新ごみ中間処理施設建設に係わる 事業方式導入可能性調査 報 告 書

新ごみ中間処理施設建設に係わる
事業方式導入可能性調査
報 告 書
平成 25 年 4 月
上伊那広域連合
1 民活事業方式導入の基本的な考え方
1 民活事業方式導入の基本的な考え方
1.1 新ごみ中間処理施設整備基本計画に基づく整理
新ごみ中間処理施設整備基本計画の内容に基づき、施設規模や処理方式、建設候補地条件等、施
設整備に関する前提条件は次のとおりである。
①
②
想定対象事業実施区域の条件
最終候補地(長野県伊那市富県(とみがた)の北東部、三峰川左岸の新山川(にいやまが
わ)合流点西側)の重心部約 2.5ha を建設地と想定している。
施設規模
処理量
(1)処理対象ごみ
①燃やせるごみ(家庭系・事業系)
②燃やせないごみ、粗大ごみからの残渣分
③クリーンセンター八乙女最終処分場の掘り起こし残渣
④災害廃棄物
計画年間処理量
(2)施設規模
③
28,888t/年
3,769t/年
1,180t/年
2,086t/年
35,923t/年
134t/日
処理方式
ガス化溶融方式(流動床式)又はガス化溶融方式(シャフト炉式)(コークスベッド式)
1.2 想定される事業スキーム
策定した「施設整備基本計画」では、公設公営方式、公設+長期包括運営業務委託方式、公設民
営方式(DBO方式)、民設民営方式(PFI方式)をもとに、「コスト削減効果」「資金調達」
「市民への信頼性」「その他」の項目から、定性的比較や先行事例等の調査を行った。
その結果として、次の点から適切な事業方式としてDBO方式の優位性が確認された。
①自治体が施設を建設・所有することにより地元など施設周辺の住民に対して信頼を得やすい。
②建設+運営業務(20 年間程度)をセットで入札させ総合評価するため、20 年分の運営業務についても競
争原理を働かせることができる。
③運営を民間に長期包括的に委託することにより、施設の維持管理を安全かつ効率的に実施でき、住民
理解を得やすい。
この結果をもとに、本事業における最適な事業方式としてDBO方式を前提として、施設整備基
本計画では想定したDBO方式における課題や留意点等を踏まえながら、参入意向調査や経済性の
視点からより詳細な検討を行い、事業スキームを確定する。
1.3 対象業務範囲の設定
公共と事業者との業務範囲の分担を以下のとおり整理する。
なお、本事業については整備・運営する施設は以下に示すとおり複数の施設から構成される。
①
②
③
④
⑤
熱回収施設工場棟
管理・計量棟
ストックヤード棟
外構等施設:洗車場(熱回収施設)、駐車場、構内道路、植栽、門
八乙女最終処分場、最終処分場の浸出水処理施設(調整槽含む)
1
1 民活事業方式導入の基本的な考え方
業務区分
(1) 計画管理
対象施設
共通
(2) 用地取得
共通
(3) 施 設 整 備 に ①
係る許認可
手続き
(4) 設計
共通
(5) 建設
共通
(6) 施 設 全 体 管 共通
理
(7) 受付管理
②⑤
(8) 運転管理
①
⑤
①
①
(9) 維持管理
①
①⑤
⑤
⑤
⑤
①②③
①②
④
①②③④
⑤
(10) 環境管理
①⑤
①⑤
(11) 処 理 副 産 物 ①
の処理・処分
①
(12) 余熱利用
①
(13) 情報管理
共通
(14) 関連業務
共通
共通
共通
共通
④
(15) 財産管理
共通
共通
(16) 契約管理(モ 共通
ニタリング)
業務内容
・施設整備全体に関する計画・管理
・一般廃棄物処理基本計画
・一般廃棄物処理実施計画(各年度計画)
・施設への搬入計画
用地の確保
廃棄物処理法に基づく設置届け
交付金申請
開発関係
工事に係る許認可手続き
実施設計
設計監理
工事に係る許認可手続き
施設建設
施工監理
施設設置者(所有者)としての施設管理
・搬入ごみの受入判定
・料金徴収
・運転管理計画の作成
・運転管理,運転作業
掘起・埋立計画の策定
搬入管理(不適物混入防止の監視)
搬入出物の性状管理
搬入物
搬出物
・可燃ごみ
・スラグ
(家庭系・事業系) ・メタル
・燃やせないごみ
・溶融飛灰処理物
・粗大ごみ破砕残渣 ・溶融不適物
・掘り起こし残渣
・災害廃棄物
搬入物(最終処分場の掘起ごみ)の運搬
搬出物の運搬
最終処分場の堀起作業
最終処分場の埋立作業
最終処分場の浸出水処理施設の運転
・物品・用役の調達・管理
・検査・点検・補修計画の作成,実施
精密機能検査の実施
外構施設保全
改良保全(施設改造)
最終処分場(新浸出水処理施設含む)の運
営・維持管理
環境管理(排ガス,粉じん等)
作業環境管理
処理副産物の資源化
処理副産物の処分
売電および売電に係る事務手続
・報告書の作成と管理
・設計図書等施設情報の管理
施設清掃
施設警備
見学者対応
住民対応
植栽管理
土地,建物,備品
建物・プラント保険
・契約に基づく成果管理
・定期検査結果等の評価
・成果報告の評価
・性能保証・かし担保の確認
2
広域連合
事業者
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○(処分場)
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○(未定)
○
○(未定)
○
○
○
○(市場価値の
ない場合)
○
○
○
○
○(売電益帰属
先は未定)
○(処分場)
○
○(一部範囲未
定)
○
○
○
○(未定)
○
○
○(一部範囲未
定)
○
○
○
○(未定)
○
2 リスク分担の検討
1.4 運営期間の検討
DBO方式によるごみ処理事業における運営期間は、先行事例によれば 15 年または 20 年に設定
されている場合が多く、本事業に最適な運営期間について、①民間事業者のノウハウ発揮、②基幹
改良リスクの回避、③将来への適用性の3つの視点から検証した。
民間事業者ノウハウの視点からは長期の運営期間が望まれるものの、施設の耐用年数及び、リス
クプレミアムの観点、将来の適用性の視点からは運営期間を長期化することに課題があり、事業期
間は当初の契約内容を適宜見直すために最適な期間とする必要がある。
以上の検討結果から、本事業の運営期間としては 15 年が望ましいと考えられる。なお、本施設は
少なくとも 30 年~35 年の利用を想定していることから、15 年間の運営期間はその折返し時期とな
る。したがって、本事業終了時点の施設状況や法改正等をはじめとする社会的変化を踏まえ、必要
な基幹改良及び機器更新を実施していくこととする。
2 リスク分担の検討
2.1 リスク分担の考え方
リスクを民間事業者に移転する場合には、民間事業者は、リスク回避のために、顕在化を抑制す
るシステムの構築や保険への加入等により、コストが増大するため、公共が支払うサービス提供費
は増大する。しかし、公共がリスク負担するケースよりも安価であれば、VFMの達成につながる。
