手紙療法 ∼認知症高齢者を対象とし た実施による学び ∼ セージュ新ことに F.L 1.はじめに 手紙を書く行為は 基本 に、 「文字を書く 、文章を構 成する」等の脳の働きに関 係する過 程があるが、その 他にも、 「 過去の出 来事や手紙を送る 相手のことを通し て自分を思い返す 」 等の精神療法でいう「回想 法」とも言える過 程も含まれており 、実際には脳や精 神に密接 に関わる工程が多く含まれ ている。 この度、「手紙 を書くこと」が、 知能の活性化、精 神の安定に良い働 きを与えると考え 、 実際に当施設入所中の認知 症高齢者の反応を 観察することがで きた為、ここにそ の実際と 学びについて報告する。 2.実際 対象は認知症高齢者のう ち、意思 疎通が可能で 、 「手 紙を書く 」ということが理 解できる 方と設定。文字が書きやす い罫線のないA4 サイズの色画用紙 を便箋として用意 した。手 紙を書く提案に対し、女性 の受け入れは良か ったが、男性は拒 否が多く今回参加 は得られ なかった。 手紙の宛先は個人の自由選 択としたが、その 全てが家族で、多 くは自分の子供( 子供と その配偶者)に宛てるもの が多かった。内容 も皆、「 家を頼む。」、「家族仲良くし ていって ほしい。」と後を頼む内容と 、 「 いつもありがと う。」と日ごろの感 謝を伝えるもので あった。 中には夫に宛て、「会えなくて寂し い。何時には帰路 に着く。」 という内容もあっ た。 書いている最中の変化では 、落ち着き無く徘 徊を繰り返す女性 が、手紙を書いて いる間 だけは椅子に座り、手紙を 書くことに集中す る様子が見られた り、いつも無表情 の女性が 家族のことについて笑顔で 話してくれた等が あった。 手紙を書いた後は皆、いつ相手に届くの かと気にかけ 、何度か尋ねたり する方もいたが 、 1 時間程度で手紙を書いた ことを忘れてしま っていることが大 半であった。 3.考察 手紙を書く習慣は個人差 もあり、特に男性 は家族に思いを伝 える習慣が女性に 比べ少な いため、受け入れが難しい 面がある。 手紙を書いた認知高齢者の 反応には、家族へ の思いを自由に伝 える等があり、自 己表現 の場として手紙療法が有効 であることがわか った。また、書い た後に手紙がどう なるのか 気にかけ、好奇心、関心の 表れであり、外的 刺激に対する好奇 心、関心が低下す る認知高 齢者の意欲や意識の引き出 しにある程度有効 であることがわか った。 4.おわりに 今回の実施では男性の参 加が得られなかっ たが、今後は提案 方法を検討し、男 性の参加 も促していきたい。また、 実際に相手から返 信を得た時の反応 の確認等、今後も この療法 を発展させ、活かすことで 利用者様の生活能 力の向上に日々取 り組んでいきたい 。
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