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直前予想
民法 4 回目
消費貸借・賃貸借・使用貸借
1 意義
消費貸借契約とは、当事者の一方が、金銭その他の物を受け取り、これを消費したうえで、種類・
品質・数量の同じ物を返還することを約する要物・片務・無償(無利息)または有償(利息付)の
契約のことをいう(587 条)
2 消費貸借の成立
要物性:借主が目的物を貸主から受け取ること
参照:要物契約 消費貸借・使用貸借・寄託
ショウ
シ
キ
者
質権 引渡し(占有改定は含まない)
3 消費貸借の効力
(1)借主の義務
「同種・同等・同量」 借りた物を返すのではない! 消費貸借の本質は、消費!
所有権は移転する。ここが賃貸借や使用貸借との違い
消費貸借契約は、お金の貸し借りをイメージするとピンと来ない。例えば、お米がないことに気
づいた私は、お隣さんからお米を借りました。私はお米を消費して、後日、同種・同等のお米を同
量返すわけ。
4 消費貸借の終了
(1)返還時期の定めがない場合
① 貸主は「相当の期間を定めて」返還請求することができるのであって、直ちに返還請求をする
ことはできない。
学生Aは、アパートに帰ってみると米がないことに気づきました。そこで、大家さんのおばちゃ
んBに米を一合借りました(所有権移転)、それから数分後、おばちゃんBは「米返して!」 そ
れに対しAは「そんな! まだ食べてないよ!」
変だよね?どうして? 要するに消費貸借の本質は、消費!食べることにあるわけ、だから、食
べて同種・同等・同量のものを用意するのに時間がかかるわけね。そこで「相当の期間を定めて」
② 借主は、目的物をいつでも返還することができる
一方、パンがあった! Aは借りたお米をすぐに返していいでしょ!
賃貸借①
双務契約
参照
相場 5 万円のアパートを 1000 円で借りた
これは使用貸借、双方に義務はあるけど、片務契約
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一般社団法人フラッグ
消費貸借
使用貸借
賃貸借
借りた物を消費し、同種・ 借りたものそのものを返 借りたものそのものを返
同等・同量の別の物を返す す
す
要物
要物
諾成
当事者間に特殊な人的関
係がある場合に利用され
る。相続しない(無償で継
続) 参照:定期贈与
1 賃貸借の効力~当事者間における効力
(1)賃貸人の義務
① 目的物を使用収益させる義務
② 修繕義務
賃貸人は、賃貸物の使用収益に必要な修繕をする義務を負う(606 条 1 項)
賃料払っているのだから、大家さん、雨漏りの修理をしてよ!
賃貸人が目的物の保存に必要な行為を使用とするときは、賃借人はこれを拒めない(606 条 2 項)
※「雨漏りの修理をするから、ひろし君どいて!」
「今、忙しいから後にしてよ!」
「冗談じゃないわよ! 私のアパートなのよ! 屋根が腐っちゃたらどうするのよ!」
③ 費用償還義務
(a)必要費 目的物を維持・保存するための費用
ひろし君は自分で修理して、直ちに、原則として全額請求できる
占有権で、必要費(全額)有益費(常に全額のはずはない)について、「いくら」という規定が
ありましたが、賃貸借には、「いつから」という規定があります。必要費の「直ちに」これだけは
できたら!
(b)有益費 目的物の改良のために支出した費用
契約終了時
(2)賃借人の権利義務
① 賃料支払義務
これは本質的要素 賃料支払義務がなかったら、それは使用貸借でしょ
② 目的物の保管に関する義務
(a)用法遵守義務
借りてきた CD でフリスビー! 「お客さん止めてよ!」 「賃料払っているのだから、何をし
ようと、オレの勝手だ!」 それはないよね!
(b)善管注意義務
取引上一般に要求される注意義務、賃料払っているとはいえ、CD に傷が付いたりしないように
注意しなきゃ!