このように、適切なリスク分担を定めることでVFMが向上するが、民間事業者への過度なリスク
移転を行うと、逆にVFMは低下することに留意が必要である。
VFMを最大化させるためには、公共と民間事業者との最適なリスクの分担が重要となる。
VFM
<リスク分担の考え方>
契約当事者のうち、個々のリス
Best VFM
クを最も適切に対処できる者が
当該リスク責任を負う
従来方式
最適な事業方式
リスク移転
特に重視すべきリスクとしては、一般的には、
・リスクが顕在化した場合に、コスト面や事業遂行に多大な影響が出るケース
・コスト面での影響は大きくないが、頻繁に起こることにより、事業に影響をきたすケース
など、予想できる範囲ですべてチェックしておく必要がある。
なお、ごみ処理事業特有のリスクとしては次のとおりであり、適切にリスク分担を行えるよう留
意が必要である。
○不適物混入リスク(受入廃棄物の品質リスク)
○ごみ量変動リスク(受入廃棄物の量の変動リスク)
○周辺住民との合意形成リスク(近隣対応リスク)
以上を踏まえ、本事業で想定されるリスク及びその役割分担は次を想定している。
なお、リスクが顕在化した原因について、その帰責事由が明確である場合については、該当する
主体が負担することを前提とし、それ以外の場合は、以下の分担案によることとする。
3
2 リスク分担の検討
リスクの種類
入札説明書リスク
契約締結リスク
計画変更リスク
用地確保リスク
近隣対応リスク
第三者賠償リスク
共通
設置基準、管 理基
準、法令等の変更リ
スク
税制度変更リスク
許認可遅延リスク
応募コスト
物価変動リスク
事故の発生リスク
事業の中止・遅延に
関するリスク
不可抗力リスク
調査・設計段階
設計等の完了 の遅
延
設計等費用の 約定
金額の超過
測量・地質調査の誤
りリスク
建設着工遅延
建設段階
工事費用の約 定金
額の超過
工事の完成の 遅延
リスク
一般的損害リスク
性能リスク
管理運営段階
運営開始の遅延
受入廃棄物の 品質
リスク
受入廃棄物の 量の
変動リスク
リスクの内容
入札説明書等の誤り、内容の変更に関するもの等
広域連合の事由により契約が結べない、契約締結が遅延する等
事業者の事由により契約が結べない、契約締結が遅延する等
広域連合による事業の業務範囲の縮小、拡充等
事業用地の確保に関するもの
本施設の設置に対する住民反対運動等に関するもの
上記以外のもの
調査・建設・管理運営段階における騒音・振動・地盤沈下・臭気等に
関するもの及び事業者の責めに帰すべき事由によるもの
本事業に直接関係する法令等の新設・変更に関するもの
負担者
広域
事業者
連合
○
○
○
○
○
○
○
○
○
上記以外の法令の新設・変更に関するもの
○
本事業に直接関係する税制度の新設・変更に関するもの
上記以外の税制度の新設・変更に関するもの
事業者が実施する許認可取得の遅延に関するもの
応募費用に関するもの
施設の供用開始前のインフレ・デフレ(施設整備費用に相当するもの)
施設の供用開始後のインフレ・デフレ(管理運営に相当する部分)
設計・建設・管理運営業務における事故の発生
広域連合の指示、議会の不承認、広域連合の債務不履行によるもの
事業者の債務不履行、事業放棄、破綻によるもの
天災・暴動等の不可抗力による費用の増大、計画遅延・中止等
広域連合の指示、提示条件の不備・変更による設計変更による計画遅
延に関するもの
事業者の提案内容の不備・変更による設計変更による費用の増大、計
画遅延に関するもの
広域連合の指示、提示条件の不備・変更による設計変更による費用の
増大に関するもの
事業者の提案内容の不備・変更による設計変更による費用の増に関す
るもの
広域連合が実施した測量・地質調査部分に関するもの
事業者が実施した測量・地質調査部分に関するもの
広域連合の指示、提示条件の不備・変更によるもの
上記以外の要因によるもの
広域連合の指示、提示条件の不備・変更による工事費の増大
上記以外の要因による工事費の増大
広域連合の指示による施設の供用開始の遅延
上記以外の要因による施設の供用開始の遅延
工事目的物・材料・他関連工事に関して生じた損害
要求水準の不適合(施工不良を含む)
広域連合の指示、提示条件の不備・変更によるもの
上記以外の要因によるもの
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
△
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
受入廃棄物の質に起因する事故
○
△
受入廃棄物の量の変動による管理運営費用の増大
○
△
事業終了時
性能リスク
要求水準の不適合
○
施設の性能確 保リ
スク
事業終了時における施設の性能確保に関するもの
○
※負担者
4
○主分担、△従分担
3 民間事業者の参入意向調査及び事業費調査
3 民間事業者の参入意向調査及び事業費調査
本事業をDBO事業として実施するためには、民間事業者の参加が不可欠であることから、民間
事業者の本事業の事業スキームや事業概要等に対する要望や参入意向等を把握すること目的とした
市場調査を実施した。併せて、VFM算定の根拠資料となる施設整備費及び運営費について、従来
方式を条件とした見積もりを依頼した。
調査対象企業としては、同一の処理方式の建設実績が2件以上あるプラントメーカー6社を選定
した。
3.1 民間事業者の参入意向調査結果
プラントメーカー4社から回答を得た結果概要(一部)は次のとおりである。
設問
本事業への民活手法
の導入について
結果
本事業への民活手法の導入の有効性は、2社が「極めて高い」、2社が「高い」を選んでおり、
理由としてより効果的・効率的な事業運営が行えることが記載されており、本事業への民活手法
の導入の有効性は高いと考えられる。
事業方式について
本事業の事業方式として全社が DBO 方式を適当であると回答しており、理由としては、資金調
達リスクがなく民間事業者が参画しやすいこと、資金調達に伴う金利や税制面での優位性から
VFM の達成が期待できることが記載されており、DBO 方式が最適な事業方式と考えられる。
事業期間について
事業期間については、全社がいずれも適当であると回答している。
理由としては、設計、建設期間については各社の類似実績等から3年が、運営、維持管理期
間については、概ね15年程度で必要となる大規模改修(基幹改良工事)を含まない15年が適当
であると考えられている。
業務範囲について
設計、建設の業務範囲については全社が問題がないと回答しているが、運営、維持管理業務
については課題があるという回答が見られる。
民間事業者でリスク負担が困難であり、公共でリスク負担してほしいものとして、用地買収、住
民同意、ごみ量・ごみ質の変動、熱回収施設の最終処分場の一体運営の可否、物価変動に関す
本事業で留意すべき るリスクについての指摘が多く見られた。
