1 Top i c V ol . 9 J a n u a r y /2 0 0 8 男性パラサイト・シングルは個性が強い自己中心派 “パラサイト・シングル” と呼ばれる親と同居する独身社会人が注目されている時代があった。パラサイト・シングルの増加は、マーケット の縮 小にもつながると言われ、経 済 的にも問 題 視されていた。最 近では、少子化などの影 響でパラサイト・シングルは減少 傾 向にあり、 都心部(首都圏1都3県)で見ても、男性で約15万人減少している。 ただし、若者男性人口全体に占める割合を見ると、約4割でほぼ横ばい。 したがって、若者をターゲットにしたコミュニケーションを展開する場合、大半を占めるパラサイト・シングルは今後も無視できないと言える。 本トピックでは、一人暮らしの未婚男性と比較することで、男性パラサイト・シングルの特徴を考察した。 ※調査仕様 <親と同 居する未 婚 M1の人口( 1都 3県 )> 実施時期:2007年10月 2000年 2005年 人口 1,796,764人 1,640,669人 含有率 41.5% 調査手法:インターネット調査 調査対象:首都圏1都3県在住のM1層(20∼34歳男性) ※学生・パート・アルバイト・フリーター・無職者を除く 40.9% ※総務省「国勢調査」より 経 済 状況 ● 男性パラサイト・シングルの年収は低いものの、 毎月の支出には年収ほどの差は見られない。 表1 平均年収と毎月の支出 表1を見ると、一人暮らしの未婚男性の平均年収が449万円であるのに対し、 男性パラサイト・シングルの平均年収は350万円とおよそ100万円ほど低くなってい N数 平均年収 一人暮らしの未婚男性 261 449万円 5万8千円 男性パラサイト・シングル 190 350万円 4万7千円 ※住宅費や交通費など毎月発生する支出は除く る。一方で、毎月の支出(固定費を除く) を見てみると、一人暮らしの未婚男性と男 性パラサイト・シングルには1万円ほどの差しかない。年収には大きな差が見られるも 図2 現在の幸福度 のの、消費力という視点では、男性パラサイト・シングルはそれほど劣っていないこと が読み取れる。 とても 幸せである 実際に、現在の幸福度を両者に聞いてみたところ、 どちらも同レベルであり、生活 に一定の満足感を得ていることが分かる (図2参照)。 毎月の貯金金額は同じ。ただし、パラサイト・シングルは 将来の不安よりも今を楽しむために貯金する。 ● 毎月の支出※ まあ 幸せである どちらかというと どちらかというと 幸せである 幸せでない 一 人 暮らしの 未 婚 男性 5.4 ( N= 2 6 1 ) 29.1 34.9 男性 パラサイト・ シングル 6.3 ( N= 1 9 0 ) 27.9 36.3 あまり 幸せでない 15.7 10.0 5.0 9.5 4.7 15.3 (%) 毎月の平均貯金金額は、一人暮らしの未婚男性も男性パラサイト・シングル 表3 毎月の貯金金額 も4万9千円で変わらない(表3参照)。毎月の支出と同様であり、年収とは異なる傾 N数 毎月の貯金金額 しの未婚男性の貯金の目的で最も多かった意見は、 「 漠然とした将来の不安から」 一人暮らしの未婚男性 261 4万9千円 が挙がる。一方で男性パラサイト・シングルは「趣味のため」が最も多かった(表 男性パラサイト・シングル 190 4万9千円 向となっている。 ただし、貯金の目的を比較すると、明確な違いが見られる。一人暮ら 4参照)。男性パラサイト・シングルは親との同居で一定の安心感を保持しているた 表4 貯金の目的(上位3つ) めに、将来の不安よりも 「今を楽しみたい」 という思いが強いことが想像される。 このことから、男性パラサイト・シングルは、親との同居による安心感から、年収が 低くても生活が可能なパラサイトの環境を楽しんでいるとも言える。 まったく 幸せでない 一人暮らしの未婚男性 男性パラサイト・シングル 1位 漠然とした将来の不安から (45.6%) 趣味のため (45.1%) 2位 結婚資金(35.4%) 漠然とした将来の不安から (41.5%) 3位 旅行のため (35.4%) 結婚資金(36.0%) (N=261) (N=190) 価値観 ● 一人暮らしの未婚男性が最も重視するのは「仕事」。 男性パラサイト・シングルは「遊び・趣味」を最重視。 表5 仕事に対する意識 N数 「責任が重くて、大きな仕事を したい」 と感じる人の割合 「趣味より仕事の方を 大事にしたい」 と感じる人の割合 一人暮らしの未婚男性 261 67.0% 29.9% 男性パラサイト・シングル 190 49.5% 17.9% 表5は、 仕事に対する意識を様々な角度から比較したものだが、 総じて男性パラサイト・ シングルの方が一人暮らしの未婚男性より仕事に対するモチベーションが低いこと が分かる。 また、男性パラサイト・シングルは学生時代における学業や部活動での 競争経験に乏しいという結果も表6から読み取れる。 これらが要因となり、表7にある ように、一人暮らしの未婚男性では「仕事」を最重視している人が最も多いのに 対し、男性パラサイト・シングルでは、 「 仕事」 よりも 「遊び・趣味」 を最重視している 人が最も多くなると考えられる。 