アジア諸国の環境アセスメント

アジア諸国の環境アセスメント
日本貿易振興機構
作本直行
1
全体の流れ




I.アジア諸国の環境法制全般
II.アジア諸国の環境アセスメント (以下、環境
アセス)
III.アジア諸国のSEAへの移行
IV.問題点
2
I.
アジア諸国の環境法制全般と環
境アセスの位置づけ
3
アジアの環境問題悪化と総合的な環境管理対策・統合的な管
理手法の必要性
アジアの環境問題の特徴
・複雑性、多様性、越境問題の多発、地球全体への影
響
・アジア経済社会のグローバル化:
人口増加・移動、経済規模・活動、資源開発、自然災
害の多発など
⇒環境問題のグローバル化
⇒総合的かつグローバルな環境管理対策と統合的な環
境管理手法の必要性
4
アジア諸国の環境法発展は、2つの流れから
(1)国内環境法の発展⇒各国環境行政の開始時期
①60-70年代 日本、韓国、香港、SIN
②70年代初頭 TH, PH, MA
③80年代 中国、インド、RI
④90年代 VT、BA、CA、LA等 ⇒00年代 PA他
⇒管理ガバナンス能力向上、統合的な環境管理手法
としての環境アセスの採用
(2)国際条約の受け入れと地域環境協力の発展⇒国際
環境条約の受容、国内法化
72年 国連人間環境会議、92年 UNCED、02年 ヨハネスブルグ会
議(第二回UNCED)、その他(人間開発報告、ミレニアムサミット、国
連グローバルコンパクト)等
5
アジア諸国の環境規制の動向
・基本原則の採用と基本法整備の時期 (SD、PPP、
Strict Liability):基本法、基準値、個別法、下位規則
・主管環境行政機関の設置と行政強化、紛争処理機関
の設置 (環境省の名称⇒天然資源省(PH,TH,・・・)、
水資源・環境省(SIN)、環境庁の追加設置(SIN)、未
設置の国(ブルネイ、ミャンマー)
・各種手法の多様化・組み合わせ(直接・間接規制、経済
的な手法、参加手法、教育・啓蒙活動を含む民主的
な手法)⇒環境アセス法の制定
・国際社会・EU規制からの影響⇒REACH、RoHS,WE
EE,SEA等
・アジア諸国の社会変化と規制の変化:分権化、民主化
6
等
アジア諸国の環境法の整備状況(1)
国名
韓国
中国
フィリピン
マレーシア
主管行政機
関
環境省
国家環境保
護局
天然資源
環境省・
環境管理庁
(EMB)
科学技術
環境省・
環境局
(DOE)
環境基本法
環境政策基本法
(90,99)
環境保護法(89)
環境基本政策(77)
環境法典(77)
環境質法
(77,96改正)
水質関連法
大気関連法
廃棄物関連法
騒音・振動法
自然保護法
都市計画法,土壌汚染関連法
環境アセス法・紛
争処理法
水質環境保全法
(90,00)、大気環境
保全法(90,99)
廃棄物管理法(00)、
土壌環境保全法
(95,01)、
都市計画法(00、)、土壌環境
保全法(95,01)、自然環境保
全法(97)、湿地保全法(99)
環境汚染紛争被害
調調整法(90,02)環
境交通災害環境影
響評価法(99)、環
境保護行政処罰弁
法(99)
電気、電子製品・自動
車への資源循環法(08)
水質汚染防治法
(91,99)、大気汚
染防治法
(87,95)海洋環
境保護法(82,99),
水法(02)、汚染排出
費徴収使用管理条
令
環境騒音汚染防治
法(96)、固体廃棄物
汚染防治法(95)、
煤炭法(96)
都市緑化条例(92)、森林法
(84,98)、野生生物保護条例
(96)、都市外観環境衛生管理
条例(92)、草原法(85)、砂漠
化防止対策法(01)
環境影響評価法(02)
電子廃棄物環境汚染
処理管理弁法(08)
水資源保護法(75)
自動車関連大気汚
染防止法
(77)
有害廃棄物・核廃
棄物規制法(90)
国家統合保護地域制度法
(NIPAS,92)
環境アセスメント
制度確立法(78)
環境アセスメント
制度の改善強化
(92,96)
工場排水規則(79)
大気汚染規則(78)
下水・産業排水処
理
(79,97改正)
CFC等ガス規制命
令(93)
中性洗剤規制命令
(95)
廃棄物規則()
自動車騒音規制規
則(87)
自動車鉛濃度規則
(85)
車騒音規則(87)
廃棄物処理・処分
場規則(89)
国立公園法(80)
都市計画法(76)
国土法典(65)
野生生物保護法(72,91改
正)
自然保護地区法(59,83改正)
森林法(84)
環境影響評価規則
(87)
環境アセス命令(87)
その他
パーム油規則(77)
天然ゴム規則(78)
殺虫剤法(74,89改正)
7
シンガポール
水資源環境省・
環境庁
環境保護管理
法
(99,02)
タイ
天然資源
環境省
国家環境質
保全向上法
(92)
インドネシア
ブルネイ
環境省
総理府
工業・第一次
産品省,開発省
通信省
環境管理基本
法(97)
水質汚染規制排水
法(75)
産業排水規則(76)
大気清浄法(71)
戸外での焚き火禁
止(73)
バーゼル関連有害廃
棄物規則(98)
建設現場からの騒音
規制規則(90)
危機に瀕した動植物の
取引禁止
工場法(92)
地下水法(77)
灌漑法(75)
有害物質法(92)
環境アセスメント告示
野生生物保護法(91) (93,94)
国有林法(64)
自動車排ガス環境
大臣令(93)
固定発生源排出基
準(95)
水質汚染政府規則
(90)
工業事業関連環境
汚染
環境大臣令(88)
騒音・悪臭・振動基
準(96)
自動車排ガス環境大
臣令(93)
固定発生源排出基準
(95)
工業事業関連環境汚
染環境大臣令(88)
有害有毒廃棄物政府
規則(94,95改
正)
有害有毒廃棄物およ
び
廃プラスチックス輸
入禁止(92)
森林火災予防規制森林
大臣令(95)
天然資源保護生態系法
(90)
保護地区管理大統領令
(90)
湿地政府規則(91)
環境影響評価政府
規則(93、97)
環境会計大臣令
(94)
文化財法(97)
空間利用管理法
(92)
森林法(Chap46)
漁業法(Chap61)
野生生物保護法
(chap120)
都市計画法(Chap142)
文化財法(Chap31)
8
自然保護地区法(93)
漁業管理法(87)
森林行政法(88)
環境アセスメン
ト手続条令(99)
草案中(環境
アセス規則
大気汚染防止
規則,水質規則,
有害廃棄物管
理規則)
大気ほか各種排出
基準
森林保護開発法(91)
希少な動植物管理保
護条例(92)
環境保護違反処
罰条例(96)
