内圧動態について、ラリンゲルマス
ク群と気管内挿管群とで比較検討を行うことであった。また、同時にいくつかの換気パラ
メーターについても調査を試みた。
【対象と方法】本研究は健康倫理委員会にて承認を得て行われた。症例は 40 例で、ASA-PS
(American Society of Anesthesiologists Performance status)ⅠおよびⅡにあたり、かつ 3
歳半から 12 歳までの症例でランダム化試験を行った。ラリンゲルマスク群と気管内挿管群
の 2 群間で、経鼻胃管を圧トランスデューサーに接続して胃内圧動態を測定した。胃内圧
動態に加え、最大気道内圧、経皮的動脈血酸素飽和度、終末期呼気炭酸ガス濃度を記録し、
反復測定分散分析にて評価を行った。
【結果】胃内圧動態は、15 分値と 30 分値との比較以外では有意差が得られなかった。また
最大気道内圧、経皮的動脈血酸素飽和度、終末期呼気炭酸ガス濃度の評価項目に関しても
有意差は得られなかった。
【結論】術中の胃内分圧評価は、胃内圧動態および換気パラメーターにおいてラリンゲル
マスク群と気管内挿管群とで有意差を示すことはなかった。我々は小児における腹腔鏡手
術の際にラリンゲルマスクを簡便な麻酔デバイスとして推奨する。
44.
Hypotonic versus isotonic maintenance fluids after surgery for children: a randomized
controlled trial.
Choong K, Arora S, Cheng J, Farrokhyar F, Reddy D, Thabane L, Walton JM.
Pediatrics 128:857-66, 2011
【目的】術後 48 時間以内において、等張性(0.9%saline)と低張性(0.45%saline)経静
脈維持輸液の投与による低ナトリウム血症の発症リスクを比較する。
【対象と方法】術後在院が 24 時間を超える予定の 6 か月から 16 歳の外科患者を対象とし
た。術前に補正されていない血漿ナトリウム値異常値、血行動態不安定、慢性利尿剤使用、
既登録患者、等張・低張経静脈維持輸液が禁忌または必要な状態を除外条件とした。この
研究は完全盲検無作為試験で施行された。第一次評価結果は急性低ナトリウム血症発症の
有無とした。第二次評価結果は重症低ナトリウム血症、高ナトリウム血症、急激な血漿ナ
トリウム値の変化による副作用の有無、および抗利尿ホルモンレベルとした。
【結果】258 人の患者が登録され低張群 130 例、等張群 128 例に振り分けられた。基本患者
背景は 2 群で同等であった。低張群では等張群に比して低ナトリウム血症の発症リスクが
有意に高かった(40.8% vs 22.7%、相対的危険度 1.82)。小児集中治療室への入院は低ナ
トリウム血症発症リスクの独立因子ではなかった。等張性静脈輸液は高ナトリウム血症の
リスクを増加させなかった。
抗利尿ホルモンレベルや副作用発生は 2 群間で差はなかった。
【結論】等張性静脈維持輸液は小児の術後急性低ナトリウム血症を防止する点において低
張輸液より有意に安全である。
45.
Effect of oral hygiene with 0.12% chlorhexidine gluconate on the incidence of
nosocomial pneumonia in children undergoing cardiac surgery.
Jácomo AD, Carmona F, Matsuno AK, Manso PH, Carlotti AP.
Infect Control Hosp Epidemiol 32:591-6, 2011
【目的】心臓手術を受ける小児において、院内肺炎と人工呼吸器関連肺炎の発症に対する
0.12%クロールヘキシジン・グルコネイトの口腔清潔の効果を評価する。
【対象と方法】この研究は前方視的無作為二重盲検プラシボコントロール試験である。三
次医療圏病院の PICU に入院した先天性心疾患で手術を受けた 160 人の小児患者が対象で、
無作為にクロールヘキシジン群(ク群)とコントロール群(コ群)に分けられた。方法は
口腔清潔基本液に 0.12%クロールヘキシジン・グルコネイトを加えたものまたは加えないも
のを、術前、そして術後は一日 2 回、PICU 退院または死亡時まで施行した。
【結果】両群の患者において背景に差はなく、先天性心疾患手術に対するリスク評価であ
る RACHS-1 スコアの分布にも差はなかった。ク群とコ群において院内肺炎発症は 29.8%と
24.6%、人工呼吸器関連肺炎発症は 18.3%と 15%と両群に差はなかった。また挿管管理時間、
再挿管必要度、入院時から院内肺炎発症までの時間、手術から院内肺炎発症までの時間、
抗生物質や血管作動薬使用回数において両群間に差はなかった。PICU 滞在中央値や、在院
日数、術後 28 日目での死亡率にも差はなかった。
【結論】0.12%クロールヘキシジン・グルコネイトの口腔清潔は、心臓手術を受ける小児に
おいて院内肺炎及び人工呼吸器関連肺炎の発症率を減少させない。
46.
Early vs interval appendectomy for children with perforated appendicitis.
Blakely ML, Williams R, Dassinger MS, Eubanks JW 3rd, Fischer P, Huang EY, Paton E,
Culbreath B, Hester A, Streck C, Hixson SD, Langham MR Jr.
