思いや意図をもってよりよい音楽表現を目指す指導の工夫 -人間関係を構築する表現活動に着目した実践を通して- 前橋市立岩神小学校 Ⅰ 過外 美里 主題設定の理由 本校では、学校行事などで合唱や金管演奏など様々な表現活動が行われ、子どもたちが 意欲的に取り組んで大きな成就感を味わっている様子から、音楽表現活動が子どもの人間 性を育てることに一躍買っていることが分かる。これらの活動の基になるのが小学校6年 間の音楽科教育であり、表現する力の伸長や音楽を愛好する心情を育て、音楽で生活に潤 いあるものにできるように子どもを育成したいと考えて指導に携わってきた。 その指導を受けて子どもたちは、意欲的に取り組み、指導者の意図に即した表現活動が できるようになった反面、子ども自ら感受したことをなかなか表現の工夫に生かすことが できない様子が見られ、感受したことと表現とのつながりに課題を見出した。また、自分 なりに表現の工夫を考えたり、表現の方法を判断したりすることについても、主体的に取 り組むことに課題があると考えられる。 小学校学習指導要領音楽科編の改善の基本方針の中では、音楽のよさや楽しさを感じる と共に思いや意図をもって表現したり聴いたりする力を育成することを重視している。ま た、昨年度の群馬県学校教育の指針では「音楽的な感受の学習を基に思考・判断し表現す る一連の過程を大切にした授業づくり」が求められ、学習過程の価値を重要視している。 これらのことから、本校の課題を解決するために、子どもが主体的に表現活動ができる場 面設定と思いや意図をもって表現する活動を深めることが有効ではないかと考える。 では、どのようにして思いや意図をもって表現する力を育成していくべきか。 ここで着目したことが人間関係の構築である。音楽表現指導では、集団で活動し、互い を意識し、表現する力を高める活動が多い。そこで、まず、学習指導要領で提示されてい る音楽の特徴をつかむ手がかりとなる要素〔共通事項〕を「音楽のもと」として、適切な 指導・支援に役立てるようにした。次に継続的に「常時活動」を行い、友だちとのかかわ りを通して、体を動かす活動や旋律、リズム遊びを取り入れながら、感性を育てた。さら に、演奏や作品をつくり上げる活動で、グループ活動を取り入れて試行錯誤を重ね、より よ い 表 現 活 動 が で き る よ う に 、 学 習 過 程 「 活 動 の 12ス テ ッ プ 」 で 学 び 合 い を 生 か し た 学 習 過程を工夫した。これらの考えは、昨年度筆者が研究・作成した指導の手引き「音楽づく りハンドブック」が基になっており、今年度はそれをさらに発展させ、よりよい音楽表現 を目指して思いや意図をもって表現する力を育成したいと考え、本主題を設定した。 Ⅱ 研究のねらい 感 受 し た こ と を 表 現 に つ な げ る た め に 、人 間 関 係 を 構 築 し た 活 動 を 工 夫 す る こ と が 、感 性 を育て、思いや意図をもって表現する力を育てる上で有効であることを明らかにする。 Ⅲ 研究仮説 音楽科の表現活動の指導において、人間関係を構築することに着目して、以下の3点に ついて実践すれば、思いや意図をもって表現する力を育てることができるであろう。 -1- 1 「音楽のもと」を指導の観点及び活動の観点とした実践 2 6年間を見通した「常時活動」の実践 3 思 い や 意 図 を も つ 過 程 を 細 分 化 し た 「 活 動 の 1 2ス テ ッ プ 」 の 実 践 思いや意図をもって表現できる子ども Ⅳ 研究の内容 活動の12ステップ 1 「思いや意図をもって表現する力」について 小学校音楽科の学習において、子どもが豊かな 情操を養い、生活に生かそうとする態度を育てるために は、子どもが思いをもって活動することが大切である。思 いとは、音や音楽を聴いて感受したことから「こう表現 深 め る 振り返り 伝え合い 認め合い つ な げ る 習熟 試行錯誤 意見交流 構成 言葉 聴き合い 感 じ る 諸 発 要 想 素 す を る 子 意 子 ど 識 も どす も る 発想 即興 感受 したい」とわき起こる気持ちであり、自分なりに音楽の よさや面白さ、美しさなどを聴き取ることから生まれる。 音楽のもと 伝えて認める子ども グループ 活動 子どもの 実態 図1 工 夫 す る 子 ど も 変容する 子どもの姿 技 能 を 高 め る 子 ど も 〔共通事項〕 提示する順序 子どもへの発問例 常時活動 みんなでできる 楽しくできる みんなができる活動 コミュニケー ション活動 感受しても表現につなげられない子ども 自分なりの表現の方法を工夫できない子ども 研究構想 次に、子どもが思いをよりよく表現しようと工夫したり、その見通しをもって表現しようとしたりし て生まれるのが意図である。このように、本研究では「感受したことから見通しをもって表現しよう とする力」を思いや意図をもって表現する力ととらえた。 この力は、関心・意欲と音楽を感受するための感性、表現する技能がスパイラルに絡 み合って高められるものである。関心・意欲は、音楽に対する好奇心から生まれ、友だ ちとのかかわり合いによって深まっていく。感性は、発達に併せた音や音楽を聴く活動 や体を動かす活動で培われ、思いや意図という形に変化していく。そして、表現の技能 を高めながら学習過程に併せて適切な指導・支援を行うことによって、図1のような授 業実践研究によって子どもが変容し、思いや意図をもって表現する力が育つと考えた。 