PDF: 214KB - Investor Relations | Wacom

16121038.pdf
http://www.wacom.co.jp/
企 業
6727
ワコム
山 田 正 彦
(ヤマダ マサヒコ)
株式会社ワコム社長
顧客満足度を追求し、付加価値向上を目指す
◆今期中間決算の概要
今期中間期の売上高は前年同期比6.0%増の79億76百万円、営業利益は同19.1%増の5億85百万円となっ
た。営業利益率では同0.8%ポイント増の7.3%であった。また、経常利益は同37.3%増の6億40百万円、当期
純利益は同56.6%増の2億94百万円という結果になった。
事業セグメント別に見ると、売上高では当社の主力事業である電子機器事業が前年同期比7.8%増、ECS事
業が同17.1 %減、EHI 事業が同41.9 %減である。営業利益では電子機器事業が同10.5 %増、ECS 事業が同
42.3%減、EHI事業はマイナス46百万円となった。
販売費および一般管理費の内訳を見ると、人件費はほぼ昨年並みに抑え、研究開発費は前年同期比7.6%増
である。研究開発費の増は今期上期に出した新商品Intuos3の全世界リリースと携帯電話向けセンサーコント
ローラのIC開発によるものが大きい。広告宣伝費、販促費はほぼ前年並みで推移した。その他費用増加の大
きな要因にはWDS(韓国現地法人)設立とWCC上海事務所設立が挙げられる。
◆今期の事業ハイライト
当社の電子機器事業のタブレットビジネスには、プロフェッショナル、コンシューマ、液晶一体型の三つの
カテゴリーがある。
まずプロフェッショナルグラフィックス・タブレットは上期売上高で前年同期比2.3%増となった。旧製品
のドライアウト(製品入れ替えのための店頭在庫調整)を考慮すると、堅調に推移したと考えている。9月に
Intuos3を全世界同時に投入し、高い評価を得、日本でもグッドデザイン賞を受賞した。下期もIntuos3の販
売に力を入れていく。コンシューマグラフィックス・タブレットは、第1四半期は非常に良かったが、第2四
半期はコンシューマPCの店頭需要が停滞した影響を受け、中間期売上高では前年同期比9.5%減となった。液
晶一体型タブレットは台数が2割弱増加したが、低価格化が進行しており、全体としては7.8%減という残念
な結果になった。欧州、アジアでは台数、売上共に好調だったが、日本と米国では単価の引き下げ以上に販売
台数を増加できず、売上の伸びには結び付けられなかった。
次に電子機器事業のコンポーネントビジネスでは、タブレットPC向けが米国市場を中心に非常に好調で、
売上高が前年同期比で89.8%増と急成長した。主要サイズが10.4インチから12.1インチへと拡大しており、
その結果として平均販売単価も上がっている。またタブレットPCの大型化に対応するため、大型タブレット
PC向けコントローラ(W8003)の開発を進めてきた。さらにAT Cross社と「ペナブルエグゼクティブペン」
というタブレットPCの専用ペンを作り、6月に発売した。携帯電話関連では、小型情報端末向けコントロー
ラIC(W8002)を完成させ、10月よりサンプル出荷を開始した。下半期にどのくらい量産に結び付くかが業
績に影響を与えるだろう。そのほかには、グローバルブランドプロジェクトや韓国現地法人の立ち上げに取り
組んだ。
ECS事業では、既存の電気系CADユーザーに対して継続的なサポートを行ってきた。また、PDM(プロダ
クトデータマネジメント)製品については、競合がかなり激しくなっており、パッケージ販売が減少したこと
がECS事業の売上減の原因となった。目下、市場環境の変化を踏まえて、パッケージ販売からQA・サポート
サービスといった付加価値サービスを販売する形にビジネスモデルを転換していこうと考えている。
EHI事業では、電子印鑑を中心としたセキュリティ関連の事業を行っている。現在ボリュームはまだそれほ
ど大きくはないが、電子印鑑を導入した自治体、民間企業は300を超えた。
◆下半期の主要施策
電子機器事業では、タブレットビジネスの継続的成長を図る。Intuos3の世界的な販売拡大を最優先する。
特に中国、豪州、韓国、ロシアといった新規市場における販路拡大を図る。またコンシューマー新規製品の拡
大と認知向上を図るため、コミック市場向け商品、ワイヤレスタブレットなどの新商品を投入する。タブレッ
本著作物の著作権は、社団法人 日本証券アナリスト協会 R に属します。
トは長く使ってもらうことが非常に重要であり、印刷広告媒体ばかりでなく、口コミベースでユーザーが大き
く広がっていく製品ラインである。このためPCスクールなどに提供して、その良さを理解していただく活動
を地道に進めている。
