連載 ● 「研究の進め方」 ~その2~ ・研究の種類 ・年間計画 前回、 「研究課題の設定」を行いました。各学校の校内研究や 各種研究会でもこの時期、研究課題が決まった頃ではないでしょ うか。今回は、 「研究の種類」と「年間計画」の二本立てです。 ぜひ、研究推進に役立てていただければと思います。 研究の種類 指導法開発研究 指導法開発研究は、指導法の開発を通して 教員の意識改革を促し、授業改善につなげる ことを目的としています。具体的には、 (1)ティーム・ティーチング (2)グループ学習 (3)個別学習 (4)選択学習 (5)主体的学習 (6)課題解決的な学習 (7)体験的な学習 (8)横断的・総合的な学習 (9)ICTを活用した 学習などが挙げられます。 「生きる力」という生涯学習の基礎的な資 質・能力を身に付けさせるためには、例えば、 課題解決的な学習や体験的な学習などの指導 方法の開発や、各教科等における形成的評価 と子供の自己評価を関連させた方法の開発な どが期待されます。 教材開発研究 教材開発研究は、学習の材 料である教材を開発すること です。子供一人一人がすすん で教材と関わり、そこから自 分の課題や実現したいことを 見付け、学んでいけるような 教材の開発が求められていま す。 そのため、先行研究の分析 や子供及び教師の実態把握を 十分に進め、子供のつまずき を分析したり役立ちそうな手 法や道具・材料など思いつい たアイディアを生かしたりす るなど試行錯誤を繰り返しな がら取り組むことが大切で す。 カリキュラム開発研究 カリキュラムは、一般に「教育課程」と訳し ていますが、最近では教育目標、教育内容、教 材・教具、さらには、学習活動や評価までを含 んだ広義の概念として使われることが多いよ うです。各学校では、環境教育、国際理解教育、 情報教育、防災教育等の今日的な教育課題に対 する適切な対応が求められています。 このようなときこそ、都民の信頼に応える学 校として、広い視野に立ってカリキュラム全体 を見直し、進むべき方向を明らかにする必要が あります。学校の自主性・自立性の確立、特色 ある教育活動の充実の視点から、カリキュラム 開発研究は今後ますます重要になると考えら れます。 事例研究 事例研究は、一つ又は少 数の事例について詳しく研 究し、それによって課題の 所在・原因等を究明し、一 般的な法則・理論を発見し ようとする研究方法のこと です。研究対象とする子供 について指導過程及び行動 等を綿密に追跡・分析する ことにより、行動や内面の 変化を具体的に捉え、指導 の手掛かりが得られます。 調査研究 調査研究は、他の研究方法 をとる場合でも部分的にしば しば用いられます。子供の実 態や変容を把握するためのア ンケートなどもその一つです し、動植物の分布や町の歴史 的変遷を調べたりするのも調 査研究です。いずれの場合も 調査結果を正確に読み取るこ とが大切です。 安易に実施するのではなく、 特に質問紙によるアンケート 調査は、回答する児童・生徒等 の状況を配慮し、負担にならな いように十分注意する必要が あります。 まとめ 研究の目的を見失わずに、いくつかの研究の種類から適切に選択することが大切です。 類 年間計画 (1) 計画の作成 研究計画の作成とは、研究課題の解決に向け、どのような方法で取り組むかを考え、限られた研究 期間における研究のゴールを設定することが大切です。計画書の形態は様々ですが、月ごとの研究内 容と研究方法等を記した例を下に示します。 月 4月 (例)内容と方法 研究主題の確認 (具体例)校内研究の場合 ・研究全体会で校内研究の方向性を討議する。 ・文献研究等 ・目指す児童・生徒像、研究仮説について討議し、設定する。 研究仮説の設定 ・類似したテーマを明らかにして研究している学校の研究報告 ・討議、情報収集 書などの先行研究に当たる。 研究計画の作成 ・研究計画を立案し、研究分科会を設定する。 5月 理論構築、研究仮説の決定 ・文献研究等から理論を構築し、研究主題、研究仮説を確定する。 研究内容の具体化 ・大まかな研究構想図を作成し、校内で共通認識を図る。 ・情報収集 ・提案授業(モデルとなる授業の提案等)や講師による講演等を ・調査計画作成 行い、研究の方向性を固める。 ・研究授業計画作成 ・調査計画を作成し、年間を見通して研究授業者を決める。 6月 調査の実施 ・研究仮説に関わる調査項目を決定し、アンケート調査や聞き取 ・アンケート、聞き取り り調査を実施する。 研究授業の実施 ・学習指導案作成、研究授業①、協議会、研究授業の分析を行う。 ・研究授業の分析方法の検討 ・研究構想図を完成する。 7月 調査・研究授業の分析 ・学習指導案作成、研究授業②、協議会、研究授業の分析を行う。 ・調査集計・分析 ・アンケート調査、聞き取り調査等の集計・分析を行う。 研究仮説の深化 ・研究仮説を見直す。 8月 研究の整理 ・研究授業と研究主題との関連を確認する。 ・理論の再構築 ・研究授業を通して研究主題を見直し、理論を再構築する。 9月 研究授業の実施 ・学習指導案作成、研究授業③、協議会、研究授業の分析を行う。 研究内容・計画の修正 ・必要があれば研究内容、計画の修正を行う。 10月 補足調査 ・補足調査が必要な場合は、追加で行う。 研究報告書のプロット検討 ・大まかな研究報告書のプロットを作成する。 11月 研究授業の分析・まとめ ・研究授業を通して分かったことを考察する。 12月 研究発表会の準備 ・研究分科会のまとめを全体として統一する。 ・プレゼンテーション準備 ・発表会用のプレゼンテーションを完成する。 1月 ・配布資料作成、資料配布 ・研究報告書の作成等を行い、研究成果物をまとめる。 研究報告書の作成 2月 研究発表会 ・成果と課題を明らかにする。 ・プレゼンテーション ・研究発表会を実施し、研究発表会の反省を行う。 研究報告書の完成 ・研究報告書を完成する。 3月 成果の普及 ・成果物を配布し、ホームページへの掲載を行い、研究成果の還 研究全体の評価 元・普及を図る。 ・研究全体会で今年度の反省と来年度の計画立案を行う。 (2) 計画の修正 研究を進めていくうちに、研究開始時には気付かなかった研究領域 を発見するなどして、計画を修正せざるを得なくなることもあります。 (3) まとめに向けた具体的計画 研究のまとめは、予想外に時間のかかる作業です。研究報告書等を 印刷業者に委託して作成する場合は、校了までに余裕をもって進めまし ょう。個別具体的なスケジュールを作成するなどして進行・管理に努 め、計画的に業務を進めていく必要があります。 次回予告 その3 ・研究方法 まとめ 研究したいことが限られた期間で可能な計画か、ゴールを見つめた 計画になっているかを意識して年間計画を立てることが大切です。
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