[成果情報名]ポジショニング分析による農家の技術導入条件の可視化 [要約]製品開発などに活用されるポジショニング分析は、農業技術の導入条件を検討す る場合にも適用できる。また、分析結果は可視化されるので、問題解決への意思決定が 円滑にすすむ。 [キーワード]ポジショニング分析、技術導入、問題解決 [担当]兵庫農総セ 農技 経営・機械部 [連絡先] 電話: 0790-47-2439 電子メ-ル: [email protected] [区分]近畿中国四国農業・農業経営 [分類]技術・参考 -------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------[背景・ねらい] ポジショニング分析は、新商品の開発方向の検討や開発途中に方向を修正する場面で 用いれられ、商品間の類似性、購入意向が高まる方向などの位置関係を可視化する手法 である。 そこで、農家の新技術に対する位置づけと導入意向の可視化に本手法を適用し、新技 術の導入定着条件や改善方向を検討する場合に活用できるかを明らかにする。 なお、取り上げる新技術は本県で開発中の熱水土壌消毒とし、対象農家は本技術の実 証地域である神戸市西区の軟弱野菜農家である。 [成果の内容・特徴] 1.農業技術に対する評価項目は、費用、作業性、品質向上、ブランド化、環境への影響 など事前に聞き取り調査などから得られた項目を設定する。また、新技術と比較する技 術は 、現地において普及定着している技術など農家が比較評価できる技術とする 。なお 、 ここでの評価項目数は 10、比較する技術数は 11 とする(図1 )。 2.農家のアンケート調査から得られたデータを基に因子分析を行い、結果の解釈と各技 術の因子得点及び理想ベクトルをy、x軸上に布置する。なお、今回はy軸に「家族経 営になじみやすい」とx軸に「その技術を消費者に紹介すると差別化が可能である」と 解釈されるとともに、理想ベクトルはy= 1.59 xである(図2 )。 3.図上に布置された核技術の相対的な位置関係と理想ベクトルから、新技術に対する農 家の位置づけや導入に向けた新技術の改善方向を判断する。なお、今回の新技術である 熱水土壌消毒は、普及定着している技術と比較して大きく外れて位置している。そのた め、新技術の農家への普及に向けては 、「家族経営になじみやすい」技術であると農家 に知覚されることが第1で、作業時間、費用、導入方法など家族経営に即した技術への 改善が必要である。また、第2に「差別化可能」技術にすることが求められ、新技術の 特徴である農薬を使わないことをPRした販売戦略が導入に有効である(図2 )。 [成果の活用面・留意点] 1.新技術の現地導入条件を検討する手法として活用できる。 2.アンケート調査では予備テストを必ず実施して、評価項目の妥当性、信頼性の検証が 必要である。 3.因子分析の計算上、評価項目数は対象技術数より少なくする。 -1- [具体的なデータ] 〈技術の概要〉 ・ 1 ㎡ に 150㍑ の 80~ 90℃ の 湯 を 流 す 。 消 毒 は 2 ~ 3 a の ハ ウ ス な ら ば 、 約 1 日 要 し ま す 。 ・根こぶ病、雑草、キスジハムシなどに有効です。 ・塩類集積土壌のクリーニング効果も認められます。 [1]〈技術の認知度〉 レ印を□に1つ入れてください か な り 知っ て い る(技術を見聞し、理解している) ・ ・ ・・ ・ ・・5 ・点 ・ ・ ・□ ・・ 知 っ て い る ( 技 術 を 見 聞 し た こ と が あ る ) ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・・・ ・ 4・ 点・・・ □・・・ や や 知 っ て い る ( 技 術 を 聞 い た こ と の み あ る ) ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・・・ ・ 3点 □ あ ま り 知 ら な い ( 技 術 を 聞 い た の み で 、 最 小 限 し か 知 ら な い ) ・・ ・・ 2点 □ 知 ら な い(技術を知らない。今回、初めて知った)・・ ・ ・ ・・ ・・ 1 ・点 ・ ・ ・□ ・ ~ [2]〈技術の評価〉①~⑪までレ印を□1つ入れてください やや どちらとも あまり そう そう思う そう思う いえない そう思わない 思わない 5点 4点 3点 2点 1点 □ □ □ ① 収量・品質が良好になる □ □ ② 技術の理屈がわかりやすい □ □ □ □ □ ③ 環境に優しい技術である □ □ □ □ □ ⑪ 現段階、総合的に考えて 私の経営の中に取り入れたい □ □ □ □ □ 図1 ポジショニング分析用の質問票(例:熱水土壌消毒) 注:農家の技術に対する知覚判断を把握する手法は、因子分析を用いる。また、因子分析で用いる評価項目は、 事前に農家等の聞き取り調査から得られた項目で設定し、設問の最後には導入したい程度を対象技術ごとに 設定する。 3.0 家族経営になじみやすい 理想ベクトル(y=1.59x) 2.5 2.0 1.5 1.0 0.5 差別化 0.0 不可能 -0.5 -1.0 妻面ネット 湛水除塩 バスアミド消毒 黄色蛍光灯 新土壌分析器 側面ネット 太陽熱消毒 新緑肥 差別化 可能 新野菜 捕虫機 -1.5 -2.0 -2.5 熱水土壌消毒 -3.0 -3.0 -2.5 -2.0 -1.5 -1.0 -0.5 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 家族経営になじみにくい 図2 技術の知覚と理想ベクトルの位置 注:理想ベクトルは、対象技術ごとに各農家の導入したい程度の加重平均値を従属変数、因子分析から得られた因子 得点を独立変数として回帰分析を行い、理想ベクトルの傾きを求める。 [その他] 研究課題名:中山間におけるクリーンエネルギーを利用した野菜の省力安定生産技術 予算区分:国庫助成(地域基幹) 研究期間: 2001 ~ 2004 年度 研究担当者:加藤雅宣、松本功、竹川昌宏、斎藤隆雄、小松正紀、田中尚智、永井耕介 -2- -3-
© Copyright 2024 Paperzz