当院における超高齢者に対する アミオダロン(錠)の

《作業者:》 Title:アミオダ12_一般13_澤田.ec5 Page:68
.
.
(
.
): ∼ 一般講演 1
3
当院における超高齢者に対する
アミオダロン(錠)の使用経験
澤田 三紀
大坂友美子
大友建一郎
大西健太郎
中村 知史
栗原 顕
高山 啓
小野 裕一
清水 茂雄*
はじめに
症例呈示
アミオダロンは頻脈性不整脈に対する有効性が広く
1.症 例 2
認められている.一方,アミオダロン投与による致死
1歳,男性.
症 例:8
的合併症の報告もみられる.
(図1)
:DCMおよび心不全にて初回入院とな
経 過
高齢化社会を迎えつつある現在,薬物治療を要する
り,12誘導心電図にて左脚ブロック型の所見を認めた.
疾病が超高齢者に発症することもあり,そうした薬物
左室造影ではLVEF 34%と心機能が低下しており,び
が超高齢者にも安全に使用できるかどうか検討する必
まん性に壁運動低下が認められた.
要がある.そこで今回,超高齢者に対する当院のアミ
入院中のモニター心電図にて非持続性VTが記録さ
オダロン使用経験について検討したので報告する.
れたため,アミオダロン20
0 mg/日を開始するととも
に,β遮断薬およびアンジオテンシン変換酵素阻害薬
対
象
を併用した.しかし,徐々にBNPが上昇し始めて3
00
2
0
0
6年4月から2
0
0
7年3月までの期間に当院でアミ
pg/mLを超え,2
00
5年1月には心不全再発により再入
オダロンを投与された102例のうち,8
0歳以上で長期
院となった.薬物治療の限界と考え,心臓再同期療法
経過を観察し得た7例
(男性4例,女性3例)
を対象と
(CRT)デバイスの植え込みを施行したところ,以降は
した.年齢は8
59
. ±51
. 歳,体重は5
24
. ±151
. kgであった.
BNPが10
0 pg/mL前後で推移している.現在まで甲状
患者背景を表1に示す.基礎心疾患は,陳旧性心筋
腺機能やKL―6には異常を認めていない.
梗塞
(OMI)が3例,拡張型心筋症
(DCM)が2例,その
2.症 例 4
他の心筋症が2例という内訳である.治療対象の不整
4歳,男性.
症 例:8
脈として,心室頻拍
(VT)が4例,心室細動
(VF)が1
9
9
7年,OMIのため冠動脈バイパス術を施
既往歴:1
例,発作性心房細動
(PAF)が2例で認められており,
左室駆出率
(LVEF)
は4
26
. ±1
13
. %であった.
行.
(図2)
:2
00
4年12月,失神発作を来して当院受
経 過
これらの症例に対し,アミオダロン内服錠による治
診.入院後の心電図では,Ⅱ,Ⅲ,aVF,V1にQ波が認
療を行った.維持投与量は1
2
86
. ±488
. mg/日,血中濃
められ,LVEFは45%,ホルター心電図では心室期外
度はアミオダロンが5
9
77
. ±3
1
37
. ng/dL,代謝産物デ
収縮
(PVC)の頻発が観察された.心室プログラム刺激
スエチルアミオダロンが4
7
22
. ±26
31
. ng/dL,観察期
により,右脚ブロック,上方軸型の持続性VTが再現性
間は3
06
. ±2
44
. カ月であった.
をもって誘発されたため,ICD植え込みを施行すると
ともに,アミオダロン2
0
0 mg/日を開始した.
*
M. Sawada,K. Otomo,S. Nakamura,H. Takayama,Y. Osaka,
K. Onishi,A. Kurihara,Y. Ono,S. Shimizu:青梅市立総合病
院循環器科
その後,BNP値が徐々に上昇し始め,2
007年8月に
は心不全のため再入院に至った.経過中に甲状腺機能
―
(
620)―
《作業者:》 Title:アミオダ12_一般13_澤田.ec5 Page:69
第1
2回アミオダロン研究会講演集
表1 患者背景
症 例
1
2
3
4
5
6
7
年齢(歳)
86
8
1
85
84
9
1
80
9
4
性 別
M
M
F
M
M
F
F
投与開始
20
02/3 2
00
2/6 20
03/5 2
004/12 200
6/2 2
0
06/3 2
00
6/9
疾 患
OMI
DCM
DCM
OMI
心筋症 心筋症
OMI
LVEF
(%) 6
0
34
3
2
45
35
5
6
36
不整脈
VF
NSVT
NSVT
SVT
PAF
PAF
SVT
LVEF:左室駆出率,OMI:陳旧性心筋梗塞,DCM:拡張型心筋症,VF:心室細動,(N)
SVT:
(非)持続性心室頻拍,PAF:発作性心房細動.
