看護師、ケアスタッフによる食事形態アップへの取り組み 〜嚥下訓練の効果

健育会グループ 第 7 回 看護・リハビリテーション研究会
研究テーマ
看護師、ケアスタッフによる食事形態アップへの取り組み
看護師、ケアスタッフによる食事形態アップへの取り組み ~嚥下訓練の効果~
施 設 名
いわき湯本病院
発 表 者
○根本奈津美 崎村由子
概
要
【研究背景】
摂食・嚥下障害を持つ患者は増加傾向にあり、その
多くは嚥下食を摂取している。一方で、歯科医師や
言語聴覚士(ST)により嚥下機能の改善、向上を目
的とした研究や訓練が行われ、食事形態の評価、変
更にも取り組まれている。しかし、ST のみでは需
要においつかず嚥下機能の改善が進まない現状があ
る。そこで、看護師、ケアワーカー(CW)が ST
より指導を受け、嚥下訓練を行い評価することで食
事形態向上に繋がるのではないかと考えた
【研究目的】
看護師、CW による嚥下訓練を計画的に対象別に行
い摂食場面の観察、評価を行うことで食事形態の向
上に繋がるか検討する
【研究方法】
1. 対象
療養病棟入院中の嚥下障害の患者 15 名
2. 期間
2012 年 7 月~10 月
3. 方法
①介入前後で FIM、ADL 区分、藤島の嚥下グレー
ド評価を行った
②1日1回看護師、
CWによる嚥下訓練を実施した。
訓練法は麻痺と認知症がない場合は口腔体操、
麻
痺がある場合は口唇・舌の運動、認知症の場合は
アイスマッサージとした
③食事形態向上の基準として、摂食場面の 17 項目
を観察、点数化し、51 点満点の 80%以上を 3 週
連続で獲得した場合、食事形態を 1 段階上げる
として、週に 1 度評価を行った
④食事形態を 10 段階に分け、常食を 10 点としゼリ
ー食を 1 点として、トロミ剤を使用している場合
-0.25 点として点数化した
4.分析方法
・食事形態の変化:2 項分布
・嚥下グレードの変化:ウィルコクソン検定
・ADL、FIM 食事形態点数の変化: t 検定
5.倫理的配慮
書面にて説明同意を得、発表は個人情報が特定
されない表記とした
【結果】
1)対象者の概要
男性 5 名、女性 10 名であり、主な病名は脳血管疾
患が最も多く 8 名であった。平均年齢は 81.6±6.5
歳。対象者に行った嚥下訓練は、口腔体操 9 名、舌・
口唇の運動 4 名、アイスマッサージ 2 名であった。
2)介入前後の食時形態、嚥下グレード
食事形態が向上した患者は介入前 3 名 20.0%、介入
後 8 名 53.3%となったが有意差はなかった。
(P<0.05)
嚥下グレードでは、
介入前7が最も多く、
8名53.3%、
6 が 5 名 33.3%、介入後は 7 が最も多く 5 名 33.3%
次いで 8 の 4 名 26.7%。有意に嚥下グレードが高く
なった(P<0.05)
3)介入前後の FIM・ADL、食事形態点数の変化
介入前後で FIM・ADL に差はなかったが食事形態
で介入後に有意に食事形態点数が向上した(P<
0.05)
【考察】
今回の取り組みでは、嚥下グレード、食事形態点数
の変化の項目で有意差がみられた。このことから看
護師、CW による嚥下訓練が、嚥下機能に改善をも
たらし、定期的に評価を行ったことが食事形態アッ
プに繋がったと考える。本研究では看護師、CW が
ST の指導のもと介入したことで効果が得られた。
今後、各職員が摂食嚥下障害への理解を深め、嚥下
訓練を日常の生活場面に取り入れていけるような環
境づくりを行い他職種間の情報共有を図っていくこ
とが必要であると考える
【結論】
看護師 CW による嚥下訓練と定期的な嚥下訓練
を評価した結果、介入後に有意に嚥下グレードが
高くなり、食事形態点数が向上した。以上から、
嚥下障害のある患者に看護師、CW による嚥下訓
練と嚥下機能を定期的に評価することは、嚥下機
能の改善につながり、食事形態向上につながるこ
とが示唆された。
【参考文献】
嚥下ポケットマニュアル第 2 版
著者 聖隷三方原病院嚥下チーム
発行者 大畑秀穂 医歯薬出版株式会社
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