環境アセスメン
ト通告(98)
有害化学物質
放射性物質条
例(95)
生物多様性プ
ラン
水及び水資源に関
する法
(96)
排出基準工業大臣
令(94)
野生生物保護条例(89)
森林法(96)
生物多様性保護地域
総理大臣令(93)
伐採禁止令(94)
水質汚染防止防止
条令(99)
カンボジア
ベトナム
ラオス
ミャンマー
インド
環境省
科学技術
環境省・
国家環境庁
(NEA)
総理府科学技術環
境部・
環境部(DOE)
環境保護
天然資源法
(96)
環境保護法
(93)
環境保護法
案(99)
森林法(92)
野生生物保護地区法
(94)
漁業法(90、93)
国家環境問題
委員会
環境森林省
産業廃棄物規則(94)
固形産業廃棄物管
理規則(99)
環境保護法
(86)
水質汚染防止規正
法(74)、大気汚染防
止規制法(81)
野生生物保護法(72、)
森林保全法(80)
国家環境政策,
アジェンダ21
民事責任保険法
(91)、国家環境
裁判所法(95)、環
境アセスメント告
示(78,97)
(出所) 筆者作成。
9
アジア地域における主な地域環境プログラム(1)
地域環境プログラム
対象国・設置年・組織
プ ロ グ ラ ム の 地域環境条約の 地域協力のための主な取り決め
特徴
制定状況
アソエン(アセアン環境 アセアン10カ国、1987 ASEP プ ロ グ ラ アセアンの自然 アセアン環境に関するマニラ宣言(1981)、
高 級 事 務 官 会 合 、 年、ジャカルタ事務局、 ムI~III(1978 と自然資源の保 遺 産 公園 と保 護区 に関す る アセ アン 宣言
ASOEN )
アセアン越境ヘーズ防止 ~ 1982 年 、 全に関する協定 (1984年)、アセアン環境に関するバンコ
管理調整センター
1983 ~ 1987 (1985年)、アセ ク宣言(1984年)、持続可能な開発に関する
年 、 1988 ~ アン越境ヘーズ ジャカルタ決定 (1987年) 、環境と開発に
1992 年 ) 、 環 汚 染 協 定 関するクアラルンプール宣言(1990年)、
境 に 関 す る 戦 ( 2002 年 ) 、 環 境 と 開 発 に 関 す る シ ン ガ ポ ー ル 決 定
略 的 行 動 計 画 アセアン生物多 (1992年)、環境と開発に関するバンダー
( 1994 ~ 様性センター設 ル・スリ・ブガワン決定(1994年)、ヘー
1998 年 ) 、 ハ 置に関する協定 ズ地域行動計画(1997年)、環境と開発に
ノ イ 環 境 行 動 ( 2005 年 ) 、 関するジャカルタ宣言(1997年)、アセア
計 画 (1999 ~ ア セ ア ン 憲 章 ン地域生物多様性保全センター(1999年)、
2004年)、ビ (2008年)
環境に関するコタキナバル決定(2000年)、
遺産公園に関するアセアン宣言(2003年)、
エンチャン行
動 計画 (2004持続可能な開発に関するヤンゴン宣言
2010年)
(2003年)、持続可能な開発に関するセブ
決定(2006年)、アセアンの環境持続性に 関
する宣言(2007年)
南アジア環境協力プログ 南 ア ジ ア 諸 国 8 カ 国 、
ラム(SACEP)
1982 年 、 コ ロ ン ボ 事 務
局、主な機関は、理事会
(GC) 、 協 議 委 員 会
(CC)、国別の環境問
題担当の連絡事務所
(NFP)、国別の事項別問
題担当の連絡事務所
(SAFP)、事務局
10
SACEP設置のコ 無
ロンボ宣言、
基礎は、組織
制度強化、能
力開発、生物
多様性の保全
と持続的な利
用、環境情報
と環境評価、
教育と意識向
上、南アジア
海洋プログラ
ム
南アジア環境協力プログラム・コロンボ宣
言(1981年)、南アジア環境天然資源情報
センター(1990年)、南アジア海洋行動計
画(1995年)、南アジア大気汚染と越境被
害の規制防止に関するマレ宣言(1998年)、
南アジア地域石油流出監視プラン (2003
年)、南アジア教育訓練行動計画(2003~
2007年)、南アジア生物多様性クリアリン
グハウス・メカニズム
アジア地域における主な地域環境プログラム(2)
南太平洋地域環境プログ オーストラリア、戦略プログラムは、島嶼生態系(資源
ラム(SPREP)
ニュージーラン と生態系の持続可能性)と太平洋の将
ドなどの4カ国 来(島嶼環境への危機や圧力に応え
を 含 む 21 の 太 る)の2課題をもつ。行動計画には、
平洋島嶼国・地 天然資源管理、汚染防止、気候変動・
域 、 1993 年 、 水面上昇・オゾン層破壊の3課題があ
事務局はサモア り、調和的アプローチ、パートナー
の首都アピア
シップ、加盟国間の協力、積極的な地
域社会の参加、持続的な資金確保、モ
ニタリングと情報メカニズムの確立な
どの実施手段がある。
中央アジア地域経済協力 無
(CAREC)
南 太 平 洋 地 域の 天 然 資
源 と 環 境 保 護 協 定
(1986)、SPREPの設
置 協 定 (1993) 、
WaigamI 協 定 (1995 、
バ ー ゼ ル 条 約対 応 の 有
害 ・ 放 射 性 廃棄 物 持 ち
込み禁止)、アピア協定
( 1976 締 結 、 1990 発
効、2006に停止)
南 太 平 洋 環境 協 力戦 略 プログ ラ ム ( 2004 ~ 2013
年)、南太平洋行動計画(2005~2009年)、さら
に生態系管理、気候変動、廃棄物管理などに関する
行動計画が多数ある。
カスピ海環境計画(CEP)では沿岸国 無
の水管理に関する協調行動の枠組み設
置
カスピ海環境計画(1995年)、地域協力戦略プログ
ラム(2005~2007年)、科学情報センターの設置
(SIC)
北東アジア地域環境プロ 北東アジア6カ 国境を越えた協力や地球環境問題の解 無
グラム(NEASPEC)
国 、 1993 年 、 決に向けて、地域協力体制を作るため
事務局無
の環境協力高級事務レベル会合の毎年
開催で、意見情報の交換、北東アジア
での能力開発と環境モニタリング
大気汚染対策のためのトレーニングやデータ収集、
大型哺乳類や渡り鳥の保全計画支援
(出所) 筆者作成。アジ研ワールド・トレンドNo.132(2006年9月)に加筆。
11
II.アジア諸国の環境アセス
12
アジア諸国の環境アセスを取り巻く国際的な変化
1.国際機関の動き:OECD「開発援助プロジェクト関連
の 環境アセス閣僚理事会勧告」(1985年)、国際金
