平成 24 年度事業報告 Ⅰ 海難防止に関する調査研究

平成 24 年度事業報告
Ⅰ
海難防止に関する調査研究、周知宣伝及び指導助言に関する事業
(日本財団助成事業・日本海事センター補助事業)
頁
1.海難多発沿岸海域(準輻輳海域)における安全対策の構築に関する調査研究 ・1
2.大地震および大津波来襲時の航行安全に関する調査研究・・・・・・・・・・1
(日本財団助成事業)
3. 海難防止等情報誌の発行・配布・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2
(日本海事センター補助事業)
4.
5.
6.
7.
船舶交通と漁業操業に関する問題の調査・・・・・・・・・・・・・・・・・2
入出港等航行援助業務に関する調査・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3
港湾計画の調査検討・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3
海難防止等調査研究団体連絡調整事業・・・・・・・・・・・・・・・・・・4
(一般事業)
8. 全国海難防止強調運動実行委員会の開催・・・・・・・・・・・・・・・・・4
Ⅱ
海洋汚染防止に関する調査研究、周知宣伝及び指導助言に関する事業
(日本財団助成事業)
「漂着ごみ」の油化に関する広域社会実験・・・・・・・・・・・・・・・・・・4
Ⅲ 海難防止及び海洋汚染防止に関する国際的な情報収集及び国際協力に関する
事業
(日本財団助成事業・日本海事センター補助事業)
1. 海上安全に関する国際情報収集活動・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5
2. 海事の国際的動向に関する調査研究・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9
3. ASEAN 地域における HNS 事故対応体制の強化支援 ・・・・・・・・・・・10
(日本財団助成事業)
4. アジア海上保安機関長官級会合の開催・・・・・・・・・・・・・・・・・10
5. ミクロネシア3国の海上保安能力の強化支援・・・・・・・・・・・・・・ 11
6.マラッカ・シンガポール海峡航行援助施設基金への支援・・・・・・・・・11
(地方公共団体(富山県)補助事業)
7. 北西太平洋行動計画推進協力事業・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12
Ⅳ
受託事業
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12
Ⅰ
海難防止に関する調査研究、周知宣伝及び指導助言に関する事業
1. 海難多発沿岸海域(準輻輳海域)における安全対策の構築に関する調査研究
平成 21、22 年度に実施した「準輻輳海域及び沿岸域における安全対策の構築に関す
る調査研究」において、①AIS(船舶自動識別装置)の活用・普及促進、②船舶の動静
監視と情報提供、③船舶交通の整流化が準輻輳海域における船舶交通の安全性向上に
寄与する施策との提言がまとめられた。
本調査研究では、平成 23 年度は、これらの提言のうち、船舶同士の進路交差による
衝突リスクの軽減効果が期待できる「船舶交通の整流化」の導入案について、石廊埼
沖から大島北側付近までの海域を対象に策定するべく調査研究を行った。
平成 24 年度は、平成 23 年度の「船舶利用実態と問題点の把握」を踏まえ、①整流
化方策の効果算定方法の検討、②新たな交通ルート案の検討と海上交通流シミュレー
ションによる評価、③制度化にあたっての課題整理、④具体的な船舶交通流整流化方
策の検討等を実施した。
その結果、調査対象海域への IMO の航路指定基準に基づく推薦航路(route)の設定は、
船舶交通流を分離し、船舶衝突リスクの軽減効果が向上することが期待できること、
海図に記載することにより国際的な情報提供が可能であること等が判明したものの、
推薦航路(route)の設定に伴い、同航路の延長線上付近に横切り関係が集中して発生す
る等の課題も提起され、その実現に向けては今後更に調査研究の深化が必要と結論づ
けられた。
2.
