「ひきこもりは なぜ『治る』のか?」を読んで 若者のひきこもり問題は

「ひきこもりは
なぜ『治る』のか?」を読んで
若者のひきこもり問題は相変わらずのようで、日頃から「生きる喜びとは、人と係わり
合う喜び」と思う自分には、どうして「ひきこもる」を選択せざるをえないのか、その精
神構造(?)を常々知りたいと思っていた。
「ひきこもりは
なぜ『治る』のか?~精神分析的アプロ-チ~」のタイトルが目に止
まり、早速購読した。
著 者 は 、 先 の 番 組 「 爆 笑 問 題 の ニ ッ ポ ン の 教 養 」 で イ ン タ ビ ュ - を 受 け て い た 「 1000
件以上の臨床経験から治療を実践し、若者たちの心のありようを探求する『ひきこもり』
の 研 究 の 第 一 人 者 と し て 注 目 を 集 め て い る 」、 著 書 も 多 数 の 精 神 科 医 で あ っ た 。
「ひこもりの支援や治療のあり方について、主に理論的な面から解説」を目的とする書
で あ る だ け に 、 著 者 の 背 景 で あ る ラ カ ン の 「 自 己 愛 」、 コ フ - ト の 「 自 己 - 対 象 」 の 理 論
・概念は解説されているが、如何せん、精神分析的専門用語には疎い自分だけに十分理解
できなかったが、そうした理論を臨床にどう応用しているかの事例部分は読み易かった。
著 者 は 、「 ひ こ も り が 病 気 で は な く 」、「 人 間 関 係 そ の も の が 治 療 的 な 意 味 を も つ 」 と 云
う。
ま た 、「 対 人 関 係 と は 、『 自 己 - 対 象 』 と 出 会 う こ と で あ り 、 自 信 回 復 の ル - ル と し て 、
肯定的な対人関係(相手を肯定し、相手からも肯定されること)は、極めて重要なもの」
と解説している。
「ひきこもり」にはプライドが高いとか、責任転嫁とか、攻撃性が見られる人が多いと
云われているが、これも「自己-対象」の未熟さからの自信のなさ故とか。
ひきこもりで治療的対応のプロセスとして、まずは家族環境の調整、その上で、個人治
療、集団適応支援を提示しているが、それだけに、当人の最も身近な人間関係である家族
に 、「 本 人 に 変 わ っ て も ら い た け れ ば ま ず 家 族 が 変 わ る こ と 。」 と 云 い 、 人 の 心 は 「 十 人
十 色 」 だ け に 、 個 々 の ひ こ も り 事 例 に 双 方 向 性 を 重 視 し て 、 色 ん な 理 論 の 「 つ ま み 食 い 」、
「寄せ集め」で、試行錯誤的に向き合うしかないとも云う。
本 書 全 体 を 読 ん で み て 、( 精 神 科 医 、 カ ウ ン セ ラ - 等 も 含 め ) 人 と 係 わ り 合 う こ と で 、
「 変 わ り 得 る 自 分 の 存 在 」 に ま ず 気 づ く こ と が 、「 ひ き こ も り 」 か ら の 脱 出 の 一 歩 に な る
ような気がした。
も ち ろ ん 係 わ る 側 も 、「 生 き よ う と す る 生 命 と 互 い に 輔 け 合 い な が ら 、 生 き る と は ど う
いうことかを問い続け、そこから変わり得る存在」でありたい。
阿部幸泰
( 2007 年 12 月 17 日
記)