1 水力発電所の構成と水車 3 水力発電所の構成と水車 1.1 水力発電所の構成 しゅすいこう ⑴ 水路式発電所 取 水口 取水口から取り入れた水を比較的長い水路で水槽に導 き,水圧管を通して水車に水を供給して発電する方式であ る. 河川に流れる水を発電用の 水路に導く設備で,異物の混 入防止や水量の調整を行う 水路 取水口から水槽にいたるま 取水口 取水 ダム 発電所 水路 水 圧 管 放水路 沈砂池 水槽 放水口 第 1 図 水路式発電所 でを水路と呼ぶ. ちんしゃ ち 沈 砂池 水路の一部で,土砂を沈殿 させるために流速をゆるやか にした部分である. 水そう 水圧管の入り口に位置し, 水車の負荷の急変に応じて, ⑵ ダム式発電所 ダムで河川をせき止め,これで落差を得て発電する方式 である. 使用水量の調整を行う. 水圧管 水槽から水車までの間の圧 力管である.水圧鉄管と呼ぶ こともある. 貯水池 ダム 発電所 第 2 図 ダム式発電所 ⑶ ダム水路式発電所 ダムを設け,相当な長さの水路で水を導いて落差を作り 発電する方式である. 4 水力発電 貯水池 水路 ダム サージタンク 発電所 サージタンク 圧力水路と水圧管の連結点 に設けられる. 水撃作用を防止するクッシ ョンとして働く. 第 3 図 ダム水路式発電所 1.2 水車 水車は水の持っているエネルギーを回転エネルギーに変 換し,軸につながれた発電機を回転させる装置である. 動作原理から衝動水車と反動水車に大別される. ⑴ 衝動水車 ノズルから噴射する水を羽根(バケット)に当てて回転 させる方式の水車で,水流の向きと水車の回転方向が同じ になる.この原理に基づく水車にペルトン水車がある. ① ペルトン水車 ノズルから噴射する水を羽根(バケット)に当てて回転 させる.ノズルの内部にニードル弁があり,それを前後に 動かして水量を調節する. ノズルとバケットの間にデフレクタがある.負荷が急変 したときには水がバケットに当たらない位置に移動し,そ の間にニードル弁を徐々に閉じて,水車の回転速度の上昇 と水圧管内の圧力上昇を防止している. 取水塔 サージタンク 貯水池 圧力水路 水 圧 管 水撃作用 水力発電所で,負荷の急激 な変化に応じて水車に送る水 量を急に少なくするときなど に生じる現象である. 管の中を水が流れていると き,管の端にある弁を急に閉 じると,水の運動エネルギー が圧力のエネルギーになり, 管路内に過渡的な圧力上昇を 生じる.この現象を水撃作用 といい,流速の変化が大きい ほど,水圧管の長さが長いほ ど,水車入口弁を閉鎖する時 間が短いほど大きくなる. 水撃作用の軽減策 水撃作用を軽減するには次 の方法がある. ① サージタンクを設置する. ② ペルトン水車では,デフ レクタを使用し,徐々にニ ードル弁を閉じる. ③ 反動水車では,水車のケ ーシングから排水して圧力 上昇を抑える制圧機を設け る. ランナ ディスク ニードル弁 軸 5 負荷急減のとき デフレクタ 通常の ニードル弁 とき バケット ノズル 水力発電所の構成と水車 水 ノズル バケット 第 4 図 ペルトン水車 ⑵ 反動水車 ジェット機はガスを後方に噴射し,その反動で前進す る.これと同様に流水をランナに流入させ,流水を放水す る反動を使って回転する方式の水車で,水流の向きと水車 の回転方向が逆になる.この原理に基づく水車に,フラン シス水車,斜流水車,プロペラ水車などがある. ① フランシス水車 ランナ うず 水圧管からの流水は渦巻きケーシングに充満し,可動構 造の案内羽根(ガイドベーン)で流量が調整されて,ラン ナに流入する.水はランナの外周から入って中心部に集ま り,ランナ直下の吸出し管から放水路に放流される. ランナには多数のランナ羽根(ランナベーン)があり, この羽根の中を流水が通過するときの反動でランナが回転 する.ランナ羽根は固定されているため,部分負荷時の効 率の低下が著しい. 案内羽根 全閉 主軸 ケーシング ランナ羽根 吸出し管 キャビテーション 空洞現象とも呼ばれる.流 水中に局部的に圧力の低い箇 所ができると,水中に含まれ ている空気が分離されて気泡 となる現象である. キャビテーションは,次の 影響を及ぼす. ① 水車効率が低下する. ② 圧力の高いところで押し つぶされて,その衝撃でラ 全開 ンナ,ガイドベーン,ラン 案内羽根 (可動) ランナ羽根 回転方向 (固定) 第 5 図 フランシス水車 水車の回転子をランナという. ナベーン,バケットなどに 壊食を生じる. ③ 振動や騒音を生じる. 6 水力発電 ② 斜流水車(デリア水車) キャビテーションの防止対策 ランナに対してケーシングが斜め上にあるタイプで,流 水がランナの軸に斜め方向に通過する. 一般にランナ羽根が可動構造になっており,部分負荷時 の効率は良い. ① 水車の比速度をあまり大 きくしない. ② 吸出し高さをなるべく低 くする. ③ 吸出し管の上部に適量の 空気を入れる. 案内羽根(可動) ④ 過度の部分負荷運転や過 負荷運転を避ける. ⑤ ランナ羽根,バケットな どの表面をなめらかにする. ランナ羽根(可動) 吸出し管 ⑥ 壊食が生じやすい部位に は,ステンレスなどの壊食 が起こりにくい材料を使用 第 6 図 斜流水車 ③ プロペラ水車 ランナに 4〜8 枚のプロペラ羽根を有する反動水車であ る.斜流水車と同様に,流量に応じてランナ羽根の角度を 変えることができるプロペラ水車をカプラン水車という. 案内羽根(可動) ランナ羽根(可動) 吸出し管 第 7 図 カプラン水車 1.3 反動水車の吸出し管 吸出し管は水車のランナ出口と放水面をつなぐ管で,水 をその中に充満させて流し,吸出し管頂部を大気圧以下の 負圧力として,この間の落差を有効に利用するものである. する 発電機 主軸 入口弁 水圧管 吸出し管 水車 排水弁 第 8 図 吸出し管 水力発電所の構成と水車 7
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