特にごみ量・ごみ質については、固定費と変動費による委託料の導入や、将来的に委託料改
リスクについて
定となる場合の条件の事前設定など、物価変動については、複数の物価指数の導入などが求め
られている。
非常に関心があるが1社、条件が整えば参加したいが3社であり、理由としては処理方式(ガス
本事業への関心につ 化溶融炉)として弊社の整備・運営ノウハウが活かせる、民間の創意工夫が高く過度なリスク負担
でない場合には参加したいという記載が見られ、今後、民間事業者の意見を踏まえながら事業条
いて
件を設定することで、一定程度の競争性は確保できると考えられる。
3.2 事業費調査結果
3社からの見積もり回答の平均をもとにした、従来方式・運営期間 15 年間における事業費(税抜)
は次のとおりである。
PSC
8,401,800 千円
2,962,500 千円
1,869,323 千円
3,520,702 千円
193,250 千円
694,590 千円
建設費
人件費
用役費(熱回収施設(売電分除く))
点検・補修費
掘起(前処理設備費)
掘起(作業費・運搬費等)
合
計
17,704,865 千円
5
3 民間事業者の参入意向調査及び事業費調査
3.3 DBO方式を導入した自治体へのアンケート調査
新たなごみ処理施設の建設をDBO事業等で実施するにあたり、先行事例からごみ処理施設DB
O事業の課題等を予め把握し円滑に事業推進していくことを目的として、DBO方式を導入し稼働
から1年以上経過した自治体等(5者)へアンケートを実施した。
結果は次のとおりである。
No
1
2
設問
事業者選定時の課題
はありましたか。
結果概要
○課題があったとの回答は2者となっている。
設計・施設建設時の課
題はありましたか。
○課題があったとの回答は3者となっている。
運営時における課題
当初の要求水準を満た
していますか。
○満たしていない、または課題があったとの回答は2者となっている。
運営時における課題
現在までにごみ量、ご
み質の変動による課題
はありましたか。
○課題があったとの回答は4者となっている。
運営時における課題
当初予測VFM値と実
際VFM値と違いはどの
ようになっていますか。
○違いはないが4者となっているが、うち1者は実際の VFM 評価を行っていな
いとの回答であった。
○違いのあった1者については、下記のとおり。
運営時における課題
契約時と運営時の費用
に違いはありますか。
(物価変動やごみ量変
動によるものを除く)
運営時における課題
その他の課題はありま
すか
○違いがあるが3者となっている。
3-1
3-2
3-3
3-4
3-5
4-1
・一者入札となったことによる競争性の確保。
・処理方式を1方式に限定したことによる競争性の確保。
・物価変動による委託料の変動方法の取り扱い。
・建設用地における埋設物の撤去費用や工期延長に伴う金額変更。
・要求水準書、事業者提案、実施設計図書等との整合確認が煩雑。
・事業期間中に高効率発電の交付制度が導入されたことによる設計変更。
・継続的な故障や部材の耐久性の欠如、改良による部材単価の向上などが生じ、保守
費が嵩んでいる(要求水準を満足していないと考えている)。
・稼動当初から溶融スラグの流動性低下を起因とする不具合が生じており、他工場の
焼却灰の一部が処理できない状況が続いている。
・設備の一部に詰まりが多く発生し、ごみ供給を停止して除去作業を行っているが、
これを起因として灯油使用量が増加している。
・プラント瑕疵期間中の不具合の調整を進めている。
・固定費算定のための当初計画ごみ量との乖離。
・ごみ量による変動費を導入しなかったことにより、SPC の負担が大きく事業継続に
影響。
・震災廃棄物発生による影響(汚染ごみの取り扱い、震災ごみの発生等)
・導入可能性調査等の事前調査におけるVFM:9.9%
・契約金額による評価におけるVFM:22.6%
・震災発生に伴う放射線測定など追加費用の発生。
・当初の支払い方法(対象期間や支払い回数)の変更。
・燃料費の高騰による委託料の見直し。
○課題があるとの回答は3者となっている。
・人口減に伴うごみ量減少による収入の減少、保守管理費の当初計画との乖離により
事業経営が非常に困難。
・有期雇用となることから人材確保が困難。
・契約に係る協議や承認など、事務手続きが煩雑。
・市職員が配置されていないため、現状把握が困難。
・運営モニタリングのための委託契約費の捻出。
・事業期間中の臨機応変な対応が困難であり問題発生ごとに協議が必要。
DBO 事業の良かった点 ○全員から回答が得られた。
について具体的にお聞
・設備保守費を固定費としたことによる財政負担の平準化。
かせください。
・震災等、異常事態への臨機応変な対応が可能。
・民間企業による良質な公共サービスと低コストの実現。
・公共による安定した操業が可能。
・毎年度の随意契約が不要、長期契約に伴い、行政の事務処理が減少し効率的。
DBO 事業の悪かった点 ○4者から回答が得られた。
について具体的にお聞
・公共による施設専門職を配置できず、施設整備の技術に関するブラックボックス化
かせください。
が懸念される。
4-2
・意思統一に時間がかかる場合や、利害の不一致による着地点が見出せず第三者を交
えた調停等が必要となり、長い時間と労力が必要となる場合がある。
・物価変動や運営に影響を及ぼす変化に対する内部及び SPC への協議が必要となる。
・事業者選定手続きが煩雑で時間を要し、物価変動などが生じて入札不調が続いた。
6
4 経済性の評価
4 経済性の評価
民間事業者の参入意欲が最も高いことが確認されたDBO方式及び従来方式において、VFMシ
ミュレーションを実施する。
4.1 事業化シミュレーションの手順
シミュレーションの手順は下記のとおりである。
(1)前提条件の設定
1-1.従来方式における建設費、運営費等の設定
プラントメーカー見積りから、計上費目、費目別費用を設定。
1-2.従来方式における資金調達、
償還計画設定
1-3.DBO方式における費用設定
1-1 で設定した費用を参考に、DBO方式における建
設費等を設定するとともに、公租公課など従来方式
では生じない費用を設定。
交付金、起債充当率、金利等を設定。
1-4.DBO方式における資金調達、償還計画の
設定
交付金、起債、金利等を設定。
1-5.事業の成立条件の検討
DBO方式において事業成立を確認する指標を設
定。
(2)財務シミュレーション表の作成
2-1.シミュレーションプログラムの構築
表計算ソフトを用いて、シミュレーションプログラムを構築。
2-2.財政支出の算定
従来方式、DBO方式について、事業期間中における広域連合の財政支出を算定。
(2)リスク調整費の検討
(3)財政支出の評価
3-1.財政支出の削減効果の整理
従来方式に対して、DBO方式の財政支出削減効果を整理。
7
4 経済性の評価
