野外理科実験教室の試み

大阪市立科学館研究報告 20、 169 - 172 (2010)
理科実験野外教室の試み
1
至 田
雅 一
2
, 檀 上
慎 二
3
, 高 橋
憲 明
概 要
実 験 室 から飛 び出 そうをモットーに、広 々とした屋 外 で理 科 の実 験 教 室 を開 催 する試 みを、次 世 代 育
成 の一 環 として実 施 した。組 織 の母 体 は青 少 年 のための科 学 の祭 典 大 阪 大 会 実 行 委 員 会 で、その理
念 は理 科 教 育 を通 じて自 立 型 人 間 を育 成 することである。理 科 実 験 野 外 教 室 ではこれに加 えて、世 界
に通 用 するスケールの大 きな人 間 の育 成 、そして、いかなる状 況 でも可 能 性 の限 界 まで挑 戦 し、思 考 で
きる強 靱 な精 神 力 の育 成 を目 指 している。2009 年 11 月 15 日 に実 施 した第 1 回 万 博 公 園 理 科 実 験 野
外 教 室 を例 に取 り、その概 要 とともに理 科 教 育 としての意 義 、効 果 、今 後 の展 開 と展 望 などを議 論 する。
1 . はじめに
験 班/自 然 科 学 の基 礎を訪 ねる実 行 委 員 会
我 が国 をはじめ世 界 の 将 来 を担 う若 者 たちが自 然
後 援 :大 阪 市 立 科 学 館 /日 本 物 理 教 育 学 会 近 畿 支
科 学 に興 味 を持 ち、将 来 、科 学 、技 術 の職 業 を選 び、
部 /関 西 サイエンス・フォーラム/読 売 新 聞 大 阪 本 社
国 際 的 にも活 躍 する契 機 を与 える目 的 で、新 しく理 科
/在 大 阪 イタリア総 領 事 館
実 施 日 時:2009 年 11 月 15 日(日)(関 西 文 化の日)
実 験 野 外 教 室を開 催 した。
普 通 、理 科 や自 然 科 学 の勉 学 、研 究 というと実 験 室
10時~16時
や理 科 教 室 など屋 内 で行 うことを考 えるのが大 半 であ
場 所:万 博 公 園・森の教 室 付 近
る。これ らの 実 験 を 広 々とした野 外 で 、雄 大 な 規 模 で
出 展 数:10
実 施 し、実 践 と思 考 を室 内 から野 外 に 誘 い 出 す。とく
(初めての企 画のため、出 展 数を10に抑えた)
に、若 者 たちに 、一 般 の 参 加 者 ばかりで なく、教 員 の
内 容:実 験 題 目および主 担 当 者 所 属
指 導 のもと実 験 の補 助 者 あるいは解 説 者 として前 面 に
出 て活 躍 する学 生 ・生 徒 たちも含 めて、スケールの大
きさと、どこででも思 考 が出 来 、また、可 能 性 の限 界 ま
で挑 戦 する強 靱 さを自 ら育 ててもらう。理 科 実 験 野 外
①接 着 剤 で動く船
兵庫県立星陵高等学校
浮田 裕
②消えた音をさがせ!(音 波の干 渉 実 験)
清風高等学校
豊田將章
③太 陽 反 射 炉 でゆで卵を作る
教 室はそのような大きな思 いと願いを込めている。
ここではその第 一 歩となった2009年 11月 15日 開 催
の万 博 公 園 理 科 実 験 野 外 教 室 を例 に取 り、その内 容 、
意 義 、効 果 、反 響 などを考 察 し、今 後 の展 開 と展 望 に
大阪府立今宮高等学校
松本静雄
④地 球の温 度
大阪教育大学附属平野中学校 松本 博
⑤火を噴くロケット
ついても記 述する。
夢工房
2 . 理科実 験野 外教室 の 概 要
吉田眞一
⑥パチンと音 のする爆 発
明星高等学校
例とする事 業の概 要は以 下 のとおりである。
河原 修
1)
⑦巨 大ピンホールカメラに挑 戦
事 業 名:万 博 公 園 理 科 実 験 野 外 教 室
主 催 :青 少 年 のための科 学 の祭 典 大 阪 大 会 野 外 実
樟 蔭 中 学 校・高 等 学 校
船田智史
⑧巨 大シャボン玉を作ろう
1
大阪府立東住吉高等学校
〒547-0033 大 阪 市 平 野 区 平 野 西 2-3-77
四 天 王 寺 高 等 学 校・中 学 校
檀上慎二
⑨大 気はとっても力 持 ち
2
四 天 王 寺 高 等 学 校 ・中 学 校
〒543-0051 大 阪 市 天 王 寺 区 四 天 王 寺 1丁 目 11−73
大阪府立東住吉高等学校
3
⑩不 思 議 な立 体をつくろう!
