石川県立美術館だより BIJUTSUKAN

石川県立美術館だより
第370号
平成26年8月1日発行
BIJUTSUKAN
DAYORI
ロイヤル・アカデミー展
華麗なる英国美術の殿堂
ジョン・エヴァレット・ミレイ「ベラスケスの思い出」1868年
油彩・キャンバス ロイヤル・アカデミー・オブ・アーツ蔵
c Royal Academy of arts, London ;
Photographer:John Hammond
尊經閣文庫名品展
−国宝『類聚国史』を中心に−
Motion&Still 塑造・桐塑人形の美
−紺谷力・井口十糸・山本榮子−
夏休み親子で楽しむ美術館
木芯桐塑人形「大地へ」井口十糸
(Motion&Still 塑造・桐塑人形の美)
アートdeかるた
琳派名作選
館蔵優品選
−絵画・彫刻−
金胎蒔絵漆箱「飛翔」寺井直次
(アートdeかるた)
一、三〇〇円︵一、一〇〇円︶
八 年 に 画 家 、彫 刻 家 、建 築 家 、版 画 家 を 会 員 と し
ロイヤル ア
・ カデミー・オブ・アーツは、一七六
高く、そして個性溢れるコレクション
ミー各会員が自薦で提出した優品で、非常に質が
に よ る 大 規 模 な も の で す 。そ の 中 核 は 、ア カ デ
創設により、英国美術は独自の道を歩みはじめ、
な ど の 人 材 が 育 っ て い ま す 。こ の ア カ デ ミ ー の
育を提供し、ターナーやカンスタブル、ブレイク
す る と と も に 、教 育 機 関 と し て 専 門 的 な 芸 術 教
創設当初から二〇世紀初頭までのア
に飾った歴代会員の優品を中心に、
ジ ェ ン ト な ど 、英 国 美 術 界 を 華 や か
ナ ー 、カ ン ス タ ブ ル 、ミ レ イ 、サ ー
ノ ル ズ を は じ め 、ゲ イ ン ズ バ ラ 、タ ー
2
BIJUTSUKAN DAYORI No.370
◆料金表
大
人
一、〇〇〇円︵八〇〇円︶
六〇〇円︵四〇〇円︶
大高生
中小生 ︵
内は二〇名以上の団体料金、
及び前売料金です。
※ ︶
当
※館友の会会員は会員証の提示により団体料金に割引されます。
◆関連行事
講演会
会場 当館ホール
先着二〇〇名、聴講無料
﹁ロイヤル ア・カデミー展の見どころ﹂
8月1日 金
講師 五木田聡氏︵東京富士美術館館長 ︶ ( ) 午後2時∼3時
て 、国 王 ジ ョ ー ジ Ⅲ 世︵ 一 七 三 八 ∼ 一 八 二 〇 ︶の
として有名です。
﹁ロイヤル ア・カデミーとシェイクスピア、そしてターナー﹂
8月9日 土
講師 河村錠一郎氏︵一橋大学名誉教授︶
( ) 午後2時∼3時
庇 護 の も と 設 立 さ れ た 英 国 の 芸 術 機 関 で す 。芸
確 固 た る ア カ デ ミ ズ ム を 築 い た の で し た 。現 在
カデミーにおける一五〇年の歴史を
術家への財政支援を目的に年次の展覧会を開催 本 展 で は 、ア カ デ ミ ー 初 代 会 長 レ
に 至 る ま で の 約 二 五 〇 年 間 、ロ イ ヤ ル ア
・ カデ
た ど り ま す 。日 本 初 公 開 作 品 七 十 点
﹁ 美 の 殿 堂 ﹂ロ イ ヤ ル・ア カ デ ミ ー の
ミーの歴史はまさに英国美術の歴史そのものと
ア カ デ ミ ー の コ レ ク シ ョ ン は 、絵 画︵ 九 四 〇
コ レ ク シ ョ ン を 紹 介 し 、英 国 美 術 の
余 を 含 む 、い ま だ か つ て な い 規 模 で 、
点︶、彫刻︵一、一八〇点︶、版画︵八、〇〇〇点︶、素
真髄に迫ります。
言っても過言ではありません。
描
︵一〇、
〇〇〇点︶
、
初期写真
︵五、
〇〇〇点︶
など
レノルズ「セオリー」1779∼80年
c
