アクティビティから見た団地共用空間資源の評価とその保全・形成

アクティビティから見た団地共用空間資源の評価とその保全・形成に関する研究
A study on the evaluation of common space in the housing estate and its preservation and improvement in terms of activities
公共システムプログラム
10M43244 西村亮 指導教員 中井検裕
Public Policy Design Program
Ryo NISHIMURA, Adviser Norihiro NAKAI
ABSTRACT
Aging and obsolescence has become a problem in many of the housing estate was built in around
1970, it is necessary to regeneration. Until now had been rebuilding all the buildings. In the future it
is expected that housing complex to repair the building for some period of time is increase. Purpose of
this study is to examine the regeneration strategy of housing complex to clarify the method of design
and activity of people. It is seen remarkable changes in activity and community due to aging. There
is a need to review the nature of space such as city park district. And there are cases complementary
spaces inside and outside an apartment complex. The result of the simulation that it is possible to
regeneration is revealed by utilizing the space around it even without large-scale reconstruction.
はじめに
1
1-1
研究の背景と目的
・アクティビティ…空間における様々な行動をアクティビテ
ィと呼ぶ。例えば移動、挨拶等日常の基本的な行動、植物栽
高度成長期より公団や公社によって建設された団地では、
培、球技などの趣味的活動、イベントやサークル・ボランテ
建物の老朽化や施設の陳腐化に伴い団地再生事業が行われて
ィア活動等の社会的活動が挙げられる。本研究では団地内だ
いる。団地は広いオープンスペースや豊富な緑、独自の景観
けでなく団地周辺居住者、周辺空間に関しても議論する。
等を有し、これらは地域の重要な資源となっているため再生
1-4
団地のアクティビティの特徴
方策に関し多くの研究が行われている。団地共用空間の再生
団地のアクティビティには以下のような特徴があることが
方策に関する研究は数多く、特に緑や水景、駐車場等、個別
予想される。①団地内で団地外住民のアクティビティが見ら
の要素に関しては十分に検討されてきたと言える。
れること。②団地建設時に公民館、小学校等公共の施設が近
本研究では空間の使われ方が空間の評価を規定するという
接してつくられ、アクティビティがそれらと関係すること。
考えに基づき、団地再生時の共用空間の再生方策を検討する。
③団地独特の住まい方のルールがあること。
具体的にはまず現在再生方策が検討されている袖ヶ浦団地の
1-5
研究の構成
設計思想を踏まえて、過去・現在のアクティビティをもとに
