タッピンねじの選定・下穴設計・管理と締め付けトルク

HPタッピンの下穴設計と締め付けトルク
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タッピンねじの選定・下穴設計・管理と締め付けトルク
● タッピンねじは、下穴と締め付けトルクが管理されなければ、本来の力を発揮できない。
上図は1/1000 秒でトルクサンプリングしています。
鋼板にデルタイト3種(クラウン精密製)を打ち込んだ例です。
TD=ドライブ(ねじ込み)トルク ,TF=(雌ねじ)破壊トルク、TS=締め付け設定トルク
【タッピンねじの下穴設計と管理、及びタッピンの選択】
下穴設定とタッピン選択の原則
1.下穴の直径については、F/D比=TF/TDが3倍以上になるように設計・決定する。
(プラスチックはF/D比が小さくなるので、下穴径を小さくするが、下穴に割れが生じない範囲とする。
)
(下穴径の大きさは、TDがタッピン自体がねじ切れるトルクの1/3以下程度になるよう定める)
2.下穴径は、下穴部材(タッピンねじ嵌合部分)の厚さにより変更する。
3.下穴径はドライブ(ねじ込み)トルク、
(雌ねじ)破壊トルクのバラ付きが無いように管理する。
4.下穴部材の厚みは雌ねじとして十分な強度を持つように設計する。
(突き出し穴、肉の厚盛り)
(タッピンの先端は少し細いので、先端部分は「ねじの食いつき長さ」から除外して考える。
)
5.下穴部材が脆弱な場合(プラスチックなど)は、食いつき長さを大きくし、目の粗いタッピン(1~2種)
を使用する。
6.タッピンは同じ呼び太さでも、1~3種で下穴径が異なります。
(外径公差とピッチが異なるため)
☆ドライブ(ねじ込み)トルクを低減して作業性の向上をはかるため、下穴径を大きくすると、ねじバカ
事故を発生する例が多い。
☆下穴部材の強度(厚み)が不足して(特にプラスチック)ねじバカになることが多いので、要注意。
http://www.fukasawa.co.jp
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【タッピンねじの締め付けトルク】
あ)トルク設定の原則
1.タッピンねじの締め付けトルクは雌ねじの強度に合わせて設定する。
ねじ締結は、雄ねじ・雌ねじ・被締結物のうち弱い物に合わせるが、出来るだけ強く締めるのがよい。
そうすると、締め付けが強固になり締結が頑丈になる。
(通常は、雌ねじ部材が一番弱い)
ただし、気密を確保するためゴムパッキンなどを締め付ける時は強く締め付けるとパッキンの劣化が進む
ことがあるので、必要な締め付け力を考慮してトルクをコントロールする。
2.タッピンねじの締め付けトルクは、
ねじ込み(ドライブ)トルク=TDと雌ねじ破壊トルク=TFの間に定めます。
通常は、両者の平均の中間点とすることが多い。
(詳細は後述)
3.プラスチックのトルク設定については、トルクアナライザーのように、実際の締め付け回転数で
締め付けを実行し、高速で(1/1000 秒単位)でデータをサンプリングして決定します。
(実際の条件で、データを収集しないと、高速で締め付けた時の摩擦熱でプラスチックは熱で変化するので、
ゆっくり回転の試験では現実と異なるデータになる)
【よくある間違い】
下穴径・喰付き長さ・板厚を変えても、同じ締め付けトルク設定をしている現場があるが、
ねじバカが発生する危険があります。
例えば,M4サイズならトルクは**kgf・cm と決めても相手部材が1mm と 0.5mm では
同じに設定してはダメです。雌ねじ部材の強度が違います。
【受託試験します】
タッピンの下穴径決定には、下穴部材の材質・厚みなどの状況が沢山あり一律に決められ
ません。トルクアナライザーでは 1/1000 秒単位でサンプリングして評価します。
当社の機器は、センサーの精度が±0.1%(FS)と高いので、測定範囲が広範ですが、
当社機器を購入し、購入機器の範囲外の測定が必要な場合は、格安にて受託測定致します。
正転・逆転、締め付け戻しトルクの測定も受託致します。
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い)タッピンねじ締め付けトルクの設定の詳細
1.TD(ドライブトルク)とTF(破壊トルク)の中間をTS(設定トルク)として
求める方法が一般的。
2.上記で締付力が不足する場合は、
(TFの平均値-TFの標準偏差X4)の90%を限度として設定する。
ただし、タッピンのねじりトルクの80%を越えないこと。
(ねじりトルク=ねじ切れるトルクの下限)
JISでは呼び径4の1・2種で 36kgf・cm≒3.6N・m)
この場合、温度変化による劣化(クリープ・割れ)についても設計者が条件を指定して検査するのがよい。
3.補修等で同じ下穴を再使用するときは、初回より低いトルクで締める。(下穴が弱くなっているため)
う)標準偏差(σ)を用いて評価する意味など
標準偏差(シグマ=σ)は、サンプルのデータが、平均値 からどの位離れているかを計算したものの
平均値である。 σを求める一般の計算式はサンプル数(n)が少ないと理論値より大きな数値になる。
現実に近いσを求めるには、 10ヶ以上のサンプルが必要といえます。
● 統計的に「データが正規分布すると、平均値から ±3σ以内に99.73%が入り、
±4σ以内にすべてが入る」とされている。従って、次の式も成立する。( =平均値)
TFmin=TF -4TFσ ----①
破壊トルクの最小値
TDmax=TD +4TDσ ----②
ねじ込みトルクの最大値
● 設定トルクを上記の①②の中間に定めても良い。
(サンプル数が少ないときはσに掛ける数を4→3として①②を計算しても良い)
● ①-②が大きいことは、作業性がよい、
「使いやすいタッピンと下穴径」の関係にあるといえる。
● TFσ%=(TFσ÷TF )X100、とTDσ%=(TDσ÷TD )X100 は相対値として
TFとTDのばらつき割合を評価するのに用いられる。
(小さい方がよい)
――――>トルクアナライザーで、計算・表示します。
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【タッピンねじの締め付け・緩めトルク】
● トルクアナライザーでは、タッピンなどを指定したトルクで締め付け、所定の時間後に
モーターを逆回転させ、緩め(戻し)トルク=TLを測定することが出来る。
電動(電流制御)ドライバータイプ(トルクランチャー)では締め付け指定トルクを一定時間
維持し、その後にTLを測定することも出来る。
(上図)
● 一般的に、ねじの緩めトルクは、締め付けた時のトルクの70~80%と言われている。
緩めトルク率=緩めトルク/締め付けトルク で計算される。
製造メーカーが、ねじ緩み防止を目的として、ねじ山形状を工夫し緩めトルクを増大させたねじの
評価をします。
(緩め仕事量の比較も可能)
● 一度、締め付けしたあと、冷熱サイクルを経過後に緩めトルクを測定することも出来る。
温度変化・経時変化による、締結力の変化などの評価も可能である。
*注意*
市販ドライバーを使用するタイプでは、自動逆転の評価することは出来ません。
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