技術情報 研究内容紹介 HIRI 環境にやさしい次世代冷凍技術 −磁気冷凍に関する研究− 磁気冷凍技術を用いた冷凍・冷蔵システムに関する研究(平成21〜22年度) 環境エネルギー部 平野 繁樹 1.背景 北海道は、国内有数の食品供給基地であり、農水 産物用の冷凍・冷蔵施設が道内各地域に数多く設 置されています。これらの施設には地球温暖化係 数(GWP)の高いフロン類を使用した蒸気圧縮型 冷凍機が多く用いられており、今後規制の対象にな ると考えられています。また、ノンフロンタイプと して、NH3、CO2などのGWPの低い冷媒を使用す る冷凍機器が注目されていますが、NH3については 可燃性刺激物であり安全性に配慮が必要なこと、ま た、CO2タイプについては、機器に高圧が要求され ることから、装置が高額になり、重量増や特殊機器 の設置にともなう、装置レイアウトに制限が生じる などの問題があります。 ここでは本事業により研究を行っている、次世代 型ノンフロンタイプ冷凍機の一つである磁気冷凍シ ステムを紹介します。この磁気冷凍システムは、フ ロン系ガスはもちろん、特殊なガスを一切使用しな いため、冷媒によるGWPはゼロであり、比較的効 率の高い冷凍機器の中では、環境負荷の最も小さい システムの一つとなっています。 2.原理 磁気冷凍システムは磁気熱量効果(MCE)によ り、熱移動を行います。磁気作業物質(MCM)と 呼ばれるガドリニウムなどの金属を、永久磁石など により励磁・消磁させると、MCMに温度変化が生 じ、この現象を利用して冷凍サイクルを実現しま す。図1に蒸気圧縮式との比較を示します。 熱サイクルである「Active Magnetic Regeneration (AMR)Cycle」が提案され(図2)実用的な温度差 を発生させることが可能となりました。 図2 Active Magnetic Regeneration サイクル 3.応用機器開発 工業試験場では神戸大学等との協力により、回 転型のAMR磁気冷凍システムの開発を行いました。 MCM粒子の充填レイアウトの検討により、現在稼 働している永久磁石による磁気冷凍システムの中で は世界でもトップクラスの性能が得られました。 ま た、 使 用 し て い る 永 久 磁 石 の 磁 場 強 度 は 約 0.65テスラと磁気冷凍システムとしては小型で安 価なため、更なる小型化・高出力化の可能性が高い システムであり、今後様々な技術分野における応用 展開を図っていきたいと考えています。 図3 回転型磁気冷凍システム外観 図1 蒸気圧縮サイクルと磁気冷凍サイクルの比較 実用化に向けては、MCEのみによる温度変化が数 ℃程度と小さいことが技術的課題となっていました が、Brown1)により温度差を効果的に拡大させる蓄冷 参考文献 1) G. V. Brown, Magnetic heat pumping n e a r ro o m te m p e rat u re . I nt . J. Refrigeration 47, 3673-3680, (1976) TEL:011−747−2950(ダイヤルイン) E-mail:hirano-shigeki@hro.or.jp 工業試験場技術情報 Vol . No . 7
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