カナダにおける持続可能な森林管理の概要 目次 1 広大で複雑な資源 2 カナダにおける森林管理について 3 民有林:価値ある財産 4 カナダにおけるパートナーシップ方式での持続可能な森林管理 持続可能な森林管理への決意宣言 5 持続可能な森林管理の定義と測定 7 持続可能な森林管理テストする 持続可能な森林管理の推進 生態系の伝統的知識を持続可能な森林管理に応用 8 持続可能な森林管理:世界の目標 持続可能な森林管理のグローバルな定義 9 持続可能な森林の定義の世界的合意 10 国際協力への基準確立 11 森林と気候変動の関係の研究 12 森林の生物多様性の保全 要約と結論 14 森林の認証:カナダ政府の見解 16 カナダの森林地 カナダにおける持続可能な森林管理の概要 カナダの歴史をたどると森林は私たちの 発展において常に大きな役割を演じ、国 民のアイデンティティを形成してきた。 森林はカナダ人全体の生活を豊かにして いる。過酷な気候を和らげ、私たちが呼 吸する大気と飲む水をろ過し、安らぎと レクリエーションの地を与えてくれる。 さらに森林産業は、カナダ人 16 人に l 人 が従事し、340 にも上るコミュニティの存 在を支えて、すべての州と準州の富に大 きく貢献する経済の基盤でもある。 カナダの森林はその大部分(94%)が公有林 というユニークな存在である。国内の森 林の 71%を州政府が、約 23%を連邦政府と 準州政府が、それぞれ国民に代わって管 理している。残る 6%は民有林で、所有者 の数は 42 万 5000 人を超える。 広大で複雑な資源 国士のほぼ半分を覆い尽くす森林はカナ ダの景観を圧倒する存在である。カナダ の森林地は広大なだけでなく、同時に非 常に変化に富んでいる。この国では、森 林管理へのアプローチはこうしたユニー クな条件、そして知識と国民の価値観の 変化に対応しながら発達してきたので ある。 カナダの森 カナダの森林 単位:百万ヘクタール 伐採済みの森林 1.0 施業対象林 119.0 経済林 234.5 森林総面積 417.6 国土面積合計 921.5 カナダではどの時代でも森林に関す る法律や管理が世論に影響されてき た。 今日、市民の参加によってそれらが 直接形成される傾向がますます強ま っている。 こうした森林は環境的、社会的、経済的 な価値を表すものとして、末来のカナダ 人にとってこの上もなく重要である。森 林に複数の価値を見出したことで、私た ちは幾多の課題に直面し、カナダにおけ る森林管理---森林の生態系に関する知識 を分かち 合い、コンセンサス作りを意思決定の基 本とする方式---の新時代を導きだした。 ブリティツシュ・コロンビア州沿岸地方 のそびえ立つ温帯雨林から、北極圏の高 木限界に沿ったまばらで成長の緩慢な森 林まで、カナダには 8 つの森林地域が ある。どの地域もそれぞれ特有の動植物 が分布している。全国では 180 種の樹木 が生育すると推定されている。カナダの 森林の 67%は針葉樹林、15%は広葉樹林、 18%は混交林である。カナダはさらに 15 の陸上生態系帯、194 の生態系地域、そし て 1000 を越える生態系地区が存在すると いってもよい。このような多彩な森林生 態系が推定 14 万種の動植物と微生物が生 命を営む多様な生息地を作り出している のである。 カナダはまた、森林国家として、持続可 能な森林管理に対する共通のビジョンの 確立を目指す国際的な努力にも参加し、 森林科学技術の蓄積した知識を開発途上 国と分かち合っている。 1 カナダの森林の平均寿命は西から東へい くに連れて短くなる。林齢 160 年を超え る森林が見られるのは西部のみである。 この地域格差は樹種の寿命と災害の頻度 を反映したものである。毎年、数百万へ クタールの森林が火災や害虫の被害に遭 遇する。私たちの森林のほとんどがほほ 同齢林なのはこうした大災害の結果であ る。 カナダは今もって広大な自然林に恵 まれている数少ない先進国のひとつ である。 カナダの森林 4 億 1760 万へクタールのう、 木材製品や木材製品以外の様々な恩恵を 生み出すことができる「経済林」と考え られているのは 2 億 3500 万へクタールで ある。現在、経済林のうちの l 億 1900 万 へクタールが施業林として管理されてお り、残りはまだアクセスがないか、ある いは木材として配分されていない。非経 済林の内容は、天然の小径木、潅木及び マスケグから成る開放林である。 毎年カナダでは森林のほぼ 0.4%が伐採さ れる。森林の自然の多様性を守り、コス トを抑えるため、伐採された土地の半分 以上が、ふつう何らかの準備的な処理を 施した上で自然の更新に任されている(火 災や病虫害に見まわれた区域も自然の更 新に任せている)。 森林管理計画に織り込まれるべき森 林への価値観が多様性を増すに 従い、カナダの森林管理は複雑さを 増している。 カナダではいくつかの伐採方式を使用し ている。寒帯林地域で広く使われてきた 皆伐方式は自然の更新を促し、ジャック パイン、ロッジポールパイン、黒トウ ヒ、アスぺン、シラカバなど、日当たり を必要とする樹種で更新されるのが普通 である。この他に、日陰に強い樹種で更 新されることが多い森林地域では、漸伐、 または傘伐、または択伐といった伐採方 式が用いられている。過去 20 年に得られ た森林の生態系に関する新しい情報や深 い理解が伐採方式のガイドラインの変更 をもたらし、さらに野生生物の生息地の 維持、土壌の保護と自然の景観の保全が 強調されるようになった。 