大 阪 市 立 科 学 館 、中 之 島 科 学 研 究 所
- 169 -
至田雅一
至田 雅一,檀上 慎二,高橋 憲明
柳 学 園 中 学・高 等 学 校
ハービスホールは床 面 積 914m 2 の大 ホールで、ブ
上田善則
この企 画 は独 立 行 政 法 人 日 本 万 国 博 覧 会 記 念 機
ース実 験 とステージ実 験 、小 ホールは2つに分 けて工
構 の平 成 21年 度 万 博 公 園 賑 わい創 出 支 援 事 業 とし
作 実 験 を実 施 している。広 い室 内 スペースを用 いて同
て 、また 企 画 の 一 部 は平 成 21 年 度 日 本 財 団 の 助 成
時 に 多 く の 実 験 が でき、交 通 の 便 も 良 く 、一 層 多 くの
事 業として実 施した。
来 場 者 を収 容 できるようになった。科 学 館 で実 施 して
いたときに出 てきた課 題 の多 くも解 決 することができ
3 . 経緯
た。
「青 少 年 のための科 学 の祭 典 」が1992年 大 阪 で初
このように「大 阪 大 会 」はハービスホールへの会 場 変
めて開 催 されてから20年 近 くが経 った。この年 東 京 、
更 、「自 然 科 学 の基 礎 を訪 ねる」の発 足といった大きな
名 古 屋 、 大 阪 で 始 まっ た 財 団 法 人 科 学 技 術 振 興 財
変 革 を経 ながら内 容 の面 でも、また実 施 規 模 の面 でも
団 の企 画 は、今 では全 国 に広 がっている。その次 の年
全 国 屈 指の大 会 へと成 長 していった。
度 に 取 り組 んだ 第 2 回 から は経 費 は無 くても、自 前 で
ただ、大 阪 市 立 科 学 館 会 場 では実 施 できたが、ハー
何 とか毎 年 やりとおしたいとの大 阪 の教 員 たちの熱 意
ビスホールに移 ってからは実 施 場 所 が室 内 のみである
が、大 阪 市 立 科 学 館 、関 西 サイエンス・フォーラム、さ
ため不 可 能 になった実 験 も多 くある。「ドラム缶 つぶ
らには読 売 新 聞 大 阪 本 社 を動 かし、またこの10 年 間
し」、「水 ロケット」、「爆 発 系 の実 験 」など屋 外 での広 い
余 り、毎 年 文 部 科 学 省 の科 学 研 究 費 補 助 金 を連 続 し
スペースを 必 要 と したり、大 きな 音 が なったり 、強 いに
て獲 得 するなどして、「大 阪 大 会 」の開 催 を続 けること
お いが する よう な 実 験 で あ る。実 はこ れ ら の 実 験 は演
2)
ができている 。
示 者 にとっても体 験 者 にとっても大 変 面 白 く、興 味 深
「青 少 年 のための 科 学 の 祭 典 」は、もとはと言 えば、
若 者 の理 科 離 れ、理 科 嫌 いを是 正 すべく東 京 の工 学
いものばかりなのである。それらができなくなったという
思 いは残っていた。
院 高 校 の 後 藤 道 夫 教 諭 が 発 案 され たも の で ある が 、
大 阪 ではその精 神 を基 に、常 に一 味 違 ったものにしよ
4 . 理科実 験野 外教室 の 実 施 へ
うと努 力 してきた。その一 つが、自 発 的 に勉 学 、研 究 、
2009年 度 の「大 阪 大 会 」の実 行 委 員 会 において、
研 鑽 した青 少 年 が 前 面 に 出 て 実 験 、工 作 、演 示 、解
高 橋 憲 明 委 員 長 が万 博 公 園 での野 外 実 験 実 施 の提
説 などに 活 躍 することである 2 ) 3 ) 。すでに10 年 以 上 の
案 をする。その目 的 は若 者 たちがスケールの大 きさと、
積 み上 げがあり、「理 科 教 育 を通 じての自 立 型 人 間 の