4.2 事業化シミュレーションの前提条件
従来方式及びDBO方式で実施する場合の施設整備費、運営費、維持管理費等及び、DBO方式
等で発生する費用(公租公課、SPC経費等)や前提条件について整理すると次のとおりである。
従来方式
DBO方式
建設費:8,401,800 千円
設備費:193,250 千円
建設費:7,561,600 千円
設備費:193,250 千円
46,306 千円/年
平均 234,714 円/年
(年度ごとに必要費用を設定)
124,622 千円/年
43,991 千円/年
平均 213,600 円/年
(年度ごとに必要費用を設定)
114,955 千円/年
1.建設費・設備費
2.維持管理・運営費
掘起・埋立対策費
点検補修費
用役費
197,500 千円/年
191,300 千円/年
起債
金額:5,850,180 千円
(平成 27 年度から平成 30 年度の合計)
金利:2.0%
償還年数:15 年(うち据置 3 年)
償還方法:元利均等返済
金額:5,281,092 千円
(平成 27 年度から平成 30 年度の合計)
金利:同左
償還年数:同左
償還方法:同左
一般財源
847,184 千円
767,778 千円
(平成 27 年度から平成 30 年度の合計) (平成 27 年度から平成 30 年度の合計)
人件費
3.資金調達
(交付金以外)
各年の建設費・設備費の 2.5%
(平成 27 年度から平成 30 年度)
同左
5.運転資金
―
102,742 千円
(平成 30 年度)
6.開業準備費
―
30,000 千円
(平成 30 年度)
7.アドバイザー費
20,000 千円
(平成 26・27 年度)
30,000 千円
(平成 26・27 年度)
8.モニタリング費
―
3,000 千円/年
(平成 31 年度から平成 45 年度)
9.SPC経費
―
維持管理・運営費の 3%
10.その他
法人税等
(実効税率)
11.事業者収益率等
―
36.23%
―
EIRR:5%以上
15 年間
同左
4.施工監理費用
12.運営期間
※表中1、2、4~8は税抜き
8
4 経済性の評価
4.3 事業化シミュレーションの結果
本シミュレーション結果は下記のとおりである。
単位:千円
事業方式
従来方式
①建設費・設備費
DBO方式
8,595,050
7,754,850
694,590
659,865
③点検補修費
3,520,701
3,203,996
④用役費
1,869,330
1,724,325
⑤人件費
2,962,500
2,869,500
⑥SPC経費
―
253,731
⑦法人税
―
61,111
⑧利益配当
―
107,963
⑨開業準備費
―
30,000
⑩運用収入
―
▲4,547
⑪消費税(①~⑩分)
1,764,217
1,666,079
⑫合計(①~⑪の計)
19,406,389
18,326,873
▲2,506,537
▲2,255,877
⑭売電収入
▲268,515
▲268,515
⑮消費税(⑬・⑭分)
▲277,505
▲252,439
⑯起債金利
1,139,119
1,028,309
20,000
30,000
210,045
189,040
―
45,000
22,805
26,104
17,745,800
16,868,494
②掘起・埋立対策費
⑬循環型社会形成推進交付金
⑰アドバイザー費用
⑱施工監理費用
⑲運営モニタリング費用
⑳消費税(⑰~⑲分)
㉑広域連合実質支払額(⑫~⑳の計)
※
※
四捨五入の関係で合計と内訳が一致しない場合がある。
消費税は H26 を 8%、H27 以降 10%として計算
なお、SPCは構成市町村の何れかに設置されることから、事業期間を通じて 5,291 千円の税収
がDBO方式では期待できる
従来方式
広域連合の財政支出額
17,746 百万円
DBO方式
広域連合の財政支出額
16,868 百万円
削減額 877 百万円
9
(4.94%)
5 事業手法の総合評価
5 事業手法の総合評価
5.1 事業性評価
下記の点においてDBO方式の優位性が確認できたことから、本事業の実施にあたってはDBO
方式を導入して実施することとする。
○施設整備基本計画における調査結果
:下記の定性的比較からDBO方式の優位性が確認された。
①自治体が施設を建設・所有することにより地元など施設周辺の住民に対して信頼を得やすい。
②建設+運営業務(20 年間程度)をセットで入札させ総合評価するため、20 年分の運営業務に
ついても競争原理を働かせることができる。
③運営を民間に長期包括的に委託することにより、施設の維持管理を安全かつ効率的に実施で
き、住民理解を得やすい。
○民間事業者の参入意向調査結果
:4 社中 4 社が「事業方式としてはDBO方式が適当」としているとともに「本事業に関心
がある」(うち 1 社は「非常に関心がある」)と回答しており、適正な競争環境を構築でき
る期待が高まった。
○VFM シミュレーション結果
:広域連合の財政支出額の削減割合(VFM)は 4.9%程度期待できることを確認した。
なお、今後、より民間事業者の創意工夫を受け入れられる入札条件を設定することにより、
更なる一層の財政支出削減効果を期待することができる。
5.2 事業実施に向けた留意点
本事業でDBO方式を導入して事業実施する場合には、PFI方式と異なることから、以下の点
に留意する必要がある。
・できるだけPFI法の趣旨にのっとり、公平性・透明性等を確保した事業者選定を行うこと。
・「建設請負契約」と「維持管理(運営)委託契約」をそれぞれ締結する必要があり、落札者と
契約締結者が異なることが想定されるため、契約にあたっては十分に配慮すること。
・金融機関によるモニタリングが実施されないため、事業実施にあたっては十分にモニタリング
等の対策を行うこと。
5.3 DBO方式を採用することのメリット
本事業をDBO方式で実施することは、広域連合が本廃棄物処理施設を所有し事業責任を持つこ
とで住民に対して信頼を得やすく、民間事業者の技術・経営ノウハウを発揮したサービスの向上や
コストの削減を期待することができる。
また、一定範囲のリスクを民間事業者に移転しながら長期包括的契約を締結することで、広域連
合の財政負担についてある程度平準化でき、将来的な見通しが立てられる。
10
5 事業手法の総合評価
5.4 事業概要
本検討結果における事業概要を整理すると下記のとおりである。
①施設の概要
計画地
長野県伊那市富県(とみがた)の北東部、三峰川左岸の新山川(にいやま
がわ)合流点西側
処理対象ごみ
可燃ごみ、不燃ごみ(粗大ごみの残渣含む)、最終処分場の掘り起こし残
渣、災害廃棄物
施設規模
134t/日(67t/日×2 炉)
炉形式
ガス化溶融方式(流動床式)、または、ガス化溶融方式(シャフト炉式)(コー
クスベッド式)
②事業スキーム