All images Royal
Academy of arts, London
ターナー「ドルバダーン城」1800年
Photographer:Prudence Cuming Associates Limited
ウォーターハウス「人魚」1900年
Photographer:John Hammond
1F企画展示室
ロイヤル・アカデミー展
華麗なる英国美術の殿堂
主催:北陸中日新聞、石川県立美術館、ロイヤル・アカデミー・オブ・アーツ、石川テレビ放送
後援:ブリティッシュ・カウンシル、石川県、金沢市、金沢市教育委員会、エフエム石川
協力:東京富士美術館
8月1日(金)∼8月31日(日)会期中無休
毎年この時期に開催する恒例の尊經閣文庫名
道 部 六 ﹂︶は 現 存 最 古 の 平 安 時 代 末 期 の 古 写 本 で
一七一﹁災異部五﹂
・一七七﹁仏道部四﹂
・一七九﹁仏
るいじゅこくし
品 展 で す 。今 回 は 国 宝﹃ 類 聚 国 史 ﹄を 二 十 六 年 ぶ
により、寛平四︵八九二︶年に成立したものです。
は前田家が遠祖として尊崇する菅原道真の編纂
て 編 年 と と も に 分 類 編 集 し た 歴 史 書 で す 。こ れ
録 ﹄﹃ 日 本 三 代 実 録 ﹄︶の 記 事 を 、そ の 内 容 に 従 っ
紀 ﹄﹃ 日 本 後 紀 ﹄﹃ 続 日 本 後 紀 ﹄﹃ 日 本 文 徳 天 皇 実
﹃ 類 聚 国 史 ﹄と は 、六 国 史︵﹃ 日 本 書 紀 ﹄﹃ 続 日 本
る書籍や資料の収集にも力を注いでおり、道真の
よ る も の で す 。な お 、綱 紀 は 道 真 や 菅 原 氏 に 関 す
は、綱紀が菅原道真を篤く尊崇した特別な想いに
していますが、こうした﹃類聚国史﹄収集への熱意
ています。そのほか室町時代の写本も二種類入手
紀はこの入手以前に、すでにその模写本を作らせ
賀 藩 五 代 藩 主 前 田 綱 紀 に よ る も の で す 。ま た 、綱
す 。前 田 家 の 入 手 時 期 は 、学 者 大 名 と い わ れ た 加
もとは本文二〇〇巻・目録二巻・系図三巻の計二
自 撰 漢 詩 文 集﹃ 菅 家 文 草 ﹄や﹃ 菅 家 系 図 ﹄な ど も 合
りに公開します。
〇 五 巻 で し た が 、現 存 す る の は 六 十 二 巻 の み と
わせて展示します。
国宝「類聚国史」
(巻第165巻頭)
りっこくし
な っ て い ま す 。そ の 内 容 は 神
、帝 王 、後 宮 、人 、
︵前後期で作品の巻替えを行います︶
業の先がけといえるものです。
歳 時 、音 楽 、賞 宴 、奉 献 、政 理 、刑 法 、職 官 、文 、田 このような綱紀の業績は、今日の文化財保存事
地 、祥 瑞 、災 異 、仏 道 、風 俗 、殊 俗 と い う 十 八 の 分
類︵類聚︶ごとにまとめられています。
前田家に伝わる四巻︵巻第一六五﹁祥瑞部上﹂
・
目的とした世界記憶遺産の国内候補の一つに選ばれました。
界 文 化 遺 産 に 認 定 さ れ た こ と で す 。ま た 、国 宝﹁ 東 寺 百 合 文 書 ﹂が 重 要 な 歴 史 文 書 の 保 存 を
昨 今 の 文 化 財 に 関 す る ホ ッ ト な ニ ュ ー ス は 、昨 年 の﹁ 富 士 山 ﹂に 続 き 、﹁ 富 岡 製 糸 場 ﹂が 世
学芸員の眼
﹁ 東 寺 百 合 文 書 ﹂は 、仏 教 史 は も ち ろ ん 中 世 史 を 解 明 す る う え で 貴 重 な 歴 史 資 料 で す 。前
田綱紀は、日本各地に家臣を派遣して書物を求めましたが、東寺の文書にも注目し、借用し
て 目 録 の 作 成 や 文 書 の 書 写 を 行 い 、貞 享 二︵ 一 六 八 五 ︶年 、こ れ ら の 文 書 を 整 理 保 管 す る た
