乳牛のサルモネラ症 サルモネラは、人畜共通感染症の原因菌のひとつであり、牛ではサルモネラ・ティフィ リウム、ダブリン、エンテリティディスによるものが家畜伝染病予防法で届出伝染病に指 定されています。 サルモネラ症は、幼弱な家畜に多発する病気でしたが、近年の牛の飼養変化に伴い、搾 乳牛のサルモネラ症が増加してきました。 昨年の管内でも約 7 年ぶりに搾乳牛への集団発生があり、甚大な被害がでました。 しかし、全国的には決して珍しい病気ではなく、平成 16 年度には全国で 93 件以上の 発生報告がありました。 サルモネラ症による損害を未然に防ぐために、サルモネラ菌についてよく理解し、予防 しましょう。 どんな症状か? 本来、子牛に多発し、発熱や下痢を主症状とし、ときに肺炎や関節炎を起こすことがあ ります。 急性例では、感染後数日以内に死亡することがあり、回復しても予後不良となる傾向が あります。 搾乳牛は、従来感染しても保菌牛なる例が多く、発症する例は少なかったのですが、近 年では突然の発熱(40℃以上)、下痢、食欲廃絶、乳量低下、起立不能、ときには肺炎な どの症状になり、重症例では死にいたるものがみられます。また、妊娠牛は菌の種類によ り、早産・流産を引き起こすことが知られています。 治療は? 抗生物質の投与による殺菌と併行し、精勤剤の大量投与による除菌が主体となります。 最近の発生事例や研究結果では、枯草菌製剤の投与による清浄化事例や、濃厚飼料給餌 を中止し、粗飼料中心の給餌にするなど抗生物質を使用しない方法も報告されています。 伝播方法 感染方法 サルモネラ菌の増殖 その他の留意事項 小動物を介し 感 染 牛 の 下 痢 便 に 気温 30~40℃でき 牛は、自ら病気を治す力があ サルモネラ菌の特徴 て 伝 播 し ま よ る 環 境 汚 染 に よ わめて早く増殖し、 ります。近年の成牛へのサルモネ す。 (犬、猫、 り 経 口 的 に 感 染 し 5 ℃ 以 下 で も 死 滅 し ラ菌の感染と発病は、濃厚飼 ネズミ、鳥、 ます。成牛は 1 千億 ない。乾燥に弱く、㏗ 料の多給やバイパス蛋白など 昆虫など) 個以上で感染、子牛 10 以上(アルカリ性)で の使用により第 1 位の環境 は 1 万個でも感染 死滅します。 の急変が原因の 1 つと考え します。(牛床、飼 られています。消化器病(下 槽、水、飼料に菌が 痢、第 4 胃変位など)が多い 付着) 場合は、給与資料の設計や給 牛舎内に小動 飼槽、ウォーターカ 春~夏にかけての牛 予 物侵入させな ップの清掃や、パド 舎消毒と牛の暑熱ストレ い工夫をして ッ ク の 水 溜 り の 改 スの緩和。石灰塗布は 防 ください。 (か 善も必要です。 舎内を乾燥し、牛床等 方 すに網、殺虫 の㏗を上げる効果があ 法 剤、作業後の ります。 戸締り等) 与方法の見直しが必要です。 また、枯草菌は消化管内、環 境の病原菌(サルモネラ以外も) を減らす効果があるといわ れています。予防方法として の 1 つとしての活用はどう でしょうか。 まとめ サルモネラ症が発症した場合、抗生剤の使用による生乳、生体の出荷停止、保菌牛の淘 汰や治療、消毒などの薬品代など、多大な費用がかかります。 また、発生が終息するまでに数ヶ月かかるために、畜主には大きなストレスがかかりま す。 先に示した予防対策などを実施することにより、サルモネラ菌の進入、牛群への蔓延を 未然に防ぐことで、被害を最小限に抑えることができると考えます。
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