どこででも思 考 が出 来 、また、可 能 性 の限 界 まで挑 戦
4)5)
育 成 」という「大 阪 大 会 」の理 念ともなっている
。この
する強 靱さを自 ら養うことである。我が国 の若 者は優 秀
ことが また 大 阪 市 立 科 学 館 の 方 針 に も 影 響 を 与 え て
な面を多 く持つ反 面 、この点 に欠けていると思 われるこ
いる 6) 。
とが間 々あるからである。場 所 は万 博 公 園 とする。ここ
これを発 展 させて、2005年 の世 界 物 理 年 のさいに
は2010年 に万 博 開 催 40周 年 を迎 える。そのときの実
「自 然 科 学 の基 礎 を訪 ねる」の行 事 を行 うべく、新 たに
施 、またそれ以 降 の継 続 的 、発 展 的 な実 施 も予 定 し、
その 前 年 度 の 2 0 0 4 年 か ら 着 手 した 。大 阪 市 立 科 学
最 終 目 標 として自 然 科 学 公 園 を視 野 に入 れた提 案
館 を中 心 として中 高 生 、大 学 生 が,教 員 ,学 芸 員 の指
で、まずは第 1 回として5-7出 展 程 度の規 模 のものを
導 のもと、自 然 科 学 を自 発 的 に勉 学 、研 究 する。その
11月の関 西 文 化 の日に実 施するというものであった。
研 究 発 表 として大 阪 市 立 科 学 館 の展 示 を用 いて解 説
屋 外 での実 験 は「大 阪 大 会 」の実 行 委 員 の多 くが、
2)7)
をするという企 画 である
。新 しい理 科 教 育 の方 法 と
「是 非 やってみたい」と思 っていたので、実 施 はすぐに
8)
して国 際 会 議 でも注 目 され 、5年 経 った今 でもこの企
決 まった。「大 阪 大 会 」実 行 委 員 会 に野 外 実 験 班 が自
9)
画は発 展し続 けている 。
然 発 生 的 に結 成 され、そこが主 体 となって実 行 するこ
このように発 展 してきた「大 阪 大 会 」には大 きな転 機
とになった。また、「自 然 科 学 の基 礎 を訪 ねる」実 行 委
があった。実 施 場 所 の変 更 である。2000年 8月 、それ
員 会 も加 わり、この両 者 が主 催 して運 営 することとなっ
までの「大 阪 市 立 科 学 館 」から「ハービスホール」へ会
た。
8月 に現 地 の下 見 を実 施 、出 展 者 の募 集 を行 い大
場 を移 した。大 阪 市 立 科 学 館 での地 道 な活 動 を続 け
てきた結 果 、出 展 希 望 も多くなり、土 日 の2日 開 催 であ
枠 が 決 まっ た 。以 下 に 実 行 委 員 、 役 員 等 を 記 す 。 実
っても、会 場 の容 量 の都 合 で,どちらか一 日 のみの出
行 委 員 の多 くが出 展 を兼 ねており、また逆 に出 展 者 に
展 で我 慢 してもらう状 況 になっていた。また来 場 者 も増
も全 体 の 準 備 を 手 伝 っ て 貰 い、最 小 の 経 費 と 人 手 で
え、いよいよ科 学 館 のスペースでは収 まらなくなってき
運 営を行った。
た 。そ し て い よ い よ 「 ハー ビ ス ホ ー ル」 で の 実 施 と な っ
た。
実行委員
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理科実験野外教室の試み
斎藤吉彦
脇島 修
コンクリートの球 殻 の形 で製 作 した大 阪 府 立 布 施 工 科
大阪市立科学館
高 校 の 生 徒 た ちの 寄 与 で ある 7 ) 。安 村 校 長 と 農 端 教
大 阪 府 教 育センター
安村博文