2 章では現在の団地再生の概要をまとめ、対象団地を選定
共用空間を評価する。また既に団地再生事業が完了している
する。3 章では対象団地の屋外空間の変遷をまとめる。また
団地として武蔵野緑町団地を挙げ、再生後の状況から今後の
対象団地の設計思想を明らかにし、想定されていたアクティ
再生事業への留意点を示す。これらより袖ヶ浦団地を含む再
ビティをまとめる。4 章では住民ヒアリングにより過去・現
生未完了団地の再生方策の検討が本研究の目的である。
在のアクティビティを調査し、空間を評価する。その際 3 章
1-2
本研究の位置付け
利活用に着目した既存研究には広場等特定の場所に着目し
でまとめた設計思想との比較も行う。5 章では再生が完了し
た団地の再生計画と現況から今後の再生の留意点をまとめる。
たもの(大柴他(2008)i等)が多い。総括的な利用実態を調べ
6 章で再生方策を検討し、7 章でまとめとする。
たものは武田他(2010)iiが挙げられるが、時代の変化に伴う周
2
辺を含む団地共用空間の変化とその利用の変化から再生方策
2-1
を検討した研究はなく、この点が本研究の特徴である。
1-3
用語の定義
団地再生事業と対象団地の概要
UR を巡る状況の変化と今後の団地再生事業
UR は平成 19 年に
「UR 賃貸住宅ストック再生・再編方針」
を策定し、団地ごとに地域の特性に応じ、全面建替え、敷地
・団地共用空間…屋外、屋内を問わず、団地敷地内の不特定
分譲等の再生・再編方策が検討されてきた。しかしその後の
多数の人が使う空間のこと。
(広場、階段室、集会所等)
社会情勢やURを巡る変化から、今後は大規模修繕等ある程
度時間をかけて再生をする手法の増加が予想される。
され、歩行者道・広場・公園の整備、駐車場の増設が行われ
今後採用される可能性が高い手法としては大規模修繕と順
た。駐車場は建設当初は当時の標準である設置率約 10%であ
次・一部建替えが挙げられ、両者とも全面建替えとは性質が
ったが、自家用車の普及に従い、住棟に付随する緑地の一部
大きく異なる。両手法とも全面建替えに比べて大きく屋外空
や 2 本の緑道を駐車場として整備した。
間の形態を変更されることはなく、入居者の劇的な入れ替え
が起こらないため世帯構成等の変化は小さい。
2-2
再生未完了団地の概要と再生事業における位置付け
本研究は千葉県習志野市袖ヶ浦 2,3 丁目にある袖ヶ浦団地
袖ヶ浦西近隣公園は第一次埋め立てによって北側半分が造
成された。南側半分は船溜まりであったが平成 3 年に埋め立
てられ、平成 11 年から整備が実施され、北側の舗装部分と南
側の芝生部分に松林により 2 区画に分けられる構造となった。
を対象とする。首都圏から 1 時間弱(津田沼駅からバス 10
3-3
分)
、賃貸総戸数は 2990 戸と大規模団地としては極めて標準
3-3-1
袖ヶ浦団地の団地設計意図
40 年代団地の一般的な設計意図に準ずる部分
的である。当団地はおおよそ平成 30 年までに再生方針を決定
昭和 40 年代の団地は居住者の平等と、急激な住宅需要への
することとしており(当団地は団地再生複合型 iii に分類され
対応のため画一的な設計を強いられたため、住棟は一部を除
る)
、研究対象として適切な段階にあると言える。また敷地全
き標準設計が採用され、各街区に同質同規模の公園が設けら
体が埋立地であり、地形は全体として平坦である。
れた。しかし中には厳しい条件の中で変化のある空間にする
2-3
袖ヶ浦団地の共用空間の基本構成
当団地は車道等によって大きく 7 街区に分かれている。街
ために配置を工夫した団地もあり、袖ヶ浦団地も直行配置に
近い形(日照のため厳密な直行配置ではない)に住棟が配置
区毎に中央に小公園があり、遊具が設置してあるプレイロッ
されている。また給水塔がシンボルとしてつくられた。
トと子供がボール遊びをするための矩形の運動場の 2 つから
3-3-2
袖ヶ浦団地の特徴的な設計意図
なる(合わせて街区公園とする)。また団地に挟まれる形で
