「FX特別レポート」(9/21) 米大統領選挙と為替の関係その 2 ㈱マネー&マネー編集長・吉田 恒 米大統領選挙が近付いてきた。これが、膠着相場から脱却するきっかけとなるか。 過去の大統領選挙と為替の関係を調べると、選挙の結果は、為替相場が動意付く一つの きっかけになることは間違いなさそうだ。ただし、選挙終了後、すぐに為替の方向性が出 るというわけではなく、むしろ選挙終了から 3∼4 ヶ月後、政権の為替政策を見極めた上で 方向性が決まるパターンが一般的だった。 ◆選挙後「大相場」のパターン 下グラフは、1992 年、1996 年、そして 2000 年といった過去 3 回の米大統領選挙の結果 が判明した後に、ドル円相場がどう動いたかを調べたものだ。これを見ると、大統領選挙 後の為替が方向感を伴った動きになってくるのは、選挙の結果が確定してからだいたい 60 営業日以上過ぎてからだった。 60 営業日以上というのは、3 ヶ月以上ということになる。つまり、11 月初めに予定され ている大統領選挙で、かりにすぐに結果判明となったら、それから 3 ヶ月以上経過した、 年明け 1∼2 月頃に、いよいよドル高かドル安か、方向性がかなりはっきりしてくることと なりそうだ。 なぜこのように、大統領選挙後の相場が、年明け 1∼2 月に方向感を伴った動きになって きたかといえば、やはり政権の政策姿勢を見極めるということがあるのではないか。 過去 3 回の大統領選挙後相場の中で、最も典型的だったのは 92 年 11 月、民主党の新人 候補クリントンが、共和党の現職、ブッシュ大統領を地すべり的勝利で破ったケースだろ う。この時は、選挙終了後もしばらく一進一退の相場が続いたが、選挙終了から 60 営業日 以上経過してから突然、ドル安・円高方向に動き出した。これは、ク政権の為替政策が円 高容認であることが見極められてからのものだった。 このように見てくると、米大統領選挙後は選挙前の「凪相場」から一転「大相場」への 転換が期待できるが、それは選挙終了後すぐというわけではなく、むしろクリスマス休暇 をはさみ、政権が新たなスタートを切って、政策の方向性を見極めてからが本格的大相場 の始まりとなる可能性が高いように考えられる。 ◆大相場の方向性を決める鍵とは? ところで、過去 3 回の大統領選挙で、選挙終了から 90 営業日後のドル円を見ると、ドル 高が 2 回、ドル安が 3 回だった。ドル高 2 回の内訳は、96 年 11 月の民主党クリントン大 統領の再選と、2000 年 12 月、共和党ブッシュ、民主党ゴアという新人候補同士の対決と なり、結果的に歴史的接戦を制したブッシュ大統領誕生となったケースである。これに対 してドル安は、1992 年、民主党のクリントン候補勝利となったケースだ。 このように、民主党は 2 回の勝利で、片やドル安、片やドル高と正反対の結果となった。 一方共和党の勝利ではドル高となっていた。サンプリング件数が少なすぎるため、これだ けでは勝利政党と為替の方向性にどれだけの関係があるかは参考にならない。 一つ注目したいのは過去 3 回の大統領選挙のうち、勝者として 2 回も入ったクリントン 大統領のケースだ。新人候補として勝利した 1992 年の場合は、その後ドル安、これに対し て再選が決まった 96 年の場合はその後ドル高となった。 この 2 つのクリントン勝利後の違いは、景気局面が一つの違いとしてあった。92 年から 93 年にかけてはFRB金融緩和局面、つまり景気は後退局面が続いていた。これに対して 96∼97 年にかけては、97 年にFRBが利上げをおこなうなど景気は回復のプロセスにあっ た。 こんなふうに見ると、選挙後、米政権の政策姿勢はやはり景気局面次第で大きく変わる ことになるといえるだろう。つまり民主党ケリーか、共和党ブッシュか、どちらが勝利す るかより、景気局面次第で政策姿勢が決まり、それを見極めてから大相場の方向性も決ま るといった流れになるのではないか。(Y)
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