1.アートマネジメントとは

2011.5.24.
第1回
社会科学の方法とアートマネジメント
1.アートマネジメントとは
■文化政策学部 芸術文化学科
Faculty of Cultural Policy and Management
Depatment of Art Management,
■アートマネジメントとは
・良くある誤解
イベント運営のノウハウ
→芸術の公共的な使命を達成するための組織の運営
についての科学的アプローチとその実践
公共的な使命
必然的に、組織のマネジメント
非営利のマネジメント
「売り買い」にとどまらない活動
エンターテイメントビジネスとは異なる。
支援が必要
文化政策との関わり密接
公共的な使命・・・鑑賞者の楽しみを超えたメリット
・創造そのもの
・コミュニティの結束
・地域のほこり・アイデンティティ
・経済波及効果
・コミュニティづくり
・教育環境
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2.芸術文化学科のカリキュラム
■2つの柱
政策とマネジメント
社会科学
文化と芸術
人文学
※自分が楽しむために芸術を学ぶのではない。→カルチャーセンター
■政策とマネジメント
・マネジメントの理論の理解(組織・人事、財務・会計、マーケティング、ファンドレイ
ジング
等)
・事業(公演や展覧会等)の運営に加え、組織(演奏団体、美術館等)の継続的運営についての
専門知識
・営利企業の経営に加え、非営利組織(公益法人、NPO)の経営についての専門知識
・公共政策や公共経営の専門知識(芸術や文化の分野は公共的領域が大きい)
・学際性(経営学、政策学、経済学、法学、行政学
等)
■文化と芸術
・マネジメントの対象となる芸術や文化についての理解
・音楽、演劇、美術、映画等、芸術に対する専門知識
・芸術や文化と社会の関係についての理解(現代社会の理解)
・趣味や教養ではなく、プロとしての知識
・学際性:美学、芸術学、社会学、歴史学、文学
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等
3.アートマネジメントの歴史
■アートマネジメントは新しい分野
○アメリカ、イギリス
・1960 年代以降に発展、主に実務家向け大学院教育として展開される。
・非近代的な経営が蔓延する芸術運営の領域に科学的なマネジメントを導入。
「義理人情と根性でチケットを売り、支援を求める」のではダメ
○日本
・1990 年代以降に大学教育に徐々に導入される。
10 年前までは大学向けの体系的な日本語の教科書が存在しなかった領域
『アーツマネジメント概論』水曜社、2001 年
※本学教員が中心となり出版。重版を重ね 2004 年、2009 年に改訂版発行。
・日本として新たな理論構築が求められるフロンティアな領域
学部学生であっても「教えてもらう」のではなく、自ら「研究して、開拓する」という
姿勢が必要
※日本アートマネジメント学会(1998 年設立)は学部学生にも学生会員としての門戸を開い
ている(日本の学会としては異例)
・誰もが第一人者になれる
誰も検証していない領域(フロンティア)がたくさんあるので、それに取り組めば、エ
リート官僚やエリートビジネスマンとも互角に勝負できる領域。
→
努力次第で誰にでも手が届く実現可能な将来像。
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4.アートマネジメントに対する社会の期待
■文化政策の重点課題として認識されてきている
・課題山積の公立文化施設(自治体設立のホール・劇場、美術館
・芸術団体の経営危機(オーケストラ、劇団
等)
等)
・その中で、文化立国を目指す?(「21世紀日本ビジョン」
等)
・文化審議会文化政策部会「アートマネジメント人材等の育成及び活用について」審議経
過報告(2008 年 2 月)
■日本の芸術団体、文化施設の現場
○民間芸術団体:非近代的な自転車操業経営(科学的マネジメントの遅れ)
芸術家あがりの運営スタッフ。たたき上げ、経験主義、義理人情と根性・・・
○公立文化施設や自治体系公益法人、教育委員会:官僚主義の蔓延
経営感覚の欠落(コスト感覚の欠落。非営利活動への誤解※
等)
官僚の論理と創造的活動の矛盾
(⇔前例無きことに挑戦し、失敗しながら新たに創造するのが芸術)
※非営利活動についての誤解
非営利活動とは、収益をあげてもそれを出資者等に利益分配せずに公益的活動に再投資す
ることであるというのが国際的な学界・実務界における常識となっているが、日本では社
