Micrisoft Officeを用いたメール配信システムの構築

Micrisoft Officeを用いたメール配信システムの構築-PHS への電子メール配信-
Micrisoft Officeを用いたメール配信システムの構築
-PHS への電子メール配信-
株式会社セントラルフーズ
会社概要
名称
:株式会社セントラルフーズ
所在地
:東京都品川区西五反田2-15-7ジブラルタ生命五反田ビル4階
設立
:平成6年10月
取締役社長:代表取締役社長 江口 浩一郎
資本金
:1億円
従業員数 :社員/450名 パート/927名
事業内容 :精肉・加工肉・冷凍食品製造販売
ローゼンハイム(ハム、惣菜)、あづま・ベストワン(精肉)
高座豚(豚肉)、手ノ子牛(牛肉)
執筆者
株式会社セントラルフーズ
経営企画部システム管理
担当部長
増
田
寿
夫
内容梗概
当社は東急グループの一社として、食肉製品を肥育から加工、販売までの一貫体制で食卓にお届けしてい
る会社である。各セクションの密接な連携プレイにより、新鮮で上質なおいしさ、適正な価格、迅速なデリ
バリーを実現している。東急百貨店、東急ストア各社をはじめ大手百貨店やチェーンストア、駅ビルなど、
お買い物の便のよいところに直営店を出店し精肉売場、洋惣菜店「ローゼンハイム」などバラエティ豊かな
店舗展開で毎日のお献立づくりをお手伝いし、笑顔が広がる食卓づくりを応援している。
現在 弊社を取り巻く環境は業務システムの拡大により各担当者、各取引先等への情報の提供方法が表計
算ソフトウェアを利用した形式になってきている。その中でも今回は増大する情報の電子メール配信につい
てシステムを開発した。また新しい取り組みとしてPHSへの配信も開発している
本論文では、これらのシステムの経緯、開発、運用について工夫した点等について報告する。
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1 はじめに
企業が扱う情報の出力媒体のほとんどが紙であった時代から現在は業務に合わせた様々な媒体への出力
に変化してきている。その中で前回(第44回論文)は帳票システムへの出力という形について報告した
がその出力対象の基本は紙であった。今回は電子メール(以下メールという)という形式での情報出力に
ついて開発をしている。前回同様にメインフレームまたはサーバー上の情報をマイクロソフト社の
Microsoft Office(以下 Office という)を使用して通常業務として運用している。今回は運用環境等の関係
で Office の中の Microsoft Excel(以下 Excel という)と Microsoft Outlook(以下 Outlook という)で
開発した。システムの開発、運用に際し工夫したこと、留意した点と今後の取り組みを報告する。
2 セントラルフーズのシステム構成について
2.1 セントラルフーズのシステム構成について
弊社のシステムの構成は基本的に図1セントラフーズシステム構成のようにメインフレームを中心とし
たネットワークを構築している。他の事業所でも業務内容は異なるが、メインフレームを含む機器構成は
若干異なるがほぼ同様である。メールサーバーはソフトバンクIDC株式会社にレンタルサーバーを置き
ハウジングしている。ネットワークはNTT東日本と株式会社USENを使用している。
メインフレーム サーバー
日立AP7000 日立HA8000
メールサーバー ソフトバンクIDC
横浜工場
NTT東日本
狭山工場
USEN
NTT東日本
NTT東日本
川崎流通
センター
パソコン
日立FLORA
複合機 富士ゼロックス
ApeosC3300
USEN
札幌営業所
五反田本社
図1
セントラルフーズシステム構成
3 開発の経緯について
3.1 障害記録支援情報送信について
弊社のメインフレームでは障害記録支援システム(以下HEEPという)が稼動中である。2004年
ある事業所において記録エリアがオーバーフローしていた事に気付かず運用していたため情報の一部が確
認できなかった。HEEPは原則で45日を経過すると上書きされる。
「定期的に印字出力し保管が望まし
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い。その帳票は保守担当者に渡してほしい。
」という要望が発生した。各事業所に月ごとに運用するのは確
実性が低く管理も難しい。帳票出力を取りやめ、図2障害記録支援情報送信のながれのとおりメインフレー
ムの中へデータとして出力し、PCへファイル転送でテキストファイルに変換し、保守担当者へメールに
て送信することにした。これならば五反田本社にて全事業所の処理が可能であり、各地の保守担当者と直
接当月中に処理ができた。しかし月に1回とはいえ全5ヶ所(当時は6ヶ所)の処理は帳票処理と比べて
も手間のかかるものであった。
+
メインフレーム
日立AP7000
HEEPデータ
テキストファイル
パソコン
日立FLORA
メインフレーム プログラム
メール作成
・送信先
・件名
・本文
・添付ファイル名
パソコンにて手入力
図2
障害記録支援情報のながれ
3.2 牛トレーサビリティ情報送信について
2004年より牛トレーサビリテイ法が施行され、弊社では同時期に同法対応システム(前々回第 43 回論