心筋症:高血圧性心疾患(HHD),頻脈惹起性心筋症.
アミオダロン 200 mç
カルベジロール 10 mç
テモカプリル 1 mç
BNP
(pç/mL)
400
300
TSH 4.6 μU/mL
fT3 2.5 pç/mL
fT4 1.5 nç/dL
KL−6 106 U/mL
SP−D 23.8 nç/mL
200
100
CRT
0
04/06
/11
05/01
/07
06/01
/07
07/01
/08 (年/月)
第2回入院(心不全再発)
図1 経過図(症例2)
900
アミオダロン 200 mç
800
BNP(pç/mL)
700
600
500
ホルター心電図(04/12)
Total 118,785/PVC 7,364
(3連まで)
400
300
TSH 1.5 μU/mL
fT3 2.2 pç/mL
fT4 1.4 nç/dL
KL−6 464 U/mL
SP−D 238 nç/mL
ICD
200
100
0
04/07
05/01
/07
06/01
/05
入院(失神精査)
07/01
心不全
図2 経過図(症例4)
―
(
621)―
/08
(年/月)
《作業者:》 Title:アミオダ12_一般13_澤田.ec5 Page:70
. TSH
2.3 μU/mL
fT3
1.5 pç/mL
fT4
1.5 nç/dL
KL−6
449 U/mL
SP−D 131 nç/mL
1,800
BNP
(pç/mL)
1,600
1,400
1,200
1,000
800
600
EPS
血中濃度 AMD 713
(nç/mL) DEA 627
AMD 644
DEA 356
400
AMD 200 mç
AMD 100 mç
200
Car 10 mç
Car 5 mç
0
AMD 181
DEA 248
AMD 50 mç
06/09
/11
07/02
/05
VT
徐脈
VT
徐脈
/06 /07 (年/月)
VT
突然死
入院
図3 経過図(症例7)
¿
V1
À
V2
Á
V3
VR
¿
V1
À
V2
Á
V3
VR
V4
VL
V5
VF
V6
a
a
V4
VL
a
a
V5
VF
a
a
V6
外来時心電図(2007年5月11日)
5月14日
図4 外来時および高度徐脈発生時の12誘導心電図(症例7)
やKL―6の異常は認めていない.
診し,心拍数4
0回/分前後の徐脈
(房室接合部補完調
3.症 例 7
律)
が認められた.アミオダロンの副作用を疑い,同薬
4歳,女性.
症 例:9
剤は一時中止したものの,3カ月後に再度VTが発生
9
9
6年,OMIのため左前下行枝にステント
既往歴:1
したため,
10
0 mg/日に減量した上で再開した.再び外
を留置.慢性心不全も合併しており,LVEFは3
6%で
来経過観察にて洞調律が継続していたところ,当初は
あった.
PVCの散発を認める程度であったが,3カ月後に再
(図3)
:右脚ブロック,下方軸型のVTにより
経 過
度の息切れ,および高度徐脈
(心拍数3
0回/分前後,図
当院受診.VTは直流除細動と複数薬剤に抵抗性で
となったため,最終的に5
0 mg/日に減量した.本症
4)
あったが,アミオダロン20
0 mg/日とβ遮断薬の併用
例はその後,夜間就寝中の突然死に至った.
を開始したところ,数日で洞調律に復帰した.