カナダの森林の中には伐採を禁止する政 策や法律によって保護されている場所が ある。たとえば、 カナダにおける 渓流の近くや急斜 森林管理計画の枠組み 面のような環境破 壊が起きやすいと 州/準州の森林法 ころにあるものは、 および 規則 森林管理政策によ って伐採が禁じら れている。他にも、 政策 私たちの国土と淡 水を代表する区域 土地利用計画 のネットワークを および戦略 保存する決意の現 われとして、法律 によって保護され 森林目録 ている森林がある。 カナダ保護区域デ 森林管理協定 ータペース および (Canadian 森林業許認可 Conservation Areas Database) 森林管理20年計画 によると、1995 • 森林管理 年現在でカナダの • 年間伐採許可量 森林の 7.6%以上 • 持続可能な伐採水準 がこの保護区域に 含まれている。 操業計画 カナダにおける 森林管理につい て 5ヶ年計画 年次計画 カナダにおいては、 州政府監視および査察 昔、すなわち 1867 年憲法制定 一般市民の意見聴取 のときから、森林 管理の責任の所在 はすでに明確であった。しかし、この責 任を果たす方法は時の流れとともに大き く変化した。 2 カナダ憲法において、公有の森林地に対 する所有権および立法権は州政府に与え られている。これはカナダの総森林面積 の 71%に相当する。今日、各州政府はそれ ぞれに法律を制定し、さまざまな規制、 基準および制度を設けて森林の伐採権お よび管理責任を配分している。さらに、 州政府の多くが森林管理計画のプロセス で一般市民の参画を義務付けた法律を制 定している(森林管理計画の枠組みを参 照)。州のレクリエーション、文化、野生 生物および経済的な価値が州の森林管理 計画と意思決定に取り入れられるよう に、一般市民から森林産業、先住民団体 および環境保護組織まで、広い分野の森 林利用者から意見を聴取している。 完全民有林の80%はマニトバ州以 東にあり、その大半が大西洋沿岸諸 州に集中している。 森林に対する連邦政府の管轄権はカナダ の総森林面積の 23%に相当する森林の所有 にあるが、そのほとんどは準州にある (1986 年に連邦政府は森林管理の責任をノ ースウェスト準州政府に移管した。ユー コン準州および新しく創設されたヌナブ ット準州の両政府とも同様の移管交渉が 最終段階にある)。さらに、連邦政府は、 科学技術、国際関係、貿易および投資、 産業および地域開発、全国統計、先住民 問題、環境規制および連邦政府所有地に 関して、森林分野で直接の役割を果たす か、あるいは責任を共有している。 1985 年に設置されたカナダ森林担当大臣 評議会(Canadian Council of Forest Ministries - CCFM) を通して、連邦、州 および準州の 14 の政府の森林担当大臣が、 国の内外の事項について密接な協カ関係 を持っている。CCFM は森林管理・監督に ついての全体的な方向を示し、カナダの 森林の持続可能な管理を目指す政策やイ ニシアチブの立案を促進し、国の森林セ クターの強化を図っている。 森林地の所有者 森林地の所有者 州有林 71% 連邦および準州所有林 23% 民有林 6% 民有林:価値ある財産 カナダの森林は政府が監督する土地とあ まりにも深く結びついているため、民有 林はともすると見落とされがちである。 これら民有林は全国各地の地方社会、都 市の中心部および農業地帯にあって最も 目につき、アクセスしやすい。民有林の 経済全体に対する貢献度がその面積から 考えうるよりはるかに大きい場合も多い。 さらに、これらの土地は国土の中でも最 も豊かで、かつ多様性に富んでいる。 個人、家族、地域社会および林業会社が 保有する森林はカナダの総森林地の 6%で しかないが、これら森林は一般に生産性 が高く、良質である。カナダで産出する 工業用丸太(原木、短材およびパルプ材) の 19%は民有林からのもので、他の森林製 品セクターではその地位がさらに中心的 な存在となり、カナダが誇るメープル製 品の 77%、薪炭材の 79%、そしてクリスマ スツリーのほぼ全量を産出している。 民有林はまた植物種や独特の林相を支え、 多くの魚や鳥獣の生息地を提供し、農地 を守り、肥沃にする。この土地を所有す る理由や管理上の価値観は個人的なもの であり、所有者が多様であるのと同様に 様々である。山林を先祖代々の財産と見 る所有者がいれば、燃料や木材を得るた めに必要とする所有者がおり、またその 美しさと静けさに価値を見る所有者もい る。 3 持続可能な森林管理への決意宣言 森林の保有契約 カナダでは経済林伐採のほとんどす べてが民間の林業会社によって、州 政府とのリース契約の下で行われて いる。これら契約の内容は州やリー ス期間によって異なるが、保有契約 は一般に林業会社に対して、産業の 商業目的と政府および一般市民の幅 広い目標の均衡を求める、厳格な要 求を課している。政府と産業のパー トナーシップは基本的には単純なも の、つまり、産業は公共の森林地で 伐採する権利を得る代わりにこれを 管理することを承諾するというもの である。しかし実際のパートナーシ ップは、市場の原理、環境条件、政 府イニシアチブ、国際情 勢、そして何よりもカナダ国民の姿 勢と価値観の変化に影響され、複雑 かつ常に変化している。 カナダにおけるパートナーシップ方式で の持続可能な森林管理 かつて森林が木材生産を唯一の目的とし て管理されていた頃、カナダ政府は森林 への市民の関心に対し単に情報を流すこ とで応えてきた。