17022003.pdf http://www.wacom.co.jp/ 企 業 6727 ワコム 山 田 正 彦 (ヤマダ マサヒコ) 株式会社ワコム社長 「デジタルペーパー」時代の グローバルリーダー ◆第3四半期末決算の概要 平成17年3月期第3四半期決算の概要について説明する。売上高は126億97百万円(前年同期比4.7%増)と なり、主力事業である電子機器事業が6.3%増で、特にプロフェッショナル向け新製品の市場投入や、コンポー ネント分野の事業拡大を積極的に展開してきたが、一方でコンシューマラインがやや減速気味であった。ま た、ECS事業は前年同期比18.5%減、EHI事業は5.2%増となった。 営業利益は12億44百万円(同0.6%増)で、主力の電子機器事業は新製品の開発費、WDS(韓国現地法人)、 WCC上海事務所設立等で販管費が増加したため、ほぼ前年並みに推移した。ECS事業については経費節減等 を図ったが、売上高同様24.9%の減少となった。EHI事業は収益の改善(赤字90百万円→53百万円)はみら れたが、赤字解消には至らなかった。 また、経常利益は主に営業利益に為替差益分等が上乗せされ12億84百万円(同6.5%増)に、当期純利益は 6億82百万円(同11.3%増)となった。売上総利益率は51.2%(前年同期52.0%)とわずかながら低下、営 業利益率も9.8%(同10.2%)となっている。 主力の電子機器事業は前述のとおり前年同期比6.3%伸びて120億60百万円となり、売上高構成比で95.0% を占め逐年1~2ポイントそのウエートは上昇しており、通期ではもう少し上昇するものと思われる。 販管費は52億52百万円(前年同期比3.5%増)で、研究開発費がプロフェッショナル向け新製品「Intuos3シリーズ」の開発、携帯電話向けセンサーコントローラ「W8002」の開発を主因に5億74百万円(同20.6% 増)、「その他」がWDS、WCC上海事務所の設立等により16億36百万円(同7.2%増)とそれぞれ増加、人 件費は20億51百万円(同0.5%減)、広告宣伝・販促費は9億91百万円(同1.8%減)とほぼ同水準であった。 なお、現在WDSの社員は8名、WCCは19名となっている。 ◆事業ハイライト 当社事業のハイライトを簡単に説明したい。電子機器事業のうち、タブレットビジネスについてはプロ フェッショナルグラフィックス・タブレットが、旧製品を含めて堅調に推移、グッドデザイン賞を受賞したこ ともあって、世界的に好調で売上高は前年同期比で13.5%増加して業績の向上に貢献した。 コンシューマグラフィックス・タブレットは個人向けPCの需要停滞を受けて7.3%の減少となった。日本と 欧米が成長を減速させたが、アジアパシフィック向けと国内の文教分野は好調で、特に12月は過去最高の売 上を記録した。 また、液晶一体型タブレットは売上台数では20%程度増加したが、液晶モニターの低価格化進行に引きず られて売上高は5.9%減となった。欧州、アジアが台数、売上高共に好調、米国も単価調整で受注は好調であっ たが、基幹部品のひっ迫により対応不能となった。日本国内は回復基調にあるが前年レベルに届かなかった。 コンポーネントビジネスについては、タブレットPC向けが米国市場を中心に堅調に推移して、前年同期比 で31.3%増となった。一部大口ユーザーの購入が第3四半期は製品ラインの切り替えなどのためにやや減速し た。主要サイズが10.4インチから12.1インチにシフトしているので、平均単価は上昇しており、減速は一時 的調整ととらえている。また、大型タブレットPC向けコントローラ(W8003)を開発した。 次世代携帯電話用のワンチップコントローラ(W8002)については10月からサンプル出荷を開始し、これ をサポートする形でデジタルサイン認証技術の世界的大手ベンダーとの技術提携を10月に行い目下量産化へ の対応を行っている。 そのほかには、ロゴキャンペーンをはじめ、グローバルブランドプロジェクトを開始し、ワコム製品の認知 度の向上を図っている。また、WDSが順調な立ち上げを見せていることに加えて、モスクワに合弁会社「ワ コムロシア」を設立した。現在の市場規模は小さいが大きな伸びを予想している。 ECS事業については、CADの新製品を出して既存ユーザーの囲い込みを図るとともに、付加価値を向上さ せてユーザーの維持、拡大に努めていきたいと考える。PDM(製品情報管理)についてはパッケージ販売が 減少傾向にあるので、これまでのビジネスのノウハウを生かして、サービス販売へ移行を図り、SIサポート業 本著作物の著作権は、社団法人 日本証券アナリスト協会 R に属します。 務として受注を開始し、人材派遣を行うこととした。 EHI事業は電子印鑑システムの本格運用と試験運用の合計が300を超えたが、まだ売上は大きいとは言えな い。