雇用削減行動と株価

雇用削減行動と株価
谷坂紀子(鉄道情報システム株式会社)
大竹文雄(大阪大学社会経済研究所)
改訂版『リストラと転職のメカニズム』所収
東洋経済信報社、2002 年 10 月、pp.11-23.
1
はじめに
90 年代の不況期において、希望退職や採用抑制による雇用削減は、雇用の安定を重
視してきた日本企業でも珍しいものではなくなってきた。日産自動車は、95 年 3 月に
7000 人という大規模なリストラを掲げ、更に 99 年 10 月には 21000 人の削減を掲げて
いる。98 年に銀行が多額の不良債権処理のための公的資本投入を受ける為、一斉に人
員削減を行っている。2001 年には、複数の電気機械産業において、大規模な希望退職
が行われている。例えば、松下電器産業とグループ4社がでは希望退職の応募者が7
000人前後に達する見通しになっている。富士通は、国内 5000 人を含む1万 6400
人の人員削減を、東芝は、国内外のグループ全体で 2 万人規模の人員削減を発表して
いる 。
日本における雇用削減は最終手段の合理化策であり、危機的な状態にある企業にお
いてなされる傾向があった。実際、小池(1983)、駿河(1997)が明らかにしたように、2
期連続で赤字が発生するような場合に、希望退職や解雇による雇用削減が行われてい
た。すなわち、雇用削減のアナウンスは将来の業績悪化を示すシグナルと考えられ、
企業評価、すなわち株価を下げるものと思われていた。しかし、90 年代に入って、大
規模な人員削減行動が企業価値を高める行動であるという考え方が多くなってきた。
雇用維持を唱えた企業の社債格付けを引き下げる債券格付け機関が現れた。また、人
員削減計画を発表すると株価が高くなるという報道も行われた。例えば、『日本経済新
聞』99 年 7 月 6 日付けの記事では、人員削減計画をまとめた企業について、その新聞
報道日から 7 月 5 日までの株価の上昇率を紹介している。三菱化学、三越、NEC、
ソニー、日本製紙、日立製作所、日産自動車、鹿島といった雇用削減計画を発表した
企業で株価が上昇している。これに対し、奥田(1999)は、安易な人員削減については
従業員との信頼関係を失い、優秀な人材を引き止めることができなくなってしまうた
め、企業の競争力を失うことになるという反論を行った。
しかしながら、雇用削減のアナウンスが日本の株式市場で、どのように評価されて
1
きたかということについて実証的な学術研究はなかった 1 。個々の株価の変動は、市場
全体の株式の影響を受けることと、雇用削減のアナウンスから離れた期間の株価の変
動には、他の要因も大きな影響を受けることなど、雇用削減が株価に与える影響を分
析するためにはコントロールすべき要因は多くある。本稿の目的は、イベントスタデ
ィという手法を用いて雇用削減のアナウンスが株式の超過収益率にどのような影響を
与えてきたかを明らかにすることである。イベントスタディとは、CAPMモデルを
用いてマーケットポートフォリオ全体のショックを除いた超過株式収益率の変化をイ
ベントの前後で分析する手法である。本稿においては、各企業が雇用削減を新聞記事
上で発表した際に、市場がその企業行動をどのように評価したかについて分析した 2 。
アメリカでは、既に雇用削減と株価収益率に関するイベントスタディがいくつか行
われている。Abowd et.al. (1990)は、1980 年と 1987 年の人的資源に関するアナウンス
が株価に与えている影響をイベントスタディの手法を使って分析したものである。5
つの人的資源管理に関するイベントを分析しており、そのひとつが雇用関係のイベン
トである。雇用に関する分析は、更に従業員と一時雇用者とに分けられて分析されて
おり、従業員解雇に関するアナウンスは株価に対してマイナスの影響を与えることが
示されている。
Farber and Hallock(1999)は、雇用削減の発表と株式収益の関係について、長期間のサ
ンプル期間を用いた分析を行った。彼らは 1970 年から 1997 年までの 28 年間で、アメ
リカにおける株式収益率の雇用削減イベントに対する平均的な反応はマイナスの値か
ら徐々にゼロの値へと近付いていることを発見している。その理由として、彼らはつ
ぎのような説明をしている。製品需要の低下に対応するための雇用削減は株価にマイ
ナスの影響を与えていたが、効率性を改善するために行う雇用削減は株価に影響を与
えないことが明らかにされている。そして、近年になればなるほど、効率性を改善す
るための雇用削減が相対的に増えていることが、雇用削減の株価へのマイナスの影響
を小さくしてきた。
表 1 は、Abowd et.al.(1990), Farber and Hallock(1990)に加えて、アメリカにおける先
行研究の結果を一覧表で示したものである。いずれも人員削減の発表というイベント
に対する累積株価収益率は平均してマイナスの値をとるということが示されている。
本稿の目的は、イベントスタディの手法を使って日本における 90 年代の雇用削減行
動が株式収益率に対して与える影響を分析することである。分析の結果、雇用削減は
1993 年以降株価に対してプラスの影響を与えることが明らかになった。しかし、雇用
1
日本においてのイベントスタディを使った研究は釜江・手塚(2000)等がある。し
かし、いずれも雇用と株価の関係を調べたものではない。
2
イベントスタディを使った分析の例としては、規制緩和や参入規制が行われたとき
の企業の株価の反応を調べることで、政策による企業レントの存在を示すというもの
がある。
2
削減が株価に与える影響はは業種や削減方法、削減規模、企業業績、時期といった要
因でも異なってくるということが観察された。また、削減方法として新規採用の抑制
や退職者の不補充などといった「自然減」を使うことも株価に対してプラスの影響を
与えているが「希望退職」がより大きな株価に対してプラスの効果をもっている。削
減規模と企業の企業業績、2つの条件下での分析では、経常利益が増加している企業
が雇用削減を行った場合か、経営危機にある企業が大規模な雇用削減を行った場合に
株価に対しプラスの影響を与えていた。