2 研究の概要 ~思いや意図をもって表現する力を育てるための手だて~ (1 ) 「 音 楽 の も と 」 を 指 導 の 観 点 及 び 活 動 の 観 点 と し た 実 践 本研究では〔共通事項〕を、子どもに分かりやすい言葉 で説明した「音楽のもと」として、適切な指導・支援する ための観点と考えた。図2は、その一例である。そして、 子どもが体を動かす活動や音楽的刺激によって、音楽的感 受をしたことを自分の言葉で「つぶやき」として言い表す 活 動 を 取 り 入 れ て 、「 音 楽 の も と 」 を 使 っ て 意 見 交 流 す る 、 図2 「音楽のもと」発問例 言 葉 で 表 し た 音 の 特 徴 を 音 に 表 現 し て い く な ど の 活 動 で 、 学 習 を 深 め て い く 。「 音 楽 のもと」を提示することで、表現活動をする指導の道筋が明らかとなり、適切な指導 ・支援ができると考えた。そして、指導の観点である「音楽のもと」を基に子どもが 活動することで、子どもにとっては、活動の観点となる。このように「音楽のもと」 が与えられることで、子どもも、活動の見通しをもつことができ、感受したことを表 現につなげることになると考えた。 (2 ) 6年間を見通した「常時活動」について 「 常 時 活 動 」 と は 、 授 業 の 導 入 な ど の 時 間 を 使 っ て 5 ~ 10分 で 行 う 慣 ら し 練 習 で あ る。表現活動の基礎となる技能は、低学年からの積み重ねで身に付けていくものであ り、意欲を高めながら楽しい活動の中で培うことが効果的と考える。そのために「み ん な が で き る 」「 み ん な で で き る 」「 楽 し く で き る 」 活 動 を 取 り 入 れ る よ う に し た 。 活 動 の 種 類 に よ っ て 「 旋 律 」「 リ ズ ム 」「 即 興 表 現 」 な ど に 分 類 し 、 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ンを取りながら計画的にかつ継続的に行っていく。その中で楽しい雰囲気に乗じてこ の活動を反復練習することで、表現活動に必要な感性や表現の技能が育っていくと考 -2- えた。さらに、図3の実践のように友だちと かかわり合いながら活動することで、意見を 出し合って学び合い、活動を深めることがで きると考えた。 (3) 思いや意図をもつ過程を細分化した活動の12ステ ップ」について 「活動の12ステップ」とは、子どもが表現の方法 を三つの学習過程に併せて主体的に探求できるよう に、段階的に12ステップを提示したものである。最 初の「感じる」過程は、感受したことから思いをも ち、まずは感じたまま表現にしてみようとする段階、 図3 常時活動「名前リレ-」 続いて「つなげる」過程は、意図をもって表現の工 表1 「活動の12ステップ」の例 夫を試行錯誤する段階、そして「深める」過程は、 作品を伝えて友達と認め合い、振り返って活動の価 値を再認識する段階である。 表1は、音楽づくりの活動を例に、感受したこと から思いや意図をもち、表現していくまでの過程を 「活動の12ステップ」に細分化したものである。 このように、音楽づくりで感受から表現へつなげ る学習の流れを明確にすることで、指導者が的確な 観点を与え、子どもはステップごとに友だちとのか かわり合いを通して、主体的に学習を進めることが できる。このことから、子どもが友だちの思いや意 図を自分のそれと比較・判断してかかわり合いながら、活動を深めていくことができる。また、 領域や題材に併せて、指導者が12ステップを入れ替えて提示するなど、流動的な指導をすること も効果的であると考えた。その際は、12ステップのうち発想、試行錯誤、振り返りを中心的に計 画を立て、三つの過程でグループ活動を工夫するなど、友だちとのかかわり合いを考慮したい。 (4) 「常時活動」「活動の12ステップ」「音楽のもと」の関連性について 「 活 動 の 12ス テ ッ プ 」 に よ る 学 習 過 程 を 効 果 的 に 指 導 す る た め に 、 感 性 と 表 現 の 技 能を育てる「常時活動」と指導の観点「音楽のもと」を、関連性を図りながら実践で きるように考えた。具体的には、まず「常時活動」で、低学年から6年間を見通して 「音楽のもと」を手がかりにした継続性を踏まえた指導ができるようにする。子ども た ち が 楽 し く 意 欲 的 に な っ て い る 場 面 が 、同 時 に「 音 楽 の も と 」を 直 感 的 に 感 じ た り 、 表現したりする場面ともなる。ここで「音楽のもと」に基づいた発問をすれば、子ど もは活動の観点を与えられることになり、感受したことを言葉で表現することを通し て、その感覚を言葉で認知できるようになっていくと思われる。 次 に 「 活 動 の 1 2 ス テ ッ プ 」 で 「 感 じ る 」「 つ な げ る 」「 深 め る 」 の 三 つ の 過 程 に 沿 っ て 、 12ス テ ッ プ に よ る 活 動 を し て い け ば 、 感 受 し た こ と を 表 現 に つ な げ る 学 習 の 流 れが明確となる。そこへ「音楽のもと」の指導の観点を示すことで指導計画作成の段 階から指導者は適切な指導が考えられるようになり、子どもが見通しをもって活動で き る と 考 え る 。 