しかし、最近はセキュリティーに対する意識も高まっているので、試験運用サイトについてはしっかりサ ポートして本格運用につなげていきたい。また、ワークフロー・文書管理システムについては、ASPとの協 業拡大を図っており、テレビ会議用端末はソフトベンダーとの協業を開始した。なお、当社は11月1日付で日 本証券業協会から「貸借銘柄」に選定していただいたこと、並びにBCN AWARD 2005タブレット部門の最 優秀賞を6年連続で受賞したこと、およびBCNの調査で国内シェア95.8%と発表されたことを付記しておく。 ◆セグメント別売上高等 電子機器事業の所在地別売上高は、コンポーネント23億70百万円(前年同期比31.3%増)、国内37億74百 、欧州24億47百万円(同4.4%増)、アジア2億92百万円 万円(同1.6%増)、米国31億76百万円(同3.3%減) (同46.6%増)となっている。なお、米国は現地通貨ベースでは3.0%のアップである。 四半期別に売上高の推移を見ると、従来のパターンは第2、第3四半期と右肩上がりで、第4四半期が若干下 がる傾向であったが、今期についてはこの1~3月にコンシューマ等の新製品が多数出るので、従来の形が崩 れてくると思われるほか、コンポーネントビジネスの動向によっても変動が考えられる。 次に、製品ライン別の売上高を見ると、プロフェッショナルは44億15百万円(前年同期比13.5%増)であ るが、ボリューム的には20%強の増加である。コンシューマは30億43百万円(同7.3%減)でボリュームは わずか数パーセントの減少、液晶一体型はボリューム的には20%程度増加したが22億33百万円(同5.9%減) で、両者とも価格低下の影響を受けてこのような形となった。また、コンポーネントは23億70百万円(同31.3 %増)となっている。 連結貸借対照表については構造上の大きな変化はなく、強いて挙げれば、売掛金の増加による流動資産の増 加や長期・短期の有利子負債の減少による負債の減少である。結果として自己資本比率が48.1%(前期末43.9 %)まで上がり、1株当たり株式資本は6,122円増加した。なお、資本合計の増加にはストックオプションの 行使に伴う株式発行による収入1億13百万円が含まれている。 キャッシュフローの要点としては、営業活動によるキャッシュフローでは仕入れ債務の増加6億円、訴訟和 解金の支払い4億33百万円等により4億25百万円の収入、投資活動によるキャッシュフローでは旧本社の売却 72百万円、固定資産の取得1億71百万円等により29百万円の支出、財務活動によるキャッシュフローでは長 期借入金返済2億53百万円、短期借入金の減少2億円、配当金支払い1億88百万円等により6億1百万円の支出 となって、この結果、期末残高は35億90百万円となった。 ◆第4四半期の主要施策と通期予想 主要施策として、電子機器事業においては、①タブレットビジネスの継続的成長を図っていくこととして、 Intuos3の世界的な販売拡大と新規市場の開発、コンシューマ新規製品の拡大と認知の向上、液晶一体型タブ レットの販売拡大に努め、②コンポーネントビジネスの継続的成長としては、タブレットPCへの安定的供給 と新規ユーザーの拡大、携帯電話メーカーの新規ユーザーの拡大、W8002 の量産化への対応等に注力、③ SCM体制の整備、④R&Dの充実、を実施していきたい。 ECS事業の主要施策としては、①新製品「ECAD/dio5.O」の拡販、②PDM事業の新ビジネスモデルの推 進、そして、EHI事業においては、①自治体、民間企業における採用活動の推進、②電子印鑑の認知活動の継 続、③ワークフロー・文書管理分野への利用拡大に、それぞれ注力することとしている。 、経常 以上の諸施策によって本年3月期の業績見通しは、連結においては売上高184億円(前期比11.4%増) 利益17億80百万円(同6.6%増)、当期純利益8億50百万円(同44.3%増)とし、単体においては売上高150 億円(同21.4%増) 、経常利益12億20百万円(同58.5%増)、当期純利益6億20百万円(同30.0%増)と、い ずれも増収増益を見込んでいる。 当社のビジョンは、「ヒューマンインターフェイス・ソリューション」に集中し、新しいデジタルペーパー 時代の「デ・ファクト・スタンダード」になることであり、中期経営計画においては、平成20年3月期までに 平均売上成長率20%、営業利益率12%を目標としている。その実現のため、①タブレット事業ラインの継続 的拡大、②新規事業、新規技術の開発、③顧客満足度の追求、④パートナーシップの拡大、以上の4項目を当 面の戦略としてまい進していきたい。 (平成17年1月28日・東京) 本著作物の著作権は、社団法人 日本証券アナリスト協会 R に属します。
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