本稿の構成は、第2節でイベントスタディを行うために必要なデータの紹介をし、
第3節ではイベントスタディの詳しい説明を行う。第4節ではイベントスタディで求
めた超過収益を使って、各年度でその値がどう変化しているのか、産業ごとで値は異
なるのか、解雇の方法や、規模と企業の財務状況でもそれは異なってくるのかという
ことを分析している。最後に第5節では、論文のまとめと今後の課題について述べる。
2
データ
本稿では、『日本経済新聞CD-ROM』、『株価CD-ROM』、『会社四季報』の3
つのデータを用いてイベントスタディを行っている。
まず、雇用削減に関するアナウンスは、東京証券取引所に上場している企業に関す
るものを日本経済新聞の記事のみから選出した。具体的には、『日本経済新 CD-ROM』
の 1990 年から 1998 年までの全ての記事を対象に、次のような手順で雇用削減記事の
検索と選別を行った。第1に、『日本経済新聞 CD‐ROM』から「削減」、「解雇」、「再
建」、「工場閉鎖」、「希望退職」、「合併」をキーワードとして検索し(この条件で検索
された記事は、9年間で52,644になる)、この中から人員削減に関する記事だけ
を取り出した。第2に、その中から東京証券取引所上場企業のものだけを選び出した。
残ったサンプルの数は827となった。第3に、次のような条件のサンプルを取り除
いていた。まず、会社更生法申請によって株価が10円未満まで落ちていた9件のイ
ベントを除いた。次に、「役員削減」と「国外の工場、支店での人員削減」に関する雇
用削減の記事を除いた。これは、国内の雇用者に関する人員削減とは性質が異なるも
のであると判断したためである。「役員削減」に関して16件、「国外の工場、支店で
の人員削減」に関して56件をサンプルから削除した。こうして残った人員削減記事
のサンプル数は746となった。以上のようにして得られたサンプルをもとに、人員
削減アナウンスの時期を中心とした超過株式収益率を算出した。そしてそれらは、分
析の為に雇用削減行動があった年度ごと、削減を行った企業の業種別、経常利益の状
態別、そして雇用削減方法別に分類した。それら分類に含まれるサンプル数と全体に
占める割合は表2に示してある。
ここで、日本経済新聞のみから記事を得ることの是非について検討しよう。日本経
済新聞には上場している企業については小さな記事でも掲載されており、また、株式
3
の売買にかかわる人間のほとんどが目を通していると考えられる新聞である。本稿で
分析していることは、雇用削減のアナウンスがあったときの株価の反応であり、公表
されていない情報による株価の変化は、この論文での興味と異なるものである。した
がって、雇用削減の記事を収集するために日本経済新聞のみを使用することによる問
題は小さいと考えられる。
株式収益率は、東証株価指数(TOPIX)と東京証券取引所上場企業の日次株価デー
タを使って求めている。これらは東洋経済データバンク『株価 CD-ROM』より個々の
株価の日次データを得て、日次の株式収益率を計算することで求めたものである 3 。市
場の株式収益率を計算するための代理変数としてTOPIXを使用し、また、企業の
株式収益率を計算するためにそれぞれの銘柄の日次株価データを使用している。
t期の株価収益率 Rt は、次の式によって求められている。
Ri ,t =
Pi ,t − Pi ,t −1
(1)
Pi ,t −1
ここで、Pi ,t とはi名柄の t 期における株価のことである。 日次の株価収益率を算出す
る上での注意点として次の3つがある。第1に、ここでのt期前(もしくは後)とは、
t営業日前(後)を指している4 。第2に、夕刊に載っている記事の扱いを、翌日のイベ
ントとして扱うこととした。同様に記事の掲載された日が休日、もしくは休日の前の日
の夕刊であった場合の扱いは、休日明け最初の営業日をイベントのあった日としている。
第3に、取引の成立しなかった日の株価については、取引できないということを株価収
益ゼロであるとみなし、その日の株価を前日の終値のままであるとした。
さらに、『会社四季報』から、従業員数、経常利益、売上高に関する情報を得た。
3
3
イベントスタディ
権利落ちの株価については、変更(もしくは移動)前の株価を、変更(移動)後の
株価水準に換算してから使用している。調整係数を株価に掛けることで換算はでき、
調整係数の計算方法は次に示すとおりである。
増資の場合、新調整係数=(権利落ち理論値)÷(権利つき最終日の株価)×(旧調整
係数)。ただし、権利落ち理論値=(権利つき最終日の株価+払込金×有償割当率)÷
(有償割当率+分割(併合)割当率)であり、減資の場合は、新調整係数=1÷(1
-減資比率)×旧調整係数。また、額面変更の場合、新調整係数=新額面÷旧額面×
旧調整係数として求められている。(『株価 CD-ROM』より)
4
暦日単位を用いた分析も一年分のデータで行ったが、営業日での推定と大きな違い
はなかった。
4
本稿は、コーポレイト・ファイナンスの実証研究で広く使われている標準的なイベ
ントスタディの手法を用いている。具体的には Cambell, Lo, and MacKinlay (1997)で解
説されている手法に基づいている。すなわち、雇用削減のアナウンスメントというイ
ベントの60日前から30日前までのデータからCAPMに基づいて市場収益率を各
株価収益率の関係を推定し、イベント前後における超過収益率の動きを分析するとい
うものである。
3.1
ウインドウの設定
推定期間:イベントスタディでは、イベントから影響を受けない期間における通常
の株価収益率が CAPM に基づいて市場収益率の収益率と各株価の収益率の関係を推
定して、その推定値をもとにイベント前後の超過収益率を算出する。このイベントか
ら影響を受けない期間におけるCAPMのパラメーターを推定する期間を推定期間と
呼ぶ。本稿では Farber and Hallock (1999)に従い、イベントの60日前から30日前ま
での30日間を推定期間とし、これを L1 ( = T1 − T0 ) と表す。 T0 とは推定期間始めの日
である60日前のことであり、 T1 とは推定期間の最後の日である30日前のことであ