Copyright ( C ) 2008 Media Shakers Inc. All Right Reserved. 2 Top i c V ol . 9 J a n u a r y /2 0 0 8 男性パラサイト・シングルは、 モノ消費よりコト消費への意欲が高い。 ただし、 慎重な買物への姿勢も合わせ持っている。 ● 表6 学生時代の競争経験 前述したように、男性パラサイト・シングルは、 「 遊び・趣味」を重視する傾向が 強い。 それは消費に対する意識にも表れている。今後お金をかけたいものとして、 N数 「部活動では常に勝ちを 意識していた」 と感じる人の割合 「常に学業成績の順位が 気にかかっていた」 と感じる人の割合 一人暮らしの未婚男性 261 43.7% 69.0% 男性パラサイト・シングル 190 30.0% 50.0% 「趣味・娯楽」、 「 本・CD・DVD」、 「 ゲーム」、 「スポーツ用品・活動/アウトドア用 品・活動」 が挙がる割合が一人暮らしの未婚男性よりも高い(表8参照)。今この瞬 表7 現在最も重視している価値 間を楽しめるコトに積極的にお金を投じたいと考える男性パラサイト・シングルの 実態がうかがえる。 ただし、男性パラサイト・シングルは、楽しいと思えば遊びや趣味に無駄使いを するというわけではなく、図9にあるように、衝動買いをしてしまうことも少なく、貯金 を派手に使ってしまうこともない。雰囲気に流されずに、 自分の考えをしっかり持っ て消費行動をとっていることが分かる。 一人暮らしの未婚男性 男性パラサイト・シングル 1位 仕事(27.2%) 遊び・趣味(22.1%) 2位 お金(21.8%) 仕事(21.6%) 3位 遊び・趣味(17.2%) お金(20.0%) (N=261) 表8 今後積極的にお金をかけたい商品・サービス 図9 お金に対する考え方 一人暮らしの未婚男性 男性パラサイト・シングル 趣味・娯楽 31.4% 38.9% 本・CD・DVD(レンタル含む) 31.8% 39.5% ゲーム 10.3% 18.4% スポーツ用品・活動/アウトドア用品・活動 (N=190) 8.8% 12.6% (N=261) (N=190) 「衝動買いをしてしまうことが 多い」 と感じる人の割合 「貯めたお金を使う時は 派手に使う」 と感じる人の割合 (%) 一 人 暮らしの未 婚 男性 ( N= 2 6 1 ) 56.3 男性 パラサイト・シングル ( N= 1 9 0 ) (%) 63.2 45.8 54.7 買 物 時の基準 ● 男性パラサイト・シングルは世の中に対する関心が低く、 モノを購入する際にも流行や店員の意見に左右されずに、自分の価値基準で決定する。 情報に対する態度を見ると、男性パラサイト・シングルは、一人暮らしの未婚男性に比べて、世の中の出来事への関心が低く、最新情報に弱いと感じている人が多 い(図10参照)。 このように周囲をあまり気にしないパーソナリティは、買物行動にも表れており、流行商品に対する反応も低く、 また、店員の意見に左右されずに購入 することも多い(図11参照)。 これらから、男性パラサイト・シングルは周囲に流されにくく、 自分の価値基準を満たすものを購入する傾向があることが読み取れる。 図10 情報に対する意識 「世の中の出来事はあまり気に ならない方だ」 と感じる人の割合 図11 買物スタイル 「最新情報に弱い」 と 感じる人の割合 (%) 一人暮らしの未婚 男性 (N =2 6 1 ) 男性パラサイト・シングル (N =1 9 0 ) 18.0 24.7 「流行しているモノという理由だけで購入 することが多々ある」 と感じる人の割合 (%) 34.5 42.1 「店員の意見に左右されずに購入 することが多い」 と感じる人の割合 (%) 一 人 暮らしの未 婚 男性 ( N= 2 6 1 ) 男性 パラサイト・シングル ( N= 1 9 0 ) 17.6 14.2 (%) 57.1 62.6 ■結論 若者男性の約4割を占めるパラサイト・シングルは、親と同居しているため生活費にお金を投じる必要がないこともあり、仕事よ りも遊び・趣味中心の価値観を持っている。したがって、 「 趣味・娯楽」 「 本・CD・DVD」 「 ゲーム」 「 スポーツ用品・活動/アウトドア 用品・活動」など今この瞬間を楽しめるコトに今後お金を積極的にかけたいという思いを強く持っている。ただし、いざ消費となると 慎重で、勢いや流行で動いてしまうことはなく、自分の価値基準で熟考する。 これらから、男性パラサイト・シングルは、安定した生活に根ざした個性の強い自己中心派と位置づけられる。彼らを動かすため には、誰もが共感するメッセージではなく、マニアックな切り口で自分だけに向けられていると実感できるようなメッセージを発信 することが効果的だと考えられる。 Copyright ( C ) 2008 Media Shakers Inc. All Right Reserved.
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