作 品 を つ く り 上 げ る 過 程 で 、 12ス テ ッ プ の 段 階 を 踏 ん で 思 い や 意 図 を もつようになる。このように「常時活動」で「音楽のもと」を手がかりにした継続的 な 積 み 重 ね で 育 っ た 感 性 と 表 現 の 技 能 を 基 盤 に 「 活 動 の 12 ス テ ッ プ 」 を 活 用 し た 指 導 ・支援をすることで感受したことを表現につなげる子どもに変容していくと考える。 -3- Ⅴ 研究の計画と方法 本 研 究 は 、 平 成 24・ 25年 度 の 授 業 実 践 研 究 で あ る 。 実 践 1 、 実 践 2 共 に 「 音 楽 の も と 」 「 常 時 活 動 」「 活 動 の 1 2 ス テ ッ プ 」 を 考 慮 し て 授 業 を 計 画 し 、 実 践 し た 。 そ の 上 で 、 友 だ ちとかかわり合いながら表現の工夫をしていく児童の変容を見取り、検証をした。 1 実践計画1 対 象 勤務校 小学校第6学年 28名 期 間 平成24年10月 3日~11月 7日 6時間 題材名 「箏で鎌倉のマイテーマをつくろう」 (1 ) 題 材 の 目 標 及 び 評 価 規 準 ① 題材の目標 箏の特性を味わったり、探求したりする活動を通して、それぞれの思いや意図を表 現に生かしながら、箏で鎌倉のマイテーマをつくる。 ② 題材の評価規準 音楽への関心・意欲・態度 ①箏の多様な奏法に気付き、それを生か して鎌倉のマイテーマをつくる活動に 主体的に取り組もうとしている。 ②作品をつくり上げる課程で、グループ で試行錯誤や意見交流をしながら、作 品をつくろうとしている。 ③活動のよさを振り返りながら、作品や 言葉で発表したり、聴いたりしている。 音楽表現の創意工夫 音楽表現の技能 ①箏の音色をとらえて、思いや意図をもって、 ①多様な奏法を探りながらテー 効果音をつくるために自分なりの奏法を工 マに即した効果音をつくって 夫している。 いる。 ②リズム、速度、強弱に着目して、よりよい ②音楽の仕組みを生かし、見通 旋律ができるように、自分の思いや意図を しをもって旋律をつくり、グ 生かして表現の工夫をしている。 ループ演奏をしている。 ③反復、変化に着目して、旋律をどうつくる か思いや意図をもって表現を工夫している。 (2) 題材の指導計画 (注釈 □は音楽づくりハンドブック内容、【 】 は活動の12ステップの略) 過 時 研究上の手だて 学習活動 程 感 1 じ る 2 つ 3 な げ 4 る 深 5 め る 2 6 常時活動 旋律リレー ○箏の曲を鑑賞して音 色の特性をつかむ。 ○マイテーマにする題 材を考える。 ○拍子に合わせて即興的な旋律を考えられるように、リコーダーで五音の組み合 わせのリレーができるようにする。 ○箏の多様な奏法や音色を感じ取れるように、箏の叙情的な曲を鑑賞をする。 【活動】 ①感受 ②発想 ○箏の音色から鎌倉のマイテーマの旋律をつくるために、鎌倉の景色の写真やビ デオを提示してグループの共通テーマを考えられるようにする。 【活動】 ②発想 <音楽のもと> 強弱 音色 速度 旋律など 常時活動 同音リレー ○箏の奏法の復習のために、拍子に合わせた同音リレーをする。 ○ 箏 の 音 色 を 探 り 、 様 ○主体的に効果音づくりができるように、箏の扱い方の注意事項を確認できるよ 々な特徴ある効果音 うにする。 【活動】 ②発想 ③即興 をつくる。 ○共通テーマから思いを深めるために、箏の自分なりの奏法を探りながら音づく ○箏を使って即興的な りができるようにする。 【活動】 ②発想 ③即興 ④聴き合い 音 を つ く っ て 友 達 と ○奏法による多様な音色に気付かせるために、子どもの気付きを、指導者が紹介 聴き合う。 する。【活動】 ②発想 ④聴き合い <音楽のもと> 強弱 速度 音色など 常時活動 七五三リレー ○箏の音楽づくりに慣れるように、三・五・七弦を使って旋律リレーができるよ ○箏で「鎌倉のマイテ うにする。 ー マ 」 の 旋 律 を 各 々 ○主体的に旋律づくりができるように、音楽のもとを使って手順を示す。 が二小節ずつつくる。 【活動】 ⑤構成 ⑥試行錯誤 ○音楽づくりに集中できるように、つくった旋律は、曲構成図に提示して練習し やすいようにする。 <音楽のもと> 音階 拍子 旋律など 常時活動 七五三リレー ○箏の音楽づくりに慣れるように三・五・七弦を使って旋律リレーができるよう ○グループの作品をつ にする。 くり上げる。 ○グループの作品としてまとめるために、各自の旋律をあらすじに沿ってつなげ ○曲想を工夫する。 られるようにする。 【活動】 ⑥試行錯誤 ⑦意見交流 ⑧言葉 ○思いや意図を広げるために、つなげる順番や強弱、速度、リズムなどをグルー プで試行錯誤できるようにする。 【活動】 ⑥試行錯誤 ⑦意見交流 ⑨習熟 ⑪認め合い <音楽のもと> 音階 拍子 旋律 強弱 音の重なりなど 常時活動 七五三リレー ○箏の音楽づくりに慣れるために、リズムを工夫して三・五・七弦を使って旋律 〇それぞれのグループ リレーができるようにする。 の作 品 を発 表し て聴 ○作品への思いが伝わるように解説付きで発表ができるようにする。 き合う。 ○グループの解説を参考に、その意図やよさを感じ取れるようにする。 