る。
イベントウインドウ:イベントウインドウとは、雇用削減アナウンスの発表という
イベントが起こったときに、イベント発生日を中心として、株価に影響が反映される
であろう期間のことを指す。イベント発生日(t=s )を中心として、イベントの情
報が事前に染み出しはじめていると考えられる日 t = T2 から、アナウンスの影響がな
くなるであろう t = T3 までの期間のことであり、この期間のことを L2 ( = T3 − T2 ) と表
すこととする。 本稿では 21 日ウインドウ( T2 = S − 10 から T3 = S + 10 まで)、11 日ウ
インドウ( T2 = S − 5 から T3 = S + 5 まで)、1 日ウインドウ(Sのみ)、以上3通りのイ
ベントウインドウで分析をおこなっている。適切なウインドウの期間を決めるための
理論や規準というものはないのだが、本稿では3通りのイベントウインドウのなかで、
主な分析を 21 日ウインドウで行っている 5 。Farber and Hallock (1999)、Caves and Krepps
(1993)等、先行の研究ではほとんどが 3 日ウインドウを主に使っている。しかし、本
稿で用いたデータではイベントのある10日前からすでに株価の反応が見られたこと、
21 日ウインドウによる検定が有意な結果をもっとも多く含んでいたということから
21 日ウインドウを用いた。しかし、21 日ウィンドウを用いることに特に理論的な根拠
があるわけではないため、21 日ウインドウ以外の分析も行った。
5
一部のものは 11-day ウインドウのほうが望ましかったので、11-day ウインドウで
分析を行っている
5
3.2
CAPM による通常収益率の推定
CAPMに基づいて、イベントに影響されない期間の市場収益率と個別企業の株価
収益率の関係を推定する。具体的には、企業iの日次株価収益率 Rit を市場の株価収益
率 Rmt によって説明する次の回帰モデルが推定される。
Ri ,t = α i + β i Rm ,t + ε i ,t
(2)
ただし、t は株式市場の営業日、iはイベント(雇用削減の発表)を行った企業の株
式銘柄、そしてmは市場を表す。この式を L1 ( = T1 − T0 ) の期間で推定し、企業固有の
αˆ , βˆ を求める。
3.3
超過収益率の推定
イベント周辺の期間について、次の式を用いて超過収益を求める。
ERi ,t = Ri ,t − (αˆ i + βˆ i Rm,t )
(3)
それぞれのイベントウインドウで、 T 1 から T 2 までの超過収益(ER)の累積値を、
累積超過収益(CAR:Cumulative Abnormal Return)と呼ぶ。それらはイベント746
個それぞれについて3通りのイベントウインドウごとで値を求めている。この累積超
過収益は、雇用削減というイベントが株価に対して与えた影響を表しており、負の値
が大きいほど株価に対して負の影響を与えたことを示し、正の値が大きいほどその逆
が言える。累積超過収益は、次のように求められる。
累積超過収益 :
T3
CARi = ∑ ERit
~N (0, σ i2 )
t =T2
(4)
サンプル全体を年度別、産業別などで分類したときの、それぞれの分類における累
積超過収益の平均値と分散値は以下のようにして求める。
平均値 :
AV (CAR ) =
1
N
N
∑ CAR
i =1
(5)
i
分散値 :
6
Var [ AV (CAR)] =
1
N2
N
∑σ
i =1
2
i
(6)
ここでNとは、それぞれの分類におけるサンプル数を示す。
4
推定結果
4.1
90年代の株価収益率の変化
(平均累積超過収益)
図1は、90 年代における年別累積超過収益率の平均値をグラフにしたものである。
90 年代を通じて上昇トレンドが観察される上に、90 年代後半においては、平均累積超
過収益率はプラスとなり、平均では雇用削減アナウンスが株価にプラスの影響を与え
ていることが分かる。
図2は、90 年代の前半と後半で、累積超過収益の密度分布(図2A)とその差(図
2B)を示している。90年代前半と後半を比較すると、後半の方がばらつきが大き
くなっていること、正の超過収益の 0.5 のあたりで90年代後半で増加がみられるこ
との2点が特徴である。図1では、平均値は90年代に上昇トレンドがみられるが、
ばらつきが拡大していることも同時に起こっており、平均的に雇用削減アナウンスが
株価にプラスの影響を与えているとはいえない。このため、平均値だけでなく、累積
超過収益がマイナスの値をとった比率(負値比率)についても検討していく。
表3には、平均累積超過収益と負値比率を、1990年代を3つの期間に分けて示
したものである。90 年代の初期(90~92 年)においては、平均超過収益はマイナスで
あり、93年以降の期間ではプラスになっている。しかし、90 年代初頭においても、
サンプルの中で累積超過収益がマイナスとなったものの比率は 54%であり、過半数を
越えている。90 年代半ばは、平均値もプラスであり、中位数もプラスになっている。
90 年代後半においては、超過収益率の平均はプラスであるが、中位数は負の値である。
雇用削減によって株価が正の影響を受けたケースが特に多かったというわけではない。
(雇用削減アナウンス前後の累積超過収益)
アナウンスの日を中心としたその前後の日々を含めた期間内の株価収益の変化を追
うことで、雇用削減行動が株価に対してどのような影響を与えているかを検討しよう。
図3は、雇用削減アナウンス日の前後の累積超過収益の動きを各年度別に示したもの
である。このグラフは、それぞれの日における超過収益の平均値を出し、雇用削減記事
が新聞に掲載された日の 10 日前より 10 日後まで平均値を累積してゆくことでつくら
れる。雇用削減の記事が株価を上げるようなグッドニュースであればグラフは右上が
りになり、株価を下げるようなバッドニュースであれば右下がりとなり、、株価を変化
させないような記事である場合には、水平になる。また、雇用削減アナウンスが予測
7
されていないニュースであれば、イベント日の周辺でグラフが急激に変化するような
形をとる。