融公社IFC等の金融機関によるパーフォーマンス基準
(06年)、国連グローバル・コンパクト(1999年)
2.援助関連機関の環境社会配慮(世銀、アジア開銀、
JICA/JBIC、NEXI、JETRO等):社会環境アセスSIA・
健康影響アセスHIAの拡大→環境社会配慮の実施
3.アジア各国の環境アセス導入→戦略アセスへの移行
(S中国、韓国、フィリピン、ベトナム)
4.民間事業への環境配慮拡大→CSR・SR(企業の社会
的責任へ)、大手民間銀行の赤道原則(2003年)
13
環境アセスとは?
特徴:
「事業等からの著しい環境影響を予防・軽減するた
め、行政機関が実施する環境管理に関する許認
可制度」
1.統合的な環境管理手法の一つ
2.合意形成のための手法
3.環境面に配慮した事業実施者への許認可手続き
発祥:1969年USEPA(米国・国家環境政策基本法)発祥
現在:途上国を含む世界大半の国に普及
14
環境アセス手続きの一般的な流れ
申請プロジェクト
スクリーニング
環境アセスメントが必要な場合
初期調査
スコーピング手続き
環境アセスメントが不必
要な場合
公衆参加
影響評価
一般的にはこれらの過程で公衆参加、これ以外の環境アセスメント過程でも実施可
ミテイゲーションと影響管理
環境アセスメント報告書
審査
不承認
公衆参加
承認
この過程から得られる情報を将来の手続きに役立てる.
再実施
実施とフォローアップ
再提出
(出所)UNEP.Generalized
flowchart of EIA, UNEP EIA Training Manual
15
環境アセス手続きのフロー(日本)
1.スクリーニング
事業のカテゴリー分け:二種事
業への環境アセス実施の判定
↓
2.スコーピング(方法書の作成)
①評価項目及び調査等の手法に
ついて、②都道府県知事・市町
村長・住民等から意見聴取
↓
①環境影響の調査・予測・評価
、及び環境保全対策の検討、②
準備書を作成、③都道府県知事
・市町村長・住民等から意見聴
取
3.準備書の作成
↓
4.報告書の作成
①環境省大臣は、実施行政機関
に対し意見提出可。
↓
5.事後調査
16
アジア諸国における環境アセス制度一覧(1)
国
名
主管
行政
機関
法令上の根拠
対象事業
の範囲
韓国
環境省
環境影響評価法(93)
分類に関す
る規定なし
中国
国家環
境保護
局
環境影響評価法(03)
フィリピ
ン
環境天
然資源
省
マレーシア
環境管
理計画
外部審査会
代替案分
析
公衆参加制
度
情報公開制
度
無
環境省による環境政
策研究院や住民が推
薦する専門家等への
意見聴取はある。
有、ただし
ノーアクショ
ン案はない。
公衆の意見聴取
方法を制度的に定
めた規定無し。
アセス書の公開
方法を定める規
定無し。
計画・すべて
の建設事業
環境影響評
価大綱作成
無
建設プロジェ
クトに関して
はない。
環境影響報告書
作成の場合に限
定し、関連組織、
専門家、住民の意
見を求める。
情報公開では、公
衆参加手続きが
法律に規定されて
いるが、詳細な手
続きは各地方の
規定に任される。
大統領令
PD1151(1977)、
PD1586(1978)、EIS実
施規則(1985)、天然
資源省令DAO30/03
(2003)
事業
有
無
有
有。EISのスク
リーニングおよ
びスコーピング
の各段階で協議
実施
無。環境応諾書
(ECC)の発行情
報を公開、EISの
閲覧方法の規定
は無
天然資
源環境
省
環境質法(1974
年)、環境影響評価
命令(指定施設
/EIA)(1987年)他
事業
無
有。審査委員会。不
服申し立て委員会
無。準備ア
セス書段階
でミテイゲー
ション措置
が有
連邦レベルで公
衆参加制度があ
るが、サラワク
州の場合に無
有。ただし、承
認を受けた後の
詳細環境アセス
報告書に限られ
る
タイ
天然資
源環境
省
環境質保全向上法
(1992)、科学技術
環境省告示2号
(1992)、告示3号
(1996)
事業
無
有。政府機関・国営
企業の事業は特別専
門委員会、民間セク
ターの事業では特別
専門員委員会が報告
書検討
有。立地選
定、汚染発
生の少ない
操業方法等。
有。EISのスク
リーニングおよ
びスコーピング
段階で協議。
無。アセス報告
書と要約公開は
承認後ONEPP図書
館。国営事業手
続にNGO代表参加
可能
インドネ
シア
環境省
環境管理法(1997UU
No.23)、1997政令
(PP No.27)、その
他ガイドライン等
事業
有。RKL/環
境管理計画
と、RPL/環
境モニタリ
ング計画の
作成義務
無。AMDAL委員会に
は、影響を受ける住
民、NGOが参加でき
る。
無
有。住民やNGOは
AMDAL委員会に参
加、情報を得て、
提案・意見・コメ
ントの権利有
有。
17
シンガポール
環境水資
源省、環
境庁
(NEA)
環境公害防止基本法
(1999)
無
無
無
無
無
無
ブルネイ
開発省環
境班
無
無
無
無
無
無
無
ベトナム
科学技術
環境省・
環境庁
(NE
A)
環境保護法(1993、
2006)、環境保護法実
施のための政令第175
号(決定第175/CP、
1994),Decr Ne.140/
2006,No.80/2006,
CircularNo.008/2006
事業、計画
無
審査評議会
有。アセス
報告書の作
成者は専門
的知識と設
備をもった
機関・組織
無
無
カンボジア
環境省
環境保護天然資源管理
法(1996),環境アセ
スメント条令(1999)
事業
無
無
無
環境省は一般
からの要求が
あれば情報を
公開
無。公衆参加を奨励
すべきことは義務付
有
ラオス
総理府・
科学技術
環境庁
(STEA)
環境保護法(1999)、
水資源、鉱物資源関連
法
事業
有。ただ
し、IEE
後に必要
とされた
場合
無。重要なプロジェ
クトは、環境に関す
る省間ワーキンググ
ループ(IMWG)が審査
無
無
無
ミャンマー
外務省内
の国家環
境審議会
(NCEA)
無
無
無
無
無
無
無
インド
環境森林
省
環境保護法(86)、環境
アセスメント通達(94)
事業
有
環境評価委員会
無
州公害管理局
が行う方式で有。
州政府の判断で、公聴
会有るが、大規模住民
移転と激しい環境変化
の場合のみ。
(出所)各国の環境アセス法令及び環境省の検討会資料などから作成。
18
環境アセス発展のパターンと特徴





