触った感覚(触覚)を遠くに飛ばす技術 - 神戸大学大学院海事科学研究科

電気工学研究室・モーションコントロール分野
(元井直樹 准教授)
触った感覚(触覚)を遠くに飛ばす技術
1. 触覚伝達技術の必要性
5. バイラテラル制御を用いた触覚伝達実験
【遠隔操作システムの応用先】
【実験の構成】
*危険な場所での作業
*高精度な動作・判断が必要なシステム
【例】 ・遠隔医療用ロボット
・介護ロボット 等々
【例】 ・原子力関係
・宇宙プラント
・海洋探索システム 等々
スレーブシステム
接触
環境
PC
Slave system
電気的に接続
Object
操作者
【参考】しんかい6500
(JAMSTEC)
【参考】 R. C. Goertz(1950) 【参考】da Vinci Surgical System
(Intuitive Surgical, Inc.)
【参考】MHI-MEISTeR
(三菱重工)
多くの遠隔操作システムが開発・研究され、実用化されているものも存在する
Master system
マスタシステム
図1 実験システムの構成図
図2 実験システム
*操作者がマスタシステムを操作し、スレーブシステムが環境と接触する
*マスタシステムとスレーブシステムはPCを通じて電気的に接続されている
現存の遠隔操作システムの多くは、触覚伝達を伴っていない(位置のみの同期)
安全性:接触している環境の硬さが分からず、環境を破壊する
操作性:視覚情報のみに頼るため、作業効率が悪い
問題点
【実験結果】
触覚の伝達を行うことが重要である
2. 触覚伝達のためのバイラテラル制御
・ バイラテラル制御とは触覚情報の伝達を実現する遠隔操作技術のひとつ
・ 操作者が操作するマスタシステムと遠隔地にあるスレーブシステムにより構成
・ 位置の同期と作用・反作用の法則を同時に人工実現する
(a) 位置情報
(b) 力情報
図3 バイラテラル制御の実験結果
*2回の前後運動(非接触)と3回の接触動作を操作者の操作により実施
*位置情報より、マスタシステムとスレーブシステムの位置応答が一致(位置追従)
*力情報より、作用・反作用の法則が実現できている
人工実現
(作用・反作用の法則)
人工実現
(位置の追従)
接触環境の硬さを操作者が感じることが出来ている
(触覚の伝達が実現できている)
6. 今後の研究計画
スレーブシステム
マスタシステム
スレーブシステム
マスタシステム
位置を同期させる
作用・反作用の法則を成立させる
3. 触覚伝達の特徴
保存されたデータ
データ抽出
対象物
(環境)
耳
スピーカ
データ再現
単方向
カメラ
データ抽出
目
データ再現
*人間の運動動作の抽出・保存・再生
【参考】神戸大学
伝達する情報を保存・再生する
(応用先)匠の技術の保存・人のようなものづくりロボット
データ再現 触覚
手
双方向
図5 手動作の人工再現
*極限環境における遠隔操作
移動システムと本技術の融合
(応用先)海底探査ロボット・宇宙ロボット
視覚
モニタ
図4 ミクロ・マクロバイラテラル制御
複雑な動作(人間の手動作等)における
触覚を含む運動情報の伝達を行う
単方向
マイク
触覚情報を拡大・縮小して伝達する
(応用先)脳外科手術・油圧ショベル
*人間の手動作の人工再現
データ再現 聴覚
データ抽出
*ミクロ・マクロバイラテラル制御
PC
スレーブシステム
PC
海事科学部
スレーブシステム
マスタ
データ抽出
スレーブ
触覚を伝達するためには双方向性が必要であり、
双方向性を有する情報を如何に人工再現するかが鍵となる
運動データを保存
マスタシステム
運動データを再生
図6 運動動作の抽出・保存・再生の概念図
4. 触覚伝達の実現方法(バイラテラル制御)
*その他(医療・福祉分野、家庭内支援ロボット等)
7. まとめ
人工実現
作用反作用の法則
位置追従性
力制御の目標式
位置制御の目標式
xm  xs  0
fm  fs  0
スレーブシステム
力: f s
位置: x s
マスタシステム
力: f m
位置:x m
加速度次元で制御を行うことにより、
力制御と位置制御を同時実現する
*触覚情報を伝達するための技術を紹介した。
触覚情報の伝達により、安全で操作性がよいシステムが実現できる。
*触覚伝達技術の応用先(今後の研究計画)について紹介した。
応用先は、産業・医療・福祉分野や極限環境探索など多岐にわたる。
【参考文献】
1.K.Ohnishi et. al. “Motion Control for Real World Haptics, ”
IEEE Industrial Electronics Magazine, Vol. 4, No. 2, pp. 16-19,2010.
2.元井直樹等 “操作性向上のための機能分解による異自由度ロボット間バイラテラル制御”,
日本ロボット学会誌, Vol. 31, No. 7, pp. 651-658, 2013.
3.N.Motoi et. al. “Bilateral Control with Diffrent Inertia Based on Model Decomposition,”
Proceedings of IEEE International Workshop on Advanced Motion Control, pp. 697 – 702, 2010.