【活動】 ⑧言葉 ⑩伝え合い <音楽のもと> 強弱 音色 速度 リズム 旋律 常時活動 七五三リレー ○箏の音色を味わうために、三・五・七弦を使って旋律リレーをする。 ○ 音 楽 づ く り の 活 動 を ○学習を振り返るために、発表する立場と聴く立場からよりよい表現の工夫を考 振り返る。 えられるようにする。 【活動】 ⑪認め合い ⑫振り返り <音楽のもと> 強弱 音色 速度 拍子 リズム 旋律 など 実践計画2 対 象 勤務校 小学校第6学年 32名 期 間 平成25年5月 1日~6月 5日 題材名 「いろいろな響きを味わおう」 7時間 -4- (1 ) 題材の目標及び評価規準 ① 題材の目標 旋律が重なり合う響きの特徴を感じ取りながら、演奏の仕方を工夫して思いや意図 をもって表現ができるようにする。 ② 活動の評価規準 音楽への 関心・意欲・態度 音楽表現の創意工夫 旋律の役割や楽器の組み合 わせに興味をもって、進ん でグループ練習や話合いに 参加しようとしている。 鑑賞の能力 思いや意図をもって楽曲 旋律の役割や楽器の組み合わせを 演奏する楽器の構成によっ の特徴にあった演奏の仕 意識しながら、思いや意図をもっ て、音色や曲想が変わる面 方や楽器の組み合わせを て演奏をすることができる。 白さを感じ取りながら鑑賞 工夫している。 をする。 (2) 常時活動の指導計画 (注釈 過 時 学習活動 程 感 じ る 1 2 つ な げ る 3 4 5 深 め る 6 7 Ⅵ 音楽表現の技能 ○「歓喜」の旋律につ いて演奏する楽器の 構成や音色のちがい を聴き比べて変化を 楽しむ。 常時活動 「黒鍵リレー」 ○パートの旋律の役割 を感じ取って、パー トごとに練習する。 常時活動 「黒鍵リレー」 ○パートの役割を生か した楽器選択をして グループ練習をする。 常時活動 「黒鍵リレー」 〇旋律が重なり合う響 きを感じ取りながら、 パートのバランスを 考えて楽器の組み合 わせを工夫し、合奏 する。 常時活動 「黒鍵リレー」 〇強弱や旋律の重なり 方の特徴をつかみ、 習熟をする。 常時活動 「黒鍵リレー」 〇イメージに合うリズ ム伴奏を考えて曲の 変化を楽しみながら 合奏する。 常時活動 「黒鍵リレー」 〇それぞれの合奏のよ さを感じ取りながら 学級発表会をする。 太字は、音楽づくりハンドブック内容) 研究上の手だて ○旋律について演奏する楽器の構成や音色の違いを聴き比べて、変化を楽しみな がら合奏へのイメージがもてるようにする。 ○反復・変化・音色などの曲想について気付きを発表し合うことで、意見交流し ながら曲の特徴をつかめるようにする。 〇「ラバースコンチェルト」で、パートの役割や曲のイメージを合奏にできるよ うに、合う楽器を選んだり、パート分担をしたりする。【活動】①感受 ②発想 <音楽のもと> 反復・変化・音色・強弱 ○パートの役割について学習して、主旋律、副旋律、和音、低音などの役割を意 識して、自分の担当するパートを練習できるようにする。 〇練習時間を短縮できるように、グループを分解して、同じパートを担当する子 どもが協力して鍵盤ハーモニカ、リコーダーでパート練習をする。 【活動】④聴き合い ⑤構成 <音楽のもと> 旋律・音の重なり・音色 ○旋律の特徴やイメージに合った音色の楽器を話合いで選び、グループで練習を できるようにする。 〇音色がイメージに合うように、マレットや大小、素材が違う楽器を準備し、選 択できるようにする。【活動】 ⑤構成 ⑥試行錯誤 ⑦意見交流 <音楽のもと> 旋律・音の重なり・音色 ○グループで話し合って選んだ楽器での合奏が、旋律の特徴や役割、自分たちの イメージに合う演奏になっているか選んだ理由を考えながら練習をする。 ○選んだ楽器が旋律の特徴や役割、イメージに合うようによりよい楽器の組み合 わせが考えられるように、試行錯誤をしながら話し合う。 〇実際に合奏をして、旋律の役割や曲のイメージに合う合奏になっているかを確 認しながら、楽器を確定する。【活動】 ⑥試行錯誤 ⑦意見交流 ⑧言葉 <音楽のもと> 旋律・音の重なり・音色 ○ 各パートの役割や響き合い、強弱の変化について工夫しながら合奏練習をする。 〇低音部の役割や各パートの掛け合いの楽しさに気付けるように、リズムに着目 して練習できるようにする。【活動】 ⑥試行錯誤 ⑦意見交流 ⑨習熟 <音楽のもと> 旋律・音の重なり・音色・リズム 〇自分たちのイメージにあったリズム伴奏を考えて、楽器を選んで合奏に加える。 〇打楽器を導入して、曲全体の速度やパートのバランスが適切かどうかを考えな がら、練習をしたり話し合いしたりする。 【活動】②発想 ③即興 ⑥試行錯誤 ⑨習熟 <音楽のもと> 音の重なり・音色・リズム 〇それぞれのグループの演奏について、強弱の変化や楽器の組み合わせなど、工 夫していることを見付けながら、発表を聴けるようにする。 〇発表後自分たちの演奏について振り返り、友だちの感想なども参考にして、よ りよい表現の工夫を目指せるようにする。 【活動】 ⑧言葉 ⑩伝え合い ⑪認め合い ⑫振り返り <音楽のもと> 音の重なり・音色・リズム 箏で鎌倉のマイテーマをつくろう 研究の結果と考察 1 箏の音の出し方 「音楽のもと」について 弾く (1 ) 結 果 押す マイテーマの種類 実践1は、修学旅行という大きな行事と多様な はじく 街で感じる音 こする 音の雰囲気をつかむ 音色 音色を探求できる箏が、子どもの好奇心を高める 音の重なり 強弱 リズム 速度 音の長さ と 考 え 、 題 材 を 選 定 し 平 成 2 4年 度 に 実 践 し た 。 