1.導入方式と導入の時期:基本法中心(TH)、
単独法(韓国、PH)、個々の産業法(LA)に組み
入れ、無(BR)
2.導入から本格的な適用までに時間がかかっ
た(下位法令の整備が遅れた国等)
3.環境アセスの手続き・内容は各国各様:
対象事業の範囲(事業・計画)、環境管理計画、
外部審査会の有無、環境アセス報告書作成資
格者登録制度、代替案、公衆参加、情報公開、
登録NGO制度
4.SEAへの移行傾向(中国、韓国、VT,PH)
19
何故、アジア諸国に環境アセスが普
及?
1.環境問題の発生拡大と、統合的な環境管
理手法の必要性
2.許認可権限を背景にした行政機関による
手続き
3.合理的、効率的な環境管理手法(社会工
学的な道具概念に基づく)
4.民主性、科学性、透明性の追及
5. 国際社会からの影響、国際機関等からの
制度化要求(ODA関連)
20
環境アセスに関わる多様な課題








アセスの実施時期(計画段階)
スクリーニング(対象範囲、地球環境保全)
スコーピング(調査、予測、評価項目の選定 )
代替案の検討、重大性の評価
影響の分析、軽減方法、影響管理
環境影響準備書・報告書とその審査方法(第三者審査
機関)
意思決定方法、公聴会開催、住民参加・ステーホル
ダーの範囲、情報公開
フォローアップ・事後調査、アセス結果の反映
21
インドネシアの環境アセスとその課題(1)