今日では、森林管理を 全体的な視点から見ており、情報の共有 と透明な意思決定が当然のことになって いる。政府、産業、労働組合、先住民、 学界、そして様々な団体がひとつのテー ブルを囲み、森林に対する環境的、経済 的、社会的、そして文化的な要求の間に バランスを持たせようとしているのであ る。 数千人の国民との 1 年間に及ぶ協議の末、 1992 年 3 月に CCFM によって発表されたカ ナダの「全国森林戦略(National Forest Strategy)」の根底にあったのはこの参加 の精神であった。「持続可能な森林,カ ナダの約束(Sustainable Forests,A Canadian Commitment)」にはカナダの森 林を生態系の一体性、健全性、多様性を 保護すると同時に、木材としての価値と 木材以外の価値を両立させて管理しよう という共通のビジョンと 5 ヵ年戦略が説 明されている。この変革への青写真に同 意することで、カナダは持続可能な森林 管理を目指すことを全国民的に誓った最 初の森林国家となったのである。 同じ 1992 年には、政府と、自然主義者、 野生生物、先住民、森林専門家、労働組 合、民有林所有者、学者、森林産業など の利益を代表する団体が集まって、「カ ナダ森林協定(Canada Forest A」に署名 し、この 5 ヵ年戦略へのコミットメント を確認しあった。 1992 年の戦略は数多くの成果を挙げた。 たとえば、現在では多くの州が林業会社 に伐採の前にその活動が政府所有地の土 壌、野生生物および気候にどのような影 響を与えるかを報告することを義務付け ている。持続可能な森林管理を支える施 業規定が政府、産業、労働組合および専 門家団体によって採用され、教育研究機 関は教科や研究の重点を持続可能な森林 の原則を適用する方向へ移し、政府と産 業は環境的に健全な林業技術の開発によ り多くの財源を当てるようになった。ま た、5 ヵ年戦略によってカナダは 1992 年 6 月にブラジルのリオデジャネイロで開か れた地球サミットでの議論に大きな影響 力を発揮することができた。 4 森林の研究 カナダでは、カナダ天然資源省森林局が連邦政府レべルでの森林研究の主役であるが、 カナダ国立科学研究機構(National Research Council)自然科学エ学研究評議会(Natural Science and Engineering Research Council)、カナダ環境省、カナダ農業・農産食品 省、カナダ産業省などの他の連邦政府省庁、ネットワークおよび各政府機関でも森林に 関連する研究を支持している。さらに、カナダには産業界の協同的な森林研究機関が 3 つある。森林工学を専門とする FERIC(カナダ森林工学研究所-Forest Engineering Research Institute of Canada)、ムク材製品の研究を専門とする FORINTEK カナダ・コ ーポレーション、および紙パルプを専門とする PAPRICAN(カナダ紙パルプ研究所-Pulp and Paper Research Institute of Canada ) がそれである。この他にもいくつかの企業 が研究活動に携わっている。州政府の研究活動は一般に応用研究的な性格のもので、森 林経営上の問題の解決と、林業活動における新技術の応用が中心となっている。 1998 年、カナダは森林保全と利用におい て環境、経済、社会、文化の各面を統合 することを目指した新 5 ヵ年戦略を採択 し、持続可能な森林に対するコミットメ ントを改めて全国的に確認した。新しい 「全国森林戦略」1998~2003 年)は範囲を 広げつつあるカナダの森林と森林管理者 への期待を調和できる実施可能な方法を 開発することを試みたものであり、前回 同様に CCFM が準備した全国各地での市民 との対話からまとめられたものである。 新 5 ヵ年戦略は、カナダの森林界の政策 と行動を来たる千年紀に導く枠組みを示 すもので、1992 年の 5 ヵ年戦略の数多く の成果を基盤に、新しく認識された問題 を取り上げている。これら問題とは、森 林地の生態学的な分類の必要性、森林目 録の範囲を拡大し、森林の価値について 多岐にわたる情報を含める必要性、持続 可能な森林管理の全国的な基準と指標の 枠組みの中で持続可能性をテストし、実 証する客観的な方法を開発する必要性、 カナダの森林を代表する保護地区のネツ トワークを完成する必要性などである。 持続可能な森林を今後も追求しようとの 全国民的コミットメントは、1998 年に第 二次カナダ森林協定の調印によって確認 された。調印した政府、民間団体の森林 関係指導者の数は前回を大きく上回った。 持続可能な森林管理の定義と測定 全国森林戦略に呼応して取られたイニシ アチブの中で特に重要なのが、持続可能 な森林管理におけるカナダの進歩を定義 し、測定するために使える科学的な基準 と指標(C&I)の設定である。 1993 年、CCFM は、科学者や連邦、州およ び準州各政府担当者、学界の専門家、産 業界、民間団体、先住民社会その他の利 益団体の支援を受けて、これら指標の枠 組みを作るために公開されたプロセスに 着手した。このプロセスの成果が 1995 年 に発行された『持続可能な森林管理の定 義:基準と指標へのカナダの取り組み (Defining Sustainable Forest Management:A Canadian Approach to Criteria and lndicators)』である。 