最初の「感じる」過程では感受したことを効果 -5- トレモロ 街から想像できる音 図4 箏の特徴を探る時の板書 音として表現することを中心に活動した。①感受 で箏の叙景的な曲を鑑賞してから図4のように、 「音楽のもと」を提示した板書によって指導をす る と 「 た た く 」「 こ す る 」「 押 す 」 な ど ② 発 想 で 自分なりの奏法を見付けながら箏の特性をつかん で 、 言 葉 で 表 現 し て い た ( 図 5 )。 続 い て ③ 即 興 として、景色で感じられる音を基にした効果音づ くりを、感じたままに自由につくるように指示し た。しかし、なかなかつくれなかったので「音楽 のもと」を使って基になる音の特徴をつかませる • 二・六、三・七、四・八と和音で音が出せるんだなあ と思った。 • リズムをきざむと音の雰囲気が変わる。 • 一つの音を強くしたり弱くしたりすると音の感じが変 わる。 • 一つ一つの弦にそれぞれの音の雰囲気があって、強く 弾いたり、二つの弦をはさんで弾いたりすると、雰囲 気がまた変わる。 • 琴の底をたたくとダジタジと音が出る。琴の糸を爪で こすると、ギーギーとなる。 • 少し強めに弾くと音が響く。弾く弦を押すと、ビヨー ンと音が変わる。 • 二つの弦を一緒に弾くと、音が重なって違う音が出る。 ※ 太字は、子どもが自分なりに見付けた奏法にかかわる部分 図 5 子 ど も の 記 述「 自 分 で 見 付 け た 奏 法 」 ように支援すると、効果音をつくる、④聴き合い の活動をするなどと、子どもが変容していった。 次に「つなげる」過程である。⑤構成 の活動 で景色から感じられる気持ちを旋律につくった。 最初子どもは、適当に音を並べて旋律をつくって い た 。 そ こ で 、「 音 が 高 い の と 低 い の は ど っ ち が 気持ちに合うか」と「音楽のもと」の発問例を参 図6 試行錯誤の形跡 図7 曲構成図での話合い 考に、景色から感じる気持ちや印象をイメージで きるように支援をすると子どもたちは⑥試行錯誤 でリズムを細かくする、2音弾いて和音の響きを 入れる、休符を入れるなどと、⑦意見交流をしな が ら 旋 律 を つ く っ て い っ た ( 図 6 )。 そ し て 、 各 自がつくった旋律を、グループでつなげて一つの 曲 に す る た め に ⑧ 言 葉 で 表 し た 、「 基 に な る 音 」 「基になる気持ち」からつくったあらすじを参考 にグループの作品を話し合ってつくっていった。 話合いでは、曲構成図を提示して強弱や反復等の 工夫がしやすいように、一つの旋律を弾く人数や 弾く回数、効果音を入れる場所など、話し合った 内 容 を 書 き 込 ん で い た ( 図 7 )。 グ ル ー プ で 構 成 を考えるうちに、音を変更したり、前奏を加える など、旋律を増やしたりする姿も見られた。 最後の「深める」過程では、⑨習熟の活動で技能を高め、試行錯誤してつくり上げ た作品を練習、発表した。その際に聴く観点を「音楽のもと」で示すと、⑩伝え合い や⑪認め合いが効率的に行われ、同時に⑫振り返りとして作品をつくり上げるまでの 活動について「音楽のもと」の言葉を使って自己評価できる子どもが多かった。 (2 ) 考 察 子 ど も は 12 ス テ ッ プ を 踏 む こ と で 、少 し ず つ 思 い や 意 図 を 知 覚 で き 、深 め て い っ た 。 その過程で指導者が「音楽のもと」を使った指導・支援をしたことは、子どもにとっ て活動の見通しがつき、具体的にどのようなことに着目すべきなのかが明確となった と考える。例えば、感じたままにつくる場面で活動が滞ったのは、箏の奏法と基にな る音の具体的なイメージがうまく一致しなかったことが原因であると考える。そこへ リズム・強弱・速度などの「音楽のもと」を意識するようにしたことで、試行錯誤し ながら自分のイメージにより近い作品をつくることができたのだと考える。また、で きあがった効果音や旋律を互いに聴き合うことで、それぞれの活動を認め合い、共に -6- 学び合うこととなった。いろいろな発想を生み出して、活動を深めるきっかけとなっ たのが、意見を共有するために活用した模造紙で作った曲構成図を用いた話合いであ る。ここでも「音楽のもと」を用いた支援を行ったことで、話合いの観点が明確とな り、主体的な活動が深まり、思いや意図をもつことにつながった。 次に、図8は実践1の旋律をつくる⑥試行錯誤 和音 1% 終止形 0% 反復の導入 1% リズムの工夫 1% すさや休符を入れて変化を付ける程度の簡単な発 使う音の変更 0% 想で旋律をつくっていた。それが「音楽のもと」 休符の使用 前後の旋律を指導者がワークシートから読み取っ たものである。最初のうち子どもは、箏の弾きや 25% 36% 85% 18% 38% 試行錯誤 した後 45% 36% 0% 図8 初めてつ くった時 18% ひきやすさ による支援や話合いが進むにつれて「ひんやりの 気 持 ち が 旋 律 を 繰 り 返 す と 強 く 感 じ る 」「 こ の 音 22% 20% 40% 60% 80% 100% 活動で意識した「音楽のもと」 の組み合わせ方が終わった感じがする」など、様 々な「音楽のもと」を意識できるようになって試 行 錯 誤 後 8 5 % の 子 ど も が 、使 う 音 を 変 更 し て い た 。 