文参照)稼動し対応している。納品先様へは納品時に文書、伝票にて情報を提供している。しかし納品先
様によっては多くの店舗展開しているところもあり大量の紙の管理は多大な労力が必要となっている。毎
日大量の紙書類を受け付け、きちんと管理保管しなければならない。これから検索しなければならないの
であれば大変な作業になる。幸いトラブルもなく現在にいたっている。弊社には独自に上記システムが稼
動しているため検索にはほとんど手間も時間もかからないため納品先様は検索をするときはよく弊社に問
い合わせをしていた。これはあまりよい状況ではないため紙情報とは別に Excel による情報の提供を要望
された。図3牛トレーサビリティ情報送信のながれのように翌月5日前後にメインフレームより CSV 形式
にて出力し Excel を作成しメールに添付ファイルとして送信していた。
+
メインフレーム 牛トレーサビリ パソコン
日立AP7000 ティデータ
日立FLORA
CSV形式ファイル
Excelへ
読み込み編集
メール作成
・送信先
・件名
・本文
・添付ファイル名
メインフレーム プログラム
パソコンにて手入力
図3
牛トレーサビリティ情報送信のながれ
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3.3 送信ミスについて
上記2件の作業は月に1回とはいえ内容と送信先を確認しながらの作業は作業者の注意力に頼っていた。
送信ミスのないように手順、下書き等を使用していたがエラーになることはあっても発生時処理で対応で
きた。しかし2005年に重大なトラブルが発生した。保守担当者に違う添付ファイルを送ってしまった。
保守担当者から連絡があり大事には至らなかったが、このままではより大きいトラブルになりかねないこ
とがはっきりとしたためシステムを開発することになった。この他の業務・部門でも定期的にメールを送っ
ていることもわかった。各部門である程度の簡単な操作と自由度の高いシステムの構築が求められた。
4 システム開発について
4.1 実行環境設定について
上記のような業務(定期的にデータを作成し特定の相手先にメールに添付して送信する)の運用形態と
してつぎの3点を考慮し Excel にて実行することが運用管理上望ましいと判断した。一つ目は作業者にとっ
て普段使っているソフトウェアなので違和感がすくないこと、2つ目は複数の相手先や複数の添付ファイ
ルに対応できて自由度が高いこと、3つ目は既存のソフトウェア環境を用いて新たにソフトウェアを導入
購入しないことである。
Excel を用いたメール送信にはいくつかの方法がある。一つ目は同じ Office の Outlook を使う方法、2
つ目は CDO と呼ばれる外部コンポーネントを使用する方法、他にもフリーソフト(BASP21 等)を使う方法な
どがある。本システムは Outlook を使用することとした。Office2000 以降であれば可能であった点と送信
ログの管理が Outlook 上でできるため新たにログ管理システムを組み込むことがいらない点と Excel と同
様に作業者の違和感が少ない点である。
但し、ひとつだけ問題がある。それはどの Excel からでも実行できるわけではなく実行環境を設定しな
ければならないことである。ただこれは使用する機器すべてに行わなければならないが、機器の制限をす
るうえでは有効である。設定方法を図4実行環境設定に表す。
Excel2000で場合の設定を提示する。
①新しいブックを作る。
②「表示」→「ツールバー」→「コント
ロールツールボックス」を表示す
③「コマンドボタン」をクリック後、
ワークシート上にドラッグして貼り付
④「コマンドボタン」をダブルクリック
しVisual Basic Editorを開く。
⑤メニューから「ツール」→「参照設
定」でダイアログを表示する。
⑥[Microsoft Outlook 9.0 Object
Library]をチェックして「OK」を押す。
⑦Visual Basic Editorを閉じ、Excel
を終了する。
ブックの保存の必要はない。
図4
実行環境設定
4.2 障害記録情報送信について
3つの送信パターン作成しこれをもとに他の業務に展開をしていった。はじめに基本となるHEEPの
送信マクロを作成した。この処理は図5のように Excel のシート上に送信先、タイトル、本文、添付ファ
イル名をすべて表示している。
送信の際にはデータ(日付等)を変更して [確認送信] を押すとセキュリティ
チェックが確認すると Outlook に処理を移行し送信を開始する。このマクロのポイントは汎用性の高いと
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ころである。相手先等必要なデータをシート上で指定しているので相手先ごとにシートやファイルで作業
を分けることができ、行数等の変更がなければ内容の変更は自由である。これは添付ファイルがすでに存
在している状況であれば効果が高い。図5障害記録情報送信 Excel 画面を表す。
図5
障害記録情報送信 Excel 画面
4.3 改良システムについて
このマクロは本文が同様でデータと相手先だけが変わっている業務を対象としている。基本のシステム