5 全国的な C&I の枠組みは、森林をカナダ 国民に環境的、経済的、社会的に様々な 恩恵をもたらす生態系として認識する持 続可能な森林管理の基準を 6 つ挙げてい る(下の図を参照)。 この枠組みは次を 趣旨としたものである。 持続可能な森林管理に関する国の内外で の有意義な対話を促進する概念と条件を 示す。 持続可能な森林管理とは何かを明確にし、 全国レべルでの説明と評価の枠組みを示 す。 1997 年、CCFM は、カナダの持続的な森林 管理の測定能力を説明し、6 つの基準に応 用できるデータについて概説したテクニ カルレポート、『カナダにおける持続可 能な森林管理の基準と指標(Criteria and lndicators of Sustainable Forest Management in Canada) を発行した。こ のレポートによって森林の持続牲を測定 する能力におけるカナダの長所と短所に 対する理解が深まり、中核となる 49 の指 標について 2000 年に経過報告を発行する 計画が発表された。 森林の保全、管理および持続可能な開発 に関する政策立案の基準点を示す。 製品の認証を含めた環境と通商に関連す る問題を明確にする、科学的および政策 上の根拠を示す。 一般市民や意思決定者が利用できる情報 を整備する。 6 持続可能な森林管理の実施は動的で、か つ変化していくプロセスである。C&I は現 在入手可能な情報に基づくものであるた め、継続的な改訂と改善が前提となる。 現在、現行の枠組みの評価が行われてお り、見直しの結果、将来の全国レべルの レポートではどの指標を取捨するかにつ いて勧告事項が発表される予定である。 カナダは2000年4月に持続可能 な森林管理への進歩を報告する文書 を発表する予定である。 持続可能な森林管理をテストする 持続可能な森林管理をテストする モデル森林制度(Model Forest Program) はカナダが 1991 年に設定したもので、意 思決定プロセスを共有することによる新 しい森林管理方式の実施を促進するもの である。しかし同時に、モデル森林はカ ナダ国民にとって C&I を適用し、その有 効性を確認するユニークな機会ともなっ ている。 カナダの 11 のモデル森林は、それぞれが 森林に対して多彩な価値観を持つグルー プや個人のパートナーシップに基づいて いる。モデル森林は合わせて 600 万へク タールにもおよび、カナダの主要な森林 地域の多様な生態系を代表している。そ のため、優れた野外研究施設ともなって いる。 1996 年 10 月、カナダ天然資源省森林局は モデル森林制度をあらためて 2002 年まで 延長し、モデル森林ネットワークの拡大 と、最先端の持続可能な森林経営を実証 するために、4000 万ドルの予算を配分し た。第 2 期に入ったこの制度は、ネット ワークにおける森林の状態を測定し、持 続可能な森林管理に向けての各パートナ ーの達成度を記録するための指標を地域 社会レぺルで作成することに重きを置い ている。 カナダでは森林学を教える8つの大 学がある。さらに、生物学、木材化 学がある。さらに、生物学、木材化 学、社会科学などの多彩な分野で森 林に関する研究が行われている。 持続可能な森林管理の推進 カナダは、新しい情報や新しい知識の取 得に従って、持続可能な森林管理の定義 やその進展の測定方法をより正確なもの にしている。 1997 年に開かれた全国森林科学技術フオ ーラム(National Forest Science and Technology Forum)では、持続可能な森林 管理の測定と進展報告にはより多く、よ り優れた情報が必要であるということで 参加者の意見が一致した。同じ年、森林 科学技術分野の関係者が集まり、環境的、 社会的、経済的な価値観が確実にカナダ の森林政策と施業に取り入れられるよう にする行動計画を立案した。こうしてで きあがったのが「全国森林科学技術行動 計画(National Forest Science and Technology Course of Action)(19982003 年)」で、この行動計画は森林や森林 産業と森林に依存する地域社会の持続可 能な開発のニーズを満たし、持続可能な 森林管理の C&l を推進するために「全国 森林戦略」に組み入れられた。 生態系の伝統的知識を持続可能な森林管 生態系の伝統的知識を持続可能な森林管 理に応用 過去 10 年間には森林の生態系に関する先 住民の伝統的な知識への認識が高まり、 彼等の伝統的な権利と連邦政府との協定 に基づく権利に関する話し合いがより盛 んになり、また先住民にとって森林資源 の管理とそこからもたらされる富の共有 において、より大きな機会が生まれた。 7 先住民林業制度 カナダに 2300 ヵ所ある先住民保留地の森林地の多くは、商業ベースの大規模な林業を長 期間支えるには小さすぎるが、先住民が技術力を構築し、保留地内外でのビジネス・パ ートナーシップを展開し、土地との精神的、文化的な結びつきを持続して、土地の伝統 的利用を続ける上での基盤になり得るものである。 先住民と連邦政府のパートナーシップ制度のひとつとして、1996 年 4 月に「先住民林業 制度(First Nation Forestry Program-FNFP)」が導入された。この 5 年を期間とする制 度は、林業セクターにおける先住民の関与を促進することによって先住民地域社会の経 済状態の改善を意図したものである。