地域猫

地域猫
~現代における人と猫の関わりについて~
0711233 前田 沙智子 1
指導教員 藤掛洋子
【背景と目的】地域猫とは、特定の飼い主のいない猫で
なおかつ、その猫が生活している地域の住民によって世
話をされ、捕獲され、去勢・不妊手術が行われ、元にい
た場所へ戻された猫を指す。このような一連の活動を
TNR(Trap-Neuter-Return Program)活動と呼ぶ。今日のペ
ットブームにより安易な気持ちでペットを購入し、自分の
手に負えなくなると簡単に遺棄してしまう為、野生(野良)
化した動物が増加し、人間に様々な被害を与えている。
結果、人間の手前勝手な都合で猫などの捨てられた動
物たちは殺処分されている。
本研究では、殺処分以外の野良猫を減らすための方
法として地域猫活動が有効ではないかと考え、地域猫の
取り組みや現状を分析する。具体的にはCat café’ Miysis
と「つるみ地域猫をすすめる会2」を事例とする。
【方法】文献・資料・インターネットによる調査、インタビュ
ー、アンケートによる調査・分析。
【結果及び考察】地域猫活動とは、地域にいる猫に対し
てその地域の住民のボランティア(以下、ボランティア)が
保護活動を行うものである。具体的には、ボランティアが
地域住民の理解を得て、定期的なパトロールを行い、置
き餌をしないように働きかけたり、トイレの設置や清掃を
するなどの TNR 活動を行うことである。地域猫という言葉
は 12 年ほど前に神奈川区福祉保健センター職員・獣医
師の黒澤泰が作った言葉であり、近年浸透しつつある。
しかし、地域猫という言葉だけが一人歩きをしており、間
違った地域猫活動が問題となっている。例えば、野良猫
に餌やりをするだけで地域猫活動と誤解をしているなど
である。そのためボランティアは、地域住民からは誤解を
受け、地域猫活動に反対されたり、地域住民自身の猫嫌
いに拍車をかけてしまう原因となっている。
野良猫が増えてしまった大きな理由は、元は飼われて
いた猫が遺棄され、その猫が繁殖し増加したことである、
そもそも動物を遺棄することは 動物愛護 法 違反となり、
動物愛護管理法 44 条 3 項 に問われ、30 万円以下の罰
金に処される。なぜ動物を遺棄する人が減らないのか、
その理由はこの法律があまり知られていないことだろう。
年 間 20 万 匹 以 上 の 猫 が 殺 処 分 さ れ て い る
(http://www.alive-net.net/index.html)が、殺処分数は犬の
約2倍で、殺処分には税金が使われている。殺処分に使
われている税金は数百万~数十億円とも言われている。
横浜市鶴見区で地域猫を広める活動を行っている「つ
るみ地域猫をすすめる会」(2005 年 4 月に発足)(以下、
すすめる会)の A さんは、会の活動が住民からの理解を
得るためには、行政の力が必要だと指摘する。住民に地
域猫活動の説明を行おうとしても、住民からはただの猫
好きの集まりと勘違いされ、説明の場を設けることが難
しいからである。行政が説明会や住民との話し合いの場
を設けてくれれば、ただの猫好きの集まりだとは思われ
ないだろうし、住民も集まってくれるはずだと A さんは
感じている。現在、すすめる会は猫に餌やっている住民
の依頼で TNR 活動や自活できない子猫、様々な問題か
ら元いた場所に帰すことが出来ない猫の保護や里親探し
を行っている。里親が見つかるまでは会のメンバーの自
宅で世話を行っているため金銭面で限界を感じている。
なお、すすめる会は、現在(2011.1.8)ボランティアグルー
プ「つるみ・猫のカギしっぽ」と会の名称を改め TNR
活動と飼い主のいない猫の譲渡を中心に行っている。
Cat café’ Miysis では、すすめる会や他のボランティア
団体で里親を募集している猫を選抜し、猫スタッフと同じ
フロアで遊ばせている。この活動における里親募集の利
点は、人や先住猫と慣れさせることや、写真を見るよりも
実際に里親希望者に猫と遊んでもらい、その猫の性格を
知ってもらうことにある。同時に地域猫について知っても
らうことも出来る。なお、譲渡の際はアンケート・面接を行
い、猫を家族として迎えることができるのかどうかをカフェ
の責任者が判断する。譲渡が決まった場合、猫の検査や
各ワクチンの接種などの、捕獲から飼い主の下へ行くま
でにかかった費用を全て里親が負担する取り決めとなっ
ている。
【結論】地域猫活動は、一般社会に認知されるにはまだ
まだ時間と費用がかかり、行政の力がないと難しいが、
殺処分をするだけでは野良猫を減らすことは出来ない。
減らすのではなく、自然に 0 になるようにすることが必要
なのである。殺すために税金を使うよりも、無駄に殺して
しまう命を減らすために税金を使った方が倫理にかなっ
ているのではないかと考える。法律を制定するのみでは
不十分であり、私たち一人ひとりのペットに対する認識を
簡単に遺棄出来るモノではなく、人と共に生きる命あるも
のと改めることが必要である。猫は室内飼いにし、放し飼
いはしないこと、出来るだけペットショップではなく、保健
所や里親募集を行っている団体から譲渡してもらうこと、
購入・譲渡された後はマイクロチップ 3 の注入・登録 4 や
TNR活動を行うことが必要だと考える。
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SachikoMAEDA
直径約 2mm×長さ約 13mm のガラス製・円筒形の電子
標識器具、それぞれのチップには、国コード、動物種コ
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ード、個体番号等が組み合わされた、世界でただ 1 つの
個体識別番号が記録されており、犬・猫の遺棄を防ぐ。
注入は獣医師の下で行う、注入は通常、犬・猫とも生後
約 2 週間で可能だが個体差がある。
(http://www.animalpolice.net/jyoho/microtip/index.ht
ml)
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