2013/7/18 緩和ケア勉強会 マスカットキューブ とってもつらいね、消化器症状 (嘔気・嘔吐、便秘、イレウス) 岡山大学病院 消化器内科 那須淳一郎 1 参考資料 z がん患者の消化器症状の緩和に関するガイドライン 2011年版(日本緩和医療学会編) z PEACE project / 緩和ケア研修会資料(日本緩和医 療学会編) z 制吐剤適正使用ガイドライン (日本がん治療学会 編) z 終末期がん患者の輸液療法に関するガイドライン 2013年版(日本緩和医療学会編) 2 Agenda z嘔気・嘔吐 z便秘 zイレウス 3 定義 z 嘔気(nausea)とは、 「吐きたくなるような切迫した不快な自覚 症状である」 z 嘔吐(vomitting)とは、 「消化管内容物を反射的に口から出すこと である」 EPECTM-O Participant’s Handbook一部改変 4 定義 z悪心(おしん)…CTCAE z嘔気(おうき)…緩和医療学会 ×おうけ ×あくしん =恨みをいだき 悪だくみをする こと 5 Agenda z 原因 • 腫瘍随伴症状 • 化学療法の有害事象 z 治療 • 薬物療法 • 制吐剤適正使用ガイドライン • ケア z 症例 6 嘔気・嘔吐の原因 z 薬剤:NSAID、オピオイド、SSRI、抗うつ薬、ジギタ リス、抗がん剤など z 誘発物質:エンドトキシン、腫瘍からの誘発物質 z 代謝異常:腎不全、肝不全、高カルシウム血症、低ナ トリウム血症、ケトアシドーシス z 消化管運動の異常:腹水、腫瘍による圧迫、がん性腹 膜炎、放射線治療、消化管閉塞 z 頭蓋内圧亢進:脳腫瘍、脳浮腫 z 中枢神経系の異常:細菌性髄膜炎、がん性髄膜炎、放 射線治療、脳幹の疾患 z 心理的な原因:不安、恐怖 z 前庭系の異常:頭位変換による誘発、頭蓋低への骨転 7 移、聴神経腫瘍 嘔吐中枢への入力 原因代表例 大脳皮質 頭蓋内圧亢進 髄膜刺激 感情(不安・予期性嘔吐) 前庭器 薬物(オピオイド) 頭蓋底への転移 頭位変換により誘発(車酔い) 化学受容体 トリガーゾーン 薬物(抗がん剤、オピオイド) 代謝(腎不全、肝不全、電解質異常) 消化管 消化管蠕動低下・胃内容停滞 機械的消化管閉塞 粘膜障害(胃炎・NSAID) 8 嘔気・嘔吐に関わる神経伝達物質 zドパミン zヒスタミン zアセチルコリン zセロトニン 9 嘔気・嘔吐の治療 z原因の治療 • • • • • オピオイド→オピオイドローテーション 高カルシウム血症→ビスホスホネート製剤 便秘→排便コントロール 脳転移→画像評価し、治療適応を検討 消化管閉塞→手術・ドレナージ・薬物など z制吐薬の投与 10 症状・病態と制吐薬の選択 臨床症状 病態 薬剤の種類 ・動くと悪化する ・めまいを伴う 前庭神経の刺激 抗ヒスタミン薬 ・持続的な嘔気・嘔吐 ・オピオイド血中濃度 に合わせて増悪 化学受容体(CTZ) の刺激 ドパミン受容体 拮抗薬 ・食後に増悪 ・キリキリと痛い 消化管蠕動の亢進 抗コリン薬 ・原因が複数、もしくは 同定できない 複数の受容体 複数の受容体 拮抗薬 11 制吐薬1(第一選択薬) z H1受容体拮抗薬 副作用:眠気 • ジメンヒドリナート(ドラマミン錠) • ジフェンヒドラミン(レスタミンコーワ錠、ベナ錠) • ジフェンヒドラミン・ジプロフィリン配合(トラベルミン錠、注) • クロルフェニラミン(ヒスタール錠、クロールトリメトン注、ポララミン錠、注) • ヒドロキシジン(アタラックス錠、注) z D2受容体拮抗薬 副作用:蠕動痛、錐体外路症状 • ハロペリドール(セレネース錠(0.75mg)、注(5mg))眠前1~2T 1 ~3日ごとに増量、持続静注・皮下注 0.5~1A/日 • メトクロプラミド(プリンペラン錠、注)持続静注・皮下注2~6A/日 • ドンペリドン(ナウゼリン錠、坐剤)3~6錠 分3、坐薬 1日2個 z 抗コリン薬 • ブチルスコポラミン(ブスコパン錠、注) • スコポラミン(ハイスコ注(0.5mg)0.15~0.25mg i.s. [適応注意] 12 制吐薬2 z 複数受容体拮抗薬 major tranquilizer • クロルプロマジン(ウィンタミン錠、コントミン錠) [抗D2, 抗コリン, 抗アドレナリンα1] • プロクロルペラジン(ノバミン錠、注)[抗D2, 抗H1, 抗コリン] 3錠分3、持続 静注1~2A/日 副作用:眠気、錐体外路症状 • リスペリドン(リスパダール)錠1mg, 2mg, 3mg、OD錠0.5mg, 1mg, 2mg、細粒1%、液1mg/mL [抗D2, 抗H1, 抗5HT2] 1mg眠前 内服 嘔気時0.5mg追加内服 • レボメプロマジン(レボトミン錠、ヒルナミン錠) [抗D2, 抗H1, 抗コリン, 抗5HT2] 5~10mg眠前内服または屯用 • オランザピン(ジプレキサ)錠2.5mg, 5mg, 10mg、細粒1% [抗 5HT2, 抗5HT3, 抗H1, 抗D2, 抗コリン] 2.5~7.5mg1日1回内服ま たは屯用 13 制吐薬3 z 5HT3受容体拮抗薬 [適応] 化学療法による悪心嘔吐 • トロピセロトン(ナボバンカプセル) • グラニセロトン(グラニセトロン注、カイトリル注、錠) • オンダンセトロン(ゾフラン注、錠、ザイディス錠) • アザセトロン(セロトーン注、錠) • ラモセトロン(ナゼア注、OD錠) • インジセトロン(シンセロン錠) • パロノセトロン(アロキシ注) z 5HT4受容体拮抗薬 • モサプリド(ガスモチン錠) 14 制吐薬4 z コルチコステロイド • デキサメタゾン(デキサート注、デカドロン錠(0.5mg))4~8mg/日 • ベタメタゾン(リンデロン注、リンデロン錠(0.5mg)) 4~8mg/日 z オクトレオチド • オクトレオチド(サンドスタチン注(100μg)300μg/日持続皮下注 射 (100μg皮下注で半減期1.8時間) z NK1受容体拮抗薬 [適応] 化学療法による悪心嘔吐 • アプレピタント(イメンドカプセル(125mg, 80mg)) • ホスアプレピタントメグルミン(プロイメンド注(150mg))アプレピタントの プロドラッグ 15 制吐薬の副作用と対策 z眠気(不快な場合) • 制吐薬の減量・変更 z錐体外路症状 • パーキンソン症候群やアカシジアなど • 特にドパミン受容体拮抗薬で注意が必要 16 制吐薬の副作用と対策 アカシジアに対する評価の仕方 z症状 • • • • イライラして落ち着かない じっとしていられない 客観的にも落ち着かない 足がむずむずする z原因薬物 • 抗精神病薬、抗ドパミン作用を持つ制吐薬 が最近開始・増量されていないか、あるい は長期投与されていないかを評価 17 化学療法による悪心・嘔吐 z制吐剤適正使用ガイドラインの解説 (日本癌治療学会編 2010年5月) 18 3大制吐剤 z ステロイド • • • • 第一選択はデキサメタゾン リン酸デキサメタゾン 12mgはデキサメタゾン 9.9mgを含有 デカドロン(6.6mg)注=デキサート(6.6)注=デキサメタゾン6.6mg デカドロン(0.5mg)錠=デキサメタゾン0.5mg 経口最大20mg z 5HT3受容体拮抗剤 z NK1受容体拮抗剤 • アプレピタント(イメンド®): 1日目抗がん剤投与前の1-1.5hr前に 125mg、2日目・3日目午前中に80mg内服 • 遅発性悪心・嘔吐に有効 • アプレピタントはCYP3A4を介してデキサメタゾンのAUCに影響する のでデキサメタゾンを減量する • アプレピタントは効果不十分の場合、5日目まで追加してよい z 補助薬:H2RA, PPI 制吐薬適正使用ガイドライン2010年5月 (第1版) 19 セロトニン受容体拮抗剤 (5HT3RA) z グラニセトロン(グラニセトロン、カイトリル3mg注、錠) z パロノセトロン(アロキシ0.75mg注) • パロノセロトンは遅発性嘔吐に有効 z ラモセトロン(ナゼア注、錠) z オンダンセトロン(ゾフラン注、錠) z トロピセトロン(ナボバン錠) z アザセトロン(セロトーン注、錠) z インジセトロン(シンセロン錠) 制吐薬適正使用ガイドライン2010年5月 (第1版) 20 嘔吐リスク分類 z 高度嘔吐リスク(+AC療法) • 急性・遅発性の両者とも >90% リスクは約4日間 • NK1RA+Dex+5HT3RA • CDDP… z 中等度嘔吐リスク(AV療法以外) • 急性が30-90%で遅発性も問題となりうる リスクは約3日間 • Dex+5HT3RA • CPT-11, MTX, l-OHP… z 軽度嘔吐リスク • 急性が10-30%で遅発性は問題とならない • Dex • Doc, 5FU, GEM, MMC, PTX… z 最小度嘔吐リスク • 急性が10%以下で遅発性は問題とならない • 制吐療法不要 • Bmab, Cmab, Rmab… 21 嘔吐リスク分類とレジメン z 高度嘔吐リスク • 5FU/CDDP, S-1/CDDP • GEM/CDDP z 中等度嘔吐リスク • FOLFOX, FOLFIRI, XELOX • CPT-11 • イマチニブ z 軽度嘔吐リスク • • • • • • 5FU/LV MTX/5FU GEM PTX DTX S-1, UFT, Cape z 最小度嘔吐リスク • Cmab • ソラフェニブ 22 高度嘔吐リスクの前投薬 Day1 Day2 Day3 アプレピタント* ○125mg ○80mg ○80mg 5HT3RA ○ Dex ○9.9mg ○8mg (1.5A)(div) (po) ○8mg (po) Day4 Day5 ○8mg (po) (8mg (po)) *1日目抗がん剤投与前の1-1.5hr前に125mg、2日目・3日目午前中に80mg Day1 5HT3RA ○ Dex ○13.2-16.5 mg (4-5A) (div) Day2 Day3 Day4 ○8mg (po) ○8mg (po) ○8mg (po) Day5 デキサメタゾンを積極的に使用できない場合は、デキサメタゾン2-4日間の代わりに 5HT3RA 2-4日間を追加する。 23 中等度嘔吐リスクの前投薬 Day1 Day2 5HT3RA ○ Dex ○9.9 mg ○8mg (1.5A)(div) (po) Day3 Day4 ○8mg (po) (8mg (po)) Day5 オプション:カルボプラチン、イリノテカン、メトトレキサートなど Day1 Day2 Day3 Day4 アプレピタント* ○125mg ○80mg ○80mg 5HT3RA ○ Dex ○4.95 mg (0.75A)(div) (8mg (po)) (8mg (po)) (8mg (po)) Day5 *1日目抗がん剤投与前の1-1.5hr前に125mg、2日目・3日目午前中に80mg 24 軽度嘔吐リスクの前投薬 Day1 Dex Day2 Day3 Day4 Day5 ○6.6 mg (1A) (div) 25 突発性悪心 z 前投薬が最適か確認 z 前投薬に用いたものと違う薬剤を用いる。