図3のグラフを見ると、1990 年代全体ではゆるやかな右上がりになっている。つま
り、雇用削減というイベントを市場がプラスの評価をしていると言える。しかし、イ
ベント日周辺での急激な反応は見られない。このことから考えられる可能性としては、
イベント日の前から情報が漏れていた可能性が考えられる。
年度別にみると、95年、96年、98年の3年度については、累積超過収益は右
上がりである。しかし、他の年度については、ほぼ水平の動きとなっている。
4.2
業種別、方法別、状況別、削減規模別による分析
雇用削減のアナウンスが株価に与える影響については、業種、削減方法、企業の収
益状況、削減規模によって異なるか否かについて検討しよう。
以下でそれぞれのサンプルを(1)産業別、(2)削減方法別、(3)状況別、(4)削減規模別、
の4つに分けて分析を行った。
4.2.1
業種別
データを作る際、それぞれの企業の業種を、東洋経済新報社『会社四季報』の企業
データを参考に、33 に分類した 6 。しかしこれでは業種によってサンプル数が数個し
かないケースが発生したので、それらを更に9つにまとめ、分類した。それでも十分
なサンプル数に達しないものがあった為、この分析のために業種を更にまとめ、最終
的には「鉱業、建設、製造業」、「運輸・通信、電気・ガス業」、「金融・保険、不動産業」、
「卸売り、小売業」の4つに分類した。
図4は、各業種ごとで年度別の平均累積超過収益の累積推移を示したものである。
この中で、雇用削減に対して反応しているものがいくつかあり、その中でも 96 年~9
8年の「卸売り、小売業」が最も顕著な反応を見せている。雇用削減アナウンスのあっ
た日の前後で反応が観測され、雇用削減はプラスの評価を受けている。表3の平均累
積超過収益の値も 0.294(s.e=0.040)と正の値をとっており、統計的にも有意である。
また、負値比率も 0.38 であり、このケースについては雇用削減行動が株価を上げてい
ると言うことができる。90 年代後半における「金融・保険、不動産業」が右上がりの
反応を見せ、表3の平均累積超過収益もまた 0.056(s.e=0.03)と、統計的に有意な正の
値をとっている。ただし、他の 2 つの業種では、90 年代後半で右上がりにはなってい
ない。90 年代半ばにおける「運輸・通信・電気・ガス」でプラスの影響がみられるが、
6
基本的には 1998 年新春号を参考にしているが、合併や倒産等により 1998 年に存
在していない企業については、そのアナウンスがあった時の号を参考に分類している。
8
他の業種では、特に大きな変化はない。 1997 年の「卸売り、小売業」のサンプルは、
会社更生法申請の企業など、危機的状況に陥っているケースがほとんどである。「金
融・保険業」については、金融危機の年であり、ほとんどのケースが公的資金投入の為
の人員削減であった。
4.2.2
削減方法別
日本経済新聞よりデータを採取する際に、個々の記事から人員削減方法を抜き出し
た。表2の削減方法別にその分布を示した。国内の削減方法では、指名解雇はほとん
どなく、事実上の解雇として「希望退職の募集」がある。希望退職は、全体の約20%
である。それ以外の削減方法として多く使われているのが、「自然減」というものであ
る。これがサンプルのなかでも一番多く、全体の約35%を占めている。これは、新
卒採用の削減や見送り、退職者の不補充などによって従業員数を減らす方法で、「希望
退職の募集」と比べると従業員や企業にとってはあまり痛みを伴わない方法であると
言えよう。さらに、配置転換、出向、転籍、分社化などによる人員削減があり、これ
らも全体の約20%の人員削減で行われている。
図5は、企業が雇用調整を行うために取った方法別に、90 年代を 90~92 年度、93
~95 年度、96~98 年度ごとで平均累積超過収益の累積推移をグラフにしたものである。
「希望退職による削減」は、全ての時期において、超過収益率は雇用削減の前後にお
いて右上がりになっている。「配置転換による削減」は、90 年代初期を除いて、右上
がりの形状である。自然限については、第二期を除いて右上がりの形状となっている。
表3の平均累積超過収益は、93 年以降については「希望退職」、「配置転換」「自然減
のいずれの手法においても平均値は、プラスの値である。負値比率が 0.5 以下になっ
ているのは、「自然減」と「配置転換」である。「希望退職」は、大きく株価を上昇さ
せることもあるが、下落させる確率の方が高いと言える。
4.2.3
状況別
「状況別」とは、雇用調整を行った企業の経営状況によって分類したもののことで
ある。経営状況の指標としては経常利益を用いた。経常利益を使ったのは、日本経済新
聞の記事の中で「経常赤字」という言葉が数多く登場していたからである。また、小
池(1984)や駿河(1994)などで明らかにされてきたように、経常利益が赤字になることが
9
雇用削減の引き金になっていることが明らかにされてきたことも理由になっている 7 。
この「経常利益」の値を使い、次のような方法で企業の経営状況を評価した。雇用
削減アナウンスの行われた年の前の年と、その前の年の経常利益をとり、その値をもと
に3つの分類を行った。ひとつは、2期ともマイナスの値をとっている場合の「2期
連続赤字」であり、2つ目は、1期前の経常利益が2期前のものと比べて減少してい
る「経常利益減少」で、そして3つ目は、1期前の経常利益が2期前のものと比べて
増加している「経常利益増加」である。表5に、年度別の企業収益の分布を示してい
る。90年代を通じて、雇用削減を行った企業のうち、約60%は経常利益が減少し
ていた。一方で、経常利益が増加しているという業績のいい企業が雇用削減を行った
ケースが約30%ある。2期連続赤字という企業の危機的状況にある場合は、約8%
にすぎない。90 年度、91 年度と 96 年度以降においては、経常利益増加でありながら
雇用削減のアナウンスを行った企業が比較的多い。
図6は、企業の収益状況別に平均累積超過収益の累積推移を示したものである。こ
れによると、「経常利益増加」のものがイベントを境にして増加傾向にある。表4の平
