医学の豆知識 【 健康食品と肝障害 】 平成 24 年 8 月 日本人において、必要な栄養成分の大部分は、通常の食事から摂取されてい ます。健康食品からの摂取割合が比較的多いビタミンCでも、摂取量の8割以上 は通常の食事から摂取されているのです。 現在の日本では、平均的な食事を摂取できていれば健康食品・サプリメント を積極的にとる必要はないのですが、健康食品に関する情報をマスメディアか ら得て「健康の維持・増進」「体によい」といった印象を受けているようです。 一般の人々の約半数が特定保健用食品を利用し、約4分の1の人が栄養機能 食品を利用しています。これらの健康食品により「体調を崩した」 「治療中の病 気が悪化した」 「新たな病気を引き起こした」などという健康被害も数多く報告 されています。 健康食品による健康被害の中でも肝障害の報告は多く、代表的な食品として ウコン・アガリクスが挙げられます。ウコンは、中国原産ショウガ科の植物で、 俗に「肝臓に良い」と言われていますが、健康食品による肝障害の原因の4分 の1を占めるといわれます。アガリクスは、ブラジル原産のキノコで「免疫力 を高め、がんに効く」と言われていますが、一部商品では動物実験で発がんを 促進する作用が認められたため、厚生労働省は平成18年2月に製品の販売停止、 回収を指示しました。また、アガリクスが原因による肝障害はウコンに次いで 多いといわれています。 また、中国製ダイエット用健康食品である御芝堂減肥こう嚢(おんしどうげんぴ こうのう)とせん之素こう嚢(せんのもとこうのう)による健康被害も話題となりま した。肝障害による死亡例が報告されており、これらの食品からN-ニトロソ -フェンフルラミンという食欲抑制成分の誘導体が検出されました。この成分 は天然のものではなく人為的に合成された物質で、ダイエット効果(食欲抑制 効果)を期待して、食品に添加されたと推測されています。 このように、一般の方々が思っている以上に、健康食品による健康被害が起 こっており、重篤な結果になることもあると認識する必要があります。安易に 健康食品を摂取せず、バランスのとれた食事摂取を心がけることが大事です。 * 厚生労働省のホームページに健康食品に関する情報が載っていますので 参考にしてください。 消化器科 鈴木智浩 日本肝臓学会指導医、日本内科学会専門医・指導医、 日本消化器内視鏡学会指導医、日本消化器病学会専門医 外来担当 毎週月曜・木曜(午前8時30分~12時)
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