土木学会第68回年次学術講演会(平成25年9月) Ⅴ-033 丸太打設液状化対策実証実験における地盤概要 高知大学 正会員○原 忠,学生会員 坂部晃子 飛島建設 正会員 沼田淳紀,正会員 筒井雅行 兼松日産農林 正会員 水谷羊介,正会員 三村佳織 昭和マテリアル 正会員 池田浩明,早稲田大学 学生会員 RIAZ Saima 1. はじめに 丸太打設による液状化対策実証実験について,前報 1)に続き,実施地点の地盤概要について述べる. 2. 実証実験実施地点の概要 K-NET CHB008 EW 2011 年東北地方太平洋沖地震(Mj=9.0)では,震央から約 200 150 木・建築構造物に甚大な被害が生じた 2),3). 100 K-NET 浦安(猫実)で観測された揺れは,震度階で 5 強, 最大加速度は 169cm/s2(水平 2 成分の合成)であった.図-1 に,観測された EW 成分の地震波形の主要部分を示す.最大 加速度 A(cm/s2) 380km も離れた千葉県浦安市で激しい液状化が発生し,土 千葉県浦安市猫実 Amax (EW)=157.5cm/s2 Amax (合成)=168.5cm/s2 50 0 -50 -100 値は 158cm/s2 であるが,50~130 cm/s2 程度の成分が多く含ま -150 れ繰返し回数が多いのが特徴である. -200 K-NET CHB008 EW 80 90 実証実験は浦安市舞浜の浦安市運動公園内で実施した.こ の地点は, 公有水面埋立事業により 1980 年頃までに埋め立て 100 110 120 130 140 150 160 170 180 時間 t(s) 図-1 千葉県浦安における地震波形(K-NET 浦安) られた.写真-1 は実証実験施工前の現地状況であるが,液状 化による噴砂が至るところで確認された.浦安市は,1987 年 千葉県東方沖地震(Mj=6.7,千葉県中央区で震度 5,東京千 噴砂 代田区大手町震度 4(ただし旧震度階) )でも,1971 年に造成 した海岸埋立地の海楽,美浜,入船で液状化が発生した 4). ただし,舞浜では液状化が発生した記述は見当たらない. 3. 実験地点の地盤特性 5) 図-2 に,標準貫入試験により得られた地層区分,N 値の深 度分布と各層から得られた粒度組成を示す.表層~GL-1.8m 噴砂 が盛土層 Bs,GL-1.8~-6.5m が浚渫による埋土層で砂質土層 と粘性土層が互層に堆積し,上位より Fs1,Fc1,Fs2,Fc2, GL-6.5m 以深が沖積の砂層 As となっている. 旧海底地盤は, 写真-1 施工前の地盤状況(噴砂が確認できる) GL-6.5m 以深と考えられる.N 値は,Bs 層と Fs1 層でやや大きく 5~11 であるが,その下位の Fc1,Fs2,Fc2 で は 0~5 と低く,As 層浅部では 6~8 とやや大きくなる. 図-2 の粒度組成には,港湾基準 6)に示された液状化の可能性のある粒度組成の範囲,地表に堆積していた噴砂 の粒度組成と塑性指数も併記した.港湾基準の粒度組成は,内側の 2 本の線の範囲が特に液状化の可能性のある 範囲であり,細粒側は均等係数 Uc<3.5,粗粒側は Uc≧3.5 の場合を記した.ここで,Fc1 と Fc2 の粒度組成は粘 土分が多く含まれ,塑性指数 Ip が 15 を超えることから非液状化層と判断される.一方,Fs1 と Fs2 は,As 層と 類似するがやや細粒分が多い.これは当該地点が As 層を浚渫して埋め立てられ,その過程で材料が分級しなが ら堆積したと考えられる.これらの 2 層は,他の調査地点 7)と同様に,非塑性で細粒分含有率が 50%近くと大き いが,特に液状化の可能性のある粒度組成の範囲にほとんどが入る.さらに,地中より採取された粒度組成が噴 砂の粒度組成とほぼ一致することから,東北地方太平洋沖地震ではこれらの層が液状化した可能性が高く,特に Fs2 層は N 値も低いので最も液状化した可能性が高い.液状化対策は,これらの層を検討対象とすることとなる. キーワード:液状化,地盤改良,現場実験,丸太,地球温暖化,粒度組成 〒783-8502 高知県南国市物部乙 200,高知大学総合研究センター防災部門,TEL&FAX:088-864-5162 -65- 0.01 0.1 旧海底地盤 通過重量百分率 P(%) 区画C が一時的に池のようにな 暗灰 50 Ip=25.8~36.0 港湾規準 0 0.001 0.01 0.1 1 D 10 100 (㎜) 100 浦安市運動公園 As層 噴砂 As-1A1 As-1C1 As-1Db1 As-1E1 Ip=NP 50 暗灰 0.1 粒径 港湾規準 0.01 噴砂 Fc1-1A Fc1-1C Fc1-1Da Fc1-1E 暗灰 1 D 10 100 (㎜) 100 浦安市運動公園 Fc2層 Ip=17.2~21.5 噴砂 Fc2-1A Fc2-1C Fc2-1Db Fc2-1E 暗灰 50 港湾規準 0 0.001 0.01 0.1 1 10 100 粒径 D (㎜) 港湾規準 0 0.001 0.01 