平 成 26 年 7 月 IP電 話 普 及 推 進 センタ 技術解説第 5 回 『ビジュアルコミュニケーションと支 える技 術 –映 像 コーデック-』 ビジュアルコミュニケーション(Visual Communication; VC)には、代 表 的 なものとして、ビ デオ会 議 システム(Video Conference System)や、テレビ電 話 、ビデオチャットなどがあ ります。 ビジネスでビジュアルコミュニケーションを活 用 するには、音 声 ・映 像 だけでなく、資 料 や アプリケーションデータを共 有 することも必 要 です。また、通 信 に IP 技 術 を用 いることに より、これらの様 々なデータを一 緒 に送 受 信 することが可 能 になります。 ビジュアルコミュニケーションには以 下 のような特 徴 があります。 ・音 声 と連 動 して、相 手 の顔 等 の映 像 を見 ながら会 話 ができる ・音 声 と資 料 、アプリケーションデータ等 の共 有 ができる ・IP 技 術 によって音 声 、画 像 と資 料 、各 種 データの融 合 が可 能 になる 音声 画 像 *1 資 料 ・データ *1.画 像 :ここでは「動 画 像 」の意 味 で使 用 している。 図 1: ビジュアルコミュニケーションの定 義 ビジュアルコミュニケーションを実 現 するための通 信 手 段 として、かつては、ISDN 技 術 が 用 いられていましたが、ネットワークの基 礎 技 術 が IP 化 されるに従 って、IP ネットワーク が用 いられるようになりました。 本 技 術 解 説 では、ビジュアルコミュニケーションを支 える技 術 について見 ていきましょう。 今 回 は、映 像 コーデックについて解 説 します。 映 像 コーデック技 術 ビジュアルコミュニケーションの実 現 には、VoIP で必 要 な音 声 コーデックだけでなく、膨 大 な情 報 量 になる映 像 データを取 り扱 う為 の映 像 コーデックが必 要 になります。 ●映 像 コーデックとは 映 像 コ ーデ ッ クは、 送 信 側 でアナ ログ 映 像 ( 信 号 ) を デ ジタル 化 し て、 デジ タル 化 した 画 像 の圧 縮 を行 い、それを IP ネットワークなどにより伝 送 し、受 信 側 で圧 縮 データを元 の データに戻 し、さらにアナログ映 像 として再 生 する機 能 です。 IP ネットワークを介 して映 像 信 号 を送 信 側 のカメラから受 信 側 のディスプレイに送 信 す るシステムにおける映 像 コーデックの模 式 図 を示 します。 送信側 アナログ映像 カメラ 受信側 エンコード (符号化) デコード IPネットワーク AD変換 圧縮 映像コーデック ディスプレイ (復号化) 伸張 DA変換 デジタル 100101000111…. 音声コーデック :映像パケット マイク 再生 映像コーデック 音声コーデック :音声パケット 図 2: 映 像 コーデック 送 信 側 のカメラから入 力 された女 性 の映 像 (アナログデータ)は IP ネットワークを使 って 伝 送 する為 に、デジタルデータに変 換 する必 要 があります(AD 変 換 )。また、効 率 よく IP ネットワーク上 で伝 送 を行 うためのデータ圧 縮 を行 います。この2つを合 わせてエンコー ド(encode、符 号 化 )と呼 びます。 受 信 側 では、IP ネットワークを通 して受 信 した映 像 パケットを伸 張 して(圧 縮 されたデー タを元 に戻 す)、それを再 びデジタルデータからアナログデータに変 換 して女 性 の映 像 を ディスプレイに表 示 します(DA 変 換 )。これがデコード(decode、復 号 化 )です。 エ ン コ ー ド と デ コ ー ド を あ わ せ て 、 コ ー デッ ク と 呼 ぶ の は 音 声 コ ー デ ッ ク と 同 じ で 、 こ の 仕 組 みを映 像 コーデックと呼 びます。 ●MPEG と H.26x 映 像 コ ー デ ッ ク に は 、 電 気 通 信 に 関 す る 国 際 標 準 化 団 体 の ITU-T で 標 準 化 さ れ た H.26x(x:1,2,3,4,5)と情 報 処 理 分 野 に関 する国 際 標 準 化 団 体 の ISO/IEC により標 準 化 された MPEG-y(y:1,2,4,AVC,HEVC)の映 像 コーデックがあります。それぞれの方 式 を応 用 分 野 で分 類 すると、通 信 分 野 には ITU-T 標 準 を利 用 、蓄 積 用 (ビデオ CD や DVD な ど)は MPEG を利 用 、放 送 は ITU-T 標 準 と MPEG を利 用 することが一 般 的 でした。しか し、最 近 では、どの分 野 においても H.264/AVC などの汎 用 的 な圧 縮 符 号 化 標 準 を利 用 することが一 般 的 になっています 。 