街区公園がコミュニティの中心となり、地域で子供を見守
2ha 程度の市営の袖ヶ浦西近隣公園が存在する。商店や集会
るような環境になるよう各住棟から街区公園にダイレクトに
所は団地の中央に存在する。また建物は 3-5-2 号棟(片廊下
アプローチできるように住棟の配置が工夫されている。直行
型)一棟を除き全棟階段室型である。
(図 1)
に近い配置もその一翼を担う。
設計当初は団地南側が海であり、塩害対策の必要があった
ためアルミサッシが用いられた。また団地南側には京葉道路
が通っており、最南住棟は道路に対して並行に住棟を配置す
ることで、他の住棟への塩害・騒音被害の減少を狙った。同
効果を狙い団地南辺には松林が設けられた。
設計者は花壇等、団地を彩る空間も作りたかったが、コス
ト等に余裕がなかったため必要以上のものを作ることができ
なかった。そこで将来的な整備を想定し、全体として余裕の
ある空間づくりがなされた。一方樹木に関しては管理のしや
すさのみを重視して樹種選定、配置を行った。
また集会所に関しては強いコミュニティ構築のため、団地
センターという最も賑やかな場所につくられた。
3-4
図1
袖ヶ浦団地及び周辺地図(破線内が UR 賃貸袖ヶ浦団地)
袖ヶ浦団地の変遷と設計思想
3
3-1
調査方法
設計時に想定されていたアクティビティ
集会所でのサークル活動、公園での子供の遊び等、基本的
なものを除くと想定されていたアクティビティは主に人々の
移動(動線)に関するものである。プレイロットと緑道を互
袖ヶ浦団地の設計思想を調査するにあたり以下の通りヒア
いに繋ぐことによって、フットパスを構成し、歩行者の主な
リングを実施した。①UR千葉地域支社団地再生事業部団地
動線とさせる意図があり 、また緑道は近隣公園や団地センタ
再生計画第 2 チーム 3 名、株式会社市浦ハウジング&プラン
ーに接続されており、そこを通ってそれらにアクセスするこ
ニング都市計画・設計室 3 名:2011 年 10 月 14 日(金)15~17
とが想定されていた等、団地の内部が主な動線となることが
②野生司建築設計事務所 袖ヶ浦団地設計担当者 1 名:
想定されていた。囲い型である集会所もその中の賑わいを感
時
2011 年 12 月 14 日(水)11~14 時
3-2
袖ヶ浦団地と周辺の変遷
袖ヶ浦団地がある場所は埋め立て地(昭和 39 年着手の第一
次埋め立てによる)であり、建設当時は団地以南は海であっ
た。昭和 52 年に袖ヶ浦団地以南の第二次埋め立てが完了し、
v
じながら商店街に訪れることが想定されていた。
3-5
周辺空間の設計思想―袖ヶ浦西近隣公園―
袖ヶ浦団地の敷地に挟まれる形で市営公園が存在している
ため、これを無視することはできない。
近隣公園は南北で性質が異なり、北側はバス停や商店街に
秋津団地等が建設された。昭和 56 年には公民館が建設された。
面するため都市的な休憩施設として、南側は大きく開放的で
昭和 63 年から平成 5 年にかけて総合的団地環境整備ivが実施
自然野生種の豊かな芝生の広場としてつくられた。また街区
公園との差別化を図るために敷地を大きく利用している。
成長し過ぎる等、最近では管理上の問題が発生している。
再生未完了団地におけるアクティビティと空間評価
4
4-1
団地敷地内で洋服や植物、野菜を販売する姿が見られるが、
UR はそのような行為を許可していない。しかし団地内の商
調査の概要
本章では団地利用者を対象にグループヒアリングを実施す
店街は衰退し、遠くまで買物に行けない高齢者が日用品を買
ることで、団地空間におけるアクティビティを把握し、空間
う場所となっているために黙認され、さらなる商店街の衰退
を評価する。
グループヒアリングは 2011 年 11 月 17 日~2012
を招きかねない状況にある。
年 1 月 21 日の期間に 12 回実施した。実施人数は 45 名、う
4-5
ち 29 名が袖ヶ浦団地居住者である。主なヒアリング内容はよ
4-5-1