0.1 粒径 1 D 10 100 (㎜) 図-2 実施地点の地層区分・N 値の深度分布と各層の粒度組成 浦安市運動公園地下水位経時変化 (1) 浦安市は,2011 年東北地方太平洋沖地震で激しい液状化 0.5 が生じた地域であり,実証実験を実施した地点も噴砂が確 0.0 (3) 実証実験実施地点は,1980 年頃までに浚渫により埋め立 てられた地点であり,旧海底地盤の上位では N 値が概ね 10 以下の軟弱層が堆積している. (4) 砂質土層の Fs1,Fs2 層の粒度組成は非塑性な細粒分を多 く含み,噴砂のそれとほぼ一致し,港湾基準で示される特 -1.0 -1.5 -2.0 2013/3/27 されたが,当該地点では液状化は確認されていない. -0.5 2013/2/25 (2) 浦安市では,1987 年千葉県東方沖地震でも液状化が確認 地下水位 GL(m) 認された. 浦安市運動公園 2013/1/26 5. まとめ Ip=NP 50 浦安市運動公園 Fc1層 2012/12/27 った事実と整合している. 噴砂 Fs2-1A Fs2-1C Fs2-1Da Fs2-1E 100 2012/11/27 する.これは,当該地点 100 (㎜) 浦安市運動公園 Fs2層 粒径 きは,地表面付近に位置 D 10 100 0 0.001 きる.地下水位が浅いと 1 2012/10/28 水位が変動すると判断で 港湾規準 2012/9/28 GL-1.5m の範囲で,地下 暗灰 粒径 区画A 100 噴砂 Fs1-1A Fs1-1C Fs1-1Da1 Fs1-1Da2 Fs1-1E Ip=NP~13.2 50 0 0.001 区画E 10 (㎜) 2012/8/29 ば,概ね地表付近から 1 D 2012/7/30 下した.この期間を除け 0.1 粒径 2012/6/30 るが GL-1.8m 程度まで低 0.01 浦安市運動公園 Fs1層 2012/5/31 約 10 日の短い期間であ 0 0.001 港湾規準 2012/5/1 で変化し,深いときには 暗黄灰 50 2012/4/1 位は,主に Bs 層の範囲 Ip=NP 暗黄灰 100 通過重量百分率 P(%) 観測記録を示す.地下水 液 状 化 し た と 考 え ら れ る 層 通過重量百分率 P(%) した当該地点の地下水位 噴砂 Bs-1C 浦安市運動公園 Bs層 通過重量百分率 P(%) 図-3 に,約 1 年間計測 100 P(%) 丸太 通過重量百分率 4. 地下水位計測結果 通過重量百分率 P(%) 土木学会第68回年次学術講演会(平成25年9月) Ⅴ-033 日付 図-3 地下水観測記録 に液状化の可能性のある粒度組成の範囲にほぼ入り,Fs2 層は N 値も低かった.したがって,液状化対策を行 う場合はこれらの層が検討対象となる. (5) 当該地点の地下水位は,1 年間で概ね地表から GL-1.5m の範囲で変動していた. 謝辞:実証実験は, 「浦安市が管理する施設を利用した液状化対策工法の実証実験」により千葉県浦安市より実験 場所を提供頂いた.実験の一部は,林野庁地域材供給倍増事業のうち木造住宅・木造建築物等の構造部材開発等 支援事業の中の木造中高層建築物等の部材開発等支援事業の補助を得て実施した.地震記録は,防災科学技術研 究所の K-NET の観測記録を使用させていただいた.本研究の一部は,科研費(基盤研究(C) ,24580221)の助 成を受けた.ここに記して深謝の意を表します. 参考文献 1)沼田淳紀,三輪滋,水谷羊介,三村佳織,原忠,坂部晃子,池田浩明,RIAZ Saima:丸太打設液状化対策実証実験 の概要,土木学会第 68 回年次学術講演会講演概要集,2013.(投稿中) , 2)原忠:東日本大震災を科学的に検証する 4. 地盤災害と建築物の関係,木材工業,Vol.66,No.11,pp.492-497,2011., 3)三輪滋,筒井雅行,本山寛,池田隆明, 沼田淳紀:2011 年東北地方太平洋沖地震における関東地方の液状化被害調査,土木学会論文集 A1(構造・地震工学), Vol.68,No.4,pp.Ⅰ-1250-1265,2012.7., 4)古藤田喜久雄,若松加寿江:1987 年千葉県東方沖地震による液状化現象 その 1.液状化発生地点と地形・地盤の概要,第 23 回土質工学研究発表会,pp.955-958,1988., 5)原忠,坂部晃子,沼 田淳紀,水谷羊介,池田浩明:丸太打設で補強した液状化地盤の原位置調査,木材利用研究論文報告集 11,土木学会 木材工学特別委員会,pp.87-94,2012., 6)日本港湾協会:港湾の施設の技術上の基準・同解説(上巻) ,pp.383-389., 2007.7., 7)原忠,上野舞子,伊勢紗百合,畑山諒人,北村暢章,豊田浩史,國生剛治,小柳智行:東北地方太平洋沖 地震による千葉県浦安市今川団地の液状化被害,土木学会第 66 回年次学術講演会講演集,pp. 1117-1118,2011. -66-
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