め の 桐 箱 百 個 を 作 ら せ 、文 書 を 納 め て 寄 進 し ま し た 。こ の こ と か ら﹁ 百 合 文 書 ﹂と 呼 ば れ て
います。こうした綱紀の文化事業には、文化財保存管理への高い見識が認められますが、そ
れ故に、今日の世界記憶遺産候補に選ばれたのではないでしょうか。
BIJUTSUKAN DAYORI No.370
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特別陳列
尊經閣文庫名品展
前田育徳会
尊經閣文庫分館
ー国宝『類聚国史』を中心にー
前期:7月31日(木)∼8月15日(金)
後期:8月16日(土)∼8月31日(日)会期中無休
第5展示室
特別陳列
Motion & Still 塑造・桐塑人形の美
ー紺谷力・井口十糸・山本榮子ー
7月31日(木)∼8月31日(日)会期中無休
しょうふのり
ま で 広 が る と 、手 工 芸 品 と し て 大 き く 発 展 し ま
り 、次 第 に そ の 役 割 は よ り 日 常 的 な 儀 式 や 行 事
て愛玩物として古代から日本人の生活に関わ
人 形 は 宗 教 的 な 祈 り や 崇 拝 な ど の 対 象 、そ し
かな肢体に美しい紙や布地の色づかいで華やかに
世界を築きました。山本の造る女性たちは、しなや
生きとし生けるもののいとなみを描き出す独自の
る桐塑と自ら染めた和紙などで幼児の姿を表し、
現在展覧会出品を中断していますが、温かみのあ
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BIJUTSUKAN DAYORI No.370
桐塑とは桐のおがくずを生麩糊で練って粘土状にしたもので、固まると質感が木に近く、
木彫よりも細かな表現がしやすい素材です。桐を素材とする理由は、他の木材に比して脂が
出にくいためですが、乾く過程で割れが生じることが多く、井口や山本は木彫でおおまかな
形を作り、
その上に桐塑で細部を造る木芯桐塑という技法をとっています。
対して紺谷は、ステンレス棒で芯を造り、樹脂入りの粘土で成形した堅牢性の高い塑造で、
木彫を基礎とする木芯桐塑よりも成形の自由度が高く、一瞬の動きをとらえる紺谷の作品に
ふさわしい技法です。石川県の人形界を牽引した下口は木彫。作家たちは独自の表現を求め
した。現在、展覧会で観ることのできる創作人形
彩られ、混迷する時代にとまどいながらも前を向
て、
技法や素材の工夫を重ねているのです。
は 、こ の よ う な 連 綿 と 続 く 歴 史 を 背 負 っ た 工 芸
人形は形としては人体彫刻に近いですが、彫刻
く姿を示しています。
石 川 県 に お け る 人 形 は 、木 彫 彩 色 人 形 を 主 に
が造形的な美しさを追求した先に、心象表現を生
作品と言えるでしょう。
制 作 し た 下 口 宗 美 が リ ー ダ ー と な り 、そ の 下 で
め に 、人 体 の 造 形 美 を 用 い た の が 人 形
み出すこととは逆に、人の心の動きを表現するた
家 た ち の 中 か ら 、日 本 伝 統 工 芸 展 を 中 心 に 活 躍
で あ り 、そ れ ゆ え に 情 感 に 訴 え る 力 が
多 く の 作 家 が 育 ち ま し た 。本 展 で は こ れ ら の 作
す る 三 人 の 塑 造 人 形・桐 塑 人 形 の 作 家 、紺 谷 力 、
あ り ま す 。人 間 の 動 き︵
︶や 静 止
Motion
井口十糸、
山本榮子を紹介します。
︶し た 瞬 間 の 美 し さ を と ら え た 作
Still
