「世界自然遺産の島」 を守り続けるために

%
ゆが金杯 研 会長賞
ゆ
や
しま
く
ち
鹿児島県い
く
せい ね んりんぎょう
し
め
かい
屋久島地区青年林業十全
鹿児島県熊毛郡屋久町船荷 134 ( 会長宅 )
代表者
松
会
男
員
田
7
公
博
人
設
立
平成Ⅱ 年 10 月
年
齢
35 歳∼ 54 歳
平均 47 歳
主なプロ、ジェクト
。 屋久島における 森林整備と森林資源の 持続的利用への 貢献
「世界自然遺産の 島」を守り続けるために
活動地域の概況
1 .
「世界自然遺産の
島」屋久島は、 九州本土の最南端佐多岬から 南西方
向約 60 ㎞の洋上に位置する 周囲 約 130 ㎞のほぼ円形に 近 い 島です。 島の
中央部には九州 @ 高峰の宮之浦岳 ( 標高 1,936m) をはじめ、 1,0OOm 以
上の高峰が連なり、 「洋上アルプス」とも 呼ばれています。
森林面積は約 49,0OOhaで全島の約 91% を占め、 このうち 78% は国有林、
残り
22% (10,800ha)の民有林が国有林を 囲むように分布しています。
人工林率は 33% と低く、 また Sha 未満の森林所有者が 91% と小規模 経
営 がほとんどです。
さて、 世界自然遺産に 登録されて以来、 屋久島では国有林内に 存在す
る 樹齢数千年といわれる
縄文杉をはじめ、 アニメ映画「もののけ 姫 」の
舞台のモデルになったといわれる 古谷雲水峡など、 その大自然が 大きく
脚光を浴びるようになり、 観光客・登山客数も 毎年増え続けています。
一方、 民有林の人工林に 目を向けますと、 他の地域と同様、 森林所有
者の高齢化、
不在 村 所有者の増加、 さらには長引く
る 経営意欲の減退傾向等により、
一
木材価格の低迷によ
間伐等手入れの 行き届かない 山林が目
220
一
立つようになってきました。
同じ屋久島の 中において、 このような光と 影の部分があ ることは案外
知られていないのではないでしょうか。
2. グループの結成と 活動テーマについて
私たちは屋久島に 住む 、 県の認定を受けた 青年林業 士
ち 2
( 現在 7
人、
う
人は指導林家、 指導林業 十 ) にょり結成されたグループです。 会員
全員が一度は 屋久島を離れ、 関西、 関東方面などそれぞれ 林業とは無関
係の職に就いたことのあ る、 いわぬ
る
U ターン者です。 帰郷後はそれぞ
れ、 森林組合作業班や 家業の林業関係の 職場のリーダー 的な立場で地域
林業の主要な 担い手として
活動しておりました。
そこで、 森林・林業に 対する考え方や 技術を持っ各人が、 屋久島の森
林の荒廃に何とか 歯止めをかけられないかと「意見交換や 林業技術の交
換 、 行政機関との 連携、 情報提供などを 行 う 機会を設け、 地域林業の振
興に貢献すること」を 目的に平成 11 年 10 月に結成しました。
活動テーマは「屋久島における 森林整備と森林資源の 持続的利用への
貢献」とし、 陰間伐の推進・ 実施と間伐材の 有効利用のための 新たな 林
業 機械の導入による
利用間伐の実施に 取り組んでいくこととしました。
3. 活動状況
(1) 陰間伐の推進から 実施まで
造林事業等森林整備推進のための 取り組みについては、 この会で得た
知識や林業技術を 活用しながら、 設定された森林施業団地において、 森
林所有者等への 陰間伐の普及啓発や 間伐朱実施林分の 把握、 施業の同意
を得るための 活動を県、 町、 森林組合と共同して 実施しています。
現地においては、 森林の現況調査や 境界の確認を 行い、 町や森林組合
と連携をとりながら 陰間伐が集団的に 実施されるよ
森林施業団地の 地元の会員が、
施業を実施する
う 努めるとともに、
会員と共同で 除間伐の普