大 阪 府 立 布 施 工 業・工 科 高 等 学 校
諭 の指 導 のもと、独 自 の実 験 教 材 が青 少 年 の創 意 工
筒井和幸
大阪教育大学附属高等学校池田校舎
夫と努 力で完 成 した。
鈴木健二
大阪府立堺工科高等学校
高瀬賢志
読売新聞大阪本社
木舩弘一
大阪府立大学
廣瀬明浩
大阪教育大学附属天王寺中学校
浮田 裕
兵庫県立星陵高等学校
西村 弘
大阪府立東住吉高等学校
檀上慎二*
四 天 王 寺 高 等 学 校・中 学 校
至 田 雅 一 ** 大 阪 府 立 東 住 吉 高 等 学 校
*実 行 委 員 長 **副 実 行 委 員 長
顧 問およびアドバイザー
高橋憲明 大阪市立科学館
顧問
石井廣湖 大阪市立大学名誉教授
アドバイザー
藤原 守
アドバイザー
鬼塚史朗
大阪大学
元 大 阪 府 教 育 センター
写真 2
実 験「巨 大シャボン玉」の一こま
(写 真1,2 撮 影:大 阪 市 立 科 学 館 曽 我 部 孝 子)
「大 阪 大 会 」実 行 委 員 会 野 外 実 験 班 としては、野 外
アドバイザー
実 験 の 試 みを今 後 も引 き 続 いて行 い、科 学 の 祭 典 の
5 . 実施結 果
新 しい形として定 着させたいと考えていたが、今 回その
実 施 タ イト ルをごらん いただ いて お 分 かりのよ うに 、
可 能 性が確かめられた。
野 外 でこそやれる実 験が多 いのが特 徴である。幸 いに
6 . 意義
6-1.青 少 年 のための科 学 の祭 典 大 阪 大 会 と自 然 科
学の基 礎を訪ねる
「理 科 実 験 野 外 教 室 」について考 察 する前 に、まず
その母 体 である「大 阪 大 会 」について考 える。今 年 19
年 目 、第 20 回 を 迎 える「大 阪 大 会 」の 意 義 ・価 値 とし
て次 の8つを挙 げる。①子 どもの知 的 な成 長 を促 す場
② 親 子 の 繋 がりを 深 める 場 ③ 出 展 者 の 研 究 ・研 鑽 の
場 ④科 学 の種 まきの場 ⑤理 科 研 究 部 などの活 動 成
果 発 表 の場 ⑥最 新 の科 学 に触 れる場 ⑦新 採 教 員
の研 修・育 成の場 ⑧芸 術 教 育との融 合の場
写真 1 実 験「ドラム缶つぶし」の一こま
当 然 、これ以 外 にも多 くの意 義 ・価 値 がある。それら
はある面 「大 阪 大 会 」に関 わる個 々の人 たちの熱 意 に
も当 日 は晴 天 に恵 まれ、たくさんの家 族 連 れで賑 わっ
比 例 してどこまでも深 く、広 く、大 きいものになっていく
た。参 加 者 の 総 数 は約 300 0 人 であった。ドラ ム 缶 つ
可 能 性 を持 つ。「大 阪 大 会 」はそんな器 、場 としての度
ぶしや、火 を噴 くロケットなどの人 気 ブースの演 示 時 間
量の広さを持つ。そしてこれらの根 幹にあるのが「3.経
には、黒 山 の人だかりができるほどであった。
緯 」でも述 べた「大 阪 大 会 」の理 念 「理 科 教 育 を通 して、
出 展 者 は、教 員 だけでなく,教 員 の指 導 で勉 学 、研
自 立 型 人 間 を育 成 する」である。これが確 固 としたもの
究 、研 鑽 した高 校の科 学 部 や、地 域 の科 学クラブの自
であるため、安 易 な方 向に流 れることなく、「大 阪 大 会」
発 的 な参 加 が多 く、高 校 生 や中 学 生 が、来 場 者 に熱
は発 展を続けてきた。
心に説 明 する姿が目 立った。これは、8月のハービスホ
「大 阪 大 会 」の理 念 を前 面 に出 し、大 きな成 果 を挙
ールにおける「大 阪 大 会 」と同 様 、青 少 年 が前 面 に出
げているのが「自 然 科 学 の基 礎を訪 ねる」である。生 徒 、