均累積超過利益の 21 日ウインドウ、11日ウインドウ、1日ウインドウ全てで統計的
に有意な正の値をとっており、負値比率も 0.5 以下になっている。
ところで、表4の 11 日ウインドウ平均累積超過利益の値をみると、こちらは 3 つの
分類全てが統計的有為な値をとっている。そこで、この分類については 11 日ウインド
ウのものについても累積推移を表したグラフを図7で示した。図7を見ると、「2 期連
続赤字」がマイナスの反応、「経常利益減少」のものが無反応、「経常利益増加」がプ
ラスの反応、と3つの分類が3つの反応をはっきりと表している。経常利益が増加し
ているような企業が雇用調整のアナウンスをすると株価が上がり、連続して赤字利益
をだしているような企業が雇用調整のアナウンスをすると株価が下がるということで
ある。これは、良い状況におかれている企業は、雇用調整を行うことが更なる効率的
経営を目指したものであり、企業の将来利益を高める行動であると市場が評価したと
捉えることができる。今まで雇用調整とは危機的状況にある企業しか行われないと考
えられていたのだが、これは企業の合理化・スリム化が望まれる中で経営状態の良い
企業がその期待に応えた形の雇用調整なのである。
4.2.4
削減規模別
7
雇用削減記事の中に書いてある「不況による受注の減少の為」、「組織の再構築の為」
等の文中の言葉による分類も行った。しかし、雇用調整を行う理由が複数存在したり、
記事の内容だけを見て個々の原因を客観的に判断することは不可能であったこと、分
析を行っても特に統計的な差がみられなかったため、ここでは経常利益の状況別の分
析結果のみを示す。
10
奥田(1999)は、「現在の我が国では従業員のクビを切ることがもてはやされる…
(省略)…辞めさせる社員の人数が多ければ多いほど株価も高くなる」と述べている。
雇用削減規模と株価上昇との間の相関の有無を検討する。雇用削減に関する記事の中
で、削減予定数が盛り込まれたものは 746 件中 741 件あった。この分析のために、記
事の掲載された日が含まれる号の東洋経済新報社『会社四季報』より、各企業の総従
業員数をとり、削減予定数が全従業員数の何パーセントにあたるものなのかを算出し
た。算出された値を小さいものから順に並べ、それらを3分位に分け、「 削減規模大
(13.4%~65.8%)」、「削減規模中(6.3%~13.37%)、「削減規模小(0.08%~6.29%)」 という3
つの規模に分類した。
図8、図9は、削減規模別の平均累積超過収益の累積推移を示したものである。こ
の分類でもまた、表4の削減規模別のところで 11 日ウインドウの平均累積超過収益が
全ての値で統計的に有意な値をとっているので、2 つの図を作成した。どちらの図も
「削減規模大」が右上がりの程度が一番大きい。その次にプラスの影響を示している
のは、「規模削減小」の場合である。この結果から、削減する人数が多ければ多いほど
株価が高くなるということは言うことができない。
4.2.5
状況別と削減規模別での分析
前節までの分析で、「経営状況がよい場合」と「雇用削減規模が大きい場合」に株価
はプラスの影響を受けていたことが示された。両者には相関しているケースもあるの
で、両者をコントロールして分析を行う。
表6は、分類ごとで平均累積超過収益とその標準偏差をまとめた表である。表は 21
日ウインドウのものと 11 日ウインドウのもの 2 つを行っている。両者の結果は多くの
場合で一致している。経常利益が増加している場合には、雇用削減規模に関わらず、
雇用削減のアナウンスは株価にプラスの影響を与えている。
次に「削減規模小」の場合は、経常利益が減少している場合にプラスの効果がみら
れる。経常利益の減少している企業では、削減規模が小さいほうが評価される可能性
が高い。
以上のことから、必ずしも削減規模が大きいほど株価が上がるというわけではない
ことが示された。企業収益の良好な企業による場合にそのことが言え、企業収益の良
好ではない企業によるものは、大きな規模で行うことが必ずしも評価を上げないとい
うことである。
4.3
回帰分析による超過収益の決定要因分析
先ほどの分析では、単一要因、または2つの要因のみで分類をし、分析をおこなっ
11
た。しかし、超過収益が年度、業種、雇用削減の方法・規模等、複数の要因によって
決定されていることが今までに示していた結果に影響を与えている可能性がある。本
節では、それらの要因をダミー変数として超過収益を説明する推定式を推定し、各要
因それぞれの影響を調べる。
基本的な推定モデルは以下の通りである。
CAR = a1 + ∑ a 2 h DI h + ∑ a3 i DYi + ∑ a 4 j DM j
+ ∑ a5 k DRk + ∑ a6 l DS l + a 7 DR1 * DS1
DI : 業種別ダミー
DR : 経常利益ダミー
DY : 年ダミー
DS : 削減規模ダミー
(7)
DM : 削減方法ダミー
DR1 × DS1 : 「経常利益増加」と「削減規模大」のクロスダミー
この推定結果は、表7に示されている。
産業のダミーは 1996 年以降の「小売、卸売業」だけがプラスの影響を与えている。
年次ダミーは、90 年代初頭は 90 年代後半と較べると小さい値であり、90 年代を通じ
て雇用削減のアナウンスが株式市場に与える影響にはプラスのトレンドがあったと判
断できる。
次に、経常利益ダミーと削減規模ダミーは有意な値をとっていないが、「経常利益増
加」と「削減規模小」のクロスダミーの係数は統計的に有為な正の値を取っている。
このことから、経常利益増加、削減規模という個別の要因がそれぞれに平均株価収益
をプラスに動かしているのではなく、この二つが重なった場合にプラスになるという
ことが分かる。また、2期連続赤字の場合に削減規模が大きい場合に株価にプラスの
影響が観察される。
5
おわりに
本稿では、企業の雇用削減行動が株価に対してどのような影響を与えるのかという
ことをイベントスタディの手法を使って分析し、90 年代後半の日本においては株価が
プラスの影響を受けていたことが示された。そして、それは特に経常利益が増加して
いるような企業が削減を行ったときであるということが明らかとなった。