昨 年 、H.265/HEVC という最 新 の映 像 コーデックが 標 準 化 され、4K テレビや携 帯 端 末 への動 画 配 信 などに使 われ始 めており、今 後 、ビデ オ会 議 をはじめ様 々な用 途 に使 われていくと期 待 されます。 種類 内容 成立時期 標準化 H.261 ISDN に対 応 したテレビ 電 話 /ビ デオ会 議 用 のデジタ 1990 年 ITU-T 1995 年 ISO/IEC ル映 像 圧 縮 符 号 化 標 準 。 VHS 程 度 の画 像 品 質 を 実 現 。伝 送 速 度 40kbps~2Mbps。 MPEG-2 ITU-T と ISO/IEC が共 同 で策 定 。4 M~10Mbps で または SDTV(従 来 テレビ)品 質 、15~30Mbps で HDTV(ハ H.262 イビジョン)品 質 を実 現 。 H.263 H.261 を改 良 し、H.261 の約 2 倍 の圧 縮 効 率 を実 ITU-T 1996 年 ITU-T 1998 年 ISO/IEC 現 。誤 り耐 性 の向 上 が図 られている。伝 送 速 度 40kbps~2Mbps。 MPEG-4 低 伝 送 速 度 でオブジ ェクト単 位 の動 画 像 圧 縮 符 号 ビ ジュアル 化 を実 現 。インターネット上 や携 帯 電 話 のマルチメデ ィア圧 縮 に適 用 。伝 送 速 度 10kbps~40Mbps。 H.264 ITU-T と ISO/IEC が共 同 で策 定 。H.263 に比 べ 、約 2003 年 または 2 倍 の圧 縮 効 率 を実 現 。ビデオ会 議 だけでなく、低 M PEG-4 ITU-T I SO/IEC 速 ・低 画 質 の用 途 から、大 容 量 ・高 画 質 の動 画 まで AVC 幅 広 い用 途 。伝 送 速 度 10kbps~240Mbps。 H.265 ITU-T と ISO/IEC が共 同 で策 定 。H.264 に比 べ、約 2013 年 または 2 倍 の圧 縮 効 率 を実 現 。4K,8K テレビなどの超 高 解 HEVC 像 度 画 像 の伝 送 、携 帯 端 末 向 けの動 画 配 信 などの 用 途 を想 定 。伝 送 速 度 は一 般 用 途 向 け 128kbps~ 240Mbps、プロ用 途 向 け 30Mbps~800Mbps。 表 1:映 像 コーデックの種 類 ITU-T I SO/IEC ●映 像 コーデックのしくみ 映 像 コー デ ッ ク は 音 声 コー デ ッ ク と 比 べ て 、 扱 う デ ー タ 量 が 膨 大 で あ る た め 、 画 面 の 性 質 (動 きの大 小 など)を利 用 した圧 縮 方 法 を用 いることがひとつの特 徴 です。 データ量 について言 うと、例 えば音 声 であれば、標 準 的 な電 話 の音 声 を音 声 コーデック G.711 で扱 うと 64kbps のデータとなります。それに対 し映 像 (動 画 像 )では例 えばアナロ グ TV(SDTV)を圧 縮 せずにデジタルデータとすると 124Mbps、ハイビジョン TV(HDTV) では 746Mbps にもなります。映 像 コーデックを用 いることで、データ量 を数 十 分 の一 に削 減 して伝 送 することが可 能 です。 映 像 (動 画 )の情 報 量 を削 減 する基 本 的 な考 え方 として以 下 の手 法 があります。 ①画面内の冗長(類似)情報 の削減 画面(フレーム) ・・・ 画面1 画面2 ②画面間の冗長 (類似)情報の削減 画面3 ②画面間の冗長 (類似)情報の削減 時間軸 図 3:映 像 コーデックの基 本 的 な考 え方 ① 画 面 内 の画 素 そのものが持 つ冗 長 情 報 を削 減 します(空 間 的 な冗 長 度 の削 減 ) 。 同 一 画 面 (フレーム)内 の 1 つの画 素 周 辺 は似 通 った画 素 になっていることを利 用 し ています。 ② 画 面 間 の冗 長 情 報 を削 減 します(時 間 的 な冗 長 度 の削 減 )。1 つの画 面 (フレーム)の前 後 は、それと似 たような画 面 (背 景 )になっている性 質 を利 用 します。 上 の仕 組 みを組 み合 せた動 画 像 の圧 縮 符 号 化 を「ハイブリッド符 号 化 」と呼 びます。 画 面 内 冗 長 (空 間 冗 長 度 の削 減 )と画 面 間 冗 長 (時 間 的 冗 長 度 の削 減 )を用 いる「ハ イブリッド符 号 化 」は、映 像 コーデックの基 本 原 理 ですが、現 在 の映 像 コーデックは加 え て、動 きの早 い画 像 に対 して動 きの予 測 や誤 り耐 性 を上 げる映 像 補 正 などの技 術 が 開 発 されており、そのために映 像 コーデックを用 いる場 合 、どのような設 定 を用 いるかが、 お互 いに相 互 接 続 できるかの重 要 な要 素 となっています。 次 回 は、ビジュアルコミュニケーションでの通 信 先 との接 続 を行 うためのプロトコル (H.323)技 術 について解 説 します。
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