東山動植物園のゴリラ群における個体導入による行動と個体関係の変化 1 2 2 2 3 小倉匡俊 渋谷康 近藤裕治 橋川央 田中正之 上野吉一 2 1:京都大学霊長類研究所 2:東山動植物園 3:京都大学野生動物研究センター 研 究 の 目 的 東山動物園のゴリラ群 名古屋市東山動植物園では2007年8月にオスのニシローランドゴリラ(シャバーニ)の群れ アイ ネネ への導入をおこなった。その後、群れの再編成をおこない、現在ではシャバーニとネネ(メス・36歳) メス メス が同居し、ネネの娘であり国内で最も若い個体のアイ(メス・5歳)はオキ(メス・52歳)と同 2003 年 2 月 27 日誕生 1973 年 10 月 27 日来園 居している。ゴリラの新着個体の群れへの導入は貴重な事例であり、飼育個体数が減少している国 5歳 推定 36 歳 内の現状を考えると不可避となってくると考えられる。 日本で一番若い アイの母親 本研究では個体の導入と群れの再編成による繁殖と発達への影響を調べた。 オキ シャバーニ 個 体 導 入 の 経 緯 6 月 27 日 シャバーニがタロンガ動物園から到着 シャバーニの検疫と群れの分離訓練をおこなう メス オス 1959 年 9 月 8 日来園 1996 年 10 月 20 日誕生 52 歳 12 歳 日本で一番高齢 アペンヒュール動物園 8 月 19 日 シャバーニとオキを初めて同居させる (オランダ)生まれ 8 月 21 日 シャバーニとアイ・ネネを初めて同居する 1996 年 12 月にタロンガ 以後、シャバーニとアイ・ネネを同居させる 9 月 13 日 アイがシャバーニからひどく攻撃され、アイを群れから分離 動物園(オーストラリア) 9 月 18 日 アイとオキの同居を開始する へ移動 年齢は 2008 年 11 月現在 以後、シャバーニとネネが同居し、アイとオキが同居する 一日ずつ交互に屋外放飼場に出す 東山動物園のゴリラ放飼場 方 法 2007 年 7 月から週に 1 度、1 年間にわたり行動を屋外放飼場でビデオ撮影 今回の分析には以下のビデオ記録を使用 ネネ・シャバーニ:2007 年 10 月 6 日・20 日(計 259 分間) 2008 年 7 月 12 日・24 日(計 427 分間) アイ・オキ 屋外放飼場 :2007 年 10 月 13 日・11 月 8 日(計 607 分間) 414 m 2008 年 7 月 17 日・31 日(計 471 分間) 2 1 分間隔の瞬間サンプリングで、以下のデータを記録 (撮影した時間のうち、両方の個体がビデオに映っているサンプリングポイントを使用) ①行動時間配分 個室 個体の行動を移動・採食・壁なめ・異常行動(吐き戻し・手なめ)・休息に分類し、 個室 どの行動に該当するかを記録 個室 ②個体間距離 大展示室 小展示室 個体間の距離を 50cm 間隔で測定 結 果 個室 シュート と 考 察 行動時間配分 移動 ネネ 100% 採食 シャバーニ 100% 壁なめ 異常行動 休息 アイ 100% 100% 80% 80% 80% 80% 60% 60% 60% 60% 40% 40% 40% 40% 20% 20% 20% 20% 0% 0% 0% 0% 2007 2008 2007 2008 ともに移動が減少し(p<0.01)、採食と休息が増加した(p<0.01) 屋外放飼場で落ち着いて過ごせるようになった 2007 オキ 2008 2007 2008 アイには大きな変化は見られなかった オキは移動が減少した(p<0.01) 導入による影響なし? 導入の影響が落ち着いてきた (2006 年:移動 6.9%) 25 % ネネとシャバーニの個体間距離 (m) 2008 20 % 15 % 2007 一定の距離を保っていた 2007 2008 20 % 15 % アイが離れる ことが増えた ようになった 10 % 5% 0% アイとオキの個体間距離 (m) べったりくっついていた 近距離にいられる 10 % 25 % 5% 0 ≦2 ≦4 ≦6 ≦8 ≦ 10 ≦ 12 ≦ 14 ≦ 16 ≦ 18 ≦ 20 20< 0% 0 良好な関係に移行している ≦2 ≦4 ≦6 ≦8 ≦ 10 ≦ 12 ≦ 14 ≦ 16 ≦ 18 ≦ 20 20< 導入の影響により接触・近接していることが増えたが、 一年間で落ち着いた ともに良好な関係の変化を見せている (2006 年:0m 13.8% ≦1m 15.7%) 繁殖の成功とアイの群れへの再導入が期待される 関係が落ち着いてきた時期や季節変化との関係など、今後も分析を進めていく予定です 小倉匡俊:[email protected]
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