く利用する場所・道、現在・過去のアクティビティ(主なも
のを表 1 に示す)
、共用空間に対する評価・要望である。
表1
袖ヶ浦団地の主なアクティビティ
見られた時期
主なアクティビティ
街区公園でのイベント・打ち上げ、団地南端海での潮干狩り、
記念の植樹
子供の遊具・球技遊び、地域のイベント、散歩・ジョギング、花見、
過去から現在まで
屋外での休憩・会話・食事、教室(習い事)
主に現在
ペットの散歩、サークル活動、住棟付近での植物栽培
コミュニティ単位とアクティビティ
ほとんどの住棟が階段室型のため、階段室毎に掃除や葬式
設計時の想定とは異なるアクティビティ
動線を団地内部に設定したが、入居直後の調査
v
によると
周縁道路の利用が多く、今回の調査でも同様の傾向が出てい
る。集会所も現在は通り抜けできないようになっている。
4-5-2
利用目的に適っていないアクティビティ
E ラウンジは UR の提案で行われている高齢者のための交
主に過去
4-2
想定と異なる事象
流の場であり、集会所の一部を住民に開放している。集まっ
て編み物をする等の活動が見られる一方、一部の住民が将棋
や麻雀をするために用具を置いたままにする等、利用目的と
は外れたアクティビティが発生している。利用頻度も高くな
の準備をする等階段室単位のコミュニティが強かった。この
く、本来の目的である高齢者の孤立の解決には至っていない。
コミュニティは年々弱くなってきている。
4-5-3
団地の思い出とシンボル
また街区公園を囲む街区単位のコミュニティがある。団地
給水塔を団地のシンボルとして挙げた人は一人もおらず、
への入居が始まった当初は子供が多かったため街区公園で母
何らかのアクティビティの発生に関係していることもない。
親たちが知り合い、また子供のためのイベント(ゲーム大会、
4-6
住民が望むアクティビティ
映画上映会等)を街区公園で行うことで強いコミュニティが
高齢化に伴い、気軽に休んだり、集まったりする場所(特
形成されていた。しかし子供の数が減るにつれ、10 年ほど前
に屋内)が望まれている。集会所、公民館等の立地が集中し
からこのようなイベントは行われなくなり、街区単位のコミ
ているため団地周縁部の住民には使いづらく、また予約や鍵
ュニティはほとんどなくなったと言える。
の貸し出しなしに気軽に集まれる場所も少ないという問題も
このようにコミュニティの弱さが近年顕著になってきてお
り、それに伴いアクティビティも変化している。
4-3
団地内外の関係とアクティビティ
ある。また以前より屋外特にセンター街区利用者が減ったた
め寂しい、遅くに出歩けないという意見もあった。
4-7
アクティビティの個人差
近隣公園の南側では普段から子供が遊ぶ姿やスポーツをす
アクティブに普段から活動している人は周辺空間やより遠
る姿が見られる。一方近隣公園に近い街区公園でほとんどア
方の施設等を利用している傾向にあり、団地利用は通行等に
クティビティ見られず、その理由は近くに近隣公園があり、
限定される。一方団地を主な活動圏としている人や特に高齢
そこに利用が集中しているからであると予想できる。
の男性等は買物以外に自宅から出ない人も多い。
公民館に比べ集会所の利用は少ないが、サークル参加者が
4-8
4 章のまとめ
団地居住者に留まらないこと、施設の質、料金の面で公民館
少子高齢化によるコミュニティやアクティビティの変化が
が勝っていることがその理由であろう。しかし公民館は社会
顕著に見られ、街区公園等空間のあり方を見直す必要がある。
教育法によって営利目的の利用が制限されているため、バレ
また高齢者の生活を支えているが望ましくないアクティビテ
エ教室や幼児教室等は集会所で行われている。この 2 施設は
ィが発生していること等を踏まえ、団地を主な活動圏とする
現在このような住み分けの状態にある。
人の生活を支えるような再生が望まれる。団地内外の空間で
4-4
禁止事項とその黙認
団地内で見られるアクティビティの中には禁止されている