FNFP には現在林業セクターで積極的に活動してい る地域社会を始め、保留地内外での林業関連の機会への関心を高めている地域社会が関 与している。制度の恩恵は数多く、伝統的技能に新しい概念や技術を組み合わせること で青年や労働者の将来が開かれ、先住民が新事業を起こしたり、合弁事業に参加するこ とで地域社会に恩恵がもたらされるのである。 太古の時代から、カナダの森林は先住民 の文化的、精神的、そして物質的なニー ズを満たしてきた。先住民は土地とその 資源を,過去、現在そして末来の世代へ の尊敬ゆえに保護しなければならないと の信念をもっている。カナダの全国森林 戦略とカナダ森林協定は、先住民には長 い間の土地との交わりを通じて蓄積され た森林に対する深い知識があり、カナダ での持続可能な森林管理に特別な視野を 開くことができることを認識している。 先住民地域社会のほぼ 75%はカナダの森林 地域にあり、先住民保留地のうち約 140 万へクタールが、木材管理、狩猟、毛皮 動物捕獲、漁業、ハーブや薬草の採取な どの、持続可能な資源の消費利用に適し ている。これら森林はまたレクリエーシ ョンを始め、精神活動や文化活動などの 消費以外の目的にも使用されている。 CCFM の C&I 枠組みでは、森林管理計画に おいて先住民による森林利用に配慮し、 彼等の土着権と協定による権利を認知す る必要性が指摘されている。また、各州 の森林政策も先住民の森林に対する伝統 的な知識や利用を森林管理の方法に取り 入れる価値を認めるようになっている。 1997年9月に発表されたワスワニ ピ・クリー・モデル森林は、ケベッ ク・シティの北西にある20万900 0ヘクタールの区域で、先住民が独自 の価値観、信条および伝統に基づいた 持続可能な森林管理方法を開発する機 会を開いた。 持続可能な森林管理:世界の目標 世界の森林地の10%、世界の林産品貿 易のほぼ 20%を占める国として、カナダの 森林構想は基本的にグローバルな経済・ 環境体系につながっている。その結果、 カナダは森林に関する主要問題に関する グローバルな話し合いに積極的に参加し てきた。 持続可能な森林管理のグローバルな定義 政策立案者や科学者は、さまざまなプロ セスを通じて、「持続可能な森林管理」 とは何を意味するかを定義し、その定義 をさらに洗練しようと試みている。森林 の状態を評価し、持続可能な森林管理を 推進する手段として、C&I は世界的な、持 8 続可能な開発に向けての努力における国 際協力の共通の基盤となっている。 1993 年に始まったモントリオール・プロ セスは、ヨーロッパ圏外の世界の寒帯お よび温帯林圏の 90%と熱帯林圏の一部を代 表する 12 ヵ国(アルゼンチン、オースト ラリア、カナダ、チリ、中国、日本、メ キシコ、ニュージーランド、韓国、ロシ ア連邦、米国、ウルグアイ)による作業グ ループ結成に発展した。この作業グルー プの目的は温帯および寒帯林の保全と持 続可能な管理のための国際的合意に基づ く C&I の枠組みを策定推進し、さらに 「持続可能な森林管理」とは何かを定義 することである。この枠組みには 7 つの 基準と 67 の指標が設定されている。 モントリオール・プロセスは技術諮問委 員会(Technical Advisory CommitteeTAC)という技術上の問題について助言す る特別委員会を設置した。参加各国の代 表が定期的に会合して、数多くの文書を 発行している。その中で温帯および寒帯 林の保全と持続可能な管理基準および指 標の実施状況に関する報告は、1997 年 2 月の森林に関する政府間パネルの第 4 回 会議に提出され、また、モントリオー ル・プロセスの第一次概算報告が作成さ れて、1997 年 10 月の世界森林会議に提出 された。さらに、カナダにあるモントリ オール・プロセスの連絡事務所はウェブ サイト(http://www.mpci.org)を通じて 参加国間の情報交換の円滑化を図ってい る。 持続可能な森林の定義の世界的合意 森林に関する問題は政治や産業分野の境 界線を超えて存在し、環境、農業、貿易、 エネルギー、科学技術、経済成長、開発 援助などの政策と互いに深く結びついて いる。その上、国内的に解決できる間題 と国際的な対応を必 要とする問題の区別はしばしばあいまい になる。 当然、人々は森林施業の持続可能性を極 めて身近なもの、すなわち自国の森林と 価値観を基に判断することになる。しか し、人間のニーズ、文化活動、社会経済 的優先順序は国によって、また地域社会 によって大きく異なる。さらには、森林 の種類も世界各地で大きく異なり、生態 系保護の観点から健全な施業の定義は、 少なくとも森林の種別と同じだけの数が あるといえよう。 「持続可能な森林管理」に対する国際的 なコンセンサスの道を整備し、分裂しが ちな森林政策論議に対処しようという欲 求を反映して、国連持続可能な開発委員 会(UNCSD)の下に森林に関する政府間パネ ル(IPF)が設置された。このパネルの任務 は UNCED 森林原則に沿った行動の選択肢 を見つけることである。IPF 参加国は、2 年間の討議の後、1997 年に行動計画 143 項目の提案に合意した。IPF の結果はその 後 UNCSD によって、さらに 1997 年に国連 特別総会(UNGASS)でそれぞれ承認された。 カナダはまた全欧州プロセスやタラポ ト・プロセスのような国際的な運動と協 力して持続可能な森林管理の基準と指標 づくりを進めている。 9 IPF の行動提案は世界的規模で持続可能な 森林管理を達成するための行動計画につ いて広く合意が得られたことを意味した。 