大地震および大津波来襲時の航行安全に関する調査研究
平成 23 年 3 月に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う大津波により、多数の船舶が
被災し、近い将来には、高い確率で首都直下型地震、東海地震、東南海地震、南海地
震、更には、これらが連動して発生することが懸念されており、海事関係者をはじめ、
各方面から船舶の安全確保対策の確立が叫ばれているところである。
本調査研究は、こうした状況を踏まえて、平成 23 年度に日本海難防止協会が実施し
た「東北地方太平洋沖地震に伴う津波来襲時の船舶の避難行動と被災状況等に係るア
ンケート調査」結果等をもとに、これまでの津波安全対策や航行安全対策の検討・見
直しを行い、今後想定される大地震発生時あるいは大津波来襲時における船舶被害の
未然防止及び被害の極小化に資する対策の構築を目的とした調査研究を行ったもので
ある。
平成 24 年度においては、清水港をモデル港に津波シミュレーションによる評価を行
い、これまでの津波対策や航行安全対策の見直しつつ、モデル港で取り得る対応策の
検討等を行った。その結果、提起された主な事項は次のとおりである。
①
港長勧告を伝達する手段の多重化
1
②
在泊船舶と事業者間の連絡手段の確保、荷役設備・係留設備の非常用電源の整備
③
船舶の避難判断等の事前取決めの策定
④
安全な避難海域に関する情報の共有
⑤
外国人船員への啓蒙・周知
⑥
被災・避難船舶への分かり易い情報提供方法の検討
⑦
大型船、中型船の初動対応措置
また、シミュレーション手法を用いて、大型危険物積載船の津波による動揺時の係留限
界に関する調査を行った。引き続き、平成 25 年度も調査を実施する予定。
3.
海難防止等情報誌の発行・配布
海難の撲滅と海洋環境の保全、さらには海事思想の普及と高揚を図ることを目的に
本年度も事業を推進した。
そのためには、海上で働く船舶の乗組員をはじめ、広く海事関係者を対象に絶え間
ない呼びかけが欠かせないことから、情報誌「海と安全」を媒体として、現場にとっ
て有意義かつ必要な情報を周知することが海難及び海洋汚染防止に極めて有効と位置
付け、その特集テーマ毎に関係先を検討して配布を行った。
(1)夏号(6月)
特集「膨張式救命胴衣のメンテナンス」
(2)秋号(9月)
特集「内航海運における船員の後継者対策」
(3)冬号(12 月)
特集「海に関わるわが国の国際支援」
(4)春号(3月)
特集「3.11 から2年
海運・水産・港湾の復旧・復興状況」
各号とも6,000部を発行したが、夏号は、全漁連からの要請により、各地域の漁業者
の指導用参考書として、1,500部を増刷配布した(経費は全漁連負担)。
なお、昨年度発刊の春号(特集「3.11巨大地震と大津波の教訓を伝える」)は、海上保
安部、船社等海事関係を中心に広く関係方面から、いまだに送付の要望があり、さらに
東南海地震や津波等への防災対策ということで、近隣の東京、神奈川、千葉の各都県沿
岸部の中・高校1,121校に送付したところ、東京・港区の朝日中学や逗子開成中・高校
など送付先の学校からは「今後の参考教材としたい」として追加の送付要請があった。
4.
船舶交通と漁業操業に関する問題の調査
我が国における沿岸海域及び主要湾内域では、航行船舶が輻輳すると共に、漁業操
業が活発に行なわれていることから、こうした海域での安全確保を図っていくために
は、海運関係者及び水産関係者における安全確保、海域利用に関する相互理解の向上
が重要な課題となっている。特に、現場で運航・操業に従事している実務者にまで共
通の認識を持つことが極めて重要である。
このため、安全確保の有効な手段として位置づけられている AIS に関して、平成 24
年度は、東京湾において簡易型 AIS(ClassB)を用いた操業漁業の動静調査を実施した。
2
調査は、遊漁船に簡易型 AIS(ClassB)を搭載し、一般通航船舶側及び操業漁業側双
方から互いの動静を把握することにより、操業時における簡易型 AIS の有効性等の検
証を行った。
その結果、AIS を搭載しても操業中の漁船員には、他船の動静把握が困難である等の
課題が提起された。また、海運・水産関係者からなる「海運・水産関係団体連絡協議
会」を1回、海運・水産関係実務者からなる「海運・水産関係団体打合会」を 3 回開
催するとともに、これらの場において、簡易型 AIS の有効性等について検討を行った。
なお、平成 25 年度も実施の予定である。
5.
入出港等航行援助業務に関する調査
近年、わが国の港湾では、入港船舶及び機能の多様化に対応するための工事が活発
行われ、そのために、港湾の形状の変貌等が著しく、海上交通の安全を阻害する諸要
因も複雑多岐に存在する状況となっている。
こうした状況を踏まえ、本調査は、港湾における水先に関する諸問題について調査
を行い、船舶の航行の安全に資することを目的に実施しているものである。
平成 24 年度は、大阪湾周辺海域の水先区内で発生した最近 10 年間の海難事故(衝
突・乗揚げ)について、AIS 陸上局の記録データーにより、当該海域における AIS 搭載
船舶の航行状況を整理し、海難発生海域との関連性について分析するとともに、大阪
湾内で発生した代表的な衝突海難の事例について、海難審判裁決録により、調査分析
を行った。
調査結果は、3級水先人養成教育の副読本として及び水先業務に、資されているた
め、関係先に送付・周知した。平成 25 年度は、瀬戸内海周辺海域を対象とする予定で
ある。
なお、平成 20 年度に東京湾、平成 21 年度に伊勢湾について実施している。
6.