事業方式・事業類型
○DBO方式
○サービス購入型
(余熱や副生成物の売却利益の取扱については今後検討)
上伊那広域連合
民間事業者
(SPC:特別目的会社)
業務
委託
選定事業者コンソーシアム
施設整備費の支払
建設工事請負契約
基本契約
運営業務委託契約
サービス対価の支払
出資
配当
設計建設 JV
設計企業
(建屋・プラント)
建設企業
(建屋・プラント)
運営企業
常に連合が所有
管理運営
施設の整備
ごみ処理場
事業期間
○設計・建設期間:3年
○運営期間:15年
事業範囲
○設計業務
○建設業務
○維持管理業務
○運営業務
5.5 事業実施における事業工程
決定した事業方式で実施する場合の事業スケジュール案は以下のとおりである。
11
12
ー
①
②
◆
案公表
特
定
事
業
の
選
定
11月
意見徴収
意見徴収
③
④
◆公表
債務負担行為設定
意
見
徴
収
・
整
理
平成26年度
9月
10月
◆公表
◆公表
◆公表
◆公表
入
札
公
告
・
説
明
会
12月
7.事業者選定審査委員会支援業務
6.協定及び契約に係る事項
参加表明受付◇
質問・回答①
資
格
審
査
受
付
質
対第問
面二回
式回答
も
検
討
3月
◆資格確認
⑤
入
札
・
提
案
書
受
付
4月
5月
入札◇
⑥
連
合
落
札
者
決
定
6月
S
P
C
設
立
仮
契
約
締
結
本契約議決
基
本
協
定
締
結
■
本
契
約
締
結
平成27年度
7月
8月
9月
⑧
審査講評作成支援
◆落札者決定
◆公表
契約締結支援
◇
協定締結◇
◆本契約締結
仮契約締結
最
優
秀
事
業
者
選
定
⑦
審査支援
債務負担行為再設定
質問・回答②
■
資
格
審
査
結
果
発
表
2月
)
5-2 民間事業者の選定に関する事項
1月
質
第問
一回
回答
)
(5)募集書類等に対する質疑応答
◆公表
委員構成の提案等
■
◆
公表
案実
の施
公方
表針
・
要
求
水
準
書
8月
(4)その他参考資料等の作成
7月
◆公表
6月
(3)様式集の作成
業 (1)事業者選定基準書の作成
務
(2)契約書(案)の作成
3.入札説明書に係る事項
ア
ド 4.要求水準書に係る事項
バ
イ 5.民間事業者の募集及び選定に係る事項
ザ
リ 5-1 民間事業者の募集に関する事項
2-3 VFMの算定
2-2 VFMの算定に必要な資料収集・整理
2-1 特定事業の選定・公表に関する支援
2.特定事業の選定・公表に係る事項
5月
)
1.実施方針の策定・公表に係る事項
4月
(
前提条件、スケジュール等の確認.
業
務
開
始
平成25年度
2月
3月
※順調に推移した場合を想定
(
議会
提案する事業者選定手続き
1月
(
)
(
事業者選定スケジュール(案)
10月
5 事業手法の総合評価
6 今後の進め方
6 今後の進め方
参入意向調査及び自治体アンケート結果から、対応しなければ DBO 事業の適切な実施を妨
げる(競争性が担保されない、VFM が担保されない、事業経営に不安がある等)要因になり
うる課題等に向けた対策について次のとおりと考える。
①民間事業者は、運営・維持管理業務の一部において、民間事業者の業務範囲とすることに課
題があると認識している。
<対応方策>
民間事業者へ包括委託するためには、設計、建設から施設の運営・維持管理までの中で、一
括して性能発注することにより LCC の最適化につなげられるような一連の業務を洗い出し、で
きるだけ一体として民間事業者に委託発注することが基本的な考え方となる。特に、本事業の
ような運転管理業務が主であり、また民間事業者のノウハウの発揮の余地が大きく、業務の効
率化やコスト縮減等の効果が期待されることから、可能な限り本事業の業務を業務範囲に含め
ることが基本と考える。
一方で、公共サービスという特性や法的制約等の理由により発注者である広域連合が責任を
持って遂行すべき業務を業務範囲に含めないことは当然であるが、下記に該当する業務につい
ては安易に民間事業者の業務範囲に含めるのは避けることが望ましい。一般に、これらの業務
を業務範囲に含めた場合には民間側のリスク管理能力を超えたリスクが移転されることで、民
間事業者の要求するリターン(投資や融資に対する利回り)水準が高くなり、公共側が支払う
サービス対価額の上昇へつながるため、結果として民活事業方式導入の目的の一つである VFM
が達成されない可能性が高まることとなる。また、過大なリスクは民間事業者の参入意欲を削
ぐことにもなり、適正な競争環境が構築されない可能性も高まる。
以上を踏まえ、現在のリスク分担をもとに、上記の民間事業者からの意向が下記の業務範囲
に該当しないか確認し、適切な業務範囲として設定する。
【民間事業者の業務範囲として避けることが望ましい業務】
①広域連合が実施する方が効率的であるもの
②将来需要が予測しにくいもの、また技術面での変化が著しいことから陳腐化しやすいも
のなど、民間事業者のリスクが大きいもの
③性能発注として要求水準書に明確化しづらいものや、権限が行政のコントロール下に
あり、民間事業者の自由裁量が行使しにくいもの
④業務の一体性、関連性が薄く、一括発注する必要性、合理性に乏しい業務
なお、最終処分場の運営ノウハウを有さないプラントメーカーから、最終処分場を業務範囲
に含むことに抵抗感があることが示されたが、広域連合としては、事業実施に必要なノウハウ
等を有する複数の企業の参加により、効率性を追求することを期待している。具体的には、最
終処分場における廃棄物の掘起し、埋立てと熱回収施設の運営を一体的に実施することで、施
設間の調整を円滑に遂行できるとともに、掘起し量、埋立て量の最適な実施計画を立案するこ
とが可能となる。さらに、施設間の廃棄物運搬も円滑に行われるとともに、適切な兼務により
無駄のない人員配置も期待することができると考えている。
13
6 今後の進め方
②予測不能なリスク(ごみ量・ごみ質の変動、物価変動)に対する広域連合へのリスク分担や、
想定外の変動に対応できるよう委託料改定条件の事前設定が求められている。
<対応方策>
ごみ量やごみ質の変動、物価変動については、公共も民間事業者も予測することができない
ことから、広域連合が負担するのか、民間事業者が負担するのかが課題となる。仮に広域連合
が負担する場合には、民間事業者がリスク管理努力をする必要がなくなり、民間事業者に当該
リスクを負担させる場合には、結果的に応札額に跳ね返り、広域連合の支払いが高くなること
が考えられる。
いずれにおいても想定を超える過度な負担となる場合があることから、想定外の変動が生じ
た場合に委託料の見直し等が円滑に行えるよう、契約書等に定めておくことを検討する。
主なリスクに対する具体的な対応策は次のとおりとする。
○ごみ量リスクについて
ごみ量については、民間事業者の意向にもあるとおり、維持管理・運営に要する費用につい