一方、経常利益が減少している企業では、削減規模が小さい場合に株価がプラスの
反応を示していた。すなわち、明らかに危機的状況ではない企業での雇用削減行動は
組織の合理化として評価される一方で思わしくない状況下での大規模な雇用削減は危
機的状況であると評価されるようである。
12
Farber and Hallock(1999)では、全体の年度別株式収益率は 28 年間でマイナスから0
へと近付いていたが、本稿の分析でも 90 年代に株価収益率のトレンドはプラスである。
平均値も Farber and Hallock(1999)のものはマイナスであったが 90 年代後半の日本では、
企業の雇用削減行動に対して株価がプラスに反応するケースが多く見られ、平均値は
プラスであった。
90 年代後半に、雇用削減のアナウンスが株価収益率に対しプラスの影響をもたらし
たのは、経常利益が増加している企業が雇用削減のアナウンスをするケースが増えて
きたことが大きい。
今後の研究課題としては、より長期間にわたった分析が必要である。90 年代だけの
分析では得られた結果が日本企業特有の動きであると特定することができないという
こと、今回行った 90 年代の分析だけでは見つけることのできなかった傾向をつかむこ
とができるかもしれない可能性があるからである。また、2001 年に入って電機産業を
はじめとして多くの企業が、雇用削減のアナウンスを行っている。さらに、いくつか
の企業では、ワークシェアリングや賃金カットのアナウンスを行っている。雇用削減
か賃金カットが株式市場でどのように評価されているのかを分析することは重要な研
究課題である。
参考文献
Abowd, John, George Milkovich, and John Hannon, 1990.The Effect of Human Resource
Management Decisions on Shareholder Value. Industrial and Labor Relations Review,
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Stock Prices to New Information. International Economic Review, February, 10 (1) 1-21
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NBER working paper 7295.
Rajiv, Kalra , Glenn V. Henderson Jr., and Michael C. Walker, 1994. Share Price Reaction to
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13
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Market for American Depository Receipts? Journal of International Financial Markets,
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and Stockholder Wealth. Academy of Management Journal, September 34(3), 662-78.
奥田碩(1999)、「経営者よ、クビ切するなら切腹せよ」『文芸春秋』文芸春秋社、10月
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『一橋論業』、第123巻、第5号
小池和男(1984)(1983)「解雇から見た現代日本の労使関係」、森口親司・青木昌彦・佐和
隆光編『日本経済の構造分析』創文社
平木多賀人・竹澤伸哉(1997)、「クロスセクション・アノマリー」『証券市場の実証ファ
イナンス』朝倉書店、174-192頁
駿河輝和(1997)「日本企業の雇用調整」、中馬宏之・駿河輝和編『雇用慣行の変化と女性
労働』東京大学出版会
14
表1: 先行研究の一覧
著者
Abowd, et. Al. (1990)
Caves & Kreppps (1993)
Kalra, et. Al. (1994)
Worell, et. Al. (1994)
Farber & Hallock (1999)
本稿
期間
サンプル数 雇用削減のタイプ 平均累積超過収益
1980年と1987年
125
1987-1984年
513
1984-1987年
1979-1987年
132
194
1970-1997年
3878
1970‐1979年
1503
1980-1989年
1491
1990-1997年
884
1990-1998年
1990年
746
12
1991年
5
1992年
61
1993年
153
1994年
73
1995年
1996年
109
97
1997年
66
1998年
170
15
従業員解雇
製造業のみ
工場閉鎖
全てのタイプ
全てのタイプ
全てのタイプ
全てのタイプ
全てのタイプ
全てのタイプ
全てのタイプ
全てのタイプ
全てのタイプ
全てのタイプ
全てのタイプ
全てのタイプ
全てのタイプ
全てのタイプ
全てのタイプ
-0.368
-0.900
-0.500
-0.014
-0.376
-0.647
-0.261
-0.112
0.024
-0.035
-0.024
0.001
0.008
-0.008
0.036
0.083
0.013
0.028
表2 : 雇用削減に関するアナウンスの内訳
内訳
サンプル数
%
年度別
1990年
1991年
1992年
1993年
1994年
1995年
1996年
1997年
1998年
業種別
鉱業、建設、製造業
運輸・通信業、電気・ガス業
金融・保険業、不動産業
卸売り、小売
12
5
61
153
73
109
97
66
170
1.61
0.67
8.18
20.51
9.79
14.61
13.00
8.85
22.79
488
62
146
50
65.42
8.31
19.57
6.70
経営状態別