試行錯誤の活動時のつぶやきから見取っても、 「音 1.6 9月 5.4 10月 0 2 4 6 楽のもと」を活用して思いを具体的な言葉で表現 するようになったことが分かる。 また、図9で、実践前は旋律づくりの時に子ど 図9 一人が考えた「音楽のもと」の の平均数 も 一 人 あ た り 1.6種 類 の 「 音 楽 の も と 」 を 考 え て 作 っ て い た が 、 実 践 後 は 5.4種 類 と 増 加している。これは、主体的な話合いの中で、互いの意見を交流させた結果、学び合 い が 進 み 、互 い の 意 見 を 参 考 に「 音 楽 の も と 」に 対 す る 意 識 が 深 ま っ た た め と 考 え る 。 このように、子どもが「音楽のもと」を手がかりに、何を考えればよいか具体的に 理解でき、思いや意図をもって表現できるように変容していったと考える。また、話 合いが活発となったことが、試行錯誤を重ねて思いや意図をもつことにつながり、そ の場面でも「音楽のもと」が互いの考えを伝える媒体となっていると考えられる。 2 常時活動について (1 ) 結 果 実 践 1 で は 、1 年 ぶ り に 学 習 を す る 箏 に つ い て 復 習 を ね ら い と し て「 同 音 リ レ ー 」、 「七五三リレー」と時間を追うごとに展開していった。最初は、箏を弾く時の姿勢や 親指の使い方などを復習した後、第五弦を一人一人が弾く「同音リレー」である。弾 く強さによって音色が変わること、前の友だちと同じ速度で弾かないとリレーが成立 し な い こ と な ど に 気 付 き な が ら 学 習 が で き た 。最 初 は 1 拍 の 音 で リ レ ー を し て い た が 、 次第に4拍まで増やしていくと、休符を入れたり、リズムを細かくしたりと子どもな りに工夫をしていった。そして第三、五、七弦と音を増やしていくと、簡単な旋律づ くりにつながり、楽しみながら音符、休符を組み合わせて自分なりの表現をするよう になった。今年度器楽学習として行った実践2では、いろいろな楽器を分担する前の 基本として息の調整、共通した速度を意識することをねらいとして「黒鍵リレー」を 取り入れた。指導者が弾いている変ト長調の和音にあわせて鍵盤ハーモニカの黒鍵だ けを弾いて、リレーをしていく。最初は、四分音符で四拍ずつ弾く活動から、休符を 入れる、リズムを工夫するなど旋律づくりに発展していった。指導者が弾く和音にシ ンコペーションなどの軽快なリズムを取り入れると、子どももリズムに乗って、さら に楽しそうに弾くようになった。鍵盤ハーモニカに苦手意識をもつ子どももいたが、 この「黒鍵リレー」では、黒鍵を弾くという条件さえクリアすればできるので、全員 の子どもが参加できた。また、リレーを続ける際に運指や呼吸の基本技能や、速度や -7- 拍子を合わせるなどの大切さを、子どもが自ら意識するきっかけとなった。 (2 ) 考 察 実践1、2の子どもは、低学年の頃から常時活動の指導を重ねてきた。特に、昨年 度 筆 者 が 作 成 し た 「 音 楽 づ く り ハ ン ド ブ ッ ク 」 ( 群 馬 県 総 合 教 育 セ ン タ ー 2 0 1 3) で 提 案 した活動例をその時々の題材のねらいに併せて取り入れてきた。そのことが、子ども が常時活動に慣れることにつながり、今回の実践の常時活動のねらいを達成するのに 役立ったと考える。常時活動は、今日の指導がすぐに成果を上げるという性質のもの で は な く 、毎 回 5 ~ 10 分 程 度 の 活 動 を 地 道 に 継 続 し て い る う ち に 成 果 を 上 げ る こ と が 、 「音楽づくりハンドブック」で検証されていることをふまえても、これまでの継続的 に感性を育ててきた指導の成果が生きているとも考えられる。 実践1で行った「七五三リレー」で箏の基本的な奏法の復習ができたことは、ゆっ たりとした雰囲気で「みんなができる」という意識が生まれ、主活動のための学習レ ディネスとしての効果が上がることにつながったと考える。さらに、箏で音楽づくり する主活動でも「七五三リレー」の取組を応用することができ、箏に慣れる活動とし ても役立っていたことが分かった。また、実践2で行った「黒鍵リレー」は、黒鍵さ え弾いていれば伴奏に合う旋律がつくれる安心感の上で、楽器を吹く時の息の調整を する大切さを子どもが意識できたことや、リズムが変わると曲の雰囲気が変わること が意識できた。このことから、指導者の伴奏のリズムや速度によって、曲想が変化す る こ と に 気 付 き 、「 ラ バ ー ス コ ン チ ェ ル ト 」 の 合 奏 が で き 上 が っ た 後 の 、 リ ズ ム 伴 奏 づくりなどに役立った。 このように「常時活動」は、感性や表現の技能を育てることができ、積み重ねるこ と で 、「 音 楽 の も と 」 の 根 拠 と な っ て い る 〔 共 通 事 項 〕 を 感 受 、 意 識 す る 上 で 有 効 な 活動になると言える。その上で、常時活動そのものに慣れてきた子どもが、各時間の 常時活動を行うことは、授業内容への興味・関心をもつこと、授業の導入として指導 内容に見通しをもてることにつながると考えられ、学び合いながら思いや意図をもつ ための活動へのステップになることであろう。 