品 か ら 、そ れ ぞ れ の 作 者 が 込 め た 思 い
︵
て 、奉 納 の 舞 楽 を 演 じ る 少 年 な ど の 古 典 的 な モ
を感じていただければ幸いです。
紺谷は塑造に彩色する伝統的な技術を用い
チーフで、躍動的な動きを見事にとらえた、臨場
感 の あ る 作 風 は 高 く 評 価 さ れ て い ま す 。井 口 は
下口宗美 木彫加彩人形「愛宕浄晨」
紺谷力 彩塑人形「腰鼓遊楽」
山本榮子 木芯桐塑人形「風花」
学芸員の眼
展 示 を 楽 し ん で 頂 く 企 画﹁ 夏 休 み 親 子 で 楽 し む
夏 休 み 恒 例 、子 ど も た ち を は じ め 、ご 家 族 で
は 、ち っ と も 不 思 議 な こ と で は あ り ま せ ん 。こ の
ても家族やお友達が違う作品を指さしているの
を 言 葉 に 表 し た も の 。だ か ら 、同 じ 読 み 札 を 聞 い
で
美 術 館 ﹂。今 年 の テ ー マ は﹃ ア ー ト
か る た ﹄。美
術館でかるた?みなさんお馴染みのかるたの
が出て来た時は、どうしてそう思ったのか聞いて
よ う に 、答 え は 一 つ で は な い の で す が 、違 う 答 え
しょう。
の見方の扉をあけてくれるきっかけになるで
分と違う意見を聞くのも、あなたが知らない作品
みましょう。他の人がどんなふうに感じたのか自
ル ー ル に の っ と り 、美 術 作 品 を 楽 し く 鑑 賞 す る
企画です。
展示室に入ったら
か る た と 同 じ よ う に 、読
…
み札を一つ取って読んでみましょう。
さ あ 、こ の 読 み 札 を 表 し た 展 示 作 品 は ど れ だ
つ け て み ま し ょ う 。そ し て 、あ な た 自
と 思 い ま す か ?﹁ あ れ か な ? ﹂、﹁ こ れ か な ? ﹂。 さ あ 、今 度 は あ な た の お 気 に 入 り の 作 品 を み
お や 、一 緒 に 来 た 家 族 や お 友 達 は あ な た と 違 う
身の見方でその作品をどんな風に感
てみませんか?
じ た か 、と っ て お き の 読 み 札 を つ く っ
作品を指さしているかもしれませんね。
実 は こ の ア ー ト か る た 、答 え は 一 つ と は 限 ら
な い の で す 。と い う の も 、美 術 作 品 は 、そ れ を 見
る人によって注目するところもその作品をみて
どう感じるかも違うのです。この読み札もまた、
そ の 読 み 札 を つ く っ た 人 が 一 番 心 に 響 い た こと
し た 。参 加 人 数 は 少 な か っ た も の の 、参 加 者 か ら こ の﹁ ア ー ト か る た の 活 動 を も う 一 度 ! ﹂
ん な の 前 で 、で き あ が っ た 読 み 札 を 読 み 上 げ 、ど の 作 品 か 当 て る の も 、ま た 、楽 し い 活 動 で
づ く り の 楽 し さ に は ま り 、最 終 的 に は 参 加 者 そ れ ぞ れ が 複 数 枚 の 読 み 札 を 完 成 。そ し て み
れた幻想的で不思議な世界の能島先生の作品の魅力に引き出され、参加者は徐々に読み札
札 ﹂を 作 品 を ど う 捉 え た か と い う 鑑 賞 者 の 感 性 で つ く り ま し た 。い ろ い ろ な 要 素 で 構 成 さ
し も う ﹂が 行 わ れ ま し た 。能 島 先 生 の 作 品 が か る た で い う と こ ろ の﹁ 絵 札 ﹂、そ し て 、﹁ 読 み
昨年の秋、特別陳列﹁能島芳史展﹂での小学生親子対象の鑑賞講座で、﹁アートかるたを楽
学芸員の眼
富永直樹「大将の椅子」