港湾計画の調査検討
港湾における航行の安全確保には、港湾管理者と海事関係者とが相互に協力しつつ、
安全性向上のための諸施策を検討することが重要である。このため、港湾計画の改訂
及び変更に際しては、当該対象港での地元関係者による航行安全の検討に加えて、さ
らに、中央でも大局的な見地から、広く海事関係者や関係官庁等による検討を行い、
今後の港湾計画策定に資するものである。
調査方法としては、学識経験者、海事関係者等から構成される「港湾専門委員会」
を当協会内に設置、各港の港湾計画を議題として、国土交通省での「交通政策審議会
港湾分科会」の審議前に委員会を開催し、航行安全の観点から検討を行っている。
平成 24 年度は、港湾専門委員会を3回開催し、10 港湾の港湾計画の一部変更につい
て調査検討を実施した。
3
①
第 1 回港湾専門委員会(5 月 28 日)
鹿島港、水島港、小名浜港、那覇港、新潟港
②
第 2 回港湾専門委員会(11 月 21 日)
横浜港、浜田港
③
第 3 回港湾専門委員会(2 月 22 日)
神戸港、大阪港、石狩湾新港
7.
海難防止等調査研究団体連絡調整事業
本事業は、各種海難の多発及び海上交通環境の変化に対応して、海難防止等の専門
的調査及び啓蒙活動が重要視されている状況に鑑み、全国に展開する各海難防止団体、
各小型船安全協会等が実施する事業に関する相互調整を緊密に図り、更に海難防止等
の周知・啓蒙及び調査活動等の技術情報の交換を行い、海難防止等事業の実効性の向
上に資するものである。
このため、全国の海難防止団体、小型船安全協会等の関係者による会議(海難防止団
体等連絡調整会議)を年に 1 回開催し、海難防止等に関する調査研究及び周知・啓蒙活
動等に係る相互調整及び情報交換を実施している。
平成 24 年度は、
「平成 24 年度全国海難防止団体等連絡調整会議」を 11 月 15・16 日、
作業部会を3月 14、15 日に東京において開催する等きめ細かな事業展開を進めた。
8.
全国海難防止強調運動実行委員会の開催
我が国の周辺海域における海難事故の原因は、見張り不十分、操船不適切等の運航
の過誤、機関取扱不良等といった「人為的要因」によるものが依然として海難全体の
約8割を超えている。
このため官民一体となって海難防止思想の普及活動に取り組み、海難の発生を防止す
ることを目的に日本海難防止協会が事務局となり、
「全国海難防止強調運動実行委員会」
を開催しているものである。
平成 24 年度は、昨年度に引き続き「見張りの徹底及び船舶間コミュニケーションの
促進」と「小型船の安全対策の徹底」を重点事項として決定し、同運動を全国展開した。
Ⅱ
海洋汚染防止に関する調査研究・周知宣伝及び指導助言に関する事業
漂着ごみの油化に関する広域社会実験
本事業は、離島に漂着する大量のごみのうち、その多くを占める発泡スチロールに
ついて、専門家及び大規模な施設等を要することなく、地域住民が小型の油化装置を
用いて簡便に石油エネルギー(スチレン)へ変換し、これを当該地域社会において有
効活用するという新たな廃棄物の処理システム構築のためのモデル事業である。
4
これまでの実験の結果、油化装置を用いた海岸漂着ごみの新たな処理システムが、
離島における海岸の美化や島内の省エネへの有効性のみならず、油化装置によって生
成されるごみ由来のエネルギーを利用した離島内での起業などにより、過疎化・高齢
化など離島が抱える社会問題の解決にも、寄与することが期待される。また、沖縄県
・石垣島、久米島、鹿児島県・奄美大島等でワークショップを開催し、海岸漂着ごみ
問題、資源リサイクル問題等の課題の解決に向けた広域連携体制の展開が始まってい
る。
Ⅲ
海難防止及び海洋汚染防止に関する国際的な情報収集及び国際協力
1.海上安全に関する国際情報収集活動
A
欧州(ロンドン事務所)における諸活動
欧州においては、下記活動を行うと共に、我が国の意見の実現に努めた。
(1)情報収集及び意見交換
① 国際海事機関(IMO)の各種委員会、小委員会等に出席し、海事の国際動向に関する
情報及び資料の収集を実施するとともに、わが国の代表団を補佐し、我が国の意見
の実現に努めた。
・第99回法律委員会(LEG99)(4月16日~20日)
・第90回海上安全委員会(MSC90)(5月16日~26日)
・第58回航行安全小委員会(NAV58)(7月2日~6日)
・OPRC-HNS Technical Group Meeting 14(9月24日~28日)
