渋谷教育学園渋谷高等学校2年 大里優佳 割り箸製造業は復活できるか はじめに 小学生の頃に初めて間伐体験をしたとき、適度な間伐は環境破壊ではなく、むしろ木の生長を促すと学んだ。しか しその間伐が疎かになっていることと、それに伴い割り箸製造業も衰退しているという現状を知った。いつでも手に 入りかつ日本文化でもある割り箸を復活させたいと思った。 先行研究の分析 割り箸は日本の木の文化の代表である。しかし現在消費されている割り箸の約 97%は輸入品で、そのほとんどは中 国からである。工場の数も労働者の数も平成初期に比べると大幅に減少した。 このような衰退を招いたのにはいくつか原因がある。1つ目は国産材の市場への運搬費が高く、原価は安いのに店 頭では高く売られてしまい、消費者の手に届きにくくなったこと。2 つ目は若者の林業離れによる労働力不足。この 2 つは労働者の間伐に対する意欲低下に結びついた。3 つ目は日本の割り箸について誤解している人がいること。世界で 木の過剰伐採が問題になってきてから、 「割り箸製造=環境破壊」だと思っている人がいるが日本は違う。日本の森林 は年々木が込み入るようになり、間伐が必須である上、割り箸は端材を用いたエコな製品である。同時に割り箸消費 量も減ってしまった。林業衰退の現状奪回のため、国もいくつかの対策に乗り出した。 以上のことから仮説を立てた。1.間伐推進 方々の意志の持続 2.店頭での木材価格の抑制 3.消費者の意識の訂正 4.割り箸工場の の 4 つができれば製造業復活は十分可能であるというものである。 リサーチ・論証 まず国が行っている間伐推進事業がどれほど成果を挙げているか調べた。国が主に取り組んでいるのは林業施業集 約化と低コスト・高効率な作業システムや機械の導入である。3 都市の事例から間伐推進は徐々に全国規模で行われる ようになり、成果を挙げることができると思った。また緑の雇用によって未経験者でも林業に従事できる機会が導入 されたことで、新規就業者数が劇的に増えた。 木材価格については、端材を最大限に利用して地産地消を行っている方に問い合わせをしたところ、現在の発展し た IT 企業と連携すれば木材運搬費を削減できるとおっしゃっていた。リアルタイムで林業従事者と販売者がお互いの 状況を把握しあうことができるからである。 また校内と地元で割り箸と林業に関する意識調査のためアンケートを行った。割り箸を使うことをもったいないと 思っている人が多数いること、林業体験の機会が少ないこと、国の支援活動はまだ林業に興味のある人にしか成果を 出していないということなどが浮き彫りになった。 そして割り箸工場にインタビューと問い合わせをした。全ての方が口を揃えて言っていたのは、環境保護であった。 日本の割り箸は端材を用いているということをコンセプトにしていた。どの方からも続けたいという意志を感じた。 最後に自分自身、間伐活動に参加して、森林が与えてくれる癒しや自然の恵みを感じるとともに、改めて間伐の大 切さや楽しさを肌で感じることができた。 結論 私は十分可能であると結論付ける。仮説として立てた4項目は達成可能な見通しがあり、成果を挙げることができ ると考えたからである。しかし現状のままでは復活はできない。国と消費者と生産者がそれぞれ役割を果たす必要が ある。国は財政援助、森林活動の大規模な宣伝、林業体験の機会の増加を試みるべきである。消費者はまわりの情報 に流されず、きちんとした情報源から正しい知識を得て、割り箸に対する理解を深める必要がある。生産者は、自分 たちの仕事の PR をしてより多くの消費者に関心を持ってもらうことと、後世のための人材養成に努めるべきである。
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