「核兵器廃絶に向けた科学者と宗教者との対話集会~世界パグウォッシュ会議をうけて~」 共同アピール文 2015 年は、1発の原子爆弾によってこの街が廃墟と化したあの時から 70 年であるだけでなく、 核兵器の廃絶と戦争防止のために“人間性の回復”を促した『ラッセル・アインシュタイン宣 言』の発表から 60 年の節目の年である。 そうした歴史的な重みを刻む本年 11 月1日から5日まで、古くから諸外国との交流を通じて豊 かな文化と宗教性を育んできた長崎で、第 61 回パグウォッシュ会議世界大会が開催された。そ の会議に併せて、長崎県宗教者懇話会と世界宗教者平和会議(WCRP)日本委員会は、「核 兵器廃絶に向けた科学者と宗教者との対話集会~世界パグウォッシュ会議をうけて~」を長崎 カトリックセンターで共催した。 パグウォッシュ運動の生みの親の一人である湯川秀樹博士は、1970 年に京都で開催された第1 回WCRP世界大会の基調講演で、宗教者の役割に期待して、「戦争のない一つの世界へ向か っての飛躍は、政治家や科学者だけでは成しとげられないのであります」と語り、世界平和に 取り組む宗教者に一層の奮起を促した。一方、自由と人権の守護者であるマーティン・ルーサ ー・キング博士は、「原子爆弾そのものが危険を生み出すのではなく、最も卑しむべき憎しみ と最大の損害を被らせる利己心を爆発させる人間の心と魂に原子爆弾が委ねられていることが 問題なのだ」と述べ、人間性の覚醒が求められていることを訴えた。科学界と宗教界を代表す る偉大な2人の指導者は、核時代における私たちの人間性の回復が急務であることを教えてく れている。 第 61 回パグウォッシュ長崎会議で採択された『長崎宣言』は、「強固な道徳心と倫理観がなけ れば、人類は生き延びることはできません」と訴えた。また今回の対話集会に出席した科学者 は、核廃絶への具体的な道筋への示唆のみならず、宗教者に対する大きな期待を表明した。こ うした科学者の要請に応える意味で私たちは、宗教的、倫理的そして道徳的な立場から、課せ られた責務を果たしていきたい。 今日の対話集会に集う私たちは、科学技術の進歩と歩を一にする深い人間性(精神性)があっ て初めて、非人道的で非正当な核兵器の廃絶は実現するし、真に平和で安全な世界が到来する と信じている。また私たちは、核兵器を造ったのが人間であるならば、人間がそうした兵器を 廃絶することができると確信している。 平和への祈りが人々の生活に息づいている長崎で開かれた対話集会に参加した私たちは、今日 の出会いが、核廃絶と戦争の防止という崇高な目的を共有する科学者と宗教者の対話の出発点 であることを確認し、本アピールの結びとしたい。 2015 年 11 月6日 長崎への原爆投下 70 年と ラッセル・アインシュタイン宣言 60 年を記念して
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