根拠規定:1997年環境管理法15条(82年旧管理法で導入)、
環境アセスは97年政令27号。対象事業リスト、AMDAL評価
委員会の手続き指針、AMDAL評価委員会・地方委員会の
設置、技術審査のためのガイドライン、住民参加手続き等が
ある。
実施は環境省環境アセス課、手続きの流れは、スクリーニ
ング→スコーピング・委員会による方法書の審査→報告書
の作成→報告書の審査→意思決定後に不承認でプロジェ
クト中止も有り得る。公衆参加は、アセス実施をメデイア通
知後から報告書審査まで。中央・地方の評価委員会委員は、
環境NGO代表、地域共同体代表を含む20名。
対象事業は9カテゴリーの事業と活動。方法書作成段階で、
事業者に住民との協議義務、住民の提案・意見・コメントを
公表する義務、政府機関に評価委員会の検討内容などを
公開する義務、情報公開義務がある。住民には、情報を得
る権利、提案・意見・コメントを提出する権利がある。
22
インドネシア環境アセス(2)
問題点:報告書の質が低く、モニタリング実施が不十分。2002年から
4年までに環境省が調査した114件の報告書を、手法の有効性、情
報の入手能力、影響の重大性評価能力、メテイゲーション・モニタリング・
予測の一貫性で見た場合、73%が劣悪・不満足。事業者の全体的な
管理能力とモニタリング実施能力が欠けている。環境省は、事業ライ
センス交付後3-6ヶ月毎に事業者にモニタリング報告を提出させるが、
2/3は差し戻される。理由は、排出基準を満たしていない、環境影響
の軽減に努力不十分、重大な環境影響についても措置やモニタリン
グがない。背景に、人材不足と能力の低さがある。公衆参加手続き
の不足・定期的モニターのための予算不足、提出書類に対する事業
者意識低い、法執行が脆弱⇒AMDALば適正に実施されていないと
の国民不満多い。
 (作本編「アジアの環境アセスメント制度とその課題」、2006年)
その他:植民地時代からの法継受、慣習法が活きた法、下位法令の未
整備、地方条例の未整備等

23
インドネシアの環境アセス手続きの流れ(3)
申請プロジェクト
スクリーニング手続き
(EIAリストとの照合-環境大臣令 No.17, 2001)
環境アセスメントが不必要な場合
環境管理方針書(UPL)、
環境モニタリング方針書(UKL)を提出
環境アセスメントが必要な場合
環境アセスメントの実施をマスメディアに通知
スコーピング手続き、方法書の作成、AMDAL評価委員
会による方法書の審査
環境アセスメント報告書の作成
環境影響評価分析の実施、環境影響の縮小管理
公衆参加
環境アセスメント報告書の審査
意思決定
不承認
承認
(環境大臣、知事、市長)
プロジェクト実施
再実施
再提出
プロジェクトの中止
24
タイの環境アセスとその課題(1)



根拠と組織:1978年に導入・実施開始、1992年環境質保全向上法で手続きの
改正。実施は、天然資源環境省・天然資源環境政策計画事務局、専門家委員
会、評価書の作成は環境政策計画事務局に登録された作成資格者(登録法人
数は48)。
制度改革:2003年2月に、同省大臣を委員長とする環境アセスメント制度改善委
員会を設置。さらにその下部委員会として、組織構築・開発に関する委員会、手
続きに関する委員会、評価書作成の技術方針委員会、国民との協力に関する委
員会が設置された。制度改善のための方針は、①アセス手続き、②市民参加、
③機関間の連携、④アセス基金設立、⑤アセスの公開株式会社、⑥評価書作成
資格者、⑦義務付け対象業種・規模の指定、⑧アセスの徹底⑦は、評価書と初
期調査評価書の区別を提言。
エンフォースメントの問題:①実施を追跡・監視する機関が不在。地方管轄担当
者では知識・能力等で困難、②法解釈との関連で、自らにの権限内または調査
能力のある項目だけを調査で他はおざなり調査、③事業主は許可をとるだけの
為の規制遵守で、負荷防止や対策はない。罰則がなく、事業主は環境負荷防止
対策の実施報告書、環境基準の遵守調査報告書を、許可機関に対し、3ヶ月・
6ヵ月後毎に提出すれば足りる。また、集合住宅の規模要件で、若干下回る数の
住宅数とかで、すり抜ける(ホテル室数は、80室がアセス対象)。
25
タイの環境アセス(2)





組織面では、天然資源環境省の担当官数が尐なく、管理・追求・監視の
権限が弱い。機関間の連携が弱く(縦割り)、専門委員会が指定する条
件が担当官にも理解されておらず、アセス報告書作成が意味を持たない。
市民参加憲法上の環境保護規定は多くある(1997年憲法)。文化・天然
資源保護(46条)、天然資源・活用保護のための活動権利(56条)、環境
や健康などへの権利(59条)、地方自治体住民の環境保護の権利(290
条)があるが、1992年基本法は、何ら環境アセスとの関連で市民参加を
規定しない。具体的に市民が参加できる手続き、方法について、具体的
な規定がない。多くが市民参加できずに、不満。
また、予算上も、地域と情報に関する事務局の調査費が尐なく、専門委
員会の審査委員も同じ。
対象は、22業種で規模要件で、47の登録アセス評価書作成有資格法人
数(2005年現在)
(JETRO「タイにおける環境対策の現状と課題」2006年。
26
社会環境影響(SIA)とは


