77 術前スクリーニング検査で偶然発見した重複僧帽弁口の一症例 ◎古閑 裕久 1)、穴井 美咲 1)、古閑 直美 1)、村津 郁絵 1) 国保水俣市立総合医療センター 臨床検査科 1) 【はじめ】重複僧帽弁口(Double Orifice Mitral 奇形の有無を評価するために経食道心エコー Valve:DOMV)は稀な先天性心奇形であり、多 を施行した。経胸壁心エコーと同様に僧帽弁 くは他の心奇形を合併する。今回、非心臓手 口は線維性組織で完全に 2 分されていた。ま 術の術前スクリーニング検査で偶然 DOMV を た、明らかな心奇形の合併はなかった。以上 発見し、また当院では初めての経験であった により、心奇形や有意な弁膜症を認めない ため報告する。 complete bridge type の DOMV と診断した。そ 【症例】72 歳男性。【既往歴】糖尿病。今ま の他の検査は行わず、経過観察となった。 で循環器疾患を指摘されていなかった。【家 【まとめ】DOMV の多くは心内膜欠損症、心 族歴】特記事項なし。【現病歴】近医で前立 房中隔欠損症、大動脈 2 尖弁、大動脈狭窄症 腺癌に対し、MAB(Maximum Androgen などの先天性心疾患を合併すると報告されて Blockade)を施行したが、効果が乏しくなった。 いる。術前検査のように心疾患が疑われずに また、膀胱結石を認めたため前立腺癌及び膀 検査に来ることもあるので、注意して検査に 胱結石の加療目的で当院に紹介された。まず 臨むことが大切と思った。 は、膀胱結石の加療をするため経尿道的膀胱 連絡先:0966-63-2101(293) 砕石術を行う方針となり、術前検査として入 院時に血液検査・胸部レントゲン・心電図・ 心エコー検査を施行した。 【経過】血液検査:PSA 91.4ng/ml、血糖 158mg/dl、HbA1c 6.8%と上昇していた。胸部 レントゲン:心胸郭比 49.9%。心電図:心拍 数 69bpm、平低T V5V6、心室期外収縮を認め た。経胸壁心エコー:IVSd 9.7mm、LVPWd 9.6mm、LVDd 52.5mm、LVDs 39.0mm、FS 25.7%、EF(Biplane 法)51.0%。心尖部の動きが 低収縮ようだった。僧帽弁レベル左室短軸断 面では、前尖と後尖が中央で癒着しており、 僧帽弁輪部の中央に bridging tissue と思われる 線維性組織を認め、僧帽弁口が 2 分されてい た。2 つの弁口はほぼ同じ大きさを呈しており、 心尖部 2 腔断面では、左室流入血流を 2 本認 めた。以上により DOMV を疑った。明らかな 僧帽弁狭窄はなく、僧帽弁逆流は軽度だった。 手術は可能と判断され、経尿道的膀胱砕石術 を施行された。その後、僧帽弁および他の心
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