甲州種ブドウの遊離アミノ酸と生成ワイン品質の関係 1 ○小松正和 ,恩田匠 1 ,中山忠博 1 ,上垣良信 2 ,鈴木幾雄 3 ,荘富盛 3 ,斉藤典義 3 , 久本雅嗣 4 ,奥田徹 4 ,前島善福 5 ( 1 山梨県工業技術センター, 2 山梨県富士工業技術センター, 3 山梨県果樹試験場, 4 山梨大学ワイン科学センター, 5 山梨県ワイン酒造組合) Free Amino Acid Content in Koshu Grapes and Wine Quality ○ Masakazu KOMATSU 1 , Takumi ONDA 1 , Tadahiro NAKAYAMA 1 , Yoshinobu UEGAKI 2 , Ikuo SUZUKI 3 , Tomimori SHOU 3 , Noriyoshi SAITO 3 , Masashi HISAMOTO 4 , Tohru OKUDA 4 , Yoshitomi MAESHIMA 5 ( 1 Yamanashi Pref. Industrial Technology Center, Yamanashi Pref. Fuji Industrial Technology Center, 3 Yamanashi Pref. Fruit Tree Experiment Station, 4 The Institute of Enology and Viticulture, University of Yamanashi, 5 Wine Manufacturers' Association Yamanashi Pref.) The relationship between free amino acid content in Koshu grapes and the quality of wines made from them was investigated over a two-year period. The contents and composition ratios of amino acids differed among grapes, but the features of amino acids in grapes from the same vineyard were comparable in the two-year period. Yeast assimilable amino acid content showed a positive correlation with fermentation rate, the amount of flavor components, and the sensory evaluation score. It is suggested that yeast assimilable amino acid content is an important factor that should be considered in the vinification of high-quality Koshu wine. 【目的】 我々は, ‘甲州種’ワインの高品質化に向けた取り組みの一環として,山梨県内の複数の圃場 の甲州種ブドウを用いて,同一条件でワインの試験醸造を行い,生成されるワインの特徴を調 べてきた.特に,2007 年度に実施した 23 圃場の甲州種ブドウを用いた検討から,生成ワイン には圃場ごとの特徴が見いだされ,特に果汁に含まれる酵母資化性の遊離アミノ酸(以下,資 化性アミノ酸)含量が高い甲州種ブドウからは,香りが高く,官能の上でも評価の高いワイン が得られることが明らかとなった.しかしながら,ブドウの収穫年度や使用する酵母の違いに より,この傾向が異なる可能性が考えられた. そこで,本研究では,2007 年度と重複する山梨県内の 13 圃場で 2008 年度に栽培された甲州 種ブドウを用いて,果汁の分析と,生成ワインの特徴について調べ,2007 年度の結果との比較 を行った. 【材料と方法】 2008 年度に,山梨県内の 13 圃場(2007 年度と栽培管理が異なる圃場を含む)で醸造向けに 栽培された甲州種ブドウを原料として,一定の醸造条件(搾汁率:46.5%,補糖後転化糖:22%, 発酵温度:18℃,酵母:Zymaflore VL-1(2007 年度は Zymaflore VL-3)で試験醸造を実施した. ブドウ果汁および生成ワインについて,各種成分分析(糖類,有機酸類,ミネラル,遊離アミ ノ酸,香気成分等の組成及び含量)を行うとともに,ワインの香味に関する官能評価(42 名(2007 年度は 39 名)を実施した. 【結果と考察】 果汁中に含まれる種々の遊離アミノ酸を分析した結果,両年度ともに含量や組成に圃場間で大 きな差異が認められた(資化性アミノ酸含量:358-982mg/L(2007 年度),422-1157mg/L(2008 年度)).両年度の圃場ごとの遊離アミノ酸組成は,年度に依らず類似した傾向を示した(Fig.1 プロリン含量の年度比較). 果汁中の資化性アミノ酸含量と,ワイン中の香気成分(酢酸イソアミル,酢酸ヘキシル,カ プロン酸エチル,カプリル酸エチル,カプリン酸エチル)の関係を調べたところ,両年度とも 強い正の相関が認められた.また,資化性アミノ酸含量と発酵日数の間にも両年度とも強い負 の相関が認められ,資化性アミノ酸が発酵速度や香気生成に影響を及ぼしていることが確認さ れた. さらに,ワインの官能評価結果から,両年度ともに資化性アミノ酸量の高い果汁から醸成し たワインほど,香味に関するスコアが高く,良好なワインとなる傾向がみられた. 以上のことから,異なる栽培年度において,かつ異なる酵母を用いても,生成されるワイン には圃場毎の特徴が認められることがわかった.すなわち,果汁中の資化性アミノ酸含量が高 い甲州種ブドウから,香気成分含量が高く,官能評価上のスコアが高いワインが得られること が裏付けられた. 今後は資化性アミノ酸が高い原料ブドウが得られる栽培・土壌条件を明らかにしていきたい. Figure 1. Proline contents in Koshu grape juices in 2007 and 2008. <参考文献> (1) 小松正和ら: 日本ブドウ・ワイン学会誌 , 18, 156-157(2007) (2) 小松正和ら: 日本ブドウ・ワイン学会誌 , 19, 78-79(2008)
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