社会影響アセスメント(SIA)とは、通常のEIAよりも広義で、人
口移動、就業問題、財政保障、家族問題を含む。
定義:「SIAとは、意図的か否か、正か負の影響に関わりなく、
計画的な関与(政策、プログラム、計画、プロジェクト)及び関
与によりもたらされるすべての社会的変化の分析・測定・管理
の過程を含む」審査(IAIA)。
(具体例)
 生活様式、文化様式(言語方言、社会通念、慣習、文化価値な
ど)、地域社会、身近な政治制度、民主化過程、生活環境質、
安全・保健衛生や資源管理へのアクセス、健康と福祉、個人財
産への権利、人権侵害、将来の地域社会や子孫への恐怖や願望
など
27
健康影響アセス(HIA)とは

意義:HIAと は、開発政策や事業に関する健康被害
や健康要素を体系的に審査すること。
具体例:開発事業の中途での変更や意思決定過程で
の証拠を基礎にした意思決定への勧告を行う。健康
保護と促進に関する意思決定過程を通知するために
勧告を行う。
 指導原理
民主主義、公平性、持続可能な開発、証拠の倫理的利
用、健康への総合的アプローチ

28
III. アジア諸国のSEAへの移行
・移行中の国々:中国、韓国、ベトナム、フィリピン
(草案中)
・SEAの要件(クライテリア)(IAIA)
1.統合されていること(integrated)
2.持続可能性(sustainability-led)
3.的確性(focused)
4. 有責性(accountable)
5.参加的(participative)
6.反復的(iterative)
しかし、SEAは多義的。
29
アジア諸国のSEA
国・地域
中国
韓国
香港SAR
ベトナ
ム
政治的意欲
法的義務
制度と組織
SEAの手続
法
公衆関与
SEAの適用
備考
有
有
有
有
-
有
EIAは事業
ベースだが、
計画も含む
有
有
有
有
-
有
現行PERS
では計画重
視のSEA
有
有
有
有
有
有
有
有
-
有
-
-
SEAは計
画・政策を含
み、実施例
もある。
EIAは事業
ベースだが、
計画も含む
〔出所〕世界銀行資料(注1)から作成(拙稿「環境アセスメントの最新知識」(環境影響評価制度研究会、ぎょうせい)から。
30
中国のSEA











導入: 2003年
特徴:EIA 法は、SEA実施が必要となる計画の分類を行い、計画に対す
る環境アセスの手続きと事項を規定する。
具体的には、SEA 適用対象の総合計画、特別項目計画の範囲、SEA 適用対象の具体
的範囲の特定、特別項目計画案に対する環境影響報告書の内容、公衆関与の方法、
認可機関による審査方法、モニタリングなど。
対象: 土地利用関連計画及び地域・流域・海域の建設・開発利用計画(総合計画)
と工業・農業・牧畜業・林業・エネルギー・水利・交通・都市建設・観光・自然資
源の開発に関するセクター計画(特別項目計画)。
スクリーニング:EIA 法では、SEA の対象として、総合計画と特別項目計画を原則
対象に含む。対象計画は100 数種となる。SEA 対象とするかしないかは、スクリー
ニングを通じて決
定されることとされている。具体的スクリーニング基準は、国務院の環境保全行政
主管部門が国務院関係部門と共同で規定し、またそれを国務院に上申して認可を受
けるも
のとされている。スクリーニングを実施する際の、公衆関与や第三者機関の関与は
ない。
スコーピング不明
影響評価 環境面についての評価が中心であるが、用意する環境保全措置に対して、
経済合理性、社会の許容等に関する論証を行う。
手続 不明
31
ベトナムのSEA

根拠: 1993年の環境保護法(2005 年改正)、環境法GD175/CP と回覧
490/TT-BKHCNMT(LEP, GD 175/CP and Circular No. 490/TTBKHCNMT)

環境保護法(LEP)、 GD 175/CP、No.490/TT-BKHCNMTで、プロジェクトレ
ベルの環境アセスと開発地域・セクター・地方・都市・工業地帯におけるマス
タープランに対するSEA が不可欠と定義。
LEPは、投資活動に対する環境影響の早期段階での評価を強調し、環境影
響評価プロセスに関する特定の役割を公衆に付与するものでもある。法は規
則によって補完され、環境報告書の審査機関や責任、人間の健康に高いリ
スクを有すると考えられる活動の生活域での実施の制限などがある。環境の
ダメージに対する負債や補償に関する規則もある。LEP は2006 年7 月に施
行される。
近年のSEA 事例: ハノイベイークワンニン地方(地理研究所-ベトナム科
学技術学会、ベトナム環境と持続可能な開発協会が実施)、タイ、ニュエン地
域の戦略的環境アセスメントと社会経済開発計画、クアンニ地区の戦略的環
境アセスメントと社会経済開発計画(ハノイ大学エンジニア部が実施)。


32
フィリピンのSEA(草案中)



SEAの枠組みは1996 年に提案された
(IEMSD,1996)。ボホールとセブ地域でいくつかSEA
プロセスが行われた。
草案は、政策と計画におけるSEAを含む。
現在、草案段階である。SEAの手順、方法論、手引き
はないが、学識者に提案されている。環境天然資源
省と環境管理委員会はSEAの一般調整担当である。
SEAの事例は数件に限られる。公衆の関与が義務づ
けられている。
33
韓国のSEA