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2 不動産賃借権の物権化
(1)動産賃借権と売買
重要
賃貸借
A
売買
B 賃借権
引渡請求
C 所有権
Bには賃借権がありますから、Aからの引渡請求に対しては当然、賃借権を根拠に拒めます。
一方、Cは当該パソコンを買いうけ所有権を取得しました。そこでCはBに対して、所有権に基
づく引渡請求(物権的請求権)、それに対してBは、賃借権を根拠に拒めますか? 答えはNOで
す。賃借権は債権でしょう、債権は特定人が特定人に対してだから、Bは、A(契約の当事者)に
は主張できても、Cにはできません。
他方、Cの物権的請求権は、誰に対してもだから当然Bに請求できます。
以上から、この結論は債権と物権の性質から当然に導かれることなのです
(2)不動産賃借権の物権化
民法 605 条、これは細かいね
賃借権は債権だけど、登記できることになっています。そして、賃借権の登記をすると、賃借権
を誰に対しても対抗できるようになります、これを賃借権の物権化といいます
※借地借家法による対抗力
これは重要です
① 借地権
土地賃貸借契約
A
借地権者が土地上に登記されている建物を所有
B
賃借権
売買
C
所有権
土地を借りて、建物を所有しているBは建物の登記をすれば(通常誰でもかかる登記はします)、
土地の賃借権の登記をしなくても、土地の賃借権を誰に対しても対抗できるようになります。
通常、賃借権の登記はしないのよ、とすると、Cが土地の所有権を取得した場合に、Bは建物を
収去して土地を明け渡せという請求に対して、拒むことはできない。しかし、家は生活の基盤(参
照:生存権)だから家を守ってあげないといけないでしょう? そこで借地借家法は、建物の登記
をすれば、土地の賃借権の登記をしたことにして(土地賃借権の代用)、建物を守るというわけね!
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②
借家権
A
B
賃借権
売買
建物の引渡し
C
所有権
(3)目的物の不法占拠者と賃借人との関係
① 賃貸人の有する妨害排除請求権を代位行使!思い出せる?
保全債権とする場合には、無資力要件不要
金銭債権ではなく特定債権を被
賃貸借契約
B
A
賃借権(被保全債権)特定債権
妨害排除請求
C 不法占拠
②
不動産賃借権に基づく妨害排除請求
対抗力を具備した不動産賃借権は、債権だけど、誰に対しても、出て行け!
まるで物権だね
賃貸借契約
B
A 対抗要件
妨害排除請求
賃借権に基づく妨害排除請求
C 不法占拠
(4)賃貸人の地位の移転
① 対抗力を有する不動産賃借権が存在する場合、賃貸人の地位は目的物の所有権に伴って新所有
者に当然移転する。
旧賃貸人A
賃借人B
対抗要件
賃借権
売買
賃料請求
新賃貸人C(新所有者)
登記
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新所有者CはBに対し所有権に基づく明渡請求(物権的請求)をしても、賃借人Bが対抗要件を
備えている場合には、賃借権を対抗されてしまう。それなら、せめてCに賃料請求を認めてあげな
いと酷でしょう? そこで、AC間の売買契約のみで、賃貸人の地位も移転すると考える。
もし、賃貸人の地位が移転しないとすると、Aは売買によって代金を取得した後も、Bに賃料請
求することができることになる。これは、ACの合理的意思解釈からして妥当でないでしょう?
②
賃借人の同意の要否
参照:契約上に地位の移転
ある契約から生じる権利・義務ないし法的地位を一括して移転させることをいいます(原契約に
伴う取消権や解除権も移転)
原契約の一方当事者と譲受人との間で契約をした場合には、他の当事者の承諾を条件として効力
を生じる
EX
売買
売主A
買主B
買主の地位を移転させる契約
C
Aが承諾すれば、買主の地位はCに移転
但し、賃貸人の地位は、所有者なら誰でもできる(賃借人の用益を認容するだけ)
賃借人にとっては、誰が賃貸人でも関係ない。そこで、賃借人の同意は不要。
③
登記の要否
対抗要件ではなく、二重払いの危険を回避するため
(5)不動産賃借権の時効取得
物権
債権
真実はあるけどない状態 YES ex 地上権・地役 YES
を観念できるか?
権
(消滅時効)
(所有権は除く)
真実はないけどある状態 YES
を観念できるか?