て活 躍 するスタイルが、室 内 、野 外 問 わず、定 着 してき
学 生 は教 員 、学 芸 員 の指 導 のもと、自 ら学 び、研 究 し
た。
たことを研 鑽 の上 、科 学 館 の展 示 を用 い、また自 ら工
特 筆 すべきは実 験 ④に用 いる地 球 の模 型 を、鉄 筋
夫 して 来 場 者 に 伝 え る。多 様 な 層 、意 識 の 来 場 者 に
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至田 雅一,檀上 慎二,高橋 憲明
対 して自 らの「学 び」を上 手 く伝 えることは当 然 、簡 単
個 々の「創 造 性を活かし伸 ばす」ことができる。できるな
には行 かない。失 敗 し反 省 し更 に学 び、更 に工 夫 する。
ら、自 らの創 造 性 、人 間 性 の「スケールを大きく育 てる」
だからこそ、この一 連 の行 為 は「学 習 力 」と「人 間 力 」の
ことを目 指 し、「自 分 自 身 や常 識 の殻を打 ち破る」契 機
両 面 を鍛 えてくれる。それは彼 らの近 い将 来 に社 会 で
として欲しい。
必 ず必 要とされる「仕 事 力 」と「人 間 力 」に直 結 する。そ
さらに屋 外 は出 展 者 に 試 練 を与 える。暑 さや寒 さ、
れゆえに、学 びの場 としての「自 然 科 学 の基 礎 を訪 ね
暗 さ、風 や雨 など、まず室 内 では経 験 することは無 く、
る」の意 義 は深 い。学 生 ・生 徒 たちの独 自 の発 想 はこ
当 たり前 に思 えていたことが、当 たり前 ではなくなる。そ
9)
の研 究 班 の作 成 した大 阪 市 立 科 学 館 の解 説 書 にも
のような状 況 を想 定 しての準 備 と実 施 も進 めていかな
見 られる。
ければならない。いかなる環 境 の中 であっても「思 考 」
することができる「強 靱 な精 神 力 を養 う」には屋 外 は格
好の学びの場でもある。
6-2.見 えない第 一 歩
「大 阪 大 会 」も「自 然 科 学 の基 礎 を訪 ねる」も主 に室
内 、館 内 で 行 われる。その空 間 は基 本 的 に 快 適 な 温
7 . 今後 の 展開 と 展望
度 、湿 度 に保 たれている。そして、電 気 や水 などもそれ
我 が国 はもとより世 界 的 に見 ても、屋 外 で自 然 科 学
ほど不 便 なく使 える。当 然 、雨 や風 、寒 さ・暑 さや暗 さ、
の実 験 に一 日 浸 り、体 験 、思 考 することの出 来 る施 設
花 粉 や煙 に悩 まされることはない。「大 阪 大 会 」であれ
は残 念 ながら、まず皆 無 で ある。この企 画 はそれに近
ば机 、イス、掲 示パネル、看 板も用 意されている。
いものを導 入 する第 一 歩 として万 博 記 念 公 園 で 開 催
何 かをしようとして物 事 を進 めていくとき、まずその場
し、公 園 のあり方 、魅 力 を更 に引 き出 すことも狙 ってい
を確 保 し、その事 を実 施 できる環 境 を作 り上 げていくこ
る 。自 然 公 園 と して 、 景 観 、 雰 囲 気 の ほ か 、実 験 、 観
とが重 要な第 一 歩 である。室 内 での実 験はこの第 一 歩
測 、思 考 の場 としての公 園 の魅 力 、役 割 を創 造 するこ
がす でに 準 備 され て いる 場 合 がほとんど である 。す で
とも 併 せ て 提 案 し 、将 来 自 然 科 学 公 園 計 画 を 考 え る
に 快 適 な 環 境 が 用 意 され て いるの である 。あるも ので
基としたい。
利 用 できるものは利 用 すればいいわけだし、二 歩 目 か
