生前贈与は何のため? 誰のため?

コンサルティング 実務講座
生前贈与は何のため? 誰のため?
[よしや・しょうじ]2004年に「不動産を持っていて相続・税・老後で
芳屋 昌治
プロサーチ株式会社 代表取締役
一般社団法人家族信託普及協会 代表理事
悩んでいる人の問題を解決する」ことを目的にプロサーチ(株)を設立。
実務者として活躍する傍ら、様々な研修等の講師も務めている。また、
近年相続発生前に認知症や病気で意思判断ができなくなるリスクに有効
な対策としての「家族信託」を世間に広く周知するために2014年(一社)
家族信託普及協会を設立し、代表理事に就任。公認 不動産コンサルテ
ィングマスター(相続対策専門士)
、CFPⓇ、 1 級ファイナンシャル・
Consulting
事例でつかむ 相続コンサルティングのポイント(2)
プランニング技能士など。
ご存じのとおり2015年の税制改正で基礎控除の見
直しなど相続税が増税となりました。その一方で贈与
税については、税率緩和、新たな贈与特例制度の創設
Practical
●相続税増税の一方、贈与税は減税
※①は、省エネ等住宅に該当する場合です。その他の住宅は
700万円となります。
※②は、婚姻20年以上の夫婦間で「居住用不動産を取得す
るための金銭」でも可能です。
※詳細の適用要件や併用などについては国税庁ホームページ
や専門家にご確認ください。
など減税となっています。日本政府としては、お金や
◆贈与をする人、受ける人(子)の気持ち
や孫世代へ相続を待たずにお金を回すことで、消費を
まず、贈与する側(親)が得たいメリットは何か?
促し、経済の活性化を目指すことを明確に打ち出した
各種税金の軽減、特定の子に財産を渡したい、子供や
ことになります。
孫の生活を支援したいというのが贈与を行う主な理由
このような国の狙いに合わせて、
「将来の相続税を
でしょう。しかし、その裏には「ありがとう」と感謝
軽減したい!」
「遺産分割で争族にならないように今
されたい、
「将来大切にしてもらいたい」などの本音
のうちにある程度お金を渡しておきたい!」など、相
もあるのではないでしょうか?
続税対策や遺産分割対策を目的として生前贈与(下記
「贈与の特例一覧」参照)を行おうとする人が増えて
Lecture
資産を持っている親世代が、お金を必要としている子
では、贈与を受ける側(子)はどのようなメリット
があるのか。
・生活や心にゆとりが持てる!
います。
ついつい節税等の効果だけに目が行きがちなこの生
前贈与ですが、実行する前に少し考えてもらいたいと
・諦めていたことに、挑戦できるようになる!
・自分や家族にしてあげたいことができるようになる
(教育、趣味、家、車など)!
思います。
・資金が足りなくても家を買える!
当然、贈与を受ける際には、親に大変感謝します。が、
◆贈与の特例一覧
生前贈与の主な種類
非課税枠
繰り返し贈与をしてもらったり、贈与時から時間が経
相続時精算課税
2,500万円
つと、悲しいかな、感謝も薄らぎ忘れ去られてしまう
住宅取得等資金贈与
1,200万円※①
こともあるのではないでしょうか。
婚姻20年以上の夫婦間で居住用
不動産の贈与
直系尊属から教育資金の一括贈与
直系尊属から結婚・子育て資金の
一括贈与
暦年贈与
2,000万円※②
1,500万円
1,000万円
年間110万円
◆贈与を勧める専門家と金融機関の背景
お客様から「贈与で節税できるって本当?」
「贈与
した方が得なのかしら?」などと質問を受けることが
あります。そして税の専門家の多くは「贈与した分だ
け財産が減るので、相続税の負担が軽減されますよ」
「贈与の種類や制度はこのようになっていまして…」
2016. 6 ◆ 不動産フォーラム21
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