PDA 業務用 事例 ゲートレスシステムを構築 「本牧 ふ 頭 BCコンテナターミナル」は、2005 年 12 月に全面供用を開始した日本最大級の次世代 高規格コンテナターミナルである。横浜スタジアム を20 個収容可能な 50 ヘクタールの敷地には総延 長 1390m、水 深 13 ∼ 15m の 岸 壁 が 建 設され、 積載能力 8000TEU 超の大型コンテナ船が接岸で きる。 国土交通省の指定を受けた国内初のスーパー 中枢港湾として、24 時間対応型施設や、Web によ る事前搬出の受付システム、ブースレスシステムな ど ITを駆使した最新鋭システムが特徴である。 ここでのシステム構築に重要な役割を果たして スーパー中枢港湾を支える 業務用 を活用した 最新 アプリケーション Web 受付システムと W e P b D A Webを活用した新システムの構築に際しては、 それまでの基幹業務システムも併 せて再構築し、 同社を含めてターミナルを利用する同業 5 社が共 同利用するシステムの構築を目指すことになった。 2004 年 9 月の本稼働を目標に据えた開発がス タートしたのは 2003 年 7 月。当時導 入していた 「iSeries 820」上で、輸出入の全コンテナ情報を 管理する基幹業務システムを、RPG による社内開 発で全面的に再構築。ヤード管理や作業指示・荷 役管理、本船荷役計画を支援する各サブシステム はオープン系で運用。さらに Web 受付システムと ブ ースレスシステムは、Web 開 発ツールである 「XML-Bridgeフレームワーク」を利用して iSeries 上 で構築された。 Web 受付システムとは、荷主の依頼を受けた物 いるのが、鈴江コーポレーションである。港湾運送、 流会社が、事前に Webシステム経由で搬入出を申 物流、不動産事業の 3 つを柱とする同社は、早い し込むもの。 時期から横浜港本牧ふ頭でコンテナターミナル業 搬入出に必要な情報を事前に Web で入力する 務を展開してきた。新ターミナルの建設に際しては、 と、受付番号が発行される。トラックドライバーはイ スーパー中枢港湾育成事業 の 一環を担うべく、 ンゲートに設置されたタッチパネルにその番号を入 Web 受付システムやブースレスシステム構築に着 力すると、指示書とプラカード(ヤードの場所を示 手することになった。 す案内表)の番号が自動発行されるので、それに もともと同社は 1972 年のターミナル業務開始時 基づきコンテナをピックアップする。またアウトゲー からオフコンを使って基幹業務システムを構築。シ トでは「チェッカー」と呼ばれる担当者が積載コンテ ステム/38、AS/400、iSeriesと運用を続けてきた。 ナが適性かどうか、破損・損傷がないかなど状態 鈴江コーポレーション株式会社 eck h C m e Syst e l i b o M 算機) カシオ計 ( 0」 DT-5 1 0 IOPEIA S S A C 「 端末: ル IBM) モバイ (日本 ワーク」 ム 台 ー 1 フレ 数:1 導入台 -Bridge 「XML ェア: ウ ナ ト フ 入コンテ 使用ソ 月 が搬出 9 者 年 当 4 担 0 20 、作業 本稼働: ゲートで 化を図る ーミナル タ : の効率 的 業 作 ト 使用目 ー 用し、ゲ クに利 のチェッ 76 2007 no.2 第 特集 をチェックし、その結果を無線ハンディターミナルに 2 入力する。そのデータは無線経由で、iSeries にリ アルタイムに転送。ドライバーはゲートを出る際、プ デバイス別 ラカード番号をタッチパネルに入力して、搬出作業 が終了する。 以前は搬入・搬出時、ドライバーがいったん車 最新モバイルコンピューティング 両を降り、ゲート脇にある事務所で書類に記入・ 提出する手続きが必要であったが、現在は乗車し たままのタッチパネル入力で済むなど、極めて省 力化されている。これがブースレス (無人ゲート) シ ステムである。 ハンディ端末による ブースレスシステムの実現 Web 受付システムおよびブースレスシステムは、 図表 システム概要 取引先からのブラウザ入力、ゲートでのタッチパネ ル入力、チェッカーが使用する業務用 PDA など複 の「CASSIOPEIA DT-5100」をイン/アウトゲート 数のデバイスを想定し、iSeries 上の Webアプリケ 「Windows CE .NET 4.1日 に合計 11 台導入した。 ーションとして 開 発され た。 採 用され た XML- 本語版」を搭載した業務用 PDA であり、アクセスポ Bridgeフレームワークは、RPGとXML のスキルで イント経由で iSeriesとリアルタイムに直結する。同 Webアプリケーションを開発するツール。