(取得時効)
注意!
6
ON
但し、不動産賃借権
借家人が借家を時効取得することはない!(他主占有)
敷金関係
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(1)意義
担保!
(2)敷金返還請求権の発生時期
敷金返還請求権は、賃借人が賃借物を明け渡した時かに発生する。
大家さんはいつまで敷金を預かっていたいのでしょうね?
換言すると、大家さんが、敷金を担保として預かっている必要がなくなるのはいつ?
それは、被担保債権が発生する可能性がなくなったとき
契約成立
契約終了
明渡し
この間に賃料発生
の可能性あり
敷金返還請求権と家屋の明渡請求は同時履行の関係に立たないということですが、両者は同時に
存在しないと確認取れる?
ひろし君が、家屋を明け渡しました。その瞬間、明渡請求権は消滅、と同時に、敷金返還請求権
が発生
(3)当事者の交代と敷金の承継
① 賃貸人の交代の場合
賃貸不動産の所有権とともに賃貸人の地位が新所有者に移転した場合、敷金は旧賃貸人に対する
未払い賃料があればこれに当然充当され、残額についての権利義務関係が新所有者に移転する。
旧賃貸人 A
B
譲渡人 A
敷金
新賃貸人 C
B
抵当権
B
譲受人 C
敷金
B
抵当権
随伴性
②
賃借人の交代の場合
賃借人が賃貸人の承諾を得て賃借権を譲渡した場合、特段の事情がない限り、敷金に関する旧賃
借人の権利義務関係は、新賃借人に承継されない。
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A 賃貸人
B 旧賃借人
敷金返還請求権
賃借権の譲渡
C
他人のために担保を提供するヤツはそうめったにいないよ
賃貸借②
1 賃借権の譲渡・転貸
(1)承諾ある賃借権の譲渡・転貸の効果
① 承諾ある賃借権の譲渡
A 賃貸人
B 旧賃借人
賃借権
賃借権の譲渡
賃借権
C 新賃借人
賃借人 B は、契約関係から離脱
② 承諾ある転貸の場合
(a)賃貸人と賃借人との関係
A 賃貸人
B 賃借人(転貸人)
C 転借人
継続しつつ新たに
(b)賃貸人と転借人との関係
<613 条>
AC間に契約なし、しかし賃貸人Aを特に保護するためにかかる規定をおきました。ですからこ
の規定は例外なのです。例外である以上、拡大解釈はしないのです。
賃貸人は転借人に義務を負わない。
(c)賃貸借の終了と転貸借
賃貸借α
A
転貸借β
B
C
そもそもαとβは、親亀、小亀の関係にあります。したがって、親亀αがこけると、小亀βもこ
ける。
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そこで、αがBの不履行で解除された場合には、親亀がこけたので、小亀もこける、すなわちβ
も終了
αがAB間の合意で解除された場合に、もし、βも終了となると、ABが意図的にCを追い出せ
ることになる。それはまずいでしょうというセンス
(3)賃借権の無断譲渡・無断転貸
重要
① 原則
賃貸人の承諾なしに、賃借人は賃借権の譲渡・転貸をすることはできない(612 条 1 項)
賃貸借契約は継続的契約、すなわち長いお付き合い。あなただから貸したのに!
②
効果
賃借人が無断で第三者に目的物を使用・収益させた場合には、賃貸人は賃貸借契約を無催告で解
除できる(612 条 2 項)
「使用又は収益させた」 引渡しが必要 裏切りが現実化!
(4)解除権の制限
① 信頼関係破壊の法理
賃借権の無断譲渡・無断転貸がなされても、それが賃借人に対する背信行為と認めるに足らない
特段の事情がある場合には解除権は発生しない。
判例は、無断譲渡・転貸があれば通常信頼関係は壊れる。だから、無断譲渡。転貸した者が「譲
渡・転貸の相手は娘の京子で、私の同居人ではないか! 裏切りとはいえないだろう!」というこ
とを、主張・立証しなさいといっている。
参照
公営住宅の利用関係
行政法
民法の信頼関係破壊の理論が適用される
(判例)
使用貸借
要物性
相続しない(無償かつ継続)
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