根拠:1994年行政計画及び事業に関する有効
性評価に関する規定で、不十分だった環境省と
の事前協議制を廃止し、「事前環境影響評価シ
ステム」(PERS)採用。
計画の初期段階で、開発計画や事業から生じる
環境影響を特定する。初期のPERSは公共事業
に限られ、民間の開発事業を除外し、行政計画
や開発事業に関する評価システムを欠いており、
ザル法だった。そこで、2000年、このPERSを法
律に格上げ。
PERSの特徴:①行政計画、開発計画の擁立、
許可、承認に関わる行政機関の長は、環境大臣
または地方の環境行政の長と、有効性を協議、
②事前評価を書式化、義務化、③審議機関、審
34
IV. 問題点
批判⇒

何故、欧米諸国からアジアのアセスは非効率的、非民主
的と批判されるのか

エンフォースメントとコンプライアンス、何が不足しているの
か⇒環境ガバナンス能力(環境管理への総合的な能力)
35
途上国における環境アセス実施上
の課題(1)
クライテリア
対応状況
コメント
(1)EIA制度は、明確かつ個別の法規定に依拠してい
るか?
No
法律が明確に定義した統合的なEIA過程として制定する場合は
むしろ稀である。
(2)すべて重大な活動について、環境影響が評価され
るか?
No
高度に重要なプロジェクトがEIAの対象に含まれていたとしても、
EIAが常に実施されるとは限らない。直接的、蓄積的な影響が
評価されないこともある。
(3)事業者によって、合理的な代替案がEIAの過程に
示されているか?
No
「ノー・アクション」や「環境的に好ましい代替案」を含む代替案が
検討されない場合が多い。
(4)スクリーニングが適切に実施されているか?
一部
事業リスト、初期段階、クライテリアについては、相当な慎重さを
必要とする。
(5)スコーピングが実施され、この個別のガイドライン
が策定されているか?
No
特に一般人を含んだスコーピングは、稀である。
(6)EIA報告書は規定された内容を満たし、不適切な
EIA報告書の存在を防止チェックしているか?
No
EIA報告書は、開発援助機関の要請に合わせて作成されるので、
チェックがほとんど行われない。
(7)EIA報告書が公開で審査され、事業者は指摘され
た点に答えねばならないか?
NoEIA報告書の審査は脆弱だが、改善されつつある。事業者側
が質問に答えるのは稀である。一般人は含まれていないことが
多い。
(8)EIA報告書による指摘と審査は、意思決定の中心
的要素となるか?
NoEIAは理論的には判断に影響を与えるとされているが、実際
は稀である。
(9)環境影響に関するモニタリングは実施され、EIAの
初期段階で関連付けされているか?
No
モニタリングに対し、特定の条件を付けたり、諸条件の比較を
行ったりすることはあるが、実施されることはほとんどない。
36
途上国における環境アセス実施上
の課題(2)
クライテリア
対応状況
コメント
(10)環境影響のミテイゲーションはEIAの各段階で配
慮されているか?
一部
ミテイゲーションは途上国のEIAにおいて最重要
要素であるが、実際に実施される場面では、不満
足な場合が多い。
(11)協議と参加は、EIA報告書公開の事前段階と事後
段階において実施されているか?
No
スコーピングと審査の両方において、協議と公衆
参加が公式的な要件とされるのは、まず極めて
稀である。
(12)EIA制度はモニターされ、必要な場合には経験か
らのフィードバックを取り入れるため、見直しを制度的
に組み入れているか?
No
EIA制度のモニタリングはまったくといえるほど欠
けているが、EIA手続きの修正が彼らの経験や開
発援助機関の圧力により実施されている。
(13)EIA制度にとって必要な財政的コストや時間的制
約は関係当事者に納得容認されているのか、また、こ
れらが、将来的な環境面の利益よりも、負担が重いと
考える傾向がないか?
No
大多数の人々にとって、EIAの実施にとって必要
な財政的コストや時間的制約の方が、将来的な
環境面の利益よりも、負担が重いと考える可能性
がある。
(14)EIA制度は重大なプログラム、計画や政策、さらに
プロジェクトに適用されるか?
一部
開発援助機関が奨励した結果、SEAを実施する
場合もある。
(出所)Christopher Wood. EIA in Developing Countries: An Overview, 2003.年。
37
効率的な公衆参加と当事者にとっ
ての便益
当事者
事業者
意思決定者
影響を受ける地域住民
事業影響と地域住民の関連。
事業計画が環境と影響を受ける地
域住民に及ぼす潜在的影響に対す
る認識を向上させる。
より多くの情報と責任ある意思決定
を達成できる。
地域住民に懸念提出の機会を与え、
意思決定過程に影響を与える。
法制度と環境影響の関連
事業計画を合法化させ、受け入れと
支援をより確証させる。
法的な懸念に関する問題がすべて
指摘されたとの確証を与える。
予想される環境影響とリスクに対す
る知識・理解に向上の機会を与える。
意思決定過程における公正さと透明
性の関連
一般の信頼と信用を改善させる。
公正さと透明性を誇示し、舞台裏で
行われる非難決議を回避できる。
意思決定過程の役割、決定者、根拠
に関する認識を増大させる。
当事者間の信頼関係の
構築当該土地の情報・データの確保
に役立つ。
事業者と第三者との間に信頼関係を
構築する。
人々の能力向上に役立ち、彼らに意
思決定に影響を与えることができる
との理解を与え、かつ社会的な責任
意識を形成向上させる。
紛争解決の防止
紛争を初期に解決し、事業遅れによ
る潜在的なコストを回避できる。
紛争を初期に解決し、事業遅れによ
る潜在的なコストを回避できる。
意思決定以前の段階で、すべての
関連の問題と不安に対処できる。
(出所)UNEP, EIA Training Manual,2nd ed., 2002年, 165頁から作成。
38
何故、理解にズレが生じるのか。
1.先進国側の援助への思い入れと高い期待
役立つ援助が必要:援助の効率性・戦略性を重視、
先進国側は、環境問題で失敗したくない。
⇒民主化、人権、参加、人道主義の押し付け
 2.途上国側の環境アセスへの高い期待は、環境
アセス、許認可を背景にした強力かつ効率的な環
境管理手法としての活用である。
 3.途上国では、環境アセスの実施にあたり、予算、
人員、組織などの問題をする運用ができない。
⇒多くの途上国では、環境配慮の優先順位が低い。