・第64回海洋環境保護委員会(MEPC64)(10月1日~6日)
・第91回海上安全委員会(MSC91)(11月26日~30日)
・第17回無線通信・捜索救助小委員会(COMSAR17)(1月21日~25日)
②
国際機関等が主催する会議等に出席し、海事の国際動向に関する資料の収集、情報
交換等を実施した。
・ソマリア沖海賊対策に関するコンタクト・グループ会合
第2作業部会(法的枠組)
(4月24日)
・ソマリア沖海賊対策能力開発支援に関する会議(5月15日)
・ソマリア沖海賊対策に関するコンタクト・グループ会合
第1作業部会(運用調整及
び能力向上支援)(6月1日)
・ソマリア沖海賊対策に関するコンタクト・グループ会合
第1作業部会(運用調整及
び能力向上支援)(7月12日)
・ソマリア沖海賊対策に関するコンタクト・グループ会合
(9月16日~17日 デンマーク)
5
第2作業部会(法的枠組)
③
国際機関等が主催するセミナー等に出席し、海事の国際動向に関する資料の収集、
情報交換等を実施した。
・米国国際法学会参加(3 月 28 日~4 月 1 日 米国・ワシントン)
・欧州における衛星利用に関するセミナー(4月19、20日 欧州宇宙機関)
・国際法学会英国支部学会(4 月 20、21 日 英国、ノッティングハム)
・海上セキュリティに関するセミナー(5 月 15 日 ロンドン)
・洋上風力発電に関するセミナー(5月15日 ロンドン)
・海上セキュリティに関するセミナー(5月15日 ロンドン)
・ロイズレジスターIMO担当者との意見交換(5月31日
ロンドン)
・テロリズムと安全保障に関するセミナー(6 月 15 日 Institute of Advanced Legal
Studies、ロンドン)
・海賊に関するセミナー(6 月 16 日 グリニッジ大学、ロンドン)
・国際海洋法学会(6 月 20 日~24 日 カナダ、ハリファクス)
・国際化と犯罪に関する学会(6 月 26 日~28 日 ロンドン大学高等法学研究所)
・英国刑法学会(7 月 4 日~6 日 ポーツマス)
・英国海事安全庁及び水路部とのIMO航路に関する意見交換(7月5日
・IMOとのIMO航路に関する意見交換(7月6日
ロンドン)
ロンドン)
・海賊に関する法制、国家実行に関する会合(7 月 12 日~13 日 ブリストル大学)
・国際法セミナー(7 月 28 日~8 月 4 日 エストニア・タリン)
・国際法学会(8 月 26 日~31 日 ブルガリア・ソフィア)
・欧州委員会での海事関連分野に関する情報収集(9月11日)
・英サウザンプトン港における船舶起因廃棄物(MARPOL ANNEX V関連)の港湾受入
施設調査(VEOLIA社) (10月9日)
・王立救命艇協会(RNLI)本部・訓練施設調査(10月10 英南部プール)
・国際危機管理協会主催の学会(10 月 25 日~11 月 3 日 米・フロリダ州オーランド)
・第3回海事の国際的動向に関する調査研究委員会(11 月 12 日
東京)
・中東情勢に関するセミナー(12月5日 JETRO、ロンドン)
・トリニティハウス(航行援助施設管理団体)調査(1月15日
ロンドン)
・アフリカの政治経済情勢に関するセミナー(2月1日 JETRO・ロンドン)
・ハンブルク港における船舶起因廃棄物受入施設調査(2 月 11 日 ハンブルク)
・ドイツロイド船級協会(GL) における LNG 安全対策に関する調査(2 月 11 日 ハンブルク)
・デット・ノルスケ・ベリタス(DNV ノルウェー船級協会関連の検査機関)における
LNG 安全対策に関する調査(2 月 12 日 ベルギー・アントワープ)
・ SIGTTO(国際ガスタンカー運航者及び基地操業者協会) における LNG 安全対策に
関する調査(2 月 13 日 ロンドン)
・英国の対 EU 政策に関するセミナー
(2 月 14 日 チャタムハウス、ロンドン)
6
・中東の政治経済情勢に関するセミナー(2 月 15 日 JETRO、ロンドン)
・放射性物質輸送船の航行安全対策に関する調査等(2 月 19 日~21 日 英バロー)
・オーストラリアの国家安全保障に関するフォーラム(2 月 23 日~28 日 シドニー)
・国際海難救助連盟(IMRF)との意見交換(3 月 13 日 ロンドン)
④ 一般紙・海事紙等からの情報収集・発信
在英関係機関を訪問し、海上安全・海洋環境保護に関する情報収集、情報交換を