表2 3 実 践 2 の 12ス テ ッ プ 「 活 動 の 12 ス テ ッ プ 」 に つ い て (1 ) 結 果 実践1では、6頁で述べたような学習過程で実践 した。グループ活動で試行錯誤しながら、よりよい 表現の工夫をしていくことで、前奏をつくるなど指 導者が求めていた以上の工夫を見出す子どもたちの 姿 が あ っ た 。 実 践 2 で は 、 12ス テ ッ プ の 順 番 を 入 れ 替えて、器楽合奏の楽器選択など学習をある程度進 めてから、曲のイメージに合う演奏表現の工夫をす る い う 学 習 過 程 で 実 践 を し た ( 表 2 )。 こ れ ま で の 器 楽学習では、楽器選択してから習熟中心の学習が多かったが、実践2では、楽器を選 んだ後にもう一度楽器が曲のイメージに合うかどうか、試行錯誤して検討するステッ プを設けた。グループ合奏で音楽室にある楽器から選択する場面になると、これまで 子どもたちは曲想や自分の技能など考えるべき条件よりも「やってみたい」という興 味が先に立ってしまうことが多かった。今回もそうで、あえて指導者は初発の楽器選 択は子どもの希望を優先して、試行錯誤で考える場面での子ども主体でより適切な楽 器選択をさせることにした。試行錯誤の場面では、子どもがパートの役割、曲のイメ ージなどについて話合いを進め、楽器選択を再度していった。この試行錯誤での場面 -8- があったため、これまでやりたい楽器を選んでいた器楽学習がより深まり、習熟をし ながら楽器の音色や音の出し方などを主体的に工夫する様子が見られた。 (2 ) 考 察 実践1で、子どもが「音楽のもと」を手がかりに少しずつ思いや意図を知覚し、深 めていったことは前述の通りである。参考曲を聴く活動を取り入れたことで「自由に 音を出していいんだ」と発想をかき立て、自分なりの奏法を探って箏の特性をつかん で思いや意図の基盤をつくることになったと考える。そして、②発想で活動が滞った のは、箏の奏法と基になる音の具体的なイメージがうまく一致しなかったことが原因 であると考える。そこへ、適切な支援をしたことで、試行錯誤しながら自分のイメー ジにより近い旋律をつくることができたのだと考える。また、できあがった効果音や 旋律を互いに聴き合い、それぞれの活動を認め合い、共に学び合うこととなった。 そ し て 、 図 10に あ る よ う に 各 時 間 で 段 階 的 に 思いや意図をもてるような授業を組み立てて、 観察やワークシートの記述から指導者が評価し た結果、子どもが各ステップで、曲をどのよう に構成し、どんな部分からどう感じ、どんな根 拠で表現したかについて、子どもなりの考えを 読み取れ、曲の構成要素を意識できるように変 容 し 、指 導 の 成 果 が 表 れ て い っ た こ と が 分 か る 。 ス テ ッ プ が 進 む ご と の 子 ど も の 変 容 は 、 図 11 • • • • • • • • • • • • 音のスピードが速く正確だったのでよい。 演奏の間に入る、蝉の音がいいアイデアだと思う。 流れる音にはねる音を加えて、よく合っていた。 全員が一緒に弾くと、強弱がはっきりする。 拍子の役の子とみんなの息が合っていた。 拍を刻むように、頭でカウントを取っていた。 弦をこすった効果音が効果的だった。 同じ音を繰り返した響きが印象的。 弦を押さえて響きを止めていた。 一つ一つの音をはじく時、細かく上手にできていた。 音を続けて流すようにして、波波の感じが出ていた。 二つの音の響きがイメジにぴったりだった。 ※ 太字は、「音楽のもと」に関わる内容 図 10「 友 だ ち の 演 奏 の よ さ 」 の 記 述 (人) 25 でねらいを十分達成できた人数の増え方から見 20 取ることができる。特に3~5時間目の主体的 15 な話合いが多い時ほどねらいを達成できた人数 10 が多く、試行錯誤や意見交流をしたことで、表 5 現の工夫ができるようになったと考える。この 0 20 17 9 る姿であると言える。また、思いを表現につな 図 11 ずつ増加している。それは、それぞれのステッ 13 15 16 思いを表現 につなげら れた人数 ①~⑫は 12ステップ 番号 各時間でのねらい達成した子ども の 人 数 ( 一 ク ラ ス 28人 中 ) 4% プで適切な支援ができ、子どもが見通しをもて 18% 9月 ているからだと考える。 13 ねらいを十 分達成でき た人数 15 1 2 3 4 5 6 ② ⑥ ①時 時 ④時 時 ⑨時 ⑪時 ③ ⑦ ②間 間 ⑤間 間 ⑩間 ⑫間 ④ ⑧ 目 目 目 目 目 目 子どもの変容が自分の思いを音楽表現につなげ げられた人数も、ステップが進むごとに、少し 10 9 19 32% 面白い 46% 少し面白い あまり面白 くない 面白くない 実 践 1 前 後 の 意 識 調 査 ( 図 12・13) で 、 半 分 の 子どもが意欲的でなく、試行錯誤をあまりせず 54% 10月 25% 21% 0% に音楽づくりしていたことが分かる。その理由 は主に「つくり方が分からない」であった。そ 0% れ が 「 活 動 の 12ス テ ッ プ 」 の 過 程 で 、 発 想 か ら 図 12 意欲が高まり、主体的な話合いでの意見交流や 伝え合いの中で、表現の工夫ができる場面設定 50% 100% 音楽づくりの意欲の変容 した 11% 9月 28% 43% をしたことで、意欲や試行錯誤の数が増えてい ったと考える。 