しかし、世界の森林国グループは、重要 な国際的森林政策の問題が多く未解決の ままであるとの見解をもっていた。行動 への機運の高まりを維持するために、 1997 年国連特別総会に出席した各国首脳 たちは森林に関する対話を続けることで 合意し、政府間森林フオーラム (lntergovernmental Forum on Forests1FF) の設立を提言した。IFF は 2 年の期 間内に、3 つの作業分野について検討する ことになっている。即ち、IPF の行動提案 実施の円滑化、モニター、IPF で未解決の まま残されている課題のフォローアップ 及び、可能な要素の識別を含む国際的な 取り決めとメカニズムの作業である。IFF の成果は 2000 年に UNCSD に報告される予 定である。 カナダは世界の森林国グループがすでに 合意した事項の実施を最優先するととも に、国際的な協定の取り決めとそのメカ ニズムに対するコンセンサス作りの努力 を続けている。これら目標達成への公約 を具体化するものとして、カナダは 1998 年に世界に先駆けて IFF に IPF 行動提案 の実施に関する中間報告を提出した。カ ナダは 2000 年の第 4 回 IFF 会議(最終回) に向けてこの報告書の更新を行う予定で ある。 「持続可能な森林管理」とは何かという 問いに対する答えは、問題と目標につい て共通の理解があって初めてコンセンサ スを得ることが可能になる。このため、 カナダは持続可能な森林管理について総 括的、かつバランスのとれた方法で対処 する最善の手段として、国際森林条約の 必要性を提唱しつづけている。 を求められてきた。これに応えて、カナ ダはコスタリカと共に、将来の国際的取 り決めおよびメカニズムに関する IFF の 作業を支持するイニシアチブを開始した。 例えば国際森林条約などがその例である。 これはコスタリカ・カナダ共同イニシア チブと呼ばれ、1999 年に予定される一連 の地域会議に世界すべての国々が参加す る機会を開くものである。これらの国際 会議は、森林専門家が、森林間題に対処 する国際的に法的拘束力を持つ文書の要 素と、相対的なメリットについて意見を 述べる中立のフオーラムとなる。 国際協力への基準確立 開発途上地域の貧困解消と環境保護への 協力は、世界規模での健康、繁栄、安定 に貢献することによって世界のすべての 国々を利する。森林開発援助の基本的な 目標は開発途上国が自国の森林を持続可 能な形で管理する能力を強化することに ある。 カナダは 30 年以上にわたって、カナダ国 際開発庁(CIDA)を通じて途上国が森林間 題について持続可能な解決策を見出すの を支援してきた。CIDA は常に150を超 えるプロジェクトに関わっている。プロ ジェクトは森林資源の評価、地域社会に おける森林事業、地場産業の開発、遺伝 子多様性の保全、砂漠化防止などを含む 多彩な活動を織り込んでいる。CIDA の森 林プロジェクトでは訓練と教育が中核と なる。1967 年に森林開発プロジェクトを 設立して以来、CIDA は 90 ヵ国以上で国民 の森林に関する知識と地元における森林 関連問題の解決能力の向上を支援してき た。 カナダは、あらゆる形態の森林の管理に 適用される法的手段の相対的なメリット について、世界各国や関係団体から情報 10 森林施業法の革新 低山帯林代替造林システム(MASS)イニシアチブは、低山帯生態系への理解を深め、ブリテ ィッシュ・コロンビア州沿岸地方の高高度森林における最善の管理テクニックを決定する ために、1993 年に確立されたものである(MASS は産業、大学、州および連邦政府が関与す る、多数の機関による協同研究と運営のパートナーシップである)。 MASS はブリティッシュ・コロンビア州キャンベル・リバー付近で 4 つの造林施業方式に ついて長期研究を進め、その結果を伐採されたことのない 20 へクタールの原生保留林と 比較している。研究対象の旋業方式は、69 へクタールの区画での皆伐方式(樹木をすべて 伐採する方式)を始め、緑樹保存方式(l へクタールあたり最低 25 本の樹木を残す方式)、 傘伐方式(l へクタールあたり約 200 本の樹木を残す方式)、およびパッチ(区画)方式(1.5 へクタールを伐採して、隣接するハッチは伐採区画の更新樹が高さ 10 メートルに達する まで残しておく方式)である。初期段階の結果を見ると、標高の高い低山帯林では、大規 模な皆伐跡地における更新樹の生育が比較的遅いと考えられるため、代替方式の方が適し ているように見られる(MASS の研究結果の多くは最低 20 年間モニターして、さらに決定 的な答えを出すことになっている)。 1998 年 6 月、MASS パートナーのひとつ、マクミラン・ブローデル社が、ブリティッシ ュ・コロンビア州での操業拠点すべてにおいて 5 年かけて皆伐を段階的に廃止し、原生林 と生物生息地の保全を中心とする新たな森林管理戦略を追求する計画を発表した。新しい 林業計画では、伐採活動の集中度が制限され、樹木を適量保存する伐採方式が導入され る。伐採区域内での一箇所の伐採面積は l へクタール以下となる。 森林と気候変動の関係の研究 森林は地球上の炭素をリサイクルするこ とで気候の変化に重要な役割を演じてい る。森林のこの価値を持続させるには、 世界規模での二酸化炭素の循環について できる限り理解する必要がある。また、 気温や湿度の変動も、森林の生長と生産 力、樹種の範囲、さらに火災や病虫害の 範囲と頻度を定する上で重要な要因であ る。 