実施し、大手海事関係新聞及び現地コンサルタントから海上安全に関する公開情報
を収集し、当協会の会員等関係者に対し、London Representative Office News(「
LROニューストピック」)として情報を発信している。
(2)調査研究
・欧州における AIS の運用状況に関する調査研究
・欧州における洋上風力発電施設周辺の航行安全対策に関する調査研究
・推薦航路(IMO 航路指定)に関する調査
・欧州における LNG 燃料船への燃料移送における安全対策に関する調査
・欧州における入港時余裕水深に関する制度に関する調査
・グリニッジ大学海洋研究所での研修、各国際法学会学会、その他学会等に参加し、
特にテロ法制や海賊法制を中心に幅広い学術的側面からの調査
・ウォーリック大学において、軍警察関係に関する理論的研究を実施し、日英比較の
土台を構築するため、英国におけるテロ対策の事例についての調査
(3)事業報告
・「推薦航路(IMO 指定航路)に関する調査」
・「デンマーク議長国期間終了時における EU 諸問題に関する報告書」
・「洋上風力発電所周辺での航行安全」
・「欧州における LNG-STS に関する情報調査」
・「英国の洋上風力発電に関する航行安全対策」
・「キプロス議長国期間終了時における EU 諸問題に関する報告書」
・「海事の国際動向に関する調査研究」
(1) Maritime Security: a Brief Discussion from the Perspective of the Shipping Industry
and Implementation of the SOLAS Convention XI-2 and Implementation of its Party
States
(2) Suppression of Piracy off Somali: A Case Study of Japanese Policy and Legal Regime
to Implement International Law
(3) Japanese Anti-Piracy Law: Protection of Flagged-out Ships
B
アジア・太平洋地域(シンガポール事務所)における諸活動
(1)情報収集及び意見交換
7
①
マラッカ・シンガポール海峡(以下、「マ・シ海峡」という。)航行援助施設基金に
関して、関係会議に出席、沿岸三カ国(シンガポール(海事港湾庁)
、マレーシア(海
事局)、インドネシア(海運総局))及び国際海運団体関係者等との情報収集及び意見
交換等を実施した。
・第 37 回沿岸三カ国技術専門家会合(TTEG)(9 月 26、27 日 シンガポール)
・第5回 Cooperation Forum(9 月 24、25 日 シンガポール)
・マ・シ海峡航行援助施設基金委員会第8回会合(4 月 10 日 マレーシア・プトラジャヤ)
・マ・シ海峡航行援助施設基金委員会第9回会合(12 月 13、14 日 マレーシア・ジョホールバル)
②
東南アジア地域で開催されるセミナー及びシンポジウム等に出席し、情報収集、意
見交換及びネットワーク構築を実施した。
・ノルウェー沿岸管理局(NCA)主催ワークショップ(4 月 19、20 日 シンガポール)
・海運企業の CSR 活動に関するセミナー開催(4 月 26 日 シンガポール)
・IMO海洋電子ハイウェイプロジェクト委員会(6 月 6 日~8 日 ジャカルタ)
・アジア海上保安機関長官級会合実務者会合(7 月 18 日 ニューデリー)
・海洋電子ハイウェイデータセンター引渡式(8 月 3 日 インドネシア・バタム)
・アジア海上保安機関長官級会合(10 月 2、3 日 ニューデリー)
・IMO海洋電子ハイウェイプロジェクト委員会(11 月 14、15 日 シンガポール)
・JICA・MPA 主催 Maritime Safety Management Course(11 月 23 日 シンガポール)
・Nautical Forum(1 月 10 日 シンガポール)
③
ミクロネシア地域における海上監視能力向上のための支援活動について、ミクロネ
シア3国、米国及び豪州政府関係者等との情報、意見交換及び打合せ、関係会議等を
実施し、事業を推進した。
・ミクロネシアプロジェクト国内委員会(5月25日
東京)
・ミクロネシア各国職員の日本への招へい事業(6月2日~7日