Arch Surg 146:660-5, 2011
【目的】穿孔性虫垂炎小児例における早期虫垂切除と待機虫垂切除の有効性と合併症発生
率を比較する。
【対象と方法】この研究は三次医療圏関連小児病院において行われた非盲検無作為試験で
ある。術前に穿孔性虫垂炎と診断された 18 歳未満の 131 例を対象とした。入院後 24 時間
以内に手術を施行した早期手術群と、診断後 6-8 週で手術を施行した待機虫垂切除群にわ
け、第一次評価結果は正常活動復帰必要日数とした。第二次評価結果は全合併症発生率と、
腹腔内膿瘍や手術部位感染、予定外再入院などである。
【結果】待機虫垂切除に比して早期虫垂切除では正常活動復帰必要日数が有意に短かった。
全合併症発生率は早期虫垂切除群で 30%、待機虫垂切除群 55%に比して有意に少なかった。
待機虫垂切除群の患者のうち 23 人(34%)は、17 例が内科的治療未完遂のため、5 例が待
機中に虫垂炎再燃のため、1 例が他の理由で予定より早く虫垂切除を受けた。
【結論】早期虫垂切除は正常活動復帰必要日数を有意に短くしていた。早期虫垂切除後の
全合併症は待機虫垂切除群に比して有意に少なかった。
47.
Long-term outcome of laparoscopic nissen fundoplication compared with laparoscopic
thal fundoplication in children: a prospective, randomized study.
Kubiak R, Andrews J, Grant HW.
Ann Surg 253:44-9, 2011
【目的】腹腔鏡下噴門形成術は小児症例においても症例数が増加している。多くの手術手
技があり、それぞれ利点欠点が認められる。現在、小児症例での至適腹腔鏡下手技を決め
るための前方視的無作為試験は認められない。本研究の目的は、小児における腹腔鏡下
Nissen 噴門形成術または腹腔鏡下 Thal 噴門形成術後の長期経過と症状のコントロールの程
度を比較することである。
【対象と方法】1998 年 7 月から 2007 年 4 月までの 175 患児がこの研究に登録した。患者は
術前と術後 3 カ月から定期間隔で評価された。噴門形成不成功の絶対的な指標は、再噴門
形成性術または経胃空腸瘻挿入に値する症状の再燃とした。相対的な指標としては、抗逆
流薬再投与を必要とする症状の再燃と術後嚥下困難などの術後合併症とした。フォロー中
央値は 30 カ月であった。
【結果】Nissen 群 85 例、Thal 群 82 例の 167 患児のデータが有効であった。Nissen 群の 4
例(4.7%)、Thal 群の 12 例(14.6%)で再噴門形成術が必要であった。それぞれの群の 1
患児は症状再燃のために経胃空腸瘻が必要であった。絶対的不成功率は Nissen 群 5 例
(5.9%)
は Thal 群 13 例(15.9%)に比して有意に低かった。これらの患者の大多数(17/18)は脳
神経疾患を基礎疾患としていた。相対的不成功率は両群で同等であった。また両群におい
てほぼ 1/4 の患児に術後嚥下困難がみられた。しかし内視鏡検査(拡張±)を必要とする
重度嚥下困難は Thal 群(2.4%)に比して Nissen 群(11.8%)で有意に多かった。31 例の死
亡のうち 1 例は術後に死亡したが噴門形成術手技に直接関連したものではなかった。
【結論】長期経過では腹腔鏡下 Nissen 噴門形成術が Thal 噴門形成術より、とくに脳神経
疾患患児において有意に胃食道逆流の再燃が少なかった。非脳神経疾患患児において、両
手術間において差はなかった。再燃の症状が軽度であったため抗逆流薬再投与の必要性に
両群間で差は認めなかった。術後嚥下困難の発生は両群間で同程度であったが、重症嚥下
困難に対する内視鏡的処置の必要度は Nissen 群で有意に多かった。全周術期死亡率は高リ
スク患者においても低かった。
48.
Meatotomy using local anesthesia and sedation or general anesthesia with or without
penile block in children: a prospective randomized study.
Ben-Meir D, Livne PM, Feigin E, Djerassi R, Efrat R.
J Urol 185:654-7, 2011
【目的】外尿道口切開術は外尿道口狭窄に対して単純で頻用される治療手技である。我々
は、鎮静併用局所麻酔下または全身麻酔及び陰茎ブロック併用の有無下での外尿道口切開
術の結果を比較した。
【対象と方法】前方視的比較試験が計画された。参加患者は 2008 年に地域病院、大学関連
病院、小児医療センターで外尿道口狭窄症で治療を受けた、1 歳半から 10 歳の 76 人の男児
である。患児は無作為に鎮静併用局所麻酔群、陰茎ブロック併用全身麻酔群、全身麻酔群
に振り分けられた。すべての手術手技は同一外科医により同じ方法でなされた。局所麻酔
では術前 1 時間前から EMLA5%クリーム(2.5%lidocaine + 2.5%prilocaine)を塗布し閉鎖
ドレッシングした。そして 5 歳未満の患児にはミダゾラムを 5 歳以上の患児には一酸化窒
素を併用した。全身麻酔ではセボフルレンで行い背側陰茎神経ブロックは ropivacaine が
使用された。
【結果】術中、術後 24 時間時、術後 1 ヶ月後の痛みのレベル、そして合併症発生率(出血
3 例、喉頭痙攣 2 例)において、群間で差はなかった。陰茎ブロックを行った全身麻酔群で
は排尿障害が少ない傾向にあった。排尿状態は 24 時間の時点で 87%、術後 1 ヶ月の時点で
70%の患者で優れており 88-92%の親が満足されていた。
【結論】鎮静併用局所麻酔下の外尿道切開術は全身麻酔下で施行された場合と同等の手術
成績であった。