No.2 平成19年2月9日 発行: スーパーマーケットにおける 青果物の販売動向と仕入れの考え方 青果物流通の中で、買い手であるスーパーマーケットの発言力が近年急速に大きくなっています。 スーパーマーケットの動向と考え方を捉え、産地としての対応方法を考えてみましょう。 1.スーパーマーケットにおける青果物の販売動向 ●消費者の青果物購入はスーパーが主流 日本にスーパーマーケット(以下スーパー)が誕生してから約50年が経ちます。昭和の時 代は今日のような大型店は少なく、一つの企業が所有する店舗数も多くなく、店舗も小型店が 中心でした。また八百屋(青果専門店)が、街のあちらこちらで営業しており、身近な存在で した。しかし平成以降、スーパーが利便性、価格攻勢により勢力を拡大し、その影響から八百 屋が経営縮小、廃業に追い込まれるケースが出てきました。そのため、今日では消費者の青果 物の購入は、スーパー中心となっています。 ●スーパーの大型化と仕入れ力強化 しかし、そのスーパーも各地で乱立し、まさに飽和状態になっています。その結果、ほとん どのスーパーで、売上高が年々右肩下がりになっているのが現状です。 売上高が伸びない中 で、なんとか利益を確保しようと、仕入れコストを抑制したいとする動きがあります。スーパ ー同士で合併・提携したりすることで、バイイングパワー(仕入れる力)を強化しようとしま す。バイイングパワー強化の動きが、スーパーの更なる大型化に拍車をかけています。 ●「地場産・産地直送」重視 どんなにスーパーが大型化しようが、仕入れコストを抑制したいと考えようが、消費者の気 持ちの中に「青果物は地場産がいい」という意識が根強くある限り、消費者の気持ちを無視し て営業できません。最近の消費者の動向では、何が安心なのか、安全なのか、わからないこと が多くなっていることから「できるだけ素性のわかる近くの青果物」を欲しがる動きが強いと 言えます。このことが、スーパーが「地場産」の品揃えにこだわる理由となります。 ただ「地場産」であっても、産地からいろんな業者を経由して店舗に届く商品は、鮮度劣化 が激しい、仕入れコストが高くなる、という理由から嫌われているのが現状です。そこで「産 地直送」という謳い文句が重要視されてきます。 遠くの産地でも「産地直送」なら、多くの中間業者を経由した鮮度の悪そうな「地場産」よ りずっと良い、という動きがそれです。いろんな業者を経由しない、まさに「産地直送」の「地 場産」が、スーパー、消費者双方から強く求められている商材と言えるでしょう。 2.仕入れの考え方 ●厳密な販売情報に基づく仕入れ行動 スーパーの青果物の仕入れ方法には、次の二つの方式があり、物流センターなどを経由して 各店舗への供給がされます。 ● 本部(本社)仕入・・・本部担当者が、量的に調達の多い青果物の仕入れを行います。 ● 地区(エリア)仕入・・・地区仕入担当者が、当該地区の卸売市場などを通じ、鮮度や迅速 性が重視される青果物や地場野菜の仕入れを行います。 スーパーの各店舗では、常時100以上ものアイテム(品目)を超える青果物を扱っていま す。これらのアイテムは、全てコンピュータによって日々の販売動向や在庫状況が管理されて います。スーパーの各担当者は、これらコンピュータ管理された販売情報を駆使し、売れ筋商 材の確保や品揃え発注といった業務を行います。 このようにスーパーの仕入行動は機能化、組織化、計画化されています。スーパーが青果物 流通の世界で発言力が強まるにつれて、その仕入行動から卸売市場での競売(せり)中心であ った取引形態にも大きな変化(競売から他の取引形態への移行)をもたらしてきました。 競売(せり)・・・市場(卸売業者)が、複数の買い手に「いくらで買うか」を競争させ、一番高い 値段を出した人に売る方法です。競売は、取引の公開性や大量の品物を迅速にさばくといった点で 優れた方法ですが、価格の乱高下や供給の不安定さという問題があります。 【参考】 中央卸売市場における競売(せり)の割合の推移 (農林水産省総合食料局流通課調べ) 120% 100% 80% 青果 水産物 食肉 花き 60% 40% 20% 0% 昭和60年 平成3年 平成6年 平成9年 平成11年 平成14年 ● 必要商品の安定確保に「予約相対取引」 「先取り」 スーパーには各店舗における日々の販売必要数量を確保する、という要求があります。競売 の場合、スーパーにとっては価格の乱高下や供給の不安定さによるリスクがつきまといます。 そのためスーパーが、必要青果物の安定供給、安定価格の確保をするため、市場との協議の 上で価格や数量等の条件を決めて契約する取引が多くなってきました。この取引形態を「予約 相対取引」といいます。 また市場の競売に先行する先取りが恒常化してきました。簡単に言えば、市場の競売を待っ ていては、店舗開店までに多種多量の青果物の配送が間に合わないため、競売前にスーパーが 必要量を調達(=先取り)してしまうのです。 実際には、直接スーパーが市場での商品確保や仕入れを行うわけではなく、市場内の仲卸業 者がその機能を担います。一般的に市場の卸売業者は「品目を基軸」として、仲卸業者は「取 引先(スーパー等)を基軸」として仕事をしています。そのため「AスーパーにはB仲卸」と いう紐付けがされています。 仲卸業者がスーパーと取引するに当たっては、ほぼ一週間前にスーパーから受注し、これら 受注した産地・規格の数量を市場等から確保し、開店時間までに間に合う配送を段取ることが 必要不可欠な条件となっています。スーパーの発注に対し、欠品を許されない立場にある仲卸 業者にとっては、市場での「競売」とは異なる「予約相対取引」 「先取り」に依存しなければ ならない実態にあるのです。 仲卸業者・・・市場内に店舗を持ち、市場(卸売業者)から競売等で買受けた生鮮食料品等を、一般小 売店や加工業者に販売します。 3.むすび ∼産地としてどう向き合うか∼ 青果物の予約相対取引は、消費者への青果物販 売ルートが八百屋(青果専門店)からスーパー中 心になってきたための必然的な結果と言えます。 情報化社会の一層の進展により、益々スーパー の店舗オペレーション(顧客の吸引力や満足度を 高めていく取り組み)や消費者ニーズへの的確な 対応が産地に対し求められてきます。予約相対取 引を始めとするスーパーへの対応を、むしろ積極 的に対処していく柔軟性が大切です。 それには単に日々の市場相場に流されるので はなく「価格を取る」から「売場を取る(自分の商品の売場を創る。確保する) 」への意識に 産地のよきパートナーとして関係構築が重要 変えていくことが大切です。 青果物流通において、産地、市場、仲卸、スーパーなどの小売店、消費者の全てが満足でき る流れや体系が確立されることが理想です。青果物の販売において産地として大切なことは、 よきパートナー(それが市場であってもスーパーであっても)を見出し、多少の不満は我慢し 互いに譲り合いの精神で、綿密な話し合いをもって解決していく仕事創りであると言えるでし ょう。 (全農新潟県本部 園芸部青果販売課) この記事についてのお問い合わせは、JA または JA全農にいがた担い手支援部 まで (℡025−232−1550)
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