東京、横浜、大分)
・小型艇の引渡立会い等(6月19~21日 ミクロネシア連邦)
・小型艇の引渡立会い等(8月8日~10日 パラオ)
・小型艇の引渡式及びレセプション(8月14日~17日 ミクロネシア)
・小型艇の引渡式及びレセプション(10月9日~12日 パラオ)
・小型艇の引渡立会い、引渡式及びレセプション(11月20日~23日 パラオ)
(2)調査研究
マ・シ海峡の航行安全・海洋環境保全対策に係る沿岸国と利用国・利用者との協力問
題に関連し、IMO マレーシア会議(2006 年)において同海峡沿岸各国から協力の枠組
みに関する方向性が示されたのを受け、2008 年 4 月には日本財団の働きかけによりマ・
シ海峡航行援助施設基金が設立された。同基金は、マ・シ海峡内の通航分離帯(TSS)
内に存在する 51 基の主要な航行援助施設の適切な維持・管理のために要する資金の拠
出を同海峡の利用国及び海運団体等の利用者から任意に募ることを目的とするもので
8
ある。
当該目的達成のため、沿岸国政府、国際海運団体及び船主協会等の関係者との情報・
意見交換等を行い、それぞれの関係者の現況、ニーズ及び問題点等の抽出・整理を行っ
た。また、同基金の継続的・安定的な運営の確保のため、海運業界を含めたより多くの
拠出者を呼び込むことが重要であるところから、海運業界のCSR活動の振興を目的と
した事業の実施に協力した。
なお、ミクロネシアにおける海上保安能力向上支援の事業については、パラオ共和国、
ミクロネシア連邦、マーシャル諸島共和国の海上保安体制の強化について、現地海上保
安機関のニーズ調査や支援策の調整等を行った。
(3)事業報告
①
マラッカ・シンガポール海峡レポート 2013(2012 年の連絡事務所の活動報告)
【主要内容】
・マ・シ海峡の協力メカニズムに関連するレポート
第 8 回航行援助施設基金委員会
第 5 回協力フォーラムの開催
第 9 回航行援助施設基金委員会
海運企業のCSR活動に関するセミナーの開催
・海賊及び海上セキュリティに関連するレポート
2012 年商工会議所国際会議局(IMB)海賊及び武装強盗事案レポートの概要
・航行安全に関連するレポート
MEH(海洋電子ハイウェー)に関するレポート
2012 年マ・シ海峡における航行環境に関するレポート(船舶船位通報制度の統
計に基づく分析)
・ミクロネシア海上保安能力向上関連レポート
②
Singapore Representative Office News(「SRO ニュース」)の発信
現地情報ソースから海上安全に関する情報を幅広く収集し、当協会の会員等関係
者に「SRO ニュース」として発信している。
2. 海事の国際的動向に関する調査研究
A 海上安全関係
(1)委員会の開催
IMO の MSC90、91、NAV58 及び COMSAR17 において審議される議題に的確に対応す
るために委員会を開催し、対処方針を検討した。また、IMO の各委員会における審
議概要を報告し、官民による意見交換を実施した。
・海事の国際的動向に関する調査研究委員会(海上安全)
第1回 5 月 9 日
第2回 6 月 21 日 第3回 11 月 12 日
9
第4回 1 月 15 日
(2)国際会議への出席・調査研究の実施等
下記の会議に出席して、政府代表を補佐するとともに、担当議題に関し、所定の対処
方針に従い、我が国の意見の反映に努めた。また、会議全般の情勢を把握し、国際情報
及び関係資料の収集を行った。
・第 90 回 海上安全委員会(MSC90)(5 月 16 日~20 日)
・第 58 回 航行安全小委員会(NAV58)(7 月 2 日~6 日)
・第 91 回 海上安全委員会(MSC91)(11 月 26 日~12 月 2 日)
・第 17 回 無線通信・捜索救助小委員会(COMSAR17)(1 月 21 日~25 日)
調査・研究においては、今後対応の必要性の高まりが予想される極地における大規模
海難救助への対応に関する意見交換や多様な船舶動静把握システムの統合運用に関す
る調査、海賊事案の現状等についての調査・研究を実施した。
・衛星利用に関するワークショップ(5 月 18 日)
・大規模海難救助に関する国際会議(6 月 3 日~5 日)
B
海洋汚染防止関係
(1) 委員会の開催
MEPC64及びBLG17において審議される議題に的確に対応するために委員会を開催し、
その対処方針を検討した。また、同委員会において審議概要を報告し、官民による意