ものもあり、それらが黙認されているケースもある。
補完し合う例も見られ、この点は評価できる。
再生完了団地におけるアクティビティと再生事業評価
5
5-1
調査概要
ペット飼育及び敷地内でのペットの散歩は禁止されている
本章では東京都武蔵市の武蔵野緑町パークタウン(旧武蔵
が、高齢化に伴いペット飼育者がかなりの割合で存在するよ
野緑町団地)を対象とし、ヒアリング調査を以下の通り実施
うになった。当然敷地内も散歩コースに含まれることになる
した。主な内容は再生後に発生した問題、アクティビティの
が、住民からの苦情があるものの、現状黙認されている。
想定と変化である。武蔵野緑町パークタウン自治会役員 2 名
また住棟脇等で植物を栽培する光景がほぼすべての住棟で
(うち 1 名は東京多摩公団住宅自治協議会事務局長)
:2012
見られるが共用空間を個人的に利用することは禁止されてい
年 2 月 2 日(木)10~12 時
る。子供の誕生記念等に木を植える等の思い出と結びついた
5-2
アクティビティも存在するが、所有者不明の木々が増加し、
対象団地の概要
当団地は昭和 32 年竣工で、再生事業後は 1996~2003 年に
入居を行った。855 戸と小規模だが、再生時に住民の意見を
に活動しているとは言い難い。自治会等による孤立する高齢
十分に考慮して計画がなされ、再生後は新居住者からも共用
者に対するソフト面での支援方策を深める必要がある。
空間が高く評価されている。当団地は全面建替えにより再生
され、敷地一部に都営住宅と老人保健施設が建設された。
5-3
アクティビティの継承と変化
コミュニティ継承のため小路を継承したが老人保健施設の
建設によって一部小路を継承することができず、その動線の
延長上にあった商店街が衰退した。民間施設を建設する場合
大容積になりがちであるため動線、その他環境には十分に留
意すべきである。
また以前は住棟周辺で植物栽培が行われていたが、再生後
はほとんど見られなくなった。理由としては高層化によるモ
チベーションの低下、片廊下化による自分の場所であるとい
う感覚の薄れ、住棟周りの管理の徹底等が考えられる。
5-4
再生事業実施段階の留意点―臨時の集会所―
当団地では一棟のみ分譲予定だったため、そこに別に集会
図2
所を設けた。しかし途中で全ての住棟を賃貸に変更したため、
7
メインの集会所を建替えている途中も集会所を使うことがで
7-1
きた。袖ヶ浦団地の集会所は特に高齢者、子供向けの活動が
多いため建替え中も可能な限り継続することが望ましい。
5-5
袖ヶ浦団地再生イメージ
おわりに
結論と課題
本研究の結論を以下の通りである。
①ヒアリング調査により袖ヶ浦団地の設計思想とアクティビ
郊外団地全体の傾向―駐車場の必要性―
ティを明らかにし、空間を評価した。例えば設計意図通りで
武蔵野緑町団地は駐車場率が 45.3%であるにも関わらず契
ない動線、設定意図とは異なるラウンジの利用、禁止されて
約率は低い。これは高齢化の進む団地の全国的な傾向である。
いるが近年黙認されている植物栽培等のアクティビティが確
団地再生方策の検討
6
6-1
認された。
ケーススタディ諸条件
②評価をもとに再生ケーススタディをし、課題を示した。
本章では今までの調査より明らかになったことをもとに、
今後再生予定の団地及び団地周辺の共用空間を総括的にま
袖ヶ浦団地の空間資源の形成・保全に関しての再生ケースス
とめ、本研究で得られた結果と比較検討し、一般化可能な部
タディを行う。まずはそのための諸条件をまとめる。①若い
分、団地独自に考慮すべき点を明らかにする必要がある。
世帯の入居を狙った住棟を作る。②高齢者が住み続けられる
【脚注】
よう工夫する。③袖ヶ浦団地は現在貯水槽水道方式であるが
将来的には直結給水方式にするとし、給水施設は撤去する。
給水機能を考慮し、センター街区の再生は全街区中最後とす
る。④現在契約されていない駐車場が約 240 台分あり現在駐
車場契約率は上昇傾向にないため、用途転換を認める。
6-2
再生方策