及啓発や施業同意を 得るための活動を 行 う など、 協力しながら 実績を積
一 22
Ⅰ
一
み 上げております。
(2) 循環型社会をめざした 間伐材の有効利用
戦後人工造林された スギ の間伐材は、 一部は島内の 製材工場で消費 さ
れてはいるものの 山に切り捨てられる 場合が多く、 これまで利用きれる
ことがほとんどあ りませんでした。 折しも、 平成 13年度に屋久島森林組
合 の 丸棒 加工およびモルダ 一施設の導入により 間伐材利用の 環境が整い
っつあ りましたが、 搬出用の林業機械の 絶対数が少ない 屋久島において
は、 仝 後 搬出用の機械を 導入し、 少しでも間伐材を 利用する方向に 転換
させる取り組みが 必要であ ると考えました。 これは特に資源循環型社会
をめざし、 景観の配慮を 重視する世界遺産の 屋久島の環境行政とも 合致
するものであ ります。
そこで、 まず、 私たちは、 間伐材の有効利用のための 搬出機械は何が
よ いか 研究することにしました。
その結果、 ①屋久島は年間降雨量が 5,000㎜にも達すること
( 「月に
35
日南が降る」とたとえられるほど ) 、 ②できるだけ 林地を荒らさない 方
法で 施業実施できること、 ③比較的安価なことなどから、
的な林内作業 車 よりも自走
式搬器 が適しているという
県内では一般
結論に達し、
林業
研究グループ 等起業支援事業による 補助により、 平成 13年度に導入が 実
現しました。
機械導入後、 積極的にこの 機械を利用した 間伐を実施してきており、
間伐材の利用拡大に 貢献しているところであ ります。
また、 屋久島は古くから 漁業が盛んな 島でもあ ります。 平成 13年
には地元林業関係の 協議会の委託を
4 月
受け、 間伐材を利用した 魚礁の製作、
設置に協力をいたしました。
(3) 岐阜県との交流
江戸時代、
幕府の命で行われた 薩摩藩士による 木曽三川
(
木曽、 長良、
揖斐川 ) の治水工事が 縁で姉妹 県 盟約を結んでいる 岐阜県の林業研究 グ
ループとの交流会を 平成 12年に屋久島で 開催し、 意見交換や記念植樹活
動等を行いました。 翌年には岐阜県で 開催され、 当会からは
一
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一
2
名の会員
み 上げております。
(2) 循環型社会をめざした 間伐材の有効利用
戦後人工造林された スギ の間伐材は、 一部は島内の 製材工場で消費 さ
れてはいるものの 山に切り捨てられる 場合が多く、 これまで利用される
ことがほとんどあ りませんでした。 折しも、 平成 穏 年度に屋久島森林組
合 の 丸棒 加工およびモルダ 一施設の導入により 間伐材利用の 環境が整い
っ っ あ りましたが、 搬出用の林業機械の 絶対数が少ない 屋久島において
は、 仝 後 搬出用の機械を 導入し、 少しでも間伐材を 利用する方向に 転換
させる取り組みが 必要であ ると考えました。 これは特に資源循環型社会
をめざし、 景観の配慮を 重視する世界遺産の 屋久島の環境行政とも 合致
するものであ ります。
そこで、 まず、 私たちは、 間伐材の有効利用のための 搬出機械は何が
よいか研究することにしました。
その結果、 ①屋久島は年間降雨量が 5,000mmにも達することく「月に 35
日南が降る」とたとえられるほど コ、 ②できるだけ 林地を荒らさない 方
法で 施業実施できること、 ③比較的安価なことなどから、 県内では一般
的な林内作業 車 よりも自走
式搬器 が適しているという
結論に達し、
林業
研究グループ 等起業支援事業による 補助により、 平成 13年度に導入が 実
現しました。
機械導入後、
機械を利用した 間伐を実施してきており、
貢献しているところであ ります。
積極的にこの
