3.3 空中移動G このグループでは,地上の移動では到達が必ずしも容易ではない災害地に空中から接近して, 被災の状況を迅速に,かつできるだけ詳細に把握し,それらの情報を救助者やレスキューロボッ トに提供して救助活動を支援することを目的としている.また,情報収集のみならず,必要な物 資の輸送や情報を伝達する中継点としての機能も果たす可能性を有している. グループは京都大学・ヤマハ発動機(株),千葉大学,産業技術研究所の3チームから構成され ている.いずれも,小型ヘリコプターの自律飛行制御技術,視覚センサなどの情報を利用した被 災地の情報採取技術などを大きな研究内容としている.このようにミッション自体や研究の内容 の概略は各チームに共通であるが,これまでの研究分野,先行研究の有無,およびその進捗状況 によって研究内容には相違がある. 3チーム間での違いは対象とするヘリコプター機体の大きさにある.京都大学・ヤマハ発動機 (株)チームがもっとも大きな機体で,ローター径約3m,自重58kg,ペイロード30kg の機体を対象としている.千葉大学チームが中型の機体で,ローター径約 1.8m,自重9kg, ペイロード 8.5kgの機体を使用している.産業技術研究所チームがもっとも小さな機体の利用 を狙い,ローター径約 1.5m,自重5kg,ペイロード3kgである. 京都大学・ヤマハ発動機(株)チームは機体が大きなため,積載重量にも余裕があり,各種の センサを搭載し,また,物資等の輸送の可能性も持っている.飛行制御自体はもっとも先行して おり,ホバリングや経路制御をすでに実現し,本プロジェクトでは,センサフュージョンよる複 合航法システムの開発,高度な自律飛行制御系の開発を目指している.千葉大学チームは中型の 機体を用い,地雷探知ヘリコプターを実現すべく,これまで地上に設置した計算機による遠隔飛 行制御で姿勢制御や安定したホバリングなどの基本的な飛行制御を実現している.このプロジェ クトでは,自動離着陸を含む自律飛行制御の実現,視覚情報による障害物回避飛行などの実現を 目指している.産業技術研究所チームは移動体の自律制御の経験を有するが,飛行に関しては先 行研究を持たず,もっとも小型の飛行体を選択することによって環境条件の厳しい,また,迅速 な対応を要求される被災地でひとりの人間で運べ,容易に運用できるシステムの実現を目指して いる.小型にすることによって積載重量の制約は非常に大きく,ミッションを視覚情報の採取に 限定する計画である. 各チームの研究テーマを以下に示す. (a)防災用インテリジェントエアロロボットの開発(京都大学・ヤマハ発動機(株)) (b)自律型無人ヘリコプターの研究開発(産業技術研究所) (c)自律型クローラ・レグロボットと自律型ラジコンヘリコプタによる被災地支援システムの開発 (千葉大学) 本年度の研究成果の概略を簡単に述べる.京都大学・ヤマハ発動機(株)チームは高精度の飛 行を実現すべく,突風などの外乱に強い制御手法の高度化を図るとともに,視覚センサによる地 表面の3次元形状計測を実現した.千葉大学チームは地上に設置した制御計算機による遠隔制御 から搭載計算機による自律飛行制御に拡張を図り,安定したホバリング,および基礎的な経路制 御を実現した.また,飛行制御に係わる各種の制御手法の検討に利用可能なフライトシュミュレ ータを開発し,機体のモデル化を行い,その基礎的動作を検証した.産業技術研究所チームはも っとも小型の機体を構成すべく,搭載機器と機体の選定を行い,ハードウエアを試作した. 221 (グループ長 小森谷清(産総研) )
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