平均気温は過去 l 世紀にわたって上昇を 続けてきた。気候変動に関する政府間パ ネル(IPCC)の最新報告によると、地球の 気候は次の l 世紀でさらに大幅な温暖化 が見こまれている。温暖化で最も大きな 影響が予想されるのは北半球で、カナダ の寒帯生態系圏の森林管理に関して問題 を提起している。 1995 年、カナダは気候変動に関する全国 行動プログラム(National Action Program on Climate Change-NAPCC) を作 成し、地球温暖化の人為的原因の緩和へ 一歩踏み出した。このプログラムは、政 府や民間などあらゆる部門で温室効果ガ スの排出を制限する、コスト効率の高い 行動の検討を促すもので、森林セクター を例に取ると、エネルギー効率の高い工 法を採用し、低炭素燃料に切りかえるな どの対策によって、温室効果ガス排出の 削減が実現している。 11 NAPCC はまた気候変動の問題に関する研究 開発も促している。これまでのところ、 カナダの森林科学者は国際的な協同研究 に参加して、バイオマスの燃焼、世界規 模の二酸化炭素の循環、気候変動による 森林産業への社会経済的影響などに関す る私たちの知識を見直し、評価している。 京都議定書の採択を受けて、連邦政府は 1998 年 2 月、今後 3 年間にわたって毎年 5000 万ドルの財源を配分すると発表した。 その目的は、国民の意識向上プログラム や、気候変動の影響研究、温室効果ガス の排出を削減する技術開発、排出削減の 選択肢分析などを含めて、気候変動に対 する早期対策実施の基礎を固めることで ある。 森林の生物多様性の保全 カナダは 1992 年地球サミットで、生態系 と生物種や遺伝子の多様性を保全するこ とを狙いとした生物多様性に関する条約 に先進国では最も早く調印した。条約批 准に続いて、カナダの連邦、州および準 州の各政府は産業、科学者団体、環境保 護団体、学界および先住民団体と広く協 議を行い、1995 年の「カナダ生物多様性 戦略」発表への道を開いた。 この戦略は、生態系に関する計画と管理 に対して、また生物資源の持続可能な利 用に対して、次のような一連の目標と方 向付けを示している。 ・生物多様性を保全し、生物資源を持続 可能な方法で利用すること。 ・国民の生態系に対する理解を高め、資 源管理能力を高めること。 ・生物多様性保全の必要性に対する理解 を促進し、生物資源を持続可能な方法で 利用すること。 ・生物多様性の保全および生物資源の持 続可能な利用を支持する奨励策および法 律を維持または立案すること。 ・生物多様性の保全、持続可能な方法で の生物資源の利用、および遺伝子資源の 利用による恩恵の平等な共有のため、各 国と協力すること。 連邦、州および準州の各政府は、一般市 民や利害関係者の協力を得て、国家戦略 に盛り込まれた戦略的進路をそれぞれの 政策、計画、優先項目、財政力に応じて 追求している。連邦政府省庁や州政府の 多くが独自の生物多様性戦略と行動計画 を作成ずみ、あるいは作成中である。こ れら戦略や行動計画はカナダの国家戦略 に呼応するもので、生物多様性保持への カナダの国際的公約の実行の一端を担っ ている。 カナダ天然資源省森林局が生物多様性に 関して掲げている目標は、遺伝子、生物 種、生態系および景観にっいて森林の生 物多様性の要素を定義し、これらを測定 する能力を開発し、これら要素をモニタ ーすること、森林管理やその他の人間 的・環境的圧力が景観、生態系、生物種 および遺伝子の生物多様性に及ぼす影響 に対する理解を促進すること、そして、 カナダや国際社会における森林保全戦略 について勧告することである (これら目 標実行を目指すプロジェクトについては II ページを参照)。 要約と結論 カナダは地球上のどの国よりも広大な森 林に恵まれ、カナダ国民はこの貴重な天 然資源を大切にしている。カナダ連邦が 誕生してからまだ 130 年を過ぎたばかり であり、この短い間に、カナダの森林は カナダの社会全体が経験したと同じよう な大きな変革の波を乗り越えてきた。未 開の植民地で薪を切っていた過去から、 森林管理で最先端を行く国家へと進歩し てきたのである。 12 過去 20 年間、カナダ国民は森林と森林事 業に対する考え方を見直してきた。論議 が極めて感情的になったケースもあるが、 それでも比較的短期間に、森林管理と保 全をめぐる対立は、地域社会や、地元、 州、連邦の各政府さらに様々な利害関係 者の対話の広がりに変わった。この対話 の根底には、森林は幾多の価値を持つも のであり、ニーズや個人的価値観の相違 を認めようとする新しいパートナーシッ プを通じてこそのみ解決策が見つかると いうコンセンサスがある。 各州および準州、産業界および学界の支 持、さらに世界各国とのパートナーシッ プを基に、カナダは、総合的かつバラン スのとれた持続可能な森林管理に対処す る最善の手段として、国際的な森林条約 の必要性を説き続けていくであろう。そ して、国家森林戦略と最先端の技術をも っカナダは、明日の森林間題に挑戦する 自信に満ちて 21 世紀を迎えようとしてい る。 今日、カナダは持続可能な森林管理の実 践においてモデルとされている。持続可 能な森林管理に対するカナダの公約の実 施においては、州政府が特に重要な役割 を担っている。これまで取られたイニシ アチブは、市民参加と地域社会関与の新 しいモデルの確立から、森林管理と土地 利用計画の統合、そして生態系の価値保 全を規定した法律の制定まで、さまざま である。 