て、ごみ量の変動によらず必要となる費用(固定費)とごみ量の変動に応じて変動する費用(変
動費)からなる委託料支払いの仕組みを導入することを予定している。この方式は既に廃棄物
処理施設整備運営事業において一般的に導入されており、また、ごみ量減少時においては、広
域連合にとっても過度な支払いを避けることが可能となる。
また、想定外にごみ量が増加した場合においては、施設容量を限度として民間事業者に支払
うことが可能であるため、民間事業者へのリスク負担はないが、ごみ量が著しく減少した場合
にも、減額した変動費にて適正な運営継続を要求することの課題について検討の余地がある。
○ごみ質リスクについて
ごみ質については、一般的に計画ごみ質として低質ごみと高質ごみの基準を設定しており、
本事業においても、これらごみ質の保証範囲を設定することを予定している。範囲の明確化に
より、基準の範囲内においては民間事業者のリスクとし、それを超える場合については広域連
合がリスク負担することとなる。
しかしながら、管理運営にごみ質の変動が多大な影響を及ぼす場合には、ごみ質により委託
料が変動する仕組みを検討することも考えられる。
また、処理不適物の混入等により発生する事故については、下記の発生原因により、リスク
負担者は異なる。
【処理不適物の混入等により発生する事故の主な原因】
① 住民のごみ分別意識の不足
② 廃棄物回収時の受入廃棄物内容のチェック不足
③ 廃棄物受入時の確認不足
など
上記①から③に示すうち、①及び②については、本事業の範囲外を予定していることから、
民間事業者に負担させることは過度な責任にあたり、仮にリスクが顕在化した場合においても、
民間事業者が責任をとれないことから、広域連合がリスク負担することが適当である。
③については、廃棄物の受入は、本事業の範囲内であるため、原則として民間事業者負担の
リスクであるが、搬入される全ての廃棄物収集袋を破袋して詳細に確認するのではなく、目視
レベルでの確認となることから、民間事業者の善良なる管理者の注意義務を行ったうえで生じ
た事故等に係るリスクについては広域連合が負うことを予定している。
また、上記目視レベルによる確認によって、事業者が受入不適物を確認した場合には、民間
14
6 今後の進め方
事業者に受入拒否できる権限を与えること、またそれに伴い発生した紛争等については、広域
連合がリスクを負うことなども検討し、検討結果にあわせて契約書等に規定していく。
【契約書に規定しておく事項】
・想定外の変動が生じた場合の協議機会の設定
・広域連合が負担するリスク範囲及び事業者が負担すべきリスク範囲
(目視確認、月に1度の展開検査、善良なる管理者の注意義務など)
・処理不適物の混入が確認された場合の事業者の受入拒否の権限付与
・受入拒否による紛争等における広域連合のリスク負担
○物価変動リスクについて
通常の範囲内のインフレ・デフレについては民間事業者のリスクとし、それを超える変動に
ついては、広域連合が負担するというように、双方がリスクを分担することで、民間事業者に
もリスク管理の努力を促す方法を導入することを予定している。
具体的には、提案時点の物価と運営業務実施時点での物価の変動率について、当該費用の対
象となる物価変動指数(インデックス)を用いて通常の範囲内の物価上昇(下降)率を予め設
定し、その数値を超えた場合において、サービス対価にその割合を乗じて支払うことを予定し
ている。
③処理副産物の資源化や余熱利用業務に関するインセンティブが働く仕組みの導入が求めら
れている。
<対応方策>
処理副産物の資源化や余熱利用業務(発電)については、売却費用の全てを広域連合とする
場合には民間事業者の創意工夫の余地がなくなり、高質で多量な処理副産物生成に向けた意欲
(インセンティブ)が働かなくなることから、一定程度を超える売却収入を民間事業者に付与
することを検討していく。
④できるだけ仕様に縛られない条件を検討し、民間事業者の創意工夫余地を拡大することが求
められている。
<対応方策>
これまでの事業手法では、発注者が施設の構造、資材、施工方法について詳細な仕様を決め
設計書等によって民間事業者に発注する仕様方式が一般的となっていたが、PFI や DBO 事業の
場合には、民間事業者の創意工夫の発揮余地を拡大するため、発注者が求めるサービス水準を
明確にし、民間事業者が満たすべき水準の詳細を規定した性能発注方式で実施することが原則
となっている。
しかしながら一方では、サービス水準を明確にすることが困難な項目や、客観的な評価基準
が設定しづらい項目もあり、公共施設としてまた住民の衛生施設として信頼性の高い施設とす
るためには、施設を構成する重要設備・システム等については一定基準以上の仕様を求めるこ
とが必要であると考える。
よって、民間事業者の創意工夫を最大化するためには、実施方針公表段階における要求水準
書(案)の公表を行い、民間事業者からの意見募集、対話型の質問回答等の機会を設け、でき
るだけ民間事業者の意見を聞き、仕様発注とせざるを得ない項目を適切に見極めたうえで要求
水準書を作成していく。
15
6 今後の進め方
⑤行政職員が施設内に常駐しないと現状把握や技術継承が困難となる。
<対応方策>
DBO 方式では、一体的事業として管理・運営も民間事業者に委託するため、とかく事業者ま
かせになりがちになることが懸念される。
しかし、行政が提供する公共サービスの一環であるということに変わりはなく、ごみ処理事
業の最終的な処理責任は広域連合が負うため、施設に広域連合職員の常駐を予定する。
職員が常駐することで、住民からの問い合わせ等の窓口の役割を果たし、突発的な事項にも
迅速に対応できるようになり、常に現場と接することで施設の構造面についても理解を深める
ことができる。また、より現状把握するために事業者にトラブル等の発生を随時報告すること
や、定期的な報告機会等の義務付けを予定している。
技術面に関しては、行政職員が要求水準、事業計画及び提案書に即し適切に履行されている
かモニタリング(監視)する必要があるため、一定の技術力確保は不可欠である。
この点については、他自治体、専門家並びにコンサルタントを活用しながら、これまで以上
に廃棄物処理施設の運営に関する知識や技能を培い、モニタリングを通じた技術研鑚を行って
いくこととする。
16
資
料
編
資料1 用語集
資料1
用語集
広域連合
:上伊那広域連合をいう。上伊那広域連合は伊那市、駒ヶ根市、辰野町、箕
輪町、飯島町、南箕輪村、中川村、宮田村の 2 市 3 町 3 村で組織される。
本事業
:新ごみ中間処理施設整備・運営事業をいう。
本施設
:熱回収施設工場棟、管理・計量棟、ストックヤード棟等から構成される新
ごみ中間処理施設を総称していう。
DBO方式
:Design(設計)、Build(建設)、Operate(運営)を民間事業者に一括して