2期連続経常収支赤字
経常収支減少
経常収支増加
63
466
217
8.45
62.47
29.09
削減方法別
希望退職
配置転換
自然減
その他
Missing
183
195
317
22
201
19.93
21.24
34.53
2.40
21.90
サンプル数:746
注1)「経営状態別」とは、雇用削減の行われた前の年の経常収支が前々年度のものよりも増加しているか減
少しているかということで分類したものである。その中でも、前年度、前々年度の経常収支が 2 期とも赤字であ
る場合については、たとえ増加していても減少していても、「過去 2 年間経常収支赤字」に分類されている。
注2)「削減方法別」における希望退職とは、希望退職の募集・早期退職優遇制度の実施・転職支援が含ま
れる。配置転換には配置転換・出向・転籍が含まれる。また、自然減には退職者の負補充、新卒採用の削
減・見送りが含まれる。また、一件の雇用削減記事には複数の削減方法が含まれることもあるため、サンプル
数が重複している。そのため、「削減方法別」のサンプル数合計は、全体のサンプル数よりも多くなる。
16
表3 : 平均累積超過収益 -21days windowこの表は、年度別に平均値と、標準偏差、負値比率を求め、一覧にしたものである。負値比率とは、負の値をとる割合を示し、0.5よりも大きければサンプルの中に負の値をとる
ものが半数以上含まれているということを意味するものである。これらのデータは正規分布に従っていないので、平均値が必ずしも全体の値を代表するとは限らない。そのため、
負値比率も併せて見る必要がある。
全体
業種別
鉱業、建設、製造
運輸・通信、電気・ガス
金融・保険、不動産
卸売り・小売
1990~92年
-0.007* (0.003)
負値比率
0.54
-0.005 (0.003)
-0.030 (0.020)
-0.014* (0.006)
0.064 (0.014)
0.54
0.33
0.63
0.00
1993~95年
0.013* (0.001)
0.003* (0.002)
0.062* (0.003)
0.011* (0.005)
0.045* (0.004)
負値比率
0.48
1996~98年
0.041* (0.003)
負値比率
0.52
0.49
0.40
0.59
0.31
0.021* (0.004)
-0.015
(0.005)
0.056* (0.003)
0.294* (0.040)
0.52
0.55
0.53
0.38
0.40
0.49
0.44
0.049* (0.010)
0.006
(0.005)
0.076* (0.005)
0.52
0.57
0.47
0.49
0.41
0.44
0.23
0.63
0.066* (0.003)
0.043* (0.003)
0.023* (0.002)
0.051* (0.014)
0.005* (0.002)
0.51
0.46
0.49
0.25
0.53
経営状態別
2期連続経常収支赤字
0.088 (0.032)
経常収支減少
-0.013* (0.003)
経常収支増加
-0.003
(0.005)
0.50
0.60
0.45
希望退職
配置転換
自然減
その他
missing
0.60
0.50
0.45
0.61
0.027* (0.005)
0.002
(0.001)
0.079* (0.004)
方法別
0.011 (0.010)
-0.005 (0.004)
0.006 (0.004)
-0.026* (0.005)
0.041* (0.003)
0.018* (0.002)
0.011* (0.002)
0.041* (0.010)
-0.024* (0.002)
削減規模別
削減規模大
削減規模中
削減規模小
0.004
(0.002)
0.024* (0.003)
-0.002 (0.002)
0.50
0.53
0.47
0.004
(0.003)
0.024* (0.003)
-0.002 (0.002)
0.50
0.53
0.47
注 ) 括弧内は標準偏差であり、*は5%水準で統計的に有為。(ただし、サンプル数が5以下のものに対しては、*を付けていない)
また、表中にある「-」とは、サンプルの存在しないものである。
17
0.131* (0.009)
-0.001 (0.006)
0.035* (0.003)
0.41
0.50
0.55
表4 : 平均累積超過収益
21 日ウインドウ
平均値
全体
0.024*
(0.002)
11 日ウインドウ
負値比率
0.50
平均値
0.008*
(0.002)
1 日ウインドウ
負値比率
平均値
負値比率
0.51
-0.001
0.54
0.51
-0.002
0.55
0.48
0.00004
0.50
0.52
-0.0003
0.53
0.42
0.008
0.50
0.51
0.001
0.50
0.47
-0.004
0.55
0.47
0.002
0.54
0.36
0.002
0.36
0.55
-0.002
0.56
0.56
-0.005
0.57
0.52
-0.002
0.56
0.45
0.003
0.48
0.44
0.001
0.55
0.55
-0.002
0.57
0.49
-0.001
0.51
産業別
鉱業、建設、製造
運輸・通信、電
気・ガス
金 融 ・保 険 、不 動
産
卸売り・小売
0.009*
(0.002)
0.022*
(0.003)
0.038*
(0.003)
0.125*
(0.013)
0.51
0.47
0.56
0.32
-0.00006
(0.034)
0.005
(0.003)
0.015*
(0.003)
0.074*
(0.016)
削減方法
別
希望退職
配置転換
自然減
その他
missing
0.035*
(0.004)
0.018*
(0.003)
0.018*
(0.004)
0.160*
(0.029)
0.007*
(0.003)
0.50
0.44
0.50
0.32
0.55
0.014*
(0.003)
0.009*
(0.003)
0.010*
(0.002)
0.133*
(0.036)
-0.011*
(0.003)
経営状態
別