ドンヘ ゚リドン(ナウゼリン)、メトクロプラミド(プリンペラン)、ハロペリト ゙ール(セレネース)、ロラゼパム(ワイパックス)など z 5HT3RAを前投薬で用いた場合、違う 5HT3RAを用いる z 5日目までならアプレピタント(イメンド)追加可能 z 軽度リスク抗がん剤で急性悪心・嘔吐が生じたら :デキサメタゾン 4-8mg z 他の原因はないか:イレウス、前庭機能障害、脳転 移、電解質異常、尿毒症、オピオイド、心因的要 因など 26 予期性嘔吐 z ロラゼパム(ワイパックス 1mg前夜、1mg当日朝) 病名「心 身症」 z アルプラゾラム(コンスタン、ソラナックス 0.4mg前夜、0.4mg当日 朝) 病名「心身症」 27 嘔気・嘔吐のケア コミュニケーション・環境調整 嘔気・嘔吐の原因を説明し、目標を相談 嘔気・嘔吐の原因・誘因になるものを除去 吐物の臭気・食事・香水 必要な物を手元に準備 ガーグルベースン ティッシュペーパー ナースコール CopyrightⒸJapanese Society for Palliative Medicine 嘔気・嘔吐のケア 日常生活 上半身を挙上した安楽な体位 背中をさする 冷罨法 食事の工夫 食事量や種類の工夫 NST、栄養士と協働する リラクセーション・気分転換 CopyrightⒸJapanese Society for Palliative Medicine 嘔気・嘔吐のケア 口腔ケア・便秘対策 口腔のケア 口腔内の観察 冷水・レモン水・氷片の準備 便秘対策 患者の生活習慣にある便秘対策を確認 薬剤によるマネジメントの必要性を判断 CopyrightⒸJapanese Society for Palliative Medicine 症例1-1 z 40代女性 子宮頚癌術後再発 (一部改変) z オキシコンチン20mg/day、レスキュー:オキノー ム散5mgで疼痛管理良好 z X年1月 weekly TXL/Nedaplatin開始(制吐剤グラ ニセトロン+デキサートdiv) z Day2悪心、食事摂取不良、grade2 プリンペラン iv2回したが無効 そわそわした感じあり z Day5不眠に対してデパス錠 まずまず眠れたが悪心 残りすっきりしない z Day6緩和ケアチームに紹介 z 訪問すると、動くと気分が悪いので臥床がち 31 症例1-2 z 【評価と対応】 z 嘔吐中等度リスクの化学療法に対して、前投薬グラ ニセトロン+デキサートを行った z 化学療法の遅発性嘔吐と考えられ、次コースからア ロキシdiv追加 z プリンペランによるアカシジアの疑い z 体動で悪心が誘発されるのでトラベルミン錠 z 悪心嘔吐消退し、通院化学療法に移行した 32 症例1-3 z x年3月xx日 通院化学療法中に嘔気増加。経口摂取 減り内服薬が飲みにくく、疼痛増悪し緊急入院。 z オキシコンチン40mg/day、レスキュー、オキノー ム散5mgだったところをフェントステープ3mg、レ スキュー、オキノーム散10mgまたはボルタレン坐 薬25mgに変更した。 z 痛みは軽快したが、嘔気が持続し食事摂取不良のた め補液している。 33 症例1-4 z 【評価と対応】 z オキシコンチン40mg/dayの1.5倍=オキシコンチ ン60mg=フェントステープ3mg レスキューはオ キシコンチン60mgの1/6=オキノーム散10mg よって妥当 z オピオイド増加に伴う嘔気に対してノバミン錠 3T 分3追加 34 症例1-5 z 3/31と4/1じっとしていられない感じ、立ったり座 ったり、スリッパを履いたり脱いだりした。嘔気は 軽快。 