すべての 社では Windows CEを搭載する無線対応のハンデ ビジネスロジックをRPG で開発し、画面や機能の ィターミナルなどの選定作業を進めたが、屋外作 変更は RPGとXML のみを修正すればよい。 業を前提にした強度や防塵性、防水性などに加え、 今回の開発は日本 IBM が担当したが、難波尚 視認性の高いカラー画面であることを評価して採 正課長(港湾運送事業本部 海上営業部 港湾シス テム課)は、選定の理由を次のように語る。 「当社のシステム要員は RPG には精通しています が、Java など 他の言語はあまり得意としません。 今回の Web 系システムでは初期開発を外部に依 頼しましたが、修正や改良などのメンテナンスは自 • 設立:1908年 • 本社:神奈川県横浜市 • 資本金:16億円 • 売上高:235億円 • 従業員数:223名 • 事業内容:港湾運送事業、 物流事業、 不動産事業など • http://www.suzue. co.jp/ 用を決めたという。 「チェッカーは今まで紙の書類にチェック内容を書 き込み、それをドライバーに渡していました。それ がスタイラスペンを使って、小さなブラウザ画面に 入力することになるのでユーザー・インターフェース の設計が大きな課題になりました。入力項目は最 社で実施する計画でした。変更のほとんどはビジ 小化し、できるだけペンタッチが少なくなるよう工夫 ネスロジック部分で発生するので、RPG でそれが しています」と、海上営業港湾システム課の西田 行えるのは保守性が大変に高いと評価しました」 また無線ハンディターミナルには、カシオ計算機 company profile 秀興氏は語る。 2005 年 12 月には、5 社共用体制の開始による データ量の増加を考慮して、iSeries 820 から「i5 520」へリプレース。同時に、ユーザーの拡大に 応じた障害対策を講じるため、マシン導入を担当 した日本ビジネスコンピューターの 支援を得て、 難波尚正氏 西田秀興氏 海上営業部 港湾システム課 課長 海上営業部 港湾システム課 iSeries 810をバックアップ機にハイ・アベイラビリテ (ビーティス、当時) を導入した。 ィ製品「ORION」 こうした最新システムの運用が、スーパー中枢 港湾の舞台裏を支えているようだ。 http://www.imagazine.co.jp/ 77 話 事例 携帯電 シダックスは、レストランカラオケ事業をはじめ、 コーポレートカフェテリアを展開するコントラクト事業、 医療・福祉の場に食を提供 するメディカル事業、 事業用食材の購買と一元物流を担当するエスロジ ックス事業など、主要 5 事業を各事業子会社との 協業によって展開するグループ体制を敷いている。 中核事業の 1 つであるレストランカラオケ事業の 店舗数は、現在 302 店。最新のカラオケシステム と充実した料理に加え、いずれの店舗も50 ルーム を備え、パーティホール付きのロビーを基本とした ゆとりあるスペースが特徴だ。 そこで重要な役割を担うのが、会員制度「シダッ クスクラブ」をベースにした顧客管理システムであ る。同社では 2005 年 7 月、業界に先駆けて携帯 電話による会員制度をスタートさせた。それまでに もカードによる会員制度は展開していたが、顧客 情報の精度を高め、一元管理を徹底し、かつ個 人情報保護法にも対応するため、QRコード(2 次 元バーコード)による新しい会員制度を目指したの 携帯電話を活用し た新・会員システムで 多彩な顧 客サービスと マー ケティング分析を実現 より高度な顧客管理を目指し ケータイ会員制度を発足 と、携帯電話を使用する「ケータイ会員」の 2 本立 てで構想を進めていた。 「しかし携帯電話の急速な普及により、急きょ、ケ ータイ会員を先行させることが決定しました。そし て 2005 年 2 月に沖縄県の 2 店舗で試験導入を開 始し、同年 7 月に全国の店舗で運用に踏み切りま した」と語るのは、同グループの会員管理事業子 会社であるエス・アイテックスの峰なおこ事業本部 長である。 利用者がケータイ会員として会員登録する方法 は 2 つある。1 つは PC などから会員登録 URL へア クセスし、携帯電話のメールアドレスをはじめ氏名 や住所など必要な情報を入力・登録すると即座に、 携帯電話に会員番号と会員サイトの URLを記した メールが届くので、アクセスして、会員登録証とな るQRコードをダウンロードする。これで完了だ。 もう1 つは、各店舗に設置されているパンフレッ トやチラシに印刷された QRコードを携帯電話でス キャンし、読み取ったメールアドレスの宛先に空メ ールを送信する。するとやはり、携帯電話に会員 番号と会員サイトの URLを記したメールが届く仕 組みだ。 