2期連続経常収
支赤字
経常収支減少
経常収支増加
0.040*
(0.006)
0.002
(0.002)
0.076*
(0.004)
0.46
0.53
0.46
-0.021*
(0.005)
-0.005*
(0.002)
0.044*
(0.004)
削減規模
別
大規模
中規模
小規模
0.060*
(0.004)
0.012*
(0.003)
0.014*
(0.002)
0.46
0.52
0.52
0.034*
(0.005)
-0.006*
(0.003)
0.006*
(0.002)
注 ) 括弧内は標準偏差であり、*は5%水準で統計的に有為。(ただし、サンプル数が5以下のものに対して
は、*を付けていない)
19
表5 雇用削減アナウンス時の企業の収益状態
年
2 期連続赤字 経常利益減少 経常利益増加
1990
8.33
25.00
66.67
1991
0.00
40.00
60.00
1992
1.61
67.74
30.65
1993
5.23
86.27
8.50
1994
12.33
80.82
6.85
1995
11.93
68.81
19.27
1996
10.31
49.48
40.21
1997
19.70
46.97
33.33
1998
4.71
43.53
51.76
合計
8.43
62.38
29.18
表6 : 複合条件
(a) 21 日 ウインドウ
削減規模大
2期連続赤字
0.090*
利益減少
-0.002
収益増加
0.170*
(0.008)
(0.005)
(0.011)
-0.058*
0.003
0.047*
(0.013)
(0.004)
(0.004)
-0.035*
0.015*
0.027*
(0.008)
(0.002)
(0.003)
2期連続赤字
0.002
利益減少
0.007
収益増加
0.12*
(0.007)
(0.004)
(0.014)
-0.065*
-0.014*
0.027*
(0.015)
(0.004)
(0.004)
-0.044
0.008*
0.016*
(0.008)
(0.002)
(0.003)
削減規模中
削減規模小
(b) 11 日ウインドウ
削減規模大
削減規模中
削減規模小
注) 括弧内は標準偏差であり、*は5%水準で統計的に有為な値である。
20
表7 : 回帰分析による要因分解
説明変数
回帰係数
説明変数
回帰係数
定数項
0.894
希望退職ダミー
-0.002
(0.160)
90年代 鉱業、建設、製造業ダミー
(0.025)
-0.034
自然減ダミー
(0.050)
(0.036)
経常利益減少×削減規模
0.008
小ダミー
90年代 運輸・通信、電気・ガス業ダミー -0.018
(0.060)
90年代 金融、保険、不動産業ダミー
(0.028)
二期連続赤字×削減規模
-0.045
小ダミー
-0.017
(0.054)
第三期 卸売・小売業ダミー
(0.093)
二期連続赤字×削減規模
-0.046
中ダミー
0.215 **
(0.086)
1990 年ダミー
(0.077)
二期連続赤字×削減規模
0.084 *
大ダミー
-0.140
(0.104)
1991 年ダミー
(0.050)
経常利益増加×削減規模
0.159 **
小ダミー
-0.071
(0.123)
1992 年ダミー
(0.039)
経常利益増加×削減規模
0.028
中ダミー
0.001
(0.041)
1993 年ダミー
(0.037)
経常利益増加×削減規模
0.044
大ダミー
0.021
(0.032)
1994 年ダミー
(0.039)
0.005
(0.040)
1995 年ダミー
0.035
(0.035)
1996 年ダミー
0.063 *
(0.035)
1997 年ダミー
-0.013
サンプル数
741
決定係数
0.059
-0.875
(0.040)
注1 ) 括弧内の数値は標準偏差である。
注2 ) **は5%、*は10%水準で統計的に有為。
注3 ) 被説明変数は平均累積超過収益(21-day ウインドウ)
21
図1 平均累積超過収益
(21日ウインドウ)
0.1
0.08
平均累積超過収益
0.06
0.04
0.02
0
1990
1991
1992
1993
1994
-0.02
-0.04
-0.06
年
22
1995
1996
1997
1998
図2A
累積超過収益の分布
90~94 年
95~98 年
4
3
2
1
0
-.5
-1
0
c21ew
.5
1
(Epanechnnikov Kernel、0.02 Bandwidth)
図2B
90~94年と95~98年のカーネル密度の比較
.410574
90 年 代 前
半と後半の
密度関数の
比較
-.815262
-1
-.5
0
c21ew
23
.5
1
図3
年度別累積超過収益
年度別 累積超過収益
0.1
0.08
0.06
0.04
0.02
0
s-10
s-9
s-8
s-7
s-6
s-5
s-4
s-3
s-2
s-1
s
s+1
s+2
s+3
s+4
s+5
s+6
s+7
s+8
s+9
s+10
-0.02
-0.04
-0.06
Day
1990
1991
1992
1993
1994
1995
24
1996
1997
1998
1990to1998
(a) 鉱業、建設、製造
(c) 金融、保険、不動産
(b)運輸・通信、電気・ガス
(d) 卸売り、小売業
Event
Time
図4 : 業種別累積超過収益
25
(a) 希望退職による人員削減
(c) 自然減による人員削減
(b) 配置転換による人員削減
図5 : 削減方法別累積超過収益
26
図6 : 経常利益状況別 平均累積超過収益の推移(21日ウインドウ)
27
図7 : 経常利益状況別 平均累積超過収益の推移(11日ウインドウ)
28
D
a
y
図8: 削減規模別 累積超過収益の推移(21 日ウインドウ)
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図9: 削減規模別 累積超過収益の推移(11日ウインドウ)
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