越塚友邦「廬山観瀑図」
de
という要望が出るほど好評で、それが今回の展示につながりました。
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夏休み親子で楽しむ美術館
第6展示室
アートdeかるた
7月31日(木)∼8月31日(日)会期中無休
第3・4展示室
第2展示室
館蔵優品選 ー絵画・彫刻ー
琳派名作選
7月31日(木)∼8月31日(日)会期中無休
7月31日(木)∼8月31日(日)会期中無休
くり読み解く鑑賞方法も、琳派への知的なアプローチ
こで作者がどのような趣向を仕掛けているのかをじっ
光琳の没後三〇〇年の節目となる二〇一六年に向け
として今後さらに注目されることでしょう。
屋宗達と琳派﹂
展で明らかにしたように、
その根底には
ぜた﹁光悦色紙貼交秋草図﹂、宗達晩年の名作﹁槇檜図﹂、
今和歌集﹄
の歌を揮毫したものを三十六枚屏風に貼り交
ないようにすることが、演技者の要諦だとする﹁秘す
これは、ここが見せ所だということを鑑賞者に知られ
形光琳のデザインによる
﹁蒔絵螺鈿野々宮図硯箱﹂
と
﹁蒔
草図﹂
、
そして相説から宗達以来の表現を受け継いだ、
尾
当時の先端的な学問だった博物学的な観点で描いた
﹁秋
に、ステンレス・乾漆など様々な素材を扱いま
6
BIJUTSUKAN DAYORI No.370
昨年当館で開催された﹁俵屋宗達と琳派﹂展は、尾形
た、
新たな琳派ブームの先駆けとなったようです。
琳派
平安時代以来の
﹁知のあそび﹂
の伝統が生きています。
宗達の後継者俵屋宗雪が、
加賀藩の発注により描いたと
宗達工房が制作した色紙に、
本阿弥光悦が
﹃古
の魅力は親しみやすい造形美にあるといえますが、﹁俵 今回は、
世阿弥は﹃風姿花伝﹄で、﹁見る人のため花ぞとも知
れば花﹂の精神と解釈することができるでしょう。能
絵螺鈿白楽天図硯箱﹂、以上石川県指定文化財ほか二点
らでこそ、為手の花にはなるべけれ﹂と述べています。 考えられる﹁群鶴図﹂、宗雪の後を継いだ喜多川相説が、
楽と深く関わりがあった宗達や光琳の作品が示す親
淳、立見榮男、西田洋一郎、西房浩二などの作品を展示
を展示します。
近現代の絵画・彫刻部門においては、館蔵優品選と
します。写実から抽象を交えた具象作品、そして抽象画
しみやすさにも、確かにこの精神は生きています。そ
題してこの部門における当館の優品、代表的な作品を
まで、本県ゆかりの洋画家達が、それぞれに築き上げた
独自のスタイルを、優品によりご覧いただきます。
ご覧頂きます。
日本画部門では、まず大正、昭和期に活躍した前田
体 空
・間造形で、さらに物質芸術でもある彫刻では様々
な材質が使われていて、作品テーマやフォルムに最も
青邨の﹁鮒﹂、安田靫彦の﹁飛鳥をとめ﹂、伊東深水の﹁酔 彫刻部門も館蔵品を中心とする優品の展示です。立
たる作家たちには知られざる名品が多いものです。こ
合った素材を選ぶと共に、制作では素材の特徴を生か
燕台翁﹂などの優品をご覧頂きます。こういった名だ
れらの作品もその内に数えられるものと自負するも
全国的に知られる西山英雄、石川義ら、石川にゆかり
す が 、同 じ 素 材 の 作 品 の 中 に も テ ー マ や 表 現
のです。そして昭和、平成に京都画壇を中心に活躍し、 す こ と も 重 要 で す 。展 示 で は ブ ロ ン ズ を 中 心
深い物故作家の作品を中心にご覧頂きます。
もお楽しみください。
油彩画では清水錬徳、高光一也、南政善、宮本三郎、 により多様な表情を示す素材の魅力について
鴨居玲、吉田富士夫など物故作家の代表作に、現在活
躍中の池田良則、
大場吉美、
加藤安佐子、
白尾勇次、
田井
県文 俵屋宗達「槇檜図」江戸17世紀