再生方策の主要例を表 2 にまとめる。これ踏まえると図 2
のような再生のイメージを描ける。
6-3
空間的再生に伴い必要となるソフト面の方策
ペット共生街区、菜園を作るため今までの UR 団地の住ま
い方のルールを大きく変更、または団地毎に特別なルールの
作成や料金設定をする必要がある。
また自治会活動やイベント、サークル活動は他団地と比べ
) 大柴他「茅ケ崎市浜見平団地における住棟周辺空間での住民の利用状況と行
為内容 団地再生にかかわる研究 その4」2008 日本建築学会大会学術講演
梗概集(中国)
ii) 武田他「利用実態から捉えたニュータウン再生に資する屋外空間の活用に関
する研究」2010 日本都市計画学会 都市計画論文集 NO.45-3 日常の利用実態
と計画意図を比較し、屋外空間の課題を明らかにした。
iii) 現在団地再生は大きく「①一部建替え型」
「②集約型」
「③ストック活用型」
「④複合型」の4つに分類されている。①は老朽化が激しい等の理由で一部の
住棟のみを建替える手法。②は住棟を集約し、余剰敷地を別途活用するという
手法。③は短期的には建替えを行わずにストックを修繕しながら活用する手法。
④はこれらの複合型となる。今後はそれぞれの団地の特性、また団地の中での
状況を踏まえた上で再生を行う「④複合型」の採用が増加する予定である。
iv) 「総合的団地環境整備事業」は、昭和 58 年に開始した事業。社会状況の変
化、とりわけ車社会や高齢化社会の到来、さらには、環境負荷の軽減といった
屋外環境の基本構成に大きな影響を与える内容を中心に団地屋外全体のリニ
ューアルをする事業のこと。(都市再生機構 HP 一部改:
http://www.ur-net.go.jp/kyojyusha/dankan/dankan.html)
v) 森保他「袖ヶ浦団地における設計意図と実情との相違について」1968 日本
建築学会関東支部第 39 回学術研究発表会
i
て遜色がない程度には盛んであるが、住民全体がアクティブ
表2
再生方策
再生方策主要例
根拠となるアクティビティや空間評価(3,4章)
緑道を再生し、動線を内部に引き込み団地内の通行を増やし住民が安
心して利用できる環境を創造する。
高齢化によって屋外にいる人の数が以前よりかなり減り、移動の際も団地内部より外周部を通
行する傾向にある。そのため人通りが少なく、活気がなく寂しく思う人、不安に思う人がいる。
団地で禁止されているペット飼育と散歩が見られる。近隣公園等がペット散歩環境として良好
ペット共生可能街区及び住棟を設定する。
のため、ペット共生棟は2-2・2-6エリアに作り、他の街区を通らず、近隣公園や団地南端の緑
道にアクセスできるようにする。
集会所は現況の通り公民館との差別化を図るとともに、高齢者施設をつく 気軽に集える場所が望まれている。特にセンター街区から遠い居住者の利便を考える必要が
り、そこに補助的集会所をつくることで、センター街区再生中も継続して集 ある。また袖ヶ浦団地の集会所は高齢者や子供に欠かせない施設となっているため、再生時
会所が利用できる。また管理を施設に委託することで利便が向上する。
も集会所機能を継続することが望ましい。
植物を育てられる場所や菜園を設ける。
禁止されている植物栽培がほとんどの住棟周辺で見られる。また街区公園の利用の変化し、
偏りがあるため一部は別途活用可能である。
条件と留意すべき点(5章,6-1)
今後契約率上昇する可能性は低いと考えられるため、240台
分の未契約駐車場の一部を利用する。
ペット共生のための特別な施設があるものとないものを作り、
後者の家賃は高齢者が住み続けられるよう現況維持とする。
民間の施設は大きくなりがちであるため、周辺環境や動線に
留意すべき。周辺への影響が少なく、現在高齢者向け優良
賃貸住宅に設定されている2-1街区に設けるのが妥当。
住棟から近いことと自分の場所という感覚が重要であるため、
アクセスのしやすさを考慮し街区公園に菜園を設け、区画を
分けて貸し出しする。