見交換を実施した。
・海事の国際的動向に関する調査研究委員会(海洋汚染防止)
第1回 9月21日 第2回 1月23日
(2)国際会議への出席・調査研究の実施等
下記の会議に出席して、政府代表を補佐するとともに、担当議題に関し、所定の対
処方針に従い、我が国の意見の反映に努めた。また、会議全般の情勢を把握し、国際
情報及び関係資料の収集を行った。
・第64回 海洋環境保護委員会(MEPC64) (10月1日~5日)
・第17回 ばら積み液体及びガス小委員会(BLG17) (2月4日~2月8日)
3.ASEAN 地域における HNS 事故対応体制の強化支援
(1)ASEAN 海洋汚染防止プログラム
11 月 21、22 日にバンコクにおいて、HNS(有害危険物質 Hazardous Noxious
Substances)緊急時計画の策定支援を目的としたワークショップを開催し、HNS 緊急
時計画の具体的な策定に関して専門的な議論を行った。
同ワークショップでは参加各国からの現状報告が行われたほか、タイの港湾管理者、
民間防災事業者などによる発表等が行われた。
(2)機動防除隊(JCG)をモデルにした HNS 事故対応専門家の育成支援
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アセアン地域のうち HNS 緊急時計画の策定に関して具体的な計画のある 5 ヵ国から、
それぞれ現場指揮官クラス 2 名を東京及び横須賀に招聘し研修を行った。
同研修では、HNS トレーニングマニュアルに基づく講義及び独立行政法人海上災害
防止センターにおける研修(講義及び実習)を実施した。
4.アジア海上保安機関長官級会合の開催の支援
アジア16ヶ国1地域(バングラディッシュ、ブルネイ、カンボジア、香港、中国、イ
ンド、インドネシア、日本、韓国、マレーシア、ミャンマー、パキスタン、フィリピン、
シンガポール、スリランカ、タイ、ベトナム)の21の海上保安機関による第8回アジア
海上保安機関長官級会合が10月3日、実務者会合が7月18日に、それぞれニューデリー
(インド)において開催された。当協会では、これらの会合の開催にあたり、開催に係
る諸準備及び共催機関(インドコーストガード)との調整等を実施した。
実務者会合では、参加機関が今後取り組んでいくべき5項目(捜索救助、大規模自然
災害対応、海洋環境保全、海上安全及び人材育成)の成果素案作成等を支援した。
なお、長官級会合では、実務者会合で検討された5項目について合意がなされ、そ
れぞれのテーマ毎に幹事国が決定された。次回の第9回会合については、パタヤ(タ
イ)にて開催される予定。
5.ミクロネシア3国の海上保安能力強化支援
ミクロネシア3国の総合的な海上保安能力を強化することを目的として、3国にそれ
ぞれ小型艇(15m 型 FRP)1隻及び通信設備1式を供与するとともに、関係職員への研
修等を行った。
・国内委員会の開催(5 月 25 日
東京)
・各国小型艇乗組員等に日本での招へい研修を実施(6 月 1~7 日
東京、大分)
・ミクロネシア連邦にて小型艇「FSS Unity」と通信設備の引渡式を実施(8 月 17 日)
・パラオ共和国にて小型艇「KABEKEL M’TAL」と通信設備の引渡式を実施(10 月 12 日)
・USCG第14管区本部との意見交換(11 月 16 日 ホノルル)
・マーシャル諸島共和国にて小型艇「RMIS LOMORⅡ」と通信設備の引渡式を実施
(11 月 23 日)
6. マラッカ・シンガポール海峡航行援助施設基金への支援
マラッカ・シンガポール海峡における主要 51 基の航行援助施設の維持・更新をはか
るプロジェクトは、沿岸三カ国(インドネシア、シンガポール、マレーシア)が管理す
る航行援助施設基金が担っている。
このため、当協会としては、日本財団とともに、この航行援助施設の維持・更新プロ
ジェクトの支援を行った。
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7.北西太平洋地域海行動計画(NOWPAP)推進協力
国連環境計画(UNEP)の地域海計画の一つである北西太平洋地域海行動計画(NOWPAP)
の「本部事務局(Regional Cooperating Unit)」として RCU 富山事務所(国連出先機
関)が開設された。
当協会は、RCU 富山事務所への支援を行うことにより、日本海を取り巻く国際連合環