安田靫彦「飛鳥をとめ」
企画展Topics
秋季企画展
「工芸王国の実力!」
会期:平成26年9月27日(土)∼10月26日(日)
石 川 県 立 美 術 館 は 、昭 和 三 十 四 年 の 旧 館 開 館 以 来 、
石川県の美術文化の継承と発展を担い、活発な美術館
活動を推進してきました。その五十年を超える活動の
中 で 、す ぐ れ た 美 術 作 品 の 収 集 を 積 極 的 に 行 い 、今 日
では約三、〇〇〇点のコレクションを形成するに至っ
て い ま す 。と り わ け 、藩 政 時 代 よ り 伝 統 技 術 が 受 け 継
が れ て き た 工 芸 の 分 野 に お い て は 、陶 磁 、漆 工 、染 織 、
金 工 、木 竹 工 な ど 、あ ら ゆ る ジ ャ ン ル に わ た っ て 高 い
水準をもつ内容となっています。
第十二回美術館バスツアー報告
なりが感じられるようでもありました。
平成
年
月 日︵日︶
氏の解説で、展示室と古径邸を鑑賞しました。吉田五十八作の邸宅は興味深く、古径の人と
もあり、御本廟の彫刻の美しさに感嘆。次に訪れた小林古径記念美術館では、学芸員の笹川
午前中は高田方面へ向かい、最初に親鸞ゆかりの浄興寺へ行きました。お寺からの説明
じていただこうという企画でした。
て ﹂
̶。親鸞聖人・上杉謙信・小林古径という上越ゆかりの先人たちの思いに触れ、歴史を感
新潟県上越市を巡った今回のバスツアーは、題して﹁上越のこころ 高
̶田・春日山を訪ね
25
治 期 か ら 今 日 に い た る 作 品 群 を 、制 作 さ れ た 時 代 に
ま じ え て 約 一 二 〇 点 を 展 示 い た し ま す 。会 場 で は 、明
る作品や県内の個人、機関にご所蔵されている名品を
の中から優品を選りすぐり、またご寄託いただいてい
全体に足早での行程となり申し訳なく思っておりますが、無事に
がら山城を体感し、
歴史に思いを馳せる締めくくりとなりました。
ティアガイドの案内で、城跡頂上・本丸を目指しました。汗を流しな
れ ま し た 。旅 の 最 後 は 春 日 山 城 跡・春 日 山 神 社 記 念 館 で す 。ボ ラ ン
泉寺では、ご住職のお話や寺院の端々から謙信の深い精神性が伺わ
戦国の食事を再現した昼食を挟み、午後からは春日山方面です。凛とした雰囲気漂う林
沿って展示構成し、石川の近現代工芸の流れを概観す
ツアーを終えられましたのも参加者の皆様のご協力によるものと感
午後
八月の行事予定
■小学生親子鑑賞講座
分∼
2階コレクション展示室
るとともに、明春の北陸新幹線開業のプレイベントと
本 展 は 、近 現 代 工 芸 の コ レ ク シ ョ ン 約 一 、〇 〇 〇 点
26
■講演会
日︵ 土 ︶
午後
時∼
美術館ホール
聴講無料
時
講師 河村錠一郎氏︵一橋大学名誉教授︶
分∼
美術館ホール
入場無料
﹁美の美 ターナー
狂気をさそう風景画家
︵ 分︶
日︵ 日 ︶ 誰も私の絵を好きになる権利はない﹂
﹁続・美術のみかた 西洋美術の流れー様式の歴史ー﹂ ︵ 分︶
■ビデオ鑑賞会
﹁ロイヤル・アカデミーとシェイクスピア、そしてターナー﹂
日︵ 金 ︶ ﹁ロイヤル・アカデミー展の見どころ﹂ 講師 五木田聡氏︵東京富士美術館館長︶
午後
日︵ 土 ︶
﹁アート かるた をたのしもう﹂
日︵ 日 ︶
時
謝いたしております。この場をお借りしてお礼申し上げます。
だくことができることと思います。
見どころの一つとしては、当館コレクションを代表
する名品・松田権六作
︽蓬萊之棚︾
を、
特設台に展示して
ご鑑賞いただきます。通常はガラスケースの中の展示
で、
一方向からしかご覧いただけませんが、
今回は四方
からの鑑賞が可能となります。併せて作品が制作され
