数値サーマルマネキンの開発 体温調節機能 呼吸による熱放散 Qres ④ (発汗調節、血流調節、ふるえ産熱) 皮膚温度、発汗量 室内空気流動 体温調節モデル 蒸発による 熱放散 Esk 対流熱放散 Qcv ③ ① 人体内部核層 代謝熱生成 (M-W) 皮膚表面との 内部熱伝達 (体温調節モデル) ⑤ ② 壁面との放射に よる熱放散 Qr 人体-環境系の熱交換 CFD 放射伝熱解析 対流放熱量 放射放熱量 数値サーマルマネキン 数値サ-マルマネキンは、人間形状の人体モデルを室内空間に取り込み、その環境下の人 体における温熱生理応答、及び人体起源の室内温熱環境への影響を数値的に解明する総合 数値解析手法である。数値サーマルマネキンを用いて、実験せずに室内温熱快適性状を予 測・評価できるため、経済的な温熱環境設計ツールともなる。 0.67m 被験者実験と数値解析の概要 放射パネル 放射パネル no C F D Uin:0.05m/s 風速0.05m/s以下 0.915m QR i = ∑ C jiσT j −Aiε iσTi 4 n QR i = ∑ C jiσT j −Ai ε iσTi 4 4 全熱流束 q i= (QRi +QCi )/Ai QRi = QR ,in − QR ,out n 放射伝熱量 j =1 QRi + QCi + QWi + QGi = 0 q = ‐q i 4 j =1 0.915m 数値解析のモデル空間 実験室の概要 yes 人 体? 1.83m 900 900 1830 放射計算ルーチン 対流伝熱量 QCi 吸込口 固体面温度分布 実験概要 Ti (i=1 ~ n) 健康な大学生男女6名ずつ計12名を被験者とした。実験時間 は60分、50~60分の平均値を皮膚温の分析対象とする。 人体生理モデル 体温調節モデル 皮膚温度(Fanger中立) Smith’s Model ts = 36.4-0.054 q 連成解析の流れ 数値解析概要 ① 空間の総メッシュ数は268,421、表面総メッシュ数は14,038。 ② 乱流モデルは低Re数型k-εモデルを用い、差分スキームは速 度項に対しMARSスキーム、温度項に対しで一次風上スキー ムを採用する。 ③ Smith Modelの計算の設定に関し、代謝量を1.2Met、気温と 吸気の温度を共に28℃に設定する。 検討ケース Case 気温(℃) 相対湿度(%) 前パネル温度(℃) 後パネル温度(℃) 1 50 21 35 2 50 35 21 28 3 50 28 28 4 40 14 42 5 40 42 14 マッピング Smith’s Model 人体形状 Cij :全交換面積 T : 固体面温度 σ : ステファン・ボルツマン定数 ε : 放射率 n : 固体面分割数 QR :正味放射伝熱量 Qc : 対流伝熱量 Qw : 熱伝導伝熱量 QG : 熱発生量 QR,in : 吸収放射伝熱量 QR,out : 射出放射伝熱量 被験者実験と数値解析による皮膚温分布の比較 男子の実験結果 腰(前) 左大腿(上) (℃) 顔面 胸 38 36 背 左下腿(前) 右大腿(下) 左下腿(後) 30 28 右下腿(前) 腰(前) 左大腿(下) 右下腿(後) 女子の解析結果 女子の実験結果 腰(後) 34 32 右大腿(上) 男子の解析結果 左大腿(上) (℃) 顔面 胸 38 36 右大腿(上) 左下腿(前) 右下腿(前) 26 左上腕(後) 右上腕(前) 右上腕(後) 左前腕(前) 左前腕(後) 平均 右手背 右前腕(後) 左手背 Case4 腰(前) 左大腿(上) (℃) 顔面 胸 38 36 右大腿(上) 左下腿(前) 右下腿(前) 背 腰(後) 左大腿(下) 34 32 右大腿(下) 左下腿(後) 30 28 右下腿(後) 左上腕(前) 左上腕(後) 右上腕(前) 右上腕(後) 左前腕(前) 左前腕(後) 平均 Case3 左大腿(下) 34 32 右大腿(下) 左下腿(後) 30 28 右下腿(後) 左上腕(前) 左上腕(後) 右上腕(前) 右上腕(後) 左前腕(前) 右前腕(前) 左足背 右足背 左前腕(後) 平均 右手背 右前腕(後) 左手背 Case5 26 右前腕(前) 左足背 右足背 腰(後) 26 左上腕(前) 右前腕(前) 左足背 右足背 背 右手背 右前腕(後) 左手背 差異が生じる原因の考察 ① 実験による各部位の皮膚温が該当部位のある点の温度に より代表され、数値解析による皮膚温は該当部位の各表面 メッシュの温度の面積重みつけ平均値となる。不均一環境で は、各部位でも皮膚温が一定の分布となっているため、部位 の代表点の温度と平均温度は必ずしも一致しない。 ② 数値解析手法自体は、連成手法・Smith Model・着衣の扱い 方などに様々な問題点がある。 新たな人体熱モデルの開発が必要 新体温調節モデルの開発 (Sakoiモデル) 概要 部位周辺の外界条件、部位内の熱産生、皮下脂肪による断熱、血流による耐熱の再配分、発汗、ふるえに着目して、Smith Modelに基づき開発された。3次元体 温調節モデルの形状、組成にはSmith Modelを用いた。ただし、温度分布を反映した熱移動計算を行えるように、より微細な要素分割とする。 特徴 全身の血液に関する質量保存を改良する。 血液体積が変化する血管拡張・収縮を行わない。血管体積一定の場合、血流量設定値のみを変化する。 体内での3次元温度分布を再現できる。 断熱性の高い皮下脂肪などの伝導熱量を、組成自体の熱伝道率と3次元形状、組成内温度分布自体に基づき計算する。 高温条件ほど表在静脈を介して戻る血液の割合が大きくなって血流の1方向性が強くなる傾向を表現できる。 皮膚組織から戻る静脈血のみは表在静脈を介して搬出され、それ以外の組織から戻る血液は深部の静脈を介して搬出される。また、断熱性の高い皮下脂肪を 通過する皮膚血流のみを体温に応じて変動し、高温条件では皮膚血流が増加し、低温条件では皮膚血流が減少する。 ℃ 本モデル:T a = 25.5℃ Smithモデル:T a = 25.5℃ 実測値:T a = 25.5℃ 本モデル:T a = 28.0℃ Smithモデル:T a = 28.0℃ 実測値:T a = 28.0℃ 頭 手 前腕 上腕 首 脳 肺 内臓 骨(頭蓋) 骨(椎、脇、腰) 骨(四肢) 筋 脂肪 皮膚 足 下腿 局所皮膚温 Tsk i [℃] 37.0 35.0 33.0 31.0 29.0 27.0 頭 大腿 気温 = 放射温 = 28.0℃, 椅座, トランクスのみ, RH50%, 静穏 モデルの組成 椅座, 静穏, T a = T r (均一), RH50%, トランクスのみ モデルの計算例(皮膚温分布) 胸 背 腰 前 腰 後 上 腕 前 腕 手 大 腿 下 腿 足 モデルによる計算結果 と実測値の比較 ● 新体温調節モデルは産業技術総合研究所との共同研究として行われた。
© Copyright 2024 Paperzz