経過良好のため退院とした.初回外来時,洞調律を
治療経過
維持していたが,その3週後に息切れを自覚して再受
全症例の治療経過を表2に示す.デバイス植え込み
―
(
622)―
《作業者:》 Title:アミオダ12_一般13_澤田.ec5 Page:71
第1
2回アミオダロン研究会講演集
表2 治療経過
症 例
1
2
年齢(歳)
86
81
疾 患
OMI
DCM
デバイス
―
CRT
β遮断薬
Car 1
0 Car 10
ACE/ARB Los 50 Tem 1
投与開始
200
2/3 200
2/6
再入院
―
200
5/1
転 帰
生 存
生 存
3
4
5
85
8
4
9
1
DCM
OMI
心筋症
―
ICD
―
Car 1
0
―
―
Ena 25
.
―
―
200
3/5 20
04/12 20
06/2
―
20
07/8
―
施設入所 入院中
(2
006/6)
心不全死
6
7
8
0
心筋症
DDD
Bis 5
―
2
00
6/3
―
94
OMI
―
Car 1
0
―
20
06/9
20
06/1
1
20
07/2・5
生 存
突然死
OMI:陳旧性心筋梗塞,DCM:拡張型心筋症,CRT:心臓再同期療法,ICD:植え込み型除細
動器,DDD:DDD型ペースメーカー,ACE:アンジオテンシン変換酵素阻害薬,ARB:アンジオ
テンシンⅡ受容体拮抗薬.
Car:カルベジロール,Bis:ビソプロロール,Los:ロサルタン,Tem:テモカプリル,Ena:
エナラプリル.投与量はいずれもmg/日.
を施行した患者は3例であった.心不全合併例が多く,
薬物動態が急激に変化することもあり,投与量と副作
5例でβ遮断薬が投与されており,3例は再入院を経
用のチェックに十分な配慮が必要と考えられる.
験している.
超高齢者におけるアミオダロンの適応は,患者の病
現時点での転帰は,死亡が2例
(突然死ならびに心
態や日常生活動作
(ADL),理解力の程度に応じて決定
不全死)
,認知症の進行による施設入所が1例,入院加
すべきである.また,冠動脈インターベンションやカ
療が1例となっており,残る3例は健在である.
テーテル・アブレーション,植え込み型除細動器など
の侵襲性治療を併用する際には,患者の体力を考慮し,
ま と め
十分な検討と話し合いをもつことが必要である.
8
0歳以上の超高齢者でもアミオダロンの抗不整脈効
果は期待できるが,病態や社会的状況の変化によって
長期の内服が困難になることもあり得る.
定期的な外来経過観察では異常がみられなくても,
文 献
1)日本心電学会学術諮問委員会編:不整脈にアミオダロ
ンをどう使うか・改訂版(循環器薬物治療実践シリー
ズⅠ),日本心電学会,東京,200
7.
―
(
623)―
《作業者:》 Title:アミオダ12_質疑応答13_澤田.ec5 Page:72
. 質疑応答
(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科循環器内科教授)
座長/大江 透
(特定医療法人社団カレスサッポロ北光記念病院院長)
櫻井 正之
(青梅市立総合病院循環器科) 演者/澤田 三紀
大江
(座長)
どうもありがとうございました.
です.
症例呈示の最後に示された患者さんが徐脈を来した
櫻井
(座長)
80歳以上の超高齢者ともなれば,アミ
とき,ペースメーカーやCRT―Dは考慮されなかったの
オダロンに限らず,ほかの薬剤の投与でも難しい部分
でしょうか.
がありますね.
澤田
(演者)
心筋梗塞の既往がありましたので,虚
高齢の患者さんでは,甲状腺機能低下などを来しや
血に伴う徐脈の可能性も考えて,カテーテル治療やバ
すいという印象がありますが,そのような傾向はな
イパス手術,ペースメーカーなど,複数の選択肢を検
かったのでしょうか.
討したのですが,最終的には
「薬剤だけで」
というご家
澤田 今回は症例が少なかったこともあり,そこま
族,
ご本人の希望が強く,
あのような経過になりました.
で検討できていません.ただ,7
0歳以上の高齢患者40
大江 症例2ではアミオダロンのほかにCRTを併
名前後で検討してみても,2∼3例程度の発生率です
用していらっしゃいましたが,CRT―Dの方がさらに望
し,超高齢者だから副作用が起こりやすいという印象
ましいのではないでしょうか.
は特にありません.
澤田 そうですね.当時はまだ発売されていません
大江 どうもありがとうございました.
でしたが,現在であればCRT―Dをお勧めしているはず
―
(
624)―