森林産業も操業方法などを一新してその 責任を果たしている。新しい形式での生 態系管理、造林プログラム、地域社会の 関与、効率的なエンジニアリングと加工 の技術などがその例である。さらに、カ ナダ規格協会(Canadian Standards Association - CSA)が先頭に立って持続 可能な森林管理の規格作成を進めている (14 ページの認定に関する記事を参照)他、 専門家団体や業界団体も倫理規定、林業 の原則および施業基準を作成した。民有 林所有者の多くも施業規定を受け入れて いる。 カナダの森林管理の実践とプロセスは将 来にわたって新しい知識や新しい要求に 適応していく必要がある。たとえば、C&I の使用によって森林や森林管理実施の影 響に関する情報の質が大きく向上するは ずである。また、気候変動などの森林に 関する間題を世界規模で論議することも、 究極的には私たちがカナダで森林をどの ように考え、管理するかに影響を及ぼす のである。 13 森林の認証 カナダ政府 カナダ政府の見解 政府の見解 持続可能な森林管理(SFM)と認証の関係、 さらにその立案と適用において公正を期 するために必要な認証制度の特質につい ての、カナダの見解を以下に説明する。 A.認証と SFM の関係 1)認証証制度は SFM 推進の有効な手段と なり得る。 認証は、SFM と SFM の森林からの製品を求 める消費者の要望を結びつける可能性を 持っているが、認証だけで認証製品が実 際に持続可能な管理の下にある森林から のものであることは保証しない。 2)SFM に向けての前進はいかに一般に認め られる定義を作り上げるかにかかってい る。 定義づくりは、絶えず変化するニーズや 価値観の多様性と地域特有の事情を考慮 しながら幅広い関係者の意見のもとに、 広く認知されたプロセスでなければなら ない。 基準および指標(C&I)の作成など、SFM の 定義を検討している国内外のプロセスは 大きく前進した。一般に認められる SFM の定義を確立する上では、C&I に関するモ ントリオール・プロセスや全欧プロセス、 およびこれらに関連する国内のイニシア チブなどが基礎となる。 3)SFM の実施に必要な枠組みを示す公的 な政策目標、法律および規制の確立は 個々の国や州の責任となる。 枠組みには必然的にそれぞれの地域に適 切な経済環境や社会条件などへの配慮が 取り入れられることになる。 SFM の原則の枠組みに取り入れられる度合 いは様々である。 いずれにしても、適用の効率と現実性が 確実に考慮されるように、認証制度はこ の枠組みを取り入れ、かつ、これを最低 基準として作られねばならない。 各地域政府の森林政策の枠組みに SFM の 原則が反映されればされるほど、認証を 取得するための障壁は低く なる。 逆に、認証制度は制度的な枠組みの必要 条件ではあるが、認証の十分条件ではな いとみなすことができる。 4)各地域の土地所有者と管理者はそれぞ れの地域内の法的な枠組みの中で操業す る義務を負う。 5)認証制度は森林が持続可能な方法で管 理されているという主張に寄与すること ができるが、SFM 政策および規制を支持し ても、その根源とはならない。 認証制度が広く受け入れられた SFM の定 義に基づいていれば、それだけ認証と SFM の関係は一段と強化されることになる。 14 B.認証 : 公正なテストに求められる特質 l) 認証が実効的であるためには、国連環 境開発会議(UNCED)森林原則、森林に関す る政府間フォーラム(IFF)、C&I、全国森 林政策などの SFM 諸原則や施業方法に関 する国内的・国際的に認められ合意され たプロセスの影響と明確な関係をもち、 かつ、これらに呼応した制度でなければ ならない。 2) 認証が実効的で、信頼性をもつため には、制度の支持者グループから独立し、 距離をおいて運営され、国の内外の「規 格」開発と監査の原則、プロセス、慣行 をそのよりどころとするものでなければ ならない。 制度には主要な国内関係者すべての参加 が反映され、立案、実施および監査の各 段階において利益相反を避けるために、 開かれた、透明で、誰でも参加できるも のとすべきである。 3) 原則として、認証は非差別的でなけれ ばならない。 森林形態や所有権の違いに関わらず、す べての制度支持者が認証を取得するため の機会を 平等に持つべきで、機会は、熱帯林対温 帯林、民有林対公有林、あるいは所在国 などの要素によって影響されるべきでは ない。 いかなる制度も不公平なマーケティング 慣行を通して促進してはならない。 4) 認証は貿易の歪曲的なものであっては ならず、また、法律上または事実上の貿 易障壁として使われるべきでない。 等価の概念を受け入れることにより、認 証に対して複数の取り組み方が促され、 また特定制度の国内偏重が貿易に影響を 与えるとの懸念が軽減されることになり、 独占に内在するリスクを回避できる。 本冊子は以下の機関で無料で入手できます。 Natural Resources Canada Canadian Forest Service 580 Booth Street Ottawa ON K1A 0E4 電話:(613) 947-7341 ファックス:(613) 947-7396 ウェブサイト: http://nrcan.gc.ca/cfs カナダの持続可能な森林管理についての 詳細は、お近くのカナダ大使館または領事館 にお問い合わせください。
© Copyright 2024 Paperzz