2009年 第35回よろなか塾 2015年3月5日(木) 野鳥と私 講師 「日本野鳥の会」大分県支部 佐伯地区支部長 武石宣彰 氏 ・プロフィール: 昭和24年生まれ、玖珠町 出身。 山口大学工学部在籍中、「日本野鳥 の会」山口県支部で探鳥会、サギの コロニー調査などに参加。 民間企業(技術畑)で35年。退職 後、県の外郭団体で4年。 昭和55年に仕事で佐伯市に移住。 勤務のかたわら、子どもたち、大人を対象とした野 鳥観察会の実施、渡り鳥の調査、鳥類の生息調査、 生息環境の保護活動などに取り組んで現在に至る。 日本野鳥の会大分県支部佐伯地区支部長。日本鳥 類保護連盟専門委員、日本野鳥の会・日本鳥学会会 員、大分県自然環境学術調査会会員、佐伯市自然環 境調査会副会長などを務める。 住所:長谷中山16、電話:24-1445 ○『鳥三昧』(ホームページ): http://emberiza.web.fc2.com/ ○第一次佐伯市自然環境調査報告書 第5章『鳥』担当: 佐伯市公式ホームページ>暮らしの便利帳> 分野別インデックス>環境・衛生>報告書>第5章 ○最近実施の観察会(2015年): 2/21(土)弥生児童館 野鳥観察会 (井崎川、番匠川) 2/15(日)どんぐりクラブ 上岡の堰(せき)観察会 1/18(日)どんぐりクラブ 女島 野鳥観察会 ○武石宣彰写真展 『野の鳥と』: 三余館 2014.12/5(金)~12/7(日) 佐伯市の野鳥をモチーフにした写真を36枚。 ・小学校のころから: 父が、玖珠町で理科の教師をしておりました関係 で、昆虫採集とか、植物採集で、小学校のころから 無理矢理、野山にかり出されておりました。 自然の中にいるのが当たり前みたいな感じで、い わゆる理系男子でした。夜になると、星座の観察、 真冬の寒い中でも、さんざん着込んでやりました。 中学、高校で受験勉強の時、しばらく遠ざかって おりましたが、父は、転勤先の小学校で野鳥クラブ を作りました。一生懸命その指導しているのを傍ら で見ておりました。 私が大学に入ったころに、父は、大分県野鳥友の 会というのを立ち上げまして、大分県全域での活動 を開始しました。 私も大学に入って、ちょっと時間的な余裕もでき てきましたので、父の背中を追うように、「日本野 鳥の会」の会員になりまして、野鳥の観察会に参加 するようになりました。 ・「探鳥会」に参加して: その当時はバードウォッチングなんぞという言葉 はなくてですね、鳥を探す会、「探鳥会(たんちょうかい)」 と言いました。シジュウカラだとか、ヒヨドリだと かを、姿で見分ける。声で、聞き分けることから、 ウグイスだと簡単に分かりますが、身近な所から、 段々覚えていきました。20歳ぐらいから始めてい ますから、もうかれこれ、45年ぐらいになります。 山口県宇部市に「ときわ公園」という大きな公園 があるんですが、そこに丁度、シラサギが集団でコ ロニーを作っている所があるんで、そこの調査を野 鳥の会がやる。お前たち手伝えということで、私ら も関わりまして、夜明けから日没までずっとそのコ ロニーから飛び立つ鳥、戻ってくる鳥の数を、延々 と数えました。それが野鳥を調べる、野鳥調査に関 わった最初だったかなあと思います。 ・バードウォッチングは、紅白から: NHKの紅白歌合戦の、これはもうだいぶ昔の話 ですけれども、赤だ、白だという数を数えるのにで すね、日本野鳥の会の東京支部のメンバーが出てき まして、そして双眼鏡を片手に、片一方にカウンタ ーを持って、カチャカチャとやりながら、あっとい う間に、数を集計してしまったんです。それをきっ かけに、野鳥の会が有名になりました。鳥の数を数 える野鳥の会ということで、バードウォッチングと いう言葉がその頃から知られるようになりました。 昔は、双眼鏡を首にぶら下げて、うろうろしてま すとですね、「鳥を見てどげえするか」、まあそう いう感じだったんですが、今は違います。双眼鏡を ぶら下げとると、小さな子どもでも「バードウォッ チングですか」と言うぐらいに、バードウォッチン グが、市民権を得たかなあという感じがしてます。 ・鳥を調べる: こちら佐伯に、仕事の関係で移って来ましたのが 1980年でした。ですからもう随分になりますが 海、山、川の自然環境に恵まれたこの佐伯、とても 楽しい所と気に入っております。その佐伯に住みつ きまして、子どもたち、一般の人たちと一緒にバー ドウォッチング、野鳥の観察をしてきています。 鳥を調べるということですが、野鳥が、どんな種 類、どれぐらいの数、どんな所にいるのかを調べる 県が進めている調査があります。国立公園、国定公 園、県立公園など、その中の状況を調べる生息調査 ですが、それにずっと関わってきています。 佐伯市の自然環境調査、これは6年目になります。 色んな植物だとか、昆虫だとか、そういう担当の 方たちと、分担しながら、私の方は鳥の方を調査で す。島の方は、深島の方から、上の方は、傾山まで 色々と鳥を調べました。 