ら歩み出せるのならそれに越 したことはない。
本 企 画 は、万 博 基 金 、日 本 財 団 助 成 金 を戴 いて実
施 したものである。大 阪 市 立 科 学 館 、関 西 サイエンス・
た だ 、そ の こ と に 慣 れ て し ま う の は 怖 い こ と で あ る 。
フォーラム、読 売 新 聞 大 阪 本 社 、在 大 阪 イタリア総 領
「あって当 たり前 」、「準 備 されていて当 然 」と無 意 識 に
事 館 のほか、日 本 物 理 教 育 学 会 近 畿 支 部 から後 援 を
思 っ て いるよう な ら 尚 、恐 ろ しい 。 言 い 過 ぎかも しれな
頂 いている。関 係 各 位 に深く感 謝 する。また,役 員 ,委
いが、それでは、全 てお膳 立 てされた中 でお遊 戯 をし
員の方々から寄 付を戴いたことも付 記 したい。
ている幼 な子 のようなものである。やはり準 備 された環
2009 年 11 月 開 催の第 1 回 に続き、2010 年は 5 月
境 の有 り難 さに気 付 く繊 細 な注 意 力 、見 えない所 で自
と 10 月に開 催する予 定 である。今 後とも広 範 なご理 解
分 たちを支 えてくれている人 たちの存 在 に気 づき感 謝
とご協 力をお願 いする次 第 である。
する純 粋 な感 性 が科 学 の世 界 を志 す若 者 にほしいも
のである。また、このことは指 導 者 自 身 がそのことを意
参考文 献
識することで、ある面 解 決 できる問 題とも思 われる。
1)万 博 公 園 理 科 実 験 野 外 教 室 実 験 解 説 書 (2009)
2)高 橋 憲 明 生 産と技 術 54(2005)No.2 2
3)高 橋 憲 明 Plagenom 3(2005)6
6-3.野 外 での実 験
今 回 、屋 外 の実 験 ではあるが、経 費 を最 小 にするた
4)至 田 雅 一 物 理 教 育 55(2007)4
め 設 営 の 問 題 を 最 低 限 にして、 必 要 な 電 気 、水 の 使
5)青 少 年 のための科 学 の 祭 典 大 阪 大 会 実 験 解 説
用 も各 実 験 班 で解 決 することを目 指 した。実 験 設 備 の
書 (1994-2009)各 号
搬 入 、搬 出 にも問 題 があったが、これも各 実 験 班 に解
6)中 井 浩 二 社 会 に開 かれた「科 学 教 育 の拠 点 」-大
決 を委 ねることにした。早 朝 と夕 刻 のみの短 い準 備 時
阪 市 立 科 学 館-
間 のもと、厳 しいようであるが、これらすべてが訓 練 であ
http://viva-ars.com/bulletin/vol2/ntakahasi.html
るとの見 方 からである。多 くの準 備 を自 らが主 となって
7)筒 井 和 幸 、広 瀬 明 浩 物 理 教 育 55(2007)3
実 施 していくことで、「総 合 的 な力を養う」ことができる。
8)N. Takahashi, K. Tsutsui, Y. Saito, A. Hirose, M.
何 もない広 大 な芝 生 の上 で、各 班 が実 験 の準 備 を
していく。これは将 に無 から有 を生 み出 していく創 造 の
Tanemura, J. Phys. Edu. Soc. Japan, Suppl.,(2008)
320-321.
過 程 である。心 に描 いた計 画 が 具 体 的 な 形 に変 化 し
9)自 然 科 学の基 礎を訪ねる 大 阪 市 立 科 学 館ガイド
ていく。屋 外 という自 由 度 が高 い所 であるからこそ、
(2005-2008)各 号
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