委ねる民活事業手法をいう。
PFI方式
:PFI(Private Finance Initiative)とは、公共施設等の建設、維持管理、運
営等を民間の資金、経営能力及び技術的能力を活用して行う手法をいう。
SPC
:選定された入札参加者の構成企業が本事業の運営を実施するために株主と
して出資し設立する特別目的会社(Special-Purpose-Company)をいう。
事業者
:広域連合と本事業の基本契約を締結する選定事業者をいう。選定された入
札参加者の構成企業及びSPCで構成される。
VFM
:VFM(Value For Money)は、支払い(Money)に対して最も価値の高い
サービス(Value)を供給するという考え方のことであり、従来方式と比べ
た場合の総事業費の削減割合をいう。
PSC
:PSC(Public Sector Comparator)は、公共が自ら実施する場合の事業期
間全体を通じた公的財政負担の見込額の現在価値をいう。
要求水準書
:事業者に対して求める条件や内容を明記したものをいう。
モニタリング
:事業者が実施する設計、建設及び運営の実施状況についての広域連合の監
視をいう。
LCC
:LCC(Life Cycle Cost)は、プロジェクトにおいて、計画から、施設の
設計、建設、維持管理、運営、修繕、事業終了までの事業全体にわたり必
要なコストをいう。
EIRR
:EIRR(Equity Internal Rate of Return)は、財務指標の一つで、自己資
本に対する、事業期間を通じた最終的な収益率であり、事業者の出資金の
現在価値と、配当の現在価値が等しくなる割引率に該当する。投資家にと
っての採算性を計るための指標。
サービス購入型:PFI事業の事業類型の一つ。民間事業者は、自ら調達した資金により施
設を設計・建設し、維持管理及び運営を行う。地方公共団体は、そのサー
ビスの提供に対して対価を支払う事業類型。
18
資料2 費用について
資料2
1
費用について
事業費等の整理
現時点で想定されるDBO方式の場合と従来方式の場合の費用の比較は下記のとおりである。
建設費については今後の仕様や落札価格によって、運営費についてはごみ量やごみ質、用役費
などの変動に伴い変わってくることとなる。
建設費
(千円)
費
用
DBO方式
従来方式
費用見込
費用見込
発注委託費
差
額
備
⑰(P9 の金額を税込表記した
32,700
21,800
-10,900
8,317,760
9,241,980
924,220
①
処分場前処理設備費
212,575
212,575
0
①
施工監理費
207,944
231,050
23,106
⑱
焼却施設建設費
合計(建設費関連削減額)
考
もの、以下同じ)
936,426
交付金・起債金利
項
(千円)
目
交付金(収入)
起債金利
DBO方式
従来方式
費用見込
費用見込
-2,481,465
-2,757,191
-275,726
⑬
事業費の削減による減少
1,028,309
1,139,119
110,810
⑯
事業費の削減による減少
差
交付金等
額
備
考
-164,916
運営費(15年間)
費
(千円)
用
DBO方式
従来方式
費用見込
費用見込
差
額
備
考
焼却施設運営費
掘起し・運搬費用
9,501,172
9,656,467
155,295
②~⑩、⑭
49,500
0
-49,500
⑲
飛灰運搬・埋立費用
モニタリング費用委託費
合計(運営費削減額)
105,795
全体削減額
(千円)
項
目
差
全体削減額
額
備
考
877,305
(消費税
19
H26 8%
H27 以降 10%で試算)
資料2 費用について
2
今後検討が必要となる費用
今回シミュレーションで算定した項目と今後検討が必要となる費用の項目については下記の
とおりである。
建設費
(千円)
費
用
費用見込
諸調査費
備
考
環境影響評価~今後の調査
焼却施設
発注委託費
32,700 ⑰
施設建設費
8,317,760 ①
処分場
整地費
今後検討
付帯工事費
今後検討
用地費
今後検討
導入路設計・建設費
今後検討
施設整備費
今後検討
前処理設備費
212,575 ①
(余熱利用施設整備費)
今後検討
施工監理費
207,944 ⑱
工事費の増減により変動
運営費(15年間)
費
用
(千円)
費用見込
備
考
焼却施設運営費
掘起し・運搬費用
9,501,172 ②~⑩、⑭
飛灰運搬・埋立費用
処分場維持管理費
今後精査
諸運営費用直営費
稼働までに決定
モニタリング費用委託費
49,500 ⑲
モニタリング費用直営費
稼働までに決定
(余熱利用施設運営費)
今後検討
(消費税
※網掛けの部分が今回検討した項目
20
H26 8%
H27 以降 10%で試算)
資料3 類似施設の先行事例
資料3
№
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
類似施設の先行事例
事業者
選定方式
運営期間
DBO
制限付一般競
争入札
18 年
不明
不明
BOO
総合評価一般
競争入札
15 年
-
-
岡山県倉敷市
BOO
制限付一般競
争入札
20 年
6.1%
11.1%
愛知県田原市(旧・
田原町、赤羽根
町、渥美町)
BOT
公募型プロポ
ーザル
15 年
6.0%~
11.0%
約 31%
BOO(サーマ
ルリサイクル
施設)
BTO(事業基
盤・公園緑
地・研究施)
公募型プロポ
ーザル
17 年 6 ヶ月
33.0%
-
名古屋市
BTO
総合評価一般
競争入札
20 年
18.0%
27.8%
浜松市
DBO
公募型プロポ
ーザル
15 年
9.9%
22.6%
神奈川県藤沢市
DBO
公募型プロポ
ーザル
20 年
約 16%
-
島根県益田地区
広域市町村圏事
務組合
BOT
総合評価一般
競争入札
15 年
6%
35.0%
福島県福島市
DBO
総合評価一般
競争入札
20 年
18%
-
堺市
BTO
公募型プロポ
ーザル
20 年
15%
18.2%
岩手県
BOO
20 年
-
-
兵庫県姫路市
DBO
20 年
11%
-
新潟市
DBO
20 年
15%
39.7%
岩手沿岸南部広
域環境組合
DBO
15 年
約 10%
11.7%
愛媛県松山市
DBO
20 年
約 11.2%
-
山口県防府市
DBO
20 年
約 7%
34.8%
別杵速見地域広
域市町村圏事務
組合
DBO
15 年
約 9%
31.5%
兵庫県西宮市
DBO
15 年
-
-
新潟県三条市
DBO
19 年 9 ヶ月
6.91%
約 23%
事業主体
西胆振地域廃棄物広域
処理事業
秋田県大館周辺広域市
町村圏組合・ごみ処理
事業
倉敷市・資源循環型廃
棄物処理施設整備運営
事業
西いぶり廃棄物処
理広域連合
秋田県大舘市
(旧・大館周辺広域
市町村圏組合)