39
環境アセスも、環境管理のためのミックス手法
(1)総合性・計画性に着目した手法区別
総合計画、都市計画、土地利用、環境基本計画、ゾーニング等
(2)規制の権力性の強弱に着目した手法区別
直接規制では、排出基準、罰則、各種規制等、間接規制では、
経済市場原理を利用したCDM、税の減免、賦課金、補助金等や紳士
協定としての公害防止協定
(3)企業の自主性や任意性に任せた手法
CSR、ISO、環境報告書
(4)統合的に組み合わされた手法か否かに着目した手法としての
環境アセス
(5)政府の主導的役割に着目した手法区別では、誘導的な手法で
リサイクル、ラベリング、公害防止管理者制度等
(6)民主性に着目した手法では、参加的な手法として、住民参加、
協議制度等、情報の提供公開としては、環境白書や各種調査研究
と情報提供、さらに啓蒙的手法として、環境教育、NGO支援、企業
表彰制度
40
アジア主要国の公衆参加制度と環境情報へのアクセス
国名・
根拠
中国・環境影響評価法(2003)
法規情報を受ける権利
公衆参加に関する個別法環境情報へ
のアクセス権
情報公開に関する規定はない。無環境
影響報告書の作成の場合、報告書の承
認前に関連する組織、専門家、住民の
意見を求めることが必要。建設プロジェ
クトについて、論証会と公聴会、又はそ
の他の方法で公衆から意見を仰ぐ方法
が採用された。ただし、座談会とアン
ケート調査の方式が一般的。
情報公開手段として、インターネット、新
聞、メデイアが活動されている。詳細な
手続きは各地方の規定に委ねられる。
タイ・1997年タイ憲法・1992年の環境質
保全向上法・1997年情報公開法
1992年の環境質保全向上法には参加・
情報提供について、明確な規定なし。
1997年情報公開法59条は、国、地方、
国有企業が保有する情報を除く。
憲法56条は、個人の権利として、天然
資源の保全と開発、生物多様性、環境
質の保護のため、参加できると規定。
タイ憲法58条は、国、地方、国有企業
が保有する情報は、国防、公共の安全
と法律で保護した個人の利益に影響を
与えない限り、アクセスが可能であると
規定。他方、1997年情報公開法は、法
的な権利として公的情報の公開を、一
定の例外を除き、政府にアクセスする権
利を認めた。
インドネシア・1945年憲法(第二次改正)、
環境管理法1997年第23号、2000年環
境省令8号 。
提出された事業活動によって影響を受
ける住民やNGOは、AMDAL委員会の
委員に参加して、情報を得て、提案・意
見・コメントを行う権利がある。
環境影響評価庁長官決定2000年第8
号(環境アセスメントにおける公衆参加
と環境情報公開法)
有。
憲法28(f)条は,コミュニケーションの権
利と情報を受ける権利を、自らと社会環
境の発展のため,情報の所有、保存、
発展、提供する権利として認める。有。
プロジェクトの事業者には、掲示板、新
聞、テレビ・ラジオを通して、プロジェクト
関連の情報をインドネシア語で公開す
る義務がある。TOR作成過程で住民と
のコンサルテーションを行う義務、住民
の要求に対して環境アセス文書(TOR、
ANDL、RKL、RPL)に関する情報を提
供する義務、住民の提案・意見・コメント
を公表する義務がある。政府機関にも、
AMDAL委員会の検討内容などを公開
する義務の他に、事業者同様の情報公
開の義務がある。
(出所)UNEP, EIA Training Manual,2nd ed., 2002年, 165頁から作成
41
環境に対する権利規定と公衆参加制度
国名
憲法・情報公開関連の法律
環境権
環境義
務
権義
情報公開
法
中国
1982年憲法
韓国
1987年憲法、1996年情報公開法
○
インドネシア
1945年憲法、2000年公衆参加と
環境情報に関する環境管理庁長
官令
○
○
フィリピン
1986年憲法、2000年固形廃棄物
法他(情報公開規定有)
○
○
タイ
1997年憲法、1997年情報公開法
○
○
ベトナム
1992年憲法
○
ラオス
1991年憲法
○
カンボジア
1993年憲法
ミャンマー
1974 年憲法
インド
1985年憲法(第52回改正)、1997
年環境森林省通達、2005年情報
公開法
規定無し
○
○
○
○
○
○
○
○
42
アジア諸国の環境アセスの将来課題
1.環境アセスは事業許認可のための規制手法であ
るが、合意形成を実質化するためにどうするか?
2.非民主的・強権的な政治体制の中で、経済手法、
参加型手法、啓蒙手法をどう組み入れるか?
3.エンフォースメントとコンプライアンス向上のため
の方法は?
4.先進国側要求する民主性や透明性確保に対し、
どのような制度インフラが必要か?
5.アジア諸国は、社会配慮の側面をどう確保・実現
できるのか?
43