を改良してHEEP送信を作成した。図6改良型障害記録情報送信 Excel 画面 を表す。
変更のある部分のみ指定して複数の送信先に一括処理するマクロである。本文内容は別シートで管理し
ている。ただ現在は改良前のシステムで実運用している。
図6
改良型障害記録情報送信 Excel 画面
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4.4 牛トレーサビリティ情報送信について
このマクロは添付ファイルの作成を含んでいるためメインフレームと連携している。図は前章とほとん
ど変わらないため省略する。この処理は 指定するところはほとんどない。確認後は前章と同様にセキュリ
ティ後送信となる。送信先等業務と直結しているため汎用性は乏しいが確実性は高いシステムである。デー
タの変換や修飾が必要な場合は同様のシステムを採用している。この3つの事例でほとんどのメール送信
の業務に対応している。パターン化により開発効率を向上した。
5 PHSへの送信
5.1 PHSへの送信システムの開発
弊社では事業所に工場部分があるため早くから構内内線用PHSを導入している。店舗管理担当者も工
場での打合せ等で訪れることが多いためPHSを使用している。PHS業者が1社になることも起因して
本年端末機器を変更した。この機器の導入にあたりメールの活用が容易になった。いままで店舗管理担当
者に対して情報を送る際は店舗にFAXにて手間と紙と費用をかけて提供してきた。新しい端末機は
ビューアー機能を有し HTML や PDF のほか Excel も見ることができる。通常のメールでは表示しきれなかっ
た表形式データの閲覧が可能となった。これにより図8のような業務処理により売上集計情報を送信する
システムを開発した。図7売上集計情報登録、送信のながれを表す。
+
メインフレーム 売上情報
日立AP7000 データ
ブラウザ
閲覧用データ
パソコン
日立FLORA
テキストファイル
管理ファイル
・送付先
・添付ファイル名等
メール作成
サーバー
日立HA8000
ExcelマクロからOutlookにて
PHSへ送信
メインフレーム プログラム
図7
5.2
Excelへ
読み込み編集
売上集計情報登録、送信のながれ
課題点について
PHSという制限の多い機器に対して下記のようないくつかの課題があるため本稼動はまだしてない。
(1)データ容量
データサイズを考慮し分割して送らなければならない。
(2)セキュリティ
パスワード等を付加して送りたい。
現在の機器はパスワードに対応していないため処理できない。
(3)送信管理
確実に送信できているかどうかの確認する。現在検討中している。
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Micrisoft Officeを用いたメール配信システムの構築-PHS への電子メール配信-
送信先、内容はメインフレーム管理とした。
このシステムによりほとんど費用をかけずに店舗担当者に情報を伝達できるので早急に本稼動させたい。
6 まとめ
それぞれの章で開発の経緯から現在の状況まで提示してきた。メールの送信形態のパターン化とPHS
へのメール送信は業務改善に大きな寄与ができる。今回は特別に複雑なマクロをあまり作っていない。図
8のように短い行数で開発が可能であるため試してみて欲しい。複雑なものを作り始めたらきりがないが
簡単なものでも十分業務に活用できるはずである。
メールは情報の伝達速度を格段に向上させた。また同時に管理の重要性も明確となった。今後は情報発
信と漏洩は紙一重であることを絶えずに認識して効果的で管理運用が容易なシステムへと改良していきた
い。図8障害記録支援送信マクロを表す。
図8
障害記録支援送信マクロ
7 おわりに
今回は情報の提供の仕方を紙からメールという新しいツールへの変更を報告した。十分な管理体制と運
用でもっと業務に活用することができると思われる。これからも様々な情報機器を使いこなし業務の改善
に努めていきたい。
食品に関わっていると鮮度というものをいつも意識している。情報も鮮度が重要である。必要な情報を
必要なときに必要なだけ提供することがシステムの基本であると考える。本システムはこのことを実現で
きるものである。しかしこのシステムもまだまだ開発、改良が必要でありより効果的なシステムに進化さ
せていきたい。
最後にここまでのシステムを構築するにあたりいろいろな知恵、アドバイスを頂いた(株)日立エイチ・
ビー・エム 担当SE
浅海氏、担当営業 岡田氏、三好氏、日立電子サービス(株)
保守担当の方々、
富士ゼロックス(株) 皆本氏 と強力に支援をいただいた(株)日立エイチ・ビー・エム、日立電子サー
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ビス(株)
、富士ゼロックス(株)と表計算ソフトウェアの使用させていただいているマイクロソフト(株)、
機器を使用させていただいている(株)日立製作所とグループの各社と社内外の関係者の方々に感謝いた
します。
参考資料
(株)日立エイチ・ビー・エム「日立AP7000/60A導入計画書」
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浅海 伸一