z 4/2 朝からノバミン中止したところ嘔気再発 z 4/3 嘔気に対してノバミンを再開したところ、そわ そわしてbed sideに降りる 35 症例1-6 z z z z 【評価と対応】 ノバミンのD2阻害作用によるアカシジア 4/4 朝デキサート2A するも嘔気継続 4/4 眠前ジプレキサ1mg内服開始 36 症例1-7 z 4/5 嘔気消失、朝眠気あるが不快ではない z 4/9 朝食後に嘔吐、ジプレキサは継続希望(体重増 加、高血糖に注意) z 痛みを3日毎に評価 z 4/15 フェントステープ8mg、レスキューはオキノ ーム散30mgまで増量 z 4/17 退院 37 Agenda z嘔気・嘔吐 z便秘 zイレウス 38 便秘 z 定義 • 日本内科学会「3日以上排便がない状態または毎日 便があっても残便感がある状態」 • 日本緩和医療学会「腸管内容物の通過が遅延・停滞 し、排便に困難を伴う状態」 z 原因 • がんの直接的影響 消化管閉塞、脊髄損傷など • がんの二次的な影響 経口摂取不良、低繊維食、脱 水、高カルシウム血症、低カリウム血症など • 薬剤性 オピオイド、フェノチアジン、三環系抗うつ薬など • 併存疾患 糖尿病、甲状腺機能低下、痔瘻など 39 便秘の治療 z z z z 原因の除去 原因薬剤の変更 薬物療法 経直腸薬:グリセリン浣腸、炭酸水素ナトリウム・無水リン酸二 水素ナトリウム(新レシカルボン座薬) z 非薬物療法:環境の整備、水分や繊維質の摂取、身 体活動を促す、腹部マッサージ 40 便秘の治療薬 z 浸透圧性下剤 • 塩類下剤 酸化マグネシウム • 膨張性下剤 カルメロースナトリウム(バルコーゼ) 全身状態が悪い患者には不 適 • 糖類下剤 D-ソルビトール、ラクツロース(モニラック)[適応注意] • クエン酸マグネシウム(マグコロール) [適応注意] z 大腸刺激性下剤 • センナ(ヨーデル、アローゼン) • センノシド(プルゼニド)センノシドは乳汁に移行 • ダイオウ(ダイオウ、大黄甘草湯) • ピコスルファートナトリウム(ラキソベロン錠、液、コーラックソフト)腸管内でビサコジルに 変化する ビサコジルより穏やかに効果発現 習慣性が少ない • ビサコジル(コーラック) [腸溶錠なので牛乳で服用不可] • ビサコジル座薬(テレミンソフト座薬) 41 便秘の治療薬 z プロスタグランジン製剤 • プロスタグランジンF2α(プロスタルモンF)、ミソプロストール(サイトテック) z ルビプロストン(商品名アミティーザ)2C 2*( )MA クロライド チャンネルを活性化し小腸での水分分泌を促進 32年ぶりの新薬 ただし1カプセル=156.6円(マグミット500mg錠=5.6円) z その他 パンテチン(パントシン)、メペンゾラート(トランコロン)、チキジウム(チアトン) 、トリメブチン(セレキノン)、モサプリド(ガスモチン)、メトクロプラミド(プリンペラン) 、ポリカルボフィル(ポリフル、コロネル)、大建中湯、麻子仁丸 42 オピオイドによる便秘 y オピオイドが投与され、便秘が発現した患者に対して、下剤の投与や経 直腸的処置で便秘が改善しない場合は、オピオイドを変更する(モルヒ ネやオキシコドンからフェンタニルへ)。1B(強い推奨、低いエビデ ンスレベル)(がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン 2010年) y フェンタニルは、便秘を引き起こすとされるμ2よりもμ1オピオイド 受容体への選択性が高いため、低用量では便秘を起こしにくい。 y 末梢性μ受容体拮抗薬 臭化メチルナルトレキソン(商品名 Relistor) 皮下注射剤 2008年にFDA、欧州で承認 μ1 鎮痛 μ2 鎮痛、呼吸抑制、徐脈、 血圧低下、多幸感、 悪心、腸蠕動抑制、 排尿障害、縮瞳 κ 鎮痛、鎮静、 不快感、幻覚 δ 鎮痛、掻痒感 Agenda z嘔気・嘔吐 z便秘 zイレウス 44 腸閉塞 z腸管内容の肛門側への移動が障害され る病態。イレウス。 • 1)機械的腸閉塞 • 2)機能的腸閉塞 悪性消化管閉塞 食道・胃・十二指腸・空腸・回腸・結腸・直腸 45 悪性消化管閉塞を考える順序 z診断、評価(病態、部位) z侵襲的処置の適応 z薬物療法の適応 z輸液量の調整 z非薬物療法(ケア) 46 悪性消化管閉塞の病態生理 z 悪性消化管閉塞の発症には、多くのメカニズ ムが関係しており、その発症様式や原因も様 々である z 炎症性浮腫、便秘、脱水、便秘を惹起する可 能性がある薬剤(例:オピオイド、抗コリン 薬)は消化管閉塞を悪化させる z 成人の経口水分摂取…2L/日 z 消化管分泌液量…8L/日 47 消化管閉塞の治療 z ドレナージ • 経鼻胃管 • イレウス管(経鼻、経肛門) z 侵襲的処置:バイパス手術・内視鏡的ステント留置 術、経皮的内視鏡的胃瘻造設術(PEG)など z 薬物療法 z 輸液 • 1,000mL/日+異常喪失量を目安に行う • 2,000mL/日以上の輸液:腹水、浮腫、胸水を悪 化させることが多い 48 食道癌に対するステントの適応 y 適応の原則 ◦ 嚥下障害を伴った切除不能食道癌性狭窄 ◦ 癌性食道気管・気管支瘻 ◦ 放射線治療や化学療法後の食道狭窄 y 慎重に決定を要する適応 ◦ 噴門部癌性狭窄 y 禁忌または適応外 ◦ 経口摂取の意欲のない症例 ◦ 腫瘍から食道入口部までの距離が2cm以下の頚部食道癌 ◦ 固形物を誤嚥するような反回神経麻痺を伴う症例 大腸ステントの問題点 y 穿孔:初期は13%と高い穿孔率( Hooft JE, Lancet Oncol 2011)、最近の本邦の報告では2%(Saida Y, Surg Endosc 2011) y BTSで長期予後の悪化の報告(Sabbagh C. Ann Surg 2013) y 屈曲部、長い狭窄への留置は困難 y 下部直腸留置時、ヘルマン線(AVから4cm)にかかる と疼痛や頻便の原因になる。BTSでは手術の妨げになる 可能性がある。 y 化学療法を併用するとmigration、出血、菌血症のリス クが増えないか y 日本消化器内視鏡学会附置 大腸ステント安全手技研究 会による「大腸ステント安全留置のためのミニガイドラ イン」 消化管閉塞の薬物療法 z酢酸オクトレオチド [1B 強い推奨] • 消化管の分泌抑制、吸収を促進 • 3~4日で評価 • がんによる消化管閉塞に対する有効性が示されて いる(嘔気の改善、嘔吐回数・胃管からの排液量 の減少) Mercadante S. Support Care Cancer 2000 Mystakidou K. Anticancer Res 2002 Ripamonti C. J Pain Symptom Manage 2000 • 持続皮下・静脈注射(サンドスタチン)0.3~0.6mg/日 • 間欠的皮下・静脈注射 0.1mg×3回/日 51 • 保険適応は持続皮下注 消化管閉塞の薬物療法 z必要に応じてステロイドを併用 [2C 弱 い推奨] • 消化管閉塞を再開通させる可能性がある Feuer DJ. Cochrane Database Syst Rev 2000 • ベタメタゾン(リンデロン)4~8mg/日 で開始 。3~5日で効果があれば0.5~4mg/日に減量維 持。効果がなければ中止 • デキサメタゾン(デカドロン)16mg/日 • 酢酸オクトレオチドとベタメタゾンの混注避ける 52 消化管閉塞の薬物療法 zブチルスコポラミン [2C 弱い推奨] zその他の薬剤 [2C 弱い推奨] 53 ご清聴ありがとうございました z抗がん治療を遂行するために、支持療 法を適切に行いましょう。 z患者さんの苦痛を緩和するために、最 善の支持療法を行いましょう。 54
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