(仮称)新リサイクルセン
ター整備等事業
彩の国資源循環工場整
備事業(PFI 施設)
名古屋市鳴海工場整
備・運営事業
(仮称)浜松市新清掃工
場・新水泳場整備運営
事業
藤沢市北部環境事業所
1号炉更新運営事業
(仮称)
益田地区広域クリーン
センター整備及び運営
事業
あらかわクリーンセンタ
ー焼却炉建替事業
堺市・資源循環型廃棄
物処理施設整備運営事
業
第2クリーンセンター(仮
称)整備・運営事業
エ コ パ ーク あぼ し 整 備
運営事業
新潟市新焼却場施設整
備・運営事業(仮称)
岩手沿岸南部クリーン
センター整備運営事業
松山市新西クリーンセ
ンター整備・運営事業
防府市クリーンセンター
整備・運営事業
藤ヶ谷清掃センター更
新事業
東部総合処理センター
焼却施設整備事業
三条市新ごみ処理施設
整備・運営事業
VFM
特定事業 事業者選
選定時
定後
事業手法
事業名
埼玉県
21
公募型プロポ
ーザル
総合評価一般
競争入札
総合評価一般
競争入札
総合評価一般
競争入札
総合評価一般
競争入札
公募型プロポ
ーザル
総合評価一般
競争入札
総合評価一般
競争入札
総合評価一般
競争入札
資料3 類似施設の先行事例
№
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
32
33
34
35
36
37
38
39
40
41
42
43
事業名
(仮称)ひたちなか ・東
海クリーンセンター施設
整備及び運営事業
(仮称)次期環境事業セ
ンター整備・運営事業
ふじみ衛生組合新ごみ
処理施設整備・運営事
業
さいたま市新クリーンセ
ンター整備事業
(仮称)成田市・富里市
新清掃工場整備及び運
営事業
(仮称)御殿場市・小山町
広域行政組合ごみ焼却
施設整備及び運営事業
阿南市ごみ処理施設整
備・運営事業
青森市清掃施設(新ご
み処理施設)建設事業
及び運営事業
西秋川衛生組合ごみ処
理施設整備・運営事業
(仮称)新南部工場施設
整備・運営事業
都城市クリーンセンター
建設・維持管理事業
萩・長門清掃一部事務
組合新清掃工場整備・
運営事業
甲府・峡東地域ごみ処
理施設整備事業及び運
営事業
熊本市新西部環境工場
整備及び運営事業
村上市新ごみ処理場整
備・運営事業
四日市市新総合ごみ処
理施設整備・運営事業
(仮称)岩手中部広域ク
リーンセンター整備及び
運営事業
津山圏域クリーンセンタ
ー施設建設・運営事業
西海市エネルギー回収
推進施設整備・運営事
業
第1期エネルギー回収
推進施設整備・運営事
業
(仮称)ふじみ野市・三
芳町環境センター整備・
運営事業
船橋市北部清掃工場整
備・運営事業
新武蔵野クリーンセンタ
ー(仮称)整備運営事業
VFM
特定事業 事業者選
選定時
定後
事業主体
事業手法
事業者
選定方式
運営期間
茨城県ひたちなか
市
DBO
総合評価一般
競争入札
20 年
約 9%
約 22%
神奈川県平塚市
DBO
公募型プロポ
ーザル
20 年
約 13.6%
-
ふじみ衛生組合
DBO
総合評価一般
競争入札
20 年
約 7%
-
さいたま市
DBO
総合評価一般
競争入札
15 年
14.5%
16.8%
千葉県成田市
DBO
制限付一般競
争入札
20 年
-
-
御殿場市・小川町
広域行政組合
BTO
総合評価一般
競争入札
20 年
11.3%
35.72%
徳島県阿南市
DBO
総合評価一般
競争入札
20 年
7.06%
23.2%
青森県青森市
DBO
総合評価一般
競争入札
20 年
約 6.5%
約 59.2%
西秋川衛生組合
DBO
20 年
8.22%
31.0%
福岡市圏南部環
境事業組合
DBO
25 年
8.9%
46.4%
宮崎県都城市
DBM
20 年 3 ヶ月
4.73%
21.63%
萩・長門清掃一部
事務組合
DBO
総合評価一般
競争入札
20 年
約 12%
約 35%
甲府・峡東地域ご
み処理施設事務
組合
DBO
総合評価一般
競争入札
20 年
約 5.8%
-
熊本市
DBO
20 年 1 ヶ月
9.4%
28.3%
新潟県村上市
DBO
20 年
6.61%
25.10%
三重県四日市市
DBO
20 年
不明
不明
岩手中部広域行
政組合
DBO
総合評価一般
競争入札
20 年 6 ヶ月
8.70%
49.7%
津山圏域資源循
環施設組合
DBO
総合評価一般
競争入札
20 年
不明
約 24%
長崎県西海市
DBO
総合評価一般
競争入札
15 年
約 15%
18%程度
栃木県小山広域
保健衛生組合
DBO
総合評価一般
競争入札
20 年 6 ヶ月
不明
公募中
埼玉県ふじみ野市
DBO
総合評価一般
競争入札
15 年
約 6.7%
公募中
千葉県船橋市
DBO
15 年
5.9%
不明
東京都武蔵野市
DBO
20 年
8.91%
公募中
22
総合評価一般
競争入札
総合評価一般
競争入札
公募型プロポ
ーザル
総合評価一般
競争入札
総合評価一般
競争入札
総合評価一般
競争入札
総合評価一般
競争入札
総合評価一般
競争入札
資料3 類似施設の先行事例
№
44
45
46
47
48
49
50
51
52
53
事業名
久留米市北部一般廃棄
物処理施設整備・運営
事業
長与・時津環境施設組
合熱回収施設整備・運
営事業
クリーンプラザよこて整
備及び運営事業
近江八幡市新一般廃棄
物処理施設整備及び運
営事業
事業者
選定方式
運営期間
福岡県久留米市
DBO
総合評価一般
競争入札
20 年
5.9%
公募中
長与・時津環境施
設組合(長崎県)
DBO
総合評価一般
競争入札
20 年
不明
公募中
秋田県横手市
DBO
総合評価一般
競争入札
20 年
3.65%
公募中
滋賀県近江八幡
市
DBO
総合評価一般
競争入札
20 年 1 ヶ月
8.85%
公募中
総合評価一般
競争入札
15 年 4 ヶ月
(熱回収施設)
18 年 6 ヶ月
(延命化業務)
公募中
公募中
20 年
6.4%
公募中
20 年
公募中
公募中
15 年
7.4%
公募中
15 年 3 ヶ月
不明
公募中
20 年
公募中
公募中
(仮称)仙南クリーンセ
ンター整備運営事業
仙南地域広域行
政事務組合
DBO
北但ごみ処理施設整
備・運営事業
八代市環境センター施
設整備・運営事業
長崎市新西工場整備運
営事業
小諸市新ごみ焼却施設
建設及び運営事業
湖周地区ごみ処理施設
整備事業
北但行政事務組
合
DBO
熊本県八代市
DBO
長崎県長崎市
DBO
長野県小諸市
DBO
湖周行政事務組
合
DBO
※「不明」:資料なし
VFM
特定事業 事業者選
選定時
定後
事業手法
事業主体
「-」:資料はあるが記載なし
総合評価一般
競争入札
総合評価一般
競争入札
総合評価一般
競争入札
総合評価一般
競争入札
総合評価一般
競争入札
「公募中」:公募途中のため資料未公表
23