佐伯市にどんな鳥がいるんかという3年がかりの 調査ですが、鳥だけでなく、9分野のまとめを佐伯 市のホームページで、見ることができます。 ・野鳥との関わり方: ・棲息している場所での4分類: 野鳥との関わり方は人それぞれで違いますが、大 ①水辺の鳥…サギ、カモメ、カモの類。 きく分けると次の3つ。 ②森林の鳥…シジュウカラ、メジロなど。 1.野鳥を楽しむ ③草原、草地の鳥…ヒバリ、ホオジロなど。 姿を見て楽しむ、声を聞いて楽しむ、写真を撮っ ④市街地の鳥…スズメ、ツバメ、カラスなど。 て楽しむ。鳥を楽しむということが一番でしょうか。 2.野鳥を調べる ・春に撮影(投影36枚の内から): そこにどんな鳥がいて、その鳥がどれぐらいいて ・キジ(佐伯市津志河内)…「日本の国鳥」。草地 どんなことをしているのか、調べてみる。 や田畑に棲む。春の繁殖の時期、オスは目立つ所で 3.野鳥とその生息環境を保護する 大きな声で「ケーン、ケーン」と鳴き、翼を強く羽 鳥を調べているとそのうち鳥が増えてるとか減っ ばたいて大きな羽音を出す。これはオスの縄張り宣 てるとか、この前まであそこにいたのにいなくなっ 言やメスへのアピール。 たとか、段々分かって来ます。野鳥が危ない、棲ん ・キジバト(佐伯市長谷)…森林から公園、住宅地 でる自然環境、壊れているなら護ってあげないとと に棲み、身近で一年中見られるハトの仲間。木の枝 いうことになります。 を組み合わせた簡単な巣を作り、ヒナには木の実や 以上の三つがあるのではないか。そういう視点か 草の種を胃の中で半分消化した「ピジョンミルク」 ら鳥との関わりを見ていくといいかなと思います。 を与えて育てる。一年中、子育てができる鳥。 ・カルガモ(佐伯市本匠)…一年中、身近で見られ ・鳥を楽しむ、4つの分類: るカモの仲間。川や池などで繁殖。カモの仲間では 今日はその第一番目の鳥を楽しむというお話を少 珍しくオスとメスが同じ色合い。 ししたいと思います。 ・アマサギ(佐伯市小島)…春に東南アジアから日 鳥を楽しむには、暮らし、鳥はどんな暮らしをし 本に渡って来る。頭と背中にオレンジ色の飾り羽が ているのかという視点から見ていくといいかなと思 あり、これが「亜麻鷺」の色、亜麻色(薄茶色)。 います。 ・セイタカシギ(佐伯市女島)…東南アジアで越冬 鳥の暮らしに、切っても切り離せないものは、や し春に日本に渡って来て関東地方で繁殖。九州はそ はり季節ですね。春夏秋冬が先ず切り離せません。 の渡りの中継地で、水田や蓮田などでエサを採り渡 季節によって、鳥は色々と動いて行きます。 りのエネルギーを補給。赤くて長い足が特徴。 もう一つは、鳥の棲んでいる自然環境。どこに棲 んでいるかの視点も考えて、次の4つに分類します。 ・夏に撮影: ・カワセミ(佐伯市女島)…水中にダイビングして ①夏鳥 魚を採る。きれいな羽から「水辺の宝石」と言われ これは、丁度今のこの時期からですが、春から夏 る。自然の中にとけこんでいて見つけるのが難しい。 にかけて南の方から日本に渡って来ます。渡ってき ・ブッポウソウ(佐伯市宇目)…昔、この鳥が夜 て日本で繁殖して、また秋に南に帰って行く。一番 「ブッポウソウ」と鳴くと間違えられてこの名前が 典型的なのは、ツバメです。もう3月下旬ぐらいか 付けられたが、コノハズクと言うフクロウの仲間の ら、見られるようになります。 鳴き声だと分かった。 ・カワウ(佐伯市木立川)…水に潜って魚を採るの ②冬鳥 が上手だが、羽が水をあまりはじかないので、翼を 冬になると、北の方から、こちら大分の方に渡っ 乾かしているのがよく見られる。佐伯市米水津の沖 てきます。ここで、越冬して、春になると北の国に 黒島は、国内の数少ない集団営巣地の一つ。 帰っていく。番匠川でよく見るカモの仲間が典型的 ・コゲラ(佐伯市城山)…よく見られるキツツキの な冬鳥です。 仲間。スズメほどで、日本では最も小さいキツツキ。 ③留鳥(りゅうちょう) 1年中いる鳥です。渡りをしない、四季を通じて 姿を見ることができるという、スズメだとか、カラ ス、トビ。こういう鳥は、渡りをしませんので、こ れを一年中いる鳥、留鳥と言います。 ・なぜ鳥が好き? 鳥は自分で空を飛べるからです。私はどう逆立ち しても自分で空を飛ぶことはできない。鳥たちは自 らが採った食べ物をエネルギーに変え、自らの翼だ けで、数千キロの飛行を静かにやってのける。 空を飛ぶために特化した翼を広げ、見事なフォル ムを見せながら華麗に舞う。 ④旅鳥 日本よりずっと南、東南アジアの方で越冬して、 この姿に見せられてシャッターを切り続けている。 繁殖するのは日本よりももっと北、ユーラシア大陸、 鳥を観察する中で見せる彼らの生き様に潔さを感じ、 シベリア、カムチャッカ、あの辺りまで行って、繁 彼らのようにカッコよく生きられない私には教えら 殖する。春と秋、移動する途中に、日本に寄ってい れることが多い。 く。シギやチドリなどが、旅する鳥、旅(たび)鳥です。 これからも、彼らから目が離せない。
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