一品ものの製造ノウハウから学ぶ

ISトップ・フォーラム
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ISトップ・フォーラム第4回のテーマは
「一品ものの製造ノウハウから学ぶ」
第4回報告
11月28日(火)、弊社研修室で開催さ
たのですが、どうもしっくりした解が得られ
れた第4回ISトップ・フォーラムは、「一
ませんでした。しかし第2回研究会で、ヤマ
品ものの製造ノウハウから学ぶ」をテーマに
ハモーターソリューション㈱寺井社長から
研究しました。
「製造業のノウハウというとトヨタ方式が有
何度もご紹介しておりますようにこのフ
名だが、自動車の生産は量産方式であり、一
ォーラムでは、製造業のノウハウをこの業界
品生産のSIビジネスとは合わない。トヨタ
に取り入れようと、製造業の雄であるトヨタ
に学ぶのであれば、生産技術開発のほうが参
自動車工業㈱殿を題材に昨年から研究してき
考になる」とのご指摘があり、目から鱗のコ
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ーディネータがハタと手を打って今回の開催
淡々とした語り口で
となったわけです。一品ものというとプラン
すが、三井造船システ
トエンジニアリング業界もそうです。そこで、
ム技研㈱の社長に就
エンジニアリング業界と組立型製造業の生産
任されて、社内の暗い
技術(生産技術は一品もの生産型)から学ぶ
イメージを払拭すべ
ことになりました。
く、矢継ぎ早に改革を
断行されたそうです。
エンジニアリング業界のノウハウについ
このフォーラムの第
ては、元三井造船システム技研㈱社長の大谷
1期は97年ですか
様にご発表いただきました。大谷様は、二十
ら、まさに大ナタを振
数年にわたって三井造船㈱殿でプラントの建
るわれていた時期、ご苦労の真っ最中だった
設事業に携われ、その後、三井造船システム
のです。当時の部下の方が、あるとき、今で
技研㈱殿でエンジニアリング業界のノウハウ
も大谷様の前では緊張すると述懐されてい
を情報サービス業界に技術移転することに努
ました。
力された方です。
写真:大谷氏
大谷様のご主張は、この業界もモノづくり
このフォーラムの第1期・第2期のメンバで
には違いないが、いわゆるリピート生産、大
もいらっしゃいます。
量生産とは「プロジェクト型」という点で大
きく異なる。その違いを認識して組織のあり
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2007.1 MIND-REPORT No.76
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方、運営、マネジメントを考えなければなら
キテクチャの重要性
ない、とのことです。そしてプロジェクトの
に着目して構築され
成否は、プロジェクトマネジャだけの責任で
たマネジメントシス
はなく、組織の総合力によると。
テムをご紹介いただ
「プロジェクトはオーケストラだ!」
きました。
大谷様の強い信念がうかがえる言葉です。
設計組立型製造業は、
生産ラインもさること
続いてヤマハモーターソリューション㈱
ながら、商品のアーキ
寺井社長に、組立型製造業の一品生産技術の
テクチャも大事、そし
ノウハウから学べることについて伺いました。
て計測可能な構造で設計することが最重要
モノづくりから学ぶというと、生産活動=
だそうです。さらに計測手段と基準を提示し
工場から学ぶという図式になりがちです。そ
なければ品質を保証することは難しいとの
のための図書も数多く出版されています。し
こと。この業界もその点について学ばねばな
かし、工場の骨格は開発生産準備プロセスの
りません。
結果であり、事前
写真:寺井社長
社長に就任されて即品質活動に取り組ま
にエンジニアリング活動があるとのこと。
れ、チーム力を強調してISO9001を軸
ヤマハ発動機㈱殿のその領域をご紹介いただ
としたQMSを構築された由。全社活動によ
き、合わせて、ご自身の経験から計測とアー
って出身が異なるメンバ間にもチームの意識
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が浸透し、以前は「私は……」と言っていた
のが、今は「我々は……」が日常的に使われ
ていると、うれしそうにおっしゃっていまし
た。特別参加の高橋愼一QMS/CSR推進
室室長も、ひと言、「燃えています!」
最後に残る2回のテーマと研究方法を検
討し、場所を移動しての情報交換会になりま
した。研究会は無理だけれどもこちらにはと
駆けつけてくださった伊藤忠テクノソリュー
ションズ㈱の杉山会長、第5期メンバでいら
した牧壮様も参加され、ご発表いただいた大
谷様、寺井社長、高橋室長を囲んだ研究会の
延長戦が8時半すぎまで展開されました。
一品ものの製造業のノウハウをこの業界
に取り入れる研究は、「ぜひ当社でも試行し
たい」というご発言もありましたから、大き
な成果があったのだと思います。
(岩堀眞規子
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記)
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