液晶一体型タブレットでは、この下期に大型製品を幾つか出す。商品ラインを拡大しつつ、プロフェッショ
ナルのIntuosユーザーを液晶一体型タブレットに移行することで、売上と利益を確保していきたい。文教市場
も拡大しており、液晶一体型タブレットを授業で使う先生方も増えてきており、期待できる。またマウスの代
わりに使うビジネスタブレットを今後市場投入していく。特に日本市場、アジア・パシフィック市場の需要が
非常に大きいとみている。
コンポーネント事業では、ボリュームが大きくなっているので、安定供給できる体制づくりがビジネス成功
にとっての第一の要件である。新規ユーザーをきちんととらえつつ、現行ユーザーに十分なボリュームを供給
することが下半期の重要な課題である。また、ペナブル(ワコムのペンで動く)のアプリケーションパート
ナーの拡大を進める。10月に行った、金融機関向けサイン認証ソフト開発の世界的大手であるドイツのソフ
トプロ社との技術提携も、その動きの一つである。
当社製品の安定供給という点では、グローバルSCM体制の整備を今春より取り組み、コスト競争力の向上
を課題としている。当社のサプライチェーンでは、既に8割以上が海外で製品を作っており、ファブレスカン
パニーに近づいている。現在中国の南部から上海以北へとサプライチェーンの拠点を移していく作業に取り組
んでいる。
R&D関連では、次期基礎技術の開発が大きな課題である。また既存技術に関連した新たな技術を付加する
ための開発も重要課題として取り組んでいる。
ECS事業ではパッケージ製品販売からQA・サポートサービス販売へのビジネスモデルの変更が大きなポイ
ントである。EHI事業については電子印鑑の認知活動を継続していきたい。
◆決算通期見通しと事業戦略
連結売上高は平成16年3月期の165億15百万円に対して、今期は184億円と予想している。下半期の施策が
きちんとできればこのレベルまでいけるだろう。懸念しているのは、このところの円高傾向により全体の売上
高が若干影響を受けるかもしれないことである。特に米国の売上比率は欧州に比べて高く、またコンポーネン
トはほとんどドルで売られているため、若干影響を受ける可能性があるとみている。
当社の基本的な事業戦略は、タブレットビジネスをきちんと維持、拡大しながら、コンポーネントビジネス
拡大に必要な技術をきちんと伸ばしていくことである。
電子機器事業は四つのセグメントからなる。各セグメントの戦略の概略は、プロフェッショナル部門では先
進的なデザインツールを作り続けること、コンシューマー部門では直感的で使いやすい入力機器を提供するこ
と、液晶一体型タブレット部門においては業務分野のIT利用を拡大していくこと、そしてコンポーネントビジ
ネス部門では低価格高性能なペン技術のモバイル情報機器、情報家電や玩具などへの利用を拡大することであ
る。将来、当社のペンがどのディスプレーの上でも動くようになれば、まさに当社の技術がペン入力におけ
る、デジタルペーパー時代のデファクトスタンダードになったと言える。当社の持つ基盤を生かし、新しい
チャンスをしっかり形にすれば実現可能と確信している。
中長期ビジョンとしては、事業領域をヒューマンインターフェイス分野に特化する。当社はPCを作るメー
カーでも、アプリケーションメーカーでもない。人間とコンピューターがつながる領域に特化したい。ペン入
力技術を基盤として、更にユーザーインターフェイス技術を拡大していきたい。将来デジタルペーパーという
薄いコンピューターが当たり前のように使われる時代が来る。そのときにワコムのペンを持っていればどのコ
ンピューターの上でも使える環境をつくっていく。具体的な中期の数値目標は、当社25期(平成20年3月期)
までに平均売上年成長率20%、営業利益率12%である。現在当社がやっていることがきちんと結果になれば
十分到達できるだろう。
当社は技術の会社であるが、最終的には顧客満足度を追求している。使って楽しい製品を日々つくっていく
ことが基本である。そういう面で当社がリーダーシップを握った上で、コストやデリバリー面でも全世界の
トップになりたい。またサポートサービス、Webサービスによる付加価値向上を目指しながら、ワコムのユー
ザーがワコムという会社とともに成長していく環境を整えていきたい。すべてが当社だけでできるわけではな
い。パートナーシップを拡大していくことを前提にこれからのビジネスモデルをつくっていきたい。OS、ディ
スプレー、アプリケーションなどの各社と協力しながら新しいワコムをつくっていく。当社としてやるべきこ
とは分かっているので、一つ一つ確実に結果を出していこうと考えている。
(平成16年11月18日・東京)
本著作物の著作権は、社団法人 日本証券アナリスト協会 R に属します。