境計画の枠組みに関する情報を収集した。
Ⅳ
受託事業
海上保安庁、地方公共団体、独立行政法人、民間企業から受託した次の9件の事
業を実施した。
(海上保安庁)
(1)港則法上の危険物の選定に関する調査
「国際海上危険物規則」及び「危険化学品のばら積運送のための船舶及び設備に関する
国際規則」の改正に伴い、港則法に基づき新たに規制すべき危険物の選定等を行った。
(地方公共団体)
(2)鹿島港外港地区における航行安全対策調査(茨城県)
鹿島港外港地区では、平成 23 年 11 月に大規模地震対策施設計画に基づき、港湾計画
による整備予定の岸壁の内の1バースを耐震強化岸壁として整備されることとなった。
一方、従来から、同外港地区は、外洋に隣接する水域で航行環境が厳しく、出入港操
船の安全性、管制水路を航行する船舶との安全確保等が課題となっていた。
このため、耐震強化岸壁の暫定供用に伴う航行安全対策及び外港地区における大型船
舶の出入港に伴う航行安全対策の検討を行った。
(3)北西太平洋地域での海洋環境保全にかかる国際協力に関する調査研究(富山県)
NOWPAP(北西太平洋地域海行動計画)の活動と密接な関係にある富山県の国際環境協
力施策等の企画及び推進に資することを目的として、合同油防除訓練及び富山県の広報
事業について調査した。
(独立行政法人)
(4)大隅海峡における海上警戒に係る検討支援(宇宙航空研究開発機構)
宇宙航空研究開発機構(JAXA)では、鹿児島県の内之浦宇宙空間観測所から固形燃料
型ロケットの打上げを計画しており、万一、打上げが失敗した場合には、周辺海域に落
下物の発生等が予想されるため、警戒区域の設定等の航行安全対策を検討している。
平成 24 年度は、航行安全対策の周知徹底を図るため、当該海域を航行する船舶の AIS
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情報及び船舶情報により通航頻度の高い運航会社等を識別し、情報周知先リストの作成
等を行った。
(5)フィリピン国の海上安全分野に係わる情報収集・確認調査(国際協力機構)
フィリピンコーストガードにおける通信システム分野の現状分析と課題(通信システ
ム構成、予算、運用体制、施設機材の維持管理体制等)についての調査を行った。
(民間企業)
(6)浮体式洋上ウインドファーム・プロジェクト実証実験に係る航行安全対策の検討
福島県の沖合に風力発電実験設備を設置する計画に基づき、浮体式洋上ウインドファ
ーム実証実験が予定されており、この実証実験の海域が船舶通航の輻輳する海域である
ことから、船舶の航行環境、実験設備が付近航行船舶に与える影響等の調査を行い、実
証実験を円滑に実施するための航行安全対策を検討している。
(7)天然ガス燃料船の早期実用化に向けた航行安全対策の検討
液化天然ガス(LNG)を燃料とする船舶(「天然ガス燃料船」)は、従来の船舶燃料で
ある重油とはその特性等が大きく異なり、各種の安全性等の評価が必要である。
また、天然ガス燃料船が LNG 燃料補給船(「LNG バンカー船」)から燃料移送を受ける
場合には、LNG バンカー船自体も危険物運搬船となり、燃料移送方法等についても LNG
の特性を考慮したものでなければならない。
このため、天然ガス燃料船及び LNG バンカー船の操船、両船間における燃料移送等に
ついての航行安全対策の検討を行った。
(8)仙台塩釜港における航行安全対策調査
仙台塩釜港塩釜港区内の昭和シェル石油・塩釜油槽所では、塩釜港区の一本松地区に
5,000DWT 級タンカーを受け入れるドルフィン桟橋の新設を計画しており、この新設予定
のドルフィン桟橋の着桟対象船の入出港に係る船舶航行安全対策を検討した。
(9)事故再発防止措置の検証・評価に関する調査
平成 18 年 8 月、クレーン付台船が旧江戸川を航行中、河川上の送電線に接触し、関
東地域で大規模な停電が発生した。これを踏まえて、事故再発防止措置が現場で的確に
実施されているか否かについて、クレーン付台船の廻航現場を訪問し、関係者からの聞
取り調査、書類の確認等による検証・評価を行った。
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資料2
第二号議案
平成24年度決算について
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