会教育施設を所轄する教育委員会等を中心に、収益をあげること自体を営利活動と誤解し、
民間芸術活動の発展の障害になるケースが頻発している。
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5.大学のアートマネジメント教育
■実学と実務研修の違い
・大学における実学とは、現場ですぐ使える「How to」ではない。
・大学の実学では、現場を批判的、科学的に検証し、理論化することが求められる。
■マクロとミクロのギャップ、短期と長期
・マクロな視点で、アートマネジメント人材が必要、と言われていることと、実際にアー
トマネジメント教育を受けた卒業生の職場が豊富にある、ということとは別の問題。
→短期と長期のギャップが存在。
・現場ではむしろ「煙たがれる」知識や能力という側面もある。短期的には摩擦を起こす
可能性。
※1980 年代に、企業派遣で米国の大学院でMBAを取得した人材が、日本企業に馴染めず
に飛び出したのと似た現象
・しかし、長期的にみれば、日本および世界で強く求められている専門性であることは疑
いない。
6.芸術文化学科が社会に送り出す人材
■アートマネジメントの開拓者
・芸術と社会の発展のために、フロンティア精神を持って改革に取り組む、バイタリティ
にあふれる人材。
・大学で学んだことと現場の実態のギャップの中でもがきながら、長期的に変革に取り組
む開拓者。
・芸術文化学科は、卒業後も強固な連携を築き後方から支援。
・将来の変革のリーダーとなれる人材を育成するのが大学。(世代交代は必ず起こる。)
■アートマネジメントの発展を支える多様な人材
・学部教育としてアートマネジメントを学んだ卒業生の過半数は、一般企業等で活躍。
(大学院の場合はアートマネジメント現場の即戦力養成という傾向が強い)
・アートマネジメントの意義を知る様々な市民が様々な形で芸術と社会のつなぎ手となる。
・アートマネージャーの成功、アートマネジメントの発展のためには、異業種、多分野の
理解者が重要。
・機会があれば、現場に飛び込む「予備役的」人材。
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7.アートマネジメントと資格
■学芸員資格
・芸術文化学科で取得可能。
・「学芸員=アートマネジャー」ではない。
アートマネジメントのコースでなくても取得可能。文学部、芸術学部
・ただし、学芸員がその専門能力を発揮し、美術館がその社会的使命を果たすためには、
アートマネジメントが必要。
・芸術文化学科出身の学芸員の特長:他大学出身の学芸員にはないメリット
アートマネジメントの基礎を持つ学芸員。
=
組織全体のこともわかる。「専門バカ」ではない。
アートマネジメントの最前線で働く開拓者を人脈として持つ学芸員。
■アートマネージャーの資格
現在は存在しない。専門職としての資格制度も一部で検討が行われているが、総合性が
求められるマネジメントと資格制度は馴染みにくい面もあり、実現性は未知数。
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8.わが国における静岡文化芸術大学文化政策学部芸術文化学科の位置づけ
わが国における主なアートマネジメント系教育機関(学部教育のみ)
・昭和音楽大学 音楽学部 音楽運営学科
1994
神奈川
日本の草分け。音楽分野中心。
AAAE 正会員。
・静岡文化芸術大学 文化政策学部 芸術文化学科
2000
静岡
舞台芸術、視覚芸術を含む、わが国初の総合的なアートマネジメントの本格的なコース
AAAE 正会員。
・京都橘大学現代ビジネス学部 文化プロデュースコース(旧文化政策学部)
まちづくり分野に強み。2008 年から現代ビジネス学部に改組。
・東京藝術大学 音楽学部 音楽環境創造科 2002
芸術・人文系スタッフによる実践的教育。少人数。
・跡見学園女子大学マネジメント学部 文化マネジメントコース
2002
企業経営、公共経営、文化経営の総合的なマネジメント学部。
・富山大学 芸術文化学部 2006
旧国立高岡短期大学の工芸の伝統を引き継いだ新学部。実技系に強み。
・青山学院大学 総合文化政策学部 アートマネジメントコース
北海道教育大、山梨大、武蔵野美術大学
2008
etc.
AAAE:Association of Arts Administration Educators 芸術運営教育者協会
(本部:米国ウィスコンシン州)
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2001