中国株式市場に対する今後の展望 2014 年 8 月号 アテナベスト マンスリーニュースレター 2013 年 9 月号 海外の熱い反応と国内の冷たい反応 6 月、改善傾向を示す中国の経済指標を確認し、投資家の多くは中国経済がすでに底打ちし、今後は徐々に回復に向かうとの期 待を高めた。その後、中国A 株市場が大幅に上昇を遂げると、外資系ファンド運用会社は積極的に中国関連 ETF へ資金を投入。 2013 年 ETF 8 月号 かつて中国株式市場を見切った外国人投資家も大きく“Uターン”し、中国株式市場へと戻ってきたことから、中国関連 である 「iShares FTSE China25」は 8 月初旬に 4 億米ドルの資金流入を記録した。10 月に導入が予定されている「上海・香港ストックコ ネクト(上海・香港間で互いの上場株に対し直接投資を認める制度)」と、国営企業改革の概念が好材料となり、今後も中国・香港 の株式市場を支えるであろうことは容易に想像できる。しかし、このような楽観的な状況がいつまでも続くだろうか? 一般の成熟した株式市場においては、機関投資家が個人投資家よりはるかに大きな力を持つが、中国 A 株市場については個人 投資家の力が優位となっている。欧米諸国の資金は A 株に強く注目しているが、中国本土の個人投資家はそれほど大きな興味を 示しておらず、8 月に大規模な資金が A 株市場に流れた際にも、中国本土の投資家にはそれほどの動きが起こらなかった。 丌安が残る中国経済 中国の経済指標によれば、まず 7 月の新規貸付額が 6 月の約 3 分の 1 レベルまで下落した。住宅または商業ビルの賃貸や購入 数も低下し続け、中国の製造業購買担当者指数(PMI)については、6 月の 51.7 から 7 月には 1.4%下落し 50.3 となった。7 月の 新規貸付額の低下はまだ季節的な要因があったと説明できるが、果たして 8 月に回復が見られるのだろうか。まだデータは出てい ないが、我々は中国の状況を決して楽観視はしていない。中国本土のメディアは、中国 4 大銀行の 8 月頭から 17 日までの新規 貸付金額は僅か 560 億元にとどまり、信用貸付が縮小していることを示しているが、これは信用貸付の収縮によるものなのだろう か?それとも貸付需要自体の低下によるものなのだろうか?前者によるものならば、中央銀行が金融緩和を実施することで調整 が可能である。しかし、後者は経済に極度の丌景気をもたらすものである。市場からビジネスや投資の機会が大幅に消え、金融が どれだけ緩和されても、企業は借金をすることに躊躇する。この問題は決して中央銀行の金融政策によって制御できるものではな い。当然、新規貸付額の大幅低下が信用収縮によるものか、需要低下によるものか、結論を出すにはある程度時間をかけて観察 する必要があると言えるが、これは留意すべき問題と言えよう。 今の状況から見て取れるのは、李克強総理の「微刺激」政策によってもたらされたものは、6 月のたった一カ月間だけの効果であり、 続かなかったという事実である。中央による量的緩和政策などの伝統的な経済刺激は既に効果がないということではないだろう か?これは中央政府が中国経済に対する制御能力を失ったのかどうかを知る重要なサインと言えるため注意が必要だ。 利下げ効果も期待薄 中国経済は予想されていたより状況が悪く、中国が今後利下げを実行する可能性は高いと言える。しかし、その効果がどうである かはさておき、中央が利下げを望んでも、そこには困難な点がいくつかある。まずは、銀行の丌良債権リスクを上がってしまうという 点だ。一部の調査機関によれば、中国国内の銀行の中で健全性を維持しているのは北京付近の銀行だけで、その他の地域につ いては、丌良債権率の比較的低い中西部地区を含め、丌良債権率が急速に加速しているとされる。主な丌良債権先は中小企業、 鉄鋼貿易産業チェーン関連企業によるもので、一部の大型国有企業の傘下にあるそれら企業のリスクも同様に増加していると見 られている。銀行が金利を引き下げ、これらの企業への貸付が増えれば、短期的には経済の押上げ効果につながるかも知れない が、銀行の丌良債権比率を引き上げてしまう点も否めないだろう。中央政府は経済刺激の手段として上半期に短期金利を引き下 げたが、長期金利は依然として高い状態を維持させている。これは、企業の長期的な設備投資を未だ抑制している為と見られる。 市場は近々中国政府が緩和政策を実施すると期待を高めているが、実情はそれほど楽観的なものではないのである。 免責事項 本資料は情報提供のみを目的として作成されています。本資料は、当社が信頼できると判断した各種データに基づき作成されておりますが、その正確性、確実性を保証するものではあ りません。アテナベスト・ファイナンシャル・グループ、そのグループ各社、関連会社、また、いかなる関係者も、本資料記載の内容についての一切の責任を負わず、また、本情報を元に 発生する損害については利用者個人の責任とします。本資料はいかなる投資商品の売買あるいはサービスを提案もしくは勧誘するものではありません。過去の実績は必ずしも今後のパ フォーマンスへの指針となるものではありません。株価および株価収益は上昇または下降する可能性があり、投資家は元本を払い戻しされない場合もあります。本資料に示される実績は 参考であり、実際のパフォーマンスは投資日や商品手数料、およびマネジメント貹によって異なります。ミラーファンドを含む商品については、実際の評価額と異なる場合があります。 アテナベスト マンスリーニュースレター 最終的な勝者は“市場の力” その一方で、欧州中央銀行(ECB)については、ユーロ経済に軟化の兆候が見え始め、デフレ懸念も日に日に高まっており、再び量 的緩和政策を実施せざるを得ない状況だ。そうなれば、欧州地域に対する市場の緩和期待が高まり、アジア地域の資金も含め市 場資金は欧州へと流れて行くのではないだろうか?欧州第 3 四半期の経済指標が年末に発表される際に、量的緩和措置が正式 に実施されることが考えられるが、市場の利下げに対する期待感は常に高まり続け、市場資金はそれよりも早い段階から欧州の株 式市場へと流れて行くだろう。中国の株式市場はその時まで勢いを維持することができるだろうか? 国内の経済が悪化すれば中国政府が手段を講じて解決するという考え方は、今も多くの投資家の中に深く根付いている。しかし、 歴史的な観点から見ると、政府が市場と戦っても、短期的には優位に立つことができるかもしれないが、最終的に勝利を手にする のはやはり市場の力の方だ。「上海・香港ストックコネクト」と緩和期待から、短期的には中国の株式市場も上昇の勢いを維持する かもしれないが、第 4 四半期以降も継続できるかどうかは難しいと言える。 年 初 から現 在 までの上 海 総 合 指 数 の推 移
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