30
30
た当時の状況をうかがわせる、作者によって細かく記
de
67
された底板の銘を写真パネルで紹介します。
2
1
2
そのほかいくつかお
10 2
1
9
31
すすめの見どころがあ
りますが、次回ご紹介し
たいと思います。
5
23
30
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7
1
して、あらためて当県の工芸の実力を再認識していた
松田権六「蓬萊之棚」
やや灰色がかった温かみのある桃色地
魅力にあふれています。
の 流 れ の よ う に 配 し た 梅 花 散 ら し と 、四
小 花︵ 菊 花 ︶散 ら し 、背 中 か ら 左 裾 ま で 川
く 千 鳥 格 子 、右 側 の 裾 と 前 身 ご ろ 下 部 に
涌 、左 側 の 袖 か ら 前 身 ご ろ に か け て 大 き
異なる小紋を組み合わせた、付下小紋﹁流
ね 、四 十 七 年 に は 第 十 九 回 展 で 二 種 類 の
日 本 伝 統 工 芸 展 初 入 選 後 、同 展 入 選 を 重
染 を 学 び ま し た 。昭 和 三 十 八 年 に 第 十 回
れ、国本亀次郎、津沢三次に師事して小紋
に 、向 か っ て 右 側 の 肩 か ら 袖 の 前 後 に 立 中 儀 延 は 明 治 二 十 八 年 、金 沢 市 に 生 ま
種 類 の 異 な っ た 小 紋 を 組 み 合 わ せ て 、付
れ 小 花 ﹂で 日 本 工 芸 会 会 長 賞 を 受 賞 し ま
した。
下風に構成した着物です。
江戸小紋の明快な色彩とは違った柔ら
か い 色 合 い 、花 な ど の 有 機 的 な 柄 と 幾 何 五 十 三 年 に は 加 賀 小 紋 で 、石 川 県 指 定
た部分︶の多寡で表す濃淡など、絶妙なバ
る坂口幸市は、中儀延の孫であり、また弟
現 在 、加 賀 小 紋 の 第 一 人 者 と し て 活 躍 す
無形文化財保持者に認定されています。
ラ ン ス で 成 り 立 っ た デ ザ イ ン は 、確 か な
子としてその技術と伝統を今に受け継い
学文との組み合わせ、白場︵白く染め残し
技 術 を 礎 に し た も の で あ り 、着 物 の 古 典
でいます。
― 道化師たち ―
的 な 意 匠 構 成 を 踏 襲 し な が ら も 、新 鮮 な
8月は無休で
開館しています
秋のけはひ
今月の開館時間
午前9:30∼午後6:00
第6展示室
※
( )
内は団体料金
加賀藩の美術工芸
仏画と肖像画
一 般 360円(290円)
大学生 290円(230円)
高校生以下 無料
会期:9月3日
(水)
∼9月23日
(火・祝)
ご利用案内
コレクション展観覧料
第2展示室
前田育徳会
尊經閣文庫分館
次回の展覧会
絵画的意匠の展開
午前10:00∼午後7:00 年中無休
首と肖像彫刻を
中心に
鴨居 玲
明治28年∼昭和56年(1895∼1981)
中 儀延 なか・よしのぶ 第5展示室
第4展示室
第3展示室
つけさげこもんほうもんぎ 昭和53年(1978)第25回日本伝統工芸展 所蔵品紹介245
付下小紋訪問着
毎月第1月曜日はコレクション展示室
無料の日
(8月は4日)
カフェ営業時間
石川県立美術館だより
第370号〈毎月発行〉
2014年8月1日発行
〒920-0963
金沢市出羽町2番1号
Tel:076(231)7580
Fax:076(224)9550
URL http://www.ishibi.pref.ishikawa.jp/
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BIJUTSUKAN DAYORI No.370