10月 実践2では楽器選択をする上での③試行錯誤 の⑨即興に着目した。子どもたちが最初に楽器 を 選 ん だ 理 由 と し て「 や っ て み た い か ら 」が「 曲 57% 18% 少しし た あまり しない しない 25% 18% 0% 0% 50% 100% 図 13 作 品 を つ く る 過 程 で の 試 行 錯 誤 に合うと思った」より圧倒的に多かった。やがてパートの役割、①感受での曲想に対 するイメージが深まる中で、グループの話合いの内容も変化していった。 -9- 図 14は 、 グ ル ー プ で の 、 よ り イ メ ー ジ に 合 う 「ラバースコンチェルト」 自分たちの思いを合奏にしよう 〇班 パート名 担当者 最初に考えた楽器 話合いで変更した楽器 楽器を検討するための話合いシートである。話 1のパート S子 もっきん もっきん 1のパート K子 もっきん グロッケン 合いの結果、パートのバランスや役割などを考 2のパート N子 グロッケン アコーディオン? 2のパート A男 アコーディオン ピアニカ え、その上で楽器を選んだ根拠も試行錯誤後は 3のパート K男 アコーディオン ピアニカ 3のパート R男 もっきん オルガン 4のパート M子 ピアノ ピアノ 4のパート Y子 ピアニカ 説 明 で き る よ う に な っ て い る ( 図 1 5 )。 こ の 楽 器の試行錯誤後、グループ練習する様子からも こんな曲にしたいな 曲のイメージ 互いに拍子や速度を合わせようと他者意識しな 何で 選んだんだろう? この楽器! がら活動する様子が窺える。 グループで話 し合ったこと また、リズム伴奏を即興演奏するにあたって、 曲のイメージに合う打楽器の選択もパートのバ 図 14 選んでいた。さらに、常時活動で行っていた黒 14 8 0 16 10 4 20 「音楽のもと」を使っ て説明できる人数 説明できる人数 8 鍵 リ レ ー を 参 考 に 、付 点 や 後 打 ち の リ ズ ム な ど 、 即興的にリズムを入れて演奏を楽しんでいた。 曲のイメージから、 合奏のイメージを 話し合う 〇楽器をそろえることで音色に統一感を出したかった。 〇アコーディオンは、見た目も音も楽しそう。 〇ピアノは、低音が出るし、聴きやすい音でカウント(拍子?)を 合わせやすい。 〇1と2のパートは掛け合いになっているから似た楽器がいい。 14 試行錯誤 前 を引き立たせる」などと思いをもって打楽器を ピアノ 美しい リズミカル 楽しい 話合いシート 試行錯誤 後 ラ ン ス を 考 え て 「 軽 い 音 が す る 楽 器 」「 主 旋 律 明るい もっきん 30 40 説明できない人数 人 図 15 楽器選択の理由が言える子ども 加 え て 2 つ の 実 践 か ら 分 か る よ う に 、 12ス テ ッ プ を 題 材 の ね ら い や 実 態 に 併 せ て 、 発想、試行錯誤、振り返りを中心に考え、順番等を入れ替えるなど計画の段階で思い や意図をもてるように設定することも大切な支援であると考える。 このように、子どもの関心・意欲を喚起する活動をしながら、意欲と感性そして表 現 の 技 能 が 絡 み 合 う 「 活 動 の 12ス テ ッ プ 」 で 、 2 頁 の 研 究 構 想 の よ う に 、 思 い や 意 図 をもって表現するまでに、子どもの姿が変容していき、表現する力が育ったことも認 められる。そして、これらの過程の中で、グループ活動の話合いや習熟などで、学び 合いを意図的に取り入れていることから、この変容に人間関係の構築が役立ったこと は、言うまでもない。 Ⅶ 研究の成果と今後の課題 1 成果 〇 学 習 過 程 「 活 動 の 1 2 ス テ ッ プ 」 で 、「 音 楽 の も と 」 に よ っ て 指 導 の 道 筋 が 明 確 と な り、子ども同士が学び合う「常時活動」で伸長した感性と題材に対する興味・関心が 絡み合うと、思いや意図をもって表現する力を育てられることが分かった。 〇 筆 者 が 平 成 24年 度 に 音 楽 づ く り 指 導 の た め に 研 究 し た 「 活 動 の 12ス テ ッ プ 」 は 、 ス テップを入れ替えるなど、活用の仕方を工夫することで、グループ活動を充実させて 器楽学習など他の表現活動でも活用できることが分かった。 2 課題 〇 思いや意図をもって表現するために、話合い活動や感受したことを言葉で表現する ことが不可欠で、他教科等とも関連させて言語活動の指導に努めていく必要がある。 ○ 思いや意図をもつための話合い活動をする分、習熟の時間が減って表現の技能が定 着 し な い こ と が あ り 、効 率 よ い 練 習 方 法 を 工 夫 し て 、表 現 の 技 能 を 高 め る 必 要 が あ る 。 <参考文献> ・松本 恒敏・山本 文茂著 ・稲垣 忠彦・佐藤 学著 ・過外 美里作成 『創造的音楽学習の試み 『授業研究入門』 CD-ROM こ の 音 で い い か な ? 』 音 楽 之 友 社 (1998) 岩 波 書 店 (1996) 指導の手引き『音楽づくりハンドブック』 群 馬 県 総 合 教 育 セ ン タ ー (2 013 ) - 10 -
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