である。 こうして「My QRコード」を会員証として携帯電 検討がスタートしたのは 2003 年。当初は QRコ 話に登録したら、あとは入店の際に、その QRコー ードを印字した会員カードを発行する「カード会員」 ドを受付でスキャンするだけである。 シダックス株式会社 eck h C m e Syst e l i b o M 電話 る携帯 所有す が 者 店利用 カラオケ 4 2 万人 IBM) タイ会員 ー (日本 ケ : dge」 ri 台数 B /S 「C : トウェア 員証と 使用ソフ 度の会 月 会員制 7 る 年 5 れ 0 20 と呼ば 本稼働: クラブ」 ダックス シ 「 : 録 的 使用目 ードを登 に QRコ 話 電 帯 して、携 78 2007 no.2 サーバー上で、会員番号のみをベースに処理して 第 特集 アント側に記録させない。入室時間や精算は店舗 2 いく。 は、 「C/S Bridge」である。これはもともと、RPGを 使ってビジネスロジックや DBアクセスをSystem i 上 取りをソケット通信で制御するクライアント/サーバ ーシステム構築ツールとして、日本 IBM によって開 。インターネットを経 発された(後に Web 版も登場) 由せず、キャラクタベースのソケット通信を実行す るため、レスポンスが速いという特徴がある。 図表 システム概要 「携帯電話の CRコードをスキャンして、i5 から顧 客データが伝送されるまでの待ち時間は、お客さ まサービスの観点から絶対に避けたい点でした」 と、 店舗とi5 間のソケット通信を 鈴木正巳氏(エス・アイテックス ネットワーク担当)は C/S Bridge で実現 指摘する。各店舗とデータセンターは Bフレッツで 同社ではこの新・会員制度の発足に先立ち、会 、同社 接続しているが(一部地域で ADSLを利用) 員管理システムを運用するサーバーとして、初めて では 1300 万人分の会員情報を蓄積していた旧シ ステムのレスポンスタイムが 1.4 秒であった。その 「i5 520」を導入した。 ため、ケータイ会員でも同等のスピードを求めたが、 利用者がカラオケ店を訪れて、受付で携帯電 話の QRコードをスキャンすると、その情報がデー タセンターの i5 へ送られる。QRコードには会員番 号とメディアの属性(携帯かカードか)のみが記録 されており、i5 側ではそれを元に検索した氏名や 性別、年齢など会員を特定する情報を送信して、 店舗のクライアント側に表示 する。担当者はこの 画面を見ながら、受付を行い、カラオケルームを 手配する。カラオケ店では未青年の飲酒防止や、 都道府県条例に基づき18 歳未満の入店を制限す る地域や時間帯があるので、特に年齢確認は受 付時の重要な作業となる。 ただしいったん受付が終了したら、個人情報保 護の観点から、会員番号以外の情報は一切クライ 今のところ問題なく稼働しているという。 • 設立:2001年 • 本社:東京都渋谷区 • 資本金:89億3000万円 • 売上高:1579億5000万円 • 従業員数:約2万1000名 (平均臨時雇用者数を含 む) • 事業内容:コーポレートカフ ェテリア、医療・福祉・学校 への給食サービス、レストラ ンカラオケ、外食レストラン、 一元購買・物流システム、 店舗・店内設計などの各事 業 • http://www.shidax. co.jp/ company profile ケータイ会員から遅れること1 年、2006 年 7 月 には「カード会員」制度も発足した。会員証が携 帯電話かカードかの違いを除けば、スキャンした QRコードをi5 へ送信する仕組みはまったく同じで ある。 同社では新しい会員制度の下、ポイントの蓄積 や割引特典など多彩なサービスを提供するほか、 メール送信によるプロモーションや利用履歴の分 析によるマーケティング活動を行っている。今後は 特に、分析系の充実が大きなテーマになっている ようだ。 現時点ではケータイ会員が 42 万人に対し、カー ド会員は 80 万人とカード会員が大きく上回る。これ は旧会員カードからそのままQRコード付きの新カー ドに移行した例が多かったせいだが、今後はケー タイ会員ならではのサービスを充実させて、2007 峰 なおこ氏 鈴木正巳氏 エス・アイテックス 事業本部長 エス・アイテックス 情報ネットワーク 担当 年度はケータイ会員 100 万人を目指すという。 http://www.imagazine.co.jp/ 79 最新モバイルコンピューティング に構築し、クライアントとSystem i 間の電文のやり デバイス別 店舗側のバーコードリーダとi5を接続しているの
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