小規模ファンド 小規模ファンド 年次現状報告:新たな問題 2015年7月に金融庁が公表した金融モニタリングレポートで浮き彫りにされている 通り、日本の資産運用業界が直面している大きな問題の一つとして、ファンド数の 多さがあり、そしてこれらのファンドの多くが小規模ファンドである。 実際、日本には5,500本以上のファンドがあり、1本当たりの残高(AUM)平均は 175億円(比較的大きな資産高のパッシブファンドを含む平均)となっている。 この状況は、資産運用業界にとってだけでなく、膨大な種類のファンドの中から選 択を行う必要のある投資家にとっても相当な困難を伴う。 これはファンド自体にとっても問題を生む。 小規模ファンド 年次現状報告:新たな問題 より効率的なポートフォリオ運用プロセスを実現し、投資家にとって望ましい結果 を長期間実現するためには、ファンドは一定レベルのAUMを必要とするからだ。 こうした状況は、米国や欧州とは著しい対照をなしている。 例えば欧州では、ファンド併合に関する規制環境や運営プロセスは、運用会社が 個人投資家向けの最適な商品ラインナップを維持することを可能にする主要な要 因として役立ってきた。 しかし日本においてはファンド併合は行われていない。 ファンドの繰上償還は稀であり、たとえあったとしても、重い事務上の負担と個人 投資家のネガティブな受け止め方につながりうる。 小規模ファンド 提案 柔軟なファンド併合プロセスの導入に向け力を合わせることをすべての業界ステー クホルダーに奨励すべきである。意見を求めるべきステークホルダーとして、ファン ド管理のためのITシステム・プロバイダー、ファンド併合に対応するための重要なプ ラットフォームやITシステムに責任を持つ受託銀行及び販売会社、加えて、個々の 受益者に対して事前同意手続に代わり事前通知を導入する等、より負担の少ない 法的なプロセスを検討できる立場にある規制当局がある。 運用プラットフォームの グローバリゼーション 運用プラットフォームの グローバリゼーション 年次現状報告:新たな問題 EBCは、日本を拠点とする投資家にとって資産運用業界の運用プラットフォームが グローバルな環境から比較的隔離されているとみている。 いくつかの例を挙げると、国内資産については日本の受託銀行の管理下にある 一方、国外資産はグローバル・サブカストディアンの管理下に分別されているた め、「グローバル・カストディ」機能自体が日本には存在しない。 国内資産でのSWIFTメッセージの利用はまだ少数の受託銀行に限られている。 一つの心強い兆しは、日本が2015年9月にアジア地域ファンド・パスポート(ARFP) の参加表明文書に署名したことである。 これは、日本の運用プラットフォームがARFPに適合するようグローバル化していく ことを意味している。 運用プラットフォームの グローバリゼーション 提案 グローバル・プラットフォームを立ち上げるためのよりよい方法に関し、具体的な提 案の作成を目的とした、国外組織を含むステークホルダーによるワーキンググルー プを立ち上げるべきである。 オフショアファンドの勧誘 オフショアファンドの勧誘 年次現状報告:新たな問題 現行の規制では、「オフショアファンド」を通じた日本の機関投資家へのグローバ ルな専門的知見の積極的な紹介活動は、海外証券の勧誘と見なされる可能性が あり、従って、第一種(または有価証券の種類によっては第二種)金融商品取引 業の登録を必要とする。 EBCは、日本の機関投資家(例えば資産を保有・運用する者(アセット・オーナー) や運用会社)がポートフォリオを国際的に多様化するにつれ、この種の活動は今 後ますます重要になると確信している。 第一種金融商品取引業の下でオフショアファンドを勧誘する際には(たとえ範囲 が資産運用型の商品に制限されていても)、運用会社は、いわゆる自己資本規制 比率をはじめとする様々な要件を満たさなければならない。 オフショアファンドの勧誘 年次現状報告:新たな問題 しかし運用会社は、現金を含む顧客資産を取り扱わず、また申込代金および/ま たは償還代金の送金といったような、いかなる個別の発注手続における重要なプ ロセスに関与することもない。 さらに、第一種金融商品取引業者として登録している投資銀行によって行われる 典型的な活動とは異なり、運用会社は、上記の活動のために独自の資本やバラ ンスシートを必要としない。 そうした場合、範囲が資産運用型の商品に限定されている第一種金融商品取引 業者に対する自己資本規制比率に関する要件は、不必要な事務上の負担となる。 オフショアファンドの勧誘 提案 日本の関係当局は、日本の運用業界をよりよく支援・推進する規制の策定を目的と して、諸外国に関するオフショアファンド商品の勧誘の取扱いについて、資本要件の 有無に焦点を当てた検討を行うべきである。
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