間伐材の利用拡大に
また、 屋久島は古くから 漁業が盛んな 島でもあ ります。 平成 13年
には地元林業関係の 協議会の委託を
4 月
受け、 間伐材を利用した 魚礁の製作、
設置に協力をいたしました。
(3) 岐阜県との交流
江戸時代、 幕府の命で行われた 薩摩藩士による 木曽三川 ( 木曽、 長良、
揖斐川 ) の治水工事が 縁で姉妹 県 盟約を結んでいる 岐阜県の林業研究 グ
ループとの交流会を 平成 12年に屋久島で 開催し、 意見交換や記念植樹活
動等を行いました。 翌年には岐阜県で 開催され、 当会からは
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2
名の会員
が 参加し、 その後も交流が 続けられています。
(4) 島内での PR 活動
また、 平成 15 年からは、 島内外の人たちに 少しでも木材の 利用を PR
しようと、 島内産の間伐材を 利用した門松を 会員全員で製作、 寄贈して
います。 12月から約
1
カ月間、 海の玄関口、 宮芝浦 港 ターミナルに 設置
[ 背景 ]
管理不充分な 森林の増大
玉
㌣
[ 課題 ]
・陰間伐等森林の 適正管理が急務
Ⅰ間伐材の利用促進
普及・支援
青年林業土の 組織化
林業事業体
林業改良指導員
屋久島地区青年林業十全
上屋久町
屋久町
『青年林業士 二 『林業事業体のリーダー』
活動テーマ
』
屋久島における 森林整備と森林
資源の持続的利用への 貢献
@づ
[ 課題 ]
・事業量の確保
・労働力の育成確保
・必要な林業機械等
の 整備
・知識・技術を 備え
た 人材の育成
(課題の解消 )
Ⅰ
す
[ 活動の成果 ]
島内における
① 民有林における 陰間伐実績の 向上 (活動前の約 1.8倍 )
② 島内における 利用間伐の取り 組みの定着 ( 自走 式 機器の導入
③ 若い林業従事者の 定着
メンバ一の
①
②
林業事業体や 地域のリーダーとしての 自覚の再認識
知識・技術の 向上
マ
㌣
[ 今後の活動 ]
①
②
③
関係機関への 木材利用拡大の 要望
青少年を対象にした 林業教室の開催
ボランティア 活動・イベントの 開催
図.
一
まとめ
223
一
( 各事業体
の 活発化 )
)
しました。
4. 活動の成果
の 森林整備推進活動が 活発化し、
民有林における 陰間伐の実績が 以
前の約 1.8倍に増加し、 結果として町が 進める緊急間伐促進計画に
協力できたこと。
②
これまでの切り
捨て間伐からできるだけ 利用間伐を進めるという
基盤が定着しっ っ あ ること。
③
連携が強化されたことで 各人の林業事業体や 地域のリーダー とし
て 自覚が再認識されるとともに、 知識・技術の 向上が図られ 各林業
事業体の発展につながったこと。
5. 今後の活動
屋久島では地域で 使 う ェネ、 ルギーや資源を 地域で賄い、 地域で排出す
る 廃棄物は地域で
処理するという、 「ゼロエミッション 構想」が提唱さ
れ、 その実現のために 現在、 さまざまなことが 行われております。
私たちグループとしてもこれまでの 活動に加え、 木材ができる 限り利
展開するとともに、 町、 県、 国 等 関係機関に
利用されるよ う 要望してゆくことにしています。
用 されるよ う さらに活動を
ももっと木材が
また、 次代を担 う 小中学生などに 森林・林業の 実態を知ってもら
う
た
めの林業教室や 一般島民を巻き 込んだボランティア 活動・イベントの 開
催などを仕掛けてゆきた いと 考えています。 私たちメンバーはすべて 屋
矢島を一度離れた U ターン者であ り、 だからこそ改めてそのすばらしさ
を実感しています。
これからも「世界